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凍雪国編第4章
第54話 ゴイメールの目的1
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馬を飛ばしてきたオンジは、ダイザが乗る馬の背後を見て、少しほっとしたような顔をする。
「よく助けてくれた。礼を言う」
オンジは、ダイザに頭を下げてから、微笑みかける。
それをダイザは、朗らかに笑って受け、少し離れたところで傭兵たちを街道の外へ運び出しているテムを指差す。
「礼なら、テムさんに言ってくれ。私は、この子たちを保護しただけだ」
そう言って、まだ緊張しているミネルとキュリティを見下ろし、オンジのもとへ行くように指示をする。
二人は、ぎこちなく頷くが、ダイザの側から離れようとしない。
「どうした? ギルド支部長が迎えにきてくれたぞ?」
「い、いや……。支部長が怖くて……」
ミネルは、ぼそりとダイザへこぼし、その隣ではキュリティがこくこくと激しく同意している。
「君たち……。何をしたんだ?」
二人の様子を見て、ダイザは呆れたように尋ねる。
「い、いや……。俺たち、もの覚えが悪かったから……」
「うんうん。支部長には、いつも怒られてばかりだったよね」
ミネルの独白に、キュリティが相槌を打つ。
ダイザは、新人らしい悩みに微笑ましさを感じるが、オンジの目が吊り上がりそうになったので、二人に助け船を出す。
「支部長は、君たちが知っていることを聞きたいだけだ。何も怒りはしない」
「そうかな……」
ミネルは、オンジが内に怒りを秘めていることを何となく感じ取る。
しかし、いつまでもダイザの陰に隠れている訳にもいかず、恐る恐る馬の後ろから出て、オンジのもとへ行く。
「支部長。ご無沙汰しております」
「うむ。お前たちも、無事で済んで、良かったな」
オンジは、無謀な依頼を受けた二人に対し、頭ごなしに怒鳴りたかった。
だが、ダイザの手前、怒りを押し殺して、極力穏やかな口調で話す。
「支部長は、どうして、ここに?」
「ヤナリス様に頼まれてな。だから、ヤナリス様を襲った傭兵たちを成敗してきた」
オンジの後ろへ続く街道の先には、馬車の一団が止まっており、その回りには遠目であるが、何人かが倒れているのが見える。
「もし、お前たちがあの中にいたら、容赦なく斬り伏せていたところだ」
怒りを鎮められなくなったオンジは、若干目を吊り上げ、馬上から二人を睨みつける。
それを見たミネルとキュリティは、一歩後退り、オンジの前に立ったことを後悔する。
「お前たちには、まだ戦場に出るなと言っておいたはずだが……、忘れたのか?」
「い、いえ……」
ミネルとキュリティは、泣きそうな顔をして後ろを振り向き、目でダイザへ助けを求める。
ダイザは、蛇に睨まれた蛙のような二人を見て、多少の憐憫を覚え、再び助け船を出す。
「オンジ。責めるのは後にして、必要なことを聞いた方がいいのではないか?」
オンジも、それはよく分かっている。
ただ、あまりにも無謀な二人へ、今、戒めの言葉を吐いておかないと、この先も同じことを繰り返す懸念があったのである。
「はぁ……。分かった。お前たち……」
「はい……」
ミネルとキュリティは、しおらしく返事をして、オンジの次の言葉を待つ。
「受けた依頼は、何だ? 話せる範囲でいいから、話せ」
ギルドから受けた依頼には、守秘義務が課されるものがある。
その場合、依頼内容を他人には漏らしてはいけない。
オンジは、二人にギルドの掟を破らせるつもりはなく、ネオクトンの目的が少しでも分かればいいと思っているに過ぎない。
「人助けの依頼です。依頼主からは、子どもを助けに行くとしか、教えて貰っていません」
「誰の子どもだ?」
「分かりません」
ミネルは、本当に知らされていなかったようで、首を横に振るばかりである。
「そうか……。ところで、お前たちと一緒にいたのは、ネオクトンだな?」
「はい」
「ネオクトンの集落に行ったのか?」
「はい、行きました。そこが、集合場所だったので……」
「集落は、戦支度を始めていると聞いた。どうだった?」
「確かに傭兵は、多かったです。でも、門は閉じられていないし、人通りも普通でした。戦いが起きそうな雰囲気はなかったです」
「分かった。ところで、ゴイメールについて変わったことはなかったか?」
「ゴイメール?」
ミネルは、キュリティと目を合わせ、「何か知ってる?」と聞くが、キュリティは、「何も知らないよ」と答えて、首を横に振る。
「知らないです。何かあったのですか?」
「向こうで倒れているのが、ゴイメールの兵たちだ。それに、そこに転がっているのがゴイメールに雇われた奴らだ」
オンジは、テムが倒して運んだ傭兵たちを指差す。
テムは、そのうちの一人が意識を取り戻したので、顔をぺちぺちと叩いて起こし、何やら言葉を交わしている。
「ゴイメールは、ヤナリス様を襲った。だから、成敗したのだが、今のところ、その目的は不明だ」
「そうだったのですね。でも、俺たちには、分からないです」
