ロシュフォール物語

正輝 知

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凍雪国編第4章

第29話 国都への上洛1

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 ダイザとテムの見張り番が無事に終了し、その後を引き継いだヤトとトパコの見張り番も、つつが無く終わりを迎える。
 ダイザとテム以外は、ヤトとトパコの見張り番が終わる頃に起き出して、朝食の準備や飛竜の世話などに取り掛かる。
 だが、ダイザとテムは、日が高くなり始めるまで寝入っていた。
 そのテムは、起きてからは早速イタドリとオオバコを調理して、皆に振る舞う。
 皆は、旬野菜に舌鼓したつづみを打ちつつ、朝食を済ませ、後片付けをしてから飛竜に乗り込む。

「さぁて……。今日は、国都で寝るぞ」

 テムは活気溢れる声で、前に座るネイに話し掛け、肩をぽんっと叩く。

「私たちは、国都へ行けませんよ」

 ネイたち飛竜隊は、国都の手前でテムたちを降ろし、リポウズへ戻るのである。

「はははっ。そうだったな。飛竜隊の皆には、世話になった。これでお別れなのが残念だ」

 テムは、ミショウ村の危急を救いに来てくれた飛竜隊に感謝しており、ミショウ村への帰還や国都への上洛を手助けしてくれたことに報いたいと考えている。

「帰りに寄ってください。歓迎しますよ」

「はははっ。それは、楽しみだ。リポウズの郷土料理を是非振る舞ってくれ」

「えぇ。いい食材を手に入れておきます」

 テムは、嬉しそうに笑い、ネイの肩を叩いて、出発の合図を送る。
 テムの意図を察したネイも、テムの陽気さにつられて笑い、飛竜に離陸の指示を出す。
 ほかの飛竜も、ネイの飛竜に続けとばかりに、勢いよく翼をはためかせ、次々と空へ舞っていく。
 上空は、昨日よりも雲が多いものの、概ね晴れ渡っており、天候の崩れはなさそうである。



 国都の北3km辺りに来た頃に、オンジが下を指差して、ほかの飛竜に乗っている皆に聞こえるように声を張り上げる。

「降下してください!」

 オンジが示す先には、低木の草木が生い茂る丘の北側斜面があり、ちょうど国都からは見えない位置にある。

「分かった!」

 ダイザとハンナを乗せているブーキが答え、真っ先に降下していく。
 それにオンジを乗せているヤトが続き、ネイらの飛竜が地上へゆっくりと降りていく。

(ちらりと見えた街道からは、結構距離があるな……)

 ダイザは、国都までの距離を目算で測る。
 昼過ぎになっている今からでは、国都へ辿り着くのは、日没間近になりそうである。

(それよりも、かなりの人がいるな)

 国都へ近くなればなるほど、人の気配が多い。
 また、凍土林の奥深くへ分け入る人の気配もあり、これから飛竜が降下する場所の近くにも人の姿が見える。

「間もなく、地上です」

 ブーキは、飛竜を巧みに操縦し、気流の乱れをやり過ごし、地上へ降りていく。

「近くに人がいる。見られているだろう」

 ダイザは、ブーキの肩を叩いて、警戒するように忠告する。

「分かっています。この辺りにも、ギルドの依頼で来る人がいます。また、近頃、国都の喧騒を逃れて、新たに集落を築く者たちもおります」

 ギルドの依頼でこの辺りまで来るのは、なかなか手に入らない薬草を求めていたり、鉱石や宝石を探したりして来る冒険者である。
 また、街道では、リポウズとの交易を行う者たちが、馬車の列を作って往来している。
 そして、国都で犯罪を犯した者やお尋ね者になった者たちは、隠れ家を作って暮らし、自然との共生を求める者たちは、街道沿いの平地に新たに集落を築いている。
 オンジが指示した場所の街道沿いにも、交易商たちを相手にした休憩所兼食堂を構える家々が見える。
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