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凍雪国編第4章
第14話 東の海峡越え2
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テムは、眼下に広がる荒波の中をゆったりと泳ぐクリダステスを眺め見てる。
目に見える範囲には、全部で6匹のクリダステスが泳いでいる。
「島に長年住んでいたが、こんな生き物がいたとは知らなかったな……」
「そうですか? この辺りの海峡には、クリダステスの巣があるので有名ですよ」
ネイは、大陸での共通認識をテムに教える。
「そうなのか?」
「はい。飛竜隊の間でも、クリダステスを海峡の主と呼んでいまして、近寄らないようにしています」
「ほぅ……」
テムは、初耳なことを聞き、興味を引かれる。
(島に閉じ籠っていると、情報に疎くなるな)
クリダステスは、海面付近を泳ぎ、時折、深く潜る動きを見せ、水中の獲物に狙い定めているようである。
「それより、もうすぐ向こう岸ですよ」
「おぅ! そうだな」
テムは、ネイの言う通り、対岸の岸壁が近くに迫っていることに気がつき、そちらの方向を見る。
島の東側では、海峡を挟んだ大陸側でも切り立った岸壁が連なっている。
この辺りは、北からくる潮流と南からくる潮流とがぶつかり、岸壁が激しい波にさらされて、そそり立つ壁となってしまっている。
テムは、大陸側の岸壁を初めて上空から眺め、その険しさに目を奪われる。
(ここからは、飛竜に乗って飛び越えるしか、方法がないのだな)
島の東側からミショウ村を襲撃するとなれば、確かに海峡を筏で横断することは難しい。
まして、そこに海竜の巣があるとなれば、海上を移動すること自体に危険が伴う。
(やはり……。襲撃者たちは、飛竜を使うしか手がなかったのか……)
テムは、襲撃事件に関し、ドルマからその詳細を聞かされている。
ミショウ村が襲撃されたときは、村の西側を警戒していて、飛竜の群れに気がつくのが遅れた。
その理由は、東側からは島へ上陸できないと思われていたからである。
しかし、魔道具を使用し、飛竜を使役できるならば、東側から容易く上陸を果たすことができる。
「ネイよ。この岸壁を越えた辺りに、集落はあるのか?」
テムは、大陸では襲撃者たちを目撃している人がいないかを調べる意向である。
オンジからの報告では、島から東へ行ったところに、リフシローというツェブル族の隠れ里があるらしい。
「さぁ? 特に聞いたことはないですね……」
ネイ自身は、この辺りを何度か飛行したことがあるものの、集落らしいきものを見たことがない。
「リフシローというのは、どこだ?」
「あぁ、リフシローですね。その村なら、もっと先にあります」
ネイは、そう言って、岸壁を越えた先にある小山を指差す。
その小山周辺は、凍土林が密になっており、隠れ里という名前に相応しい場所である。
「上空から見えるのか?」
「ほとんど、見えません。リフシローの位置は、ギルドからの情報で知ったぐらいですから……」
「そうか……」
それを聞いて、テムは、残念そうな顔をする。
襲撃者が関わっていた村の様子を見てみたかったのである。
(後日、調べに行くしかあるまい)
今は、国都へ急行することが最善である。
そのため、リフシローに寄り道をしている時間はない。
「今日は、どの辺りまで行く予定ですか?」
テムとネイの会話を静かに聞いていたリックスが、口を挟む。
「あの小山を越えたところにある湖沼帯まで行きます。野営に必要な水を手に入れるためですが、飛竜にも水分補給が必要だからです」
「あと、どれくらいで着く?」
テムは、ネイの肩越しに、その湖沼帯を見つめ、距離感を測る。
「3、4時間といったところでしょうか?」
海峡の上空では、上昇気流が起こり、飛竜も気持ちよく滑空できている。
しかし、大陸の空では、気流の乱れは少ないものの、上昇気流はほとんど起きていない。