ミネルとキュリティは、首を傾げて、どうしてここにゴイメールがいるのかと不思議そうな顔をする。
「よく助けてくれた。礼を言う」
オンジは、ダイザに頭を下げてから、微笑みかける。
それをダイザは、朗らかに笑って受け、少し離れたところで傭兵たちを街道の外へ運び出しているテムを指差す。
「礼なら、テムさんに言ってくれ。私は、この子たちを保護しただけだ」
そう言って、まだ緊張しているミネルとキュリティを見下ろし、オンジのもとへ行くように指示をする。
二人は、ぎこちなく頷くが、ダイザの側から離れようとしない。
「どうした? ギルド支部長が迎えにきてくれたぞ?」
「い、いや……。支部長が怖くて……」
ミネルは、ぼそりとダイザへこぼし、その隣ではキュリティがこくこくと激しく同意している。
「君たち……。何をしたんだ?」
二人の様子を見て、ダイザは呆れたように尋ねる。
「い、いや……。俺たち、もの覚えが悪かったから……」
「うんうん。支部長には、いつも怒られてばかりだったよね」
ミネルの独白に、キュリティが相槌を打つ。
ダイザは、新人らしい悩みに微笑ましさを感じるが、オンジの目が吊り上がりそうになったので、二人に助け船を出す。
「支部長は、君たちが知っていることを聞きたいだけだ。何も怒りはしない」
「そうかな……」
ミネルは、オンジが内に怒りを秘めていることを何となく感じ取る。
しかし、いつまでもダイザの陰に隠れている訳にもいかず、恐る恐る馬の後ろから出て、オンジのもとへ行く。
「支部長。ご無沙汰しております」
「うむ。お前たちも、無事で済んで、良かったな」
オンジは、無謀な依頼を受けた二人に対し、頭ごなしに怒鳴りたかった。
だが、ダイザの手前、怒りを押し殺して、極力穏やかな口調で話す。
「支部長は、どうして、ここに?」
「ヤナリス様に頼まれてな。だから、ヤナリス様を襲った傭兵たちを成敗してきた」
オンジの後ろへ続く街道の先には、馬車の一団が止まっており、その回りには遠目であるが、何人かが倒れているのが見える。
「もし、お前たちがあの中にいたら、容赦なく斬り伏せていたところだ」
怒りを鎮められなくなったオンジは、若干目を吊り上げ、馬上から二人を睨みつける。
それを見たミネルとキュリティは、一歩後退り、オンジの前に立ったことを後悔する。
「お前たちには、まだ戦場に出るなと言っておいたはずだが……、忘れたのか?」
「い、いえ……」
ミネルとキュリティは、泣きそうな顔をして後ろを振り向き、目でダイザへ助けを求める。
ダイザは、蛇に睨まれた蛙のような二人を見て、多少の憐憫を覚え、再び助け船を出す。
「オンジ。責めるのは後にして、必要なことを聞いた方がいいのではないか?」
オンジも、それはよく分かっている。
ただ、あまりにも無謀な二人へ、今、戒めの言葉を吐いておかないと、この先も同じことを繰り返す懸念があったのである。
「はぁ……。分かった。お前たち……」
「はい……」
ミネルとキュリティは、しおらしく返事をして、オンジの次の言葉を待つ。
「受けた依頼は、何だ? 話せる範囲でいいから、話せ」
ギルドから受けた依頼には、守秘義務が課されるものがある。
その場合、依頼内容を他人には漏らしてはいけない。
オンジは、二人にギルドの掟を破らせるつもりはなく、ネオクトンの目的が少しでも分かればいいと思っているに過ぎない。
「人助けの依頼です。依頼主からは、子どもを助けに行くとしか、教えて貰っていません」
「誰の子どもだ?」
「分かりません」
ミネルは、本当に知らされていなかったようで、首を横に振るばかりである。
「そうか……。ところで、お前たちと一緒にいたのは、ネオクトンだな?」
「はい」
「ネオクトンの集落に行ったのか?」
「はい、行きました。そこが、集合場所だったので……」
「集落は、戦支度を始めていると聞いた。どうだった?」
「確かに傭兵は、多かったです。でも、門は閉じられていないし、人通りも普通でした。戦いが起きそうな雰囲気はなかったです」
「分かった。ところで、ゴイメールについて変わったことはなかったか?」
「ゴイメール?」
ミネルは、キュリティと目を合わせ、「何か知ってる?」と聞くが、キュリティは、「何も知らないよ」と答えて、首を横に振る。
「知らないです。何かあったのですか?」
「向こうで倒れているのが、ゴイメールの兵たちだ。それに、そこに転がっているのがゴイメールに雇われた奴らだ」
オンジは、テムが倒して運んだ傭兵たちを指差す。
テムは、そのうちの一人が意識を取り戻したので、顔をぺちぺちと叩いて起こし、何やら言葉を交わしている。
「ゴイメールは、ヤナリス様を襲った。だから、成敗したのだが、今のところ、その目的は不明だ」
「そうだったのですね。でも、俺たちには、分からないです」
ミネルとキュリティは、首を傾げて、どうしてここにゴイメールがいるのかと不思議そうな顔をする。
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