そのため、飛竜は、己の翼を動かして揚力を得る必要がある。
テムとリックスは、大陸の空に入れば、できるだけ大人しくして、飛竜の体力を奪わないようにしなければならない。
目に見える範囲には、全部で6匹のクリダステスが泳いでいる。
「島に長年住んでいたが、こんな生き物がいたとは知らなかったな……」
「そうですか? この辺りの海峡には、クリダステスの巣があるので有名ですよ」
ネイは、大陸での共通認識をテムに教える。
「そうなのか?」
「はい。飛竜隊の間でも、クリダステスを海峡の主と呼んでいまして、近寄らないようにしています」
「ほぅ……」
テムは、初耳なことを聞き、興味を引かれる。
(島に閉じ籠っていると、情報に疎くなるな)
クリダステスは、海面付近を泳ぎ、時折、深く潜る動きを見せ、水中の獲物に狙い定めているようである。
「それより、もうすぐ向こう岸ですよ」
「おぅ! そうだな」
テムは、ネイの言う通り、対岸の岸壁が近くに迫っていることに気がつき、そちらの方向を見る。
島の東側では、海峡を挟んだ大陸側でも切り立った岸壁が連なっている。
この辺りは、北からくる潮流と南からくる潮流とがぶつかり、岸壁が激しい波にさらされて、そそり立つ壁となってしまっている。
テムは、大陸側の岸壁を初めて上空から眺め、その険しさに目を奪われる。
(ここからは、飛竜に乗って飛び越えるしか、方法がないのだな)
島の東側からミショウ村を襲撃するとなれば、確かに海峡を筏で横断することは難しい。
まして、そこに海竜の巣があるとなれば、海上を移動すること自体に危険が伴う。
(やはり……。襲撃者たちは、飛竜を使うしか手がなかったのか……)
テムは、襲撃事件に関し、ドルマからその詳細を聞かされている。
ミショウ村が襲撃されたときは、村の西側を警戒していて、飛竜の群れに気がつくのが遅れた。
その理由は、東側からは島へ上陸できないと思われていたからである。
しかし、魔道具を使用し、飛竜を使役できるならば、東側から容易く上陸を果たすことができる。
「ネイよ。この岸壁を越えた辺りに、集落はあるのか?」
テムは、大陸では襲撃者たちを目撃している人がいないかを調べる意向である。
オンジからの報告では、島から東へ行ったところに、リフシローというツェブル族の隠れ里があるらしい。
「さぁ? 特に聞いたことはないですね……」
ネイ自身は、この辺りを何度か飛行したことがあるものの、集落らしいきものを見たことがない。
「リフシローというのは、どこだ?」
「あぁ、リフシローですね。その村なら、もっと先にあります」
ネイは、そう言って、岸壁を越えた先にある小山を指差す。
その小山周辺は、凍土林が密になっており、隠れ里という名前に相応しい場所である。
「上空から見えるのか?」
「ほとんど、見えません。リフシローの位置は、ギルドからの情報で知ったぐらいですから……」
「そうか……」
それを聞いて、テムは、残念そうな顔をする。
襲撃者が関わっていた村の様子を見てみたかったのである。
(後日、調べに行くしかあるまい)
今は、国都へ急行することが最善である。
そのため、リフシローに寄り道をしている時間はない。
「今日は、どの辺りまで行く予定ですか?」
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「あの小山を越えたところにある湖沼帯まで行きます。野営に必要な水を手に入れるためですが、飛竜にも水分補給が必要だからです」
「あと、どれくらいで着く?」
テムは、ネイの肩越しに、その湖沼帯を見つめ、距離感を測る。
「3、4時間といったところでしょうか?」
海峡の上空では、上昇気流が起こり、飛竜も気持ちよく滑空できている。
しかし、大陸の空では、気流の乱れは少ないものの、上昇気流はほとんど起きていない。
そのため、飛竜は、己の翼を動かして揚力を得る必要がある。
テムとリックスは、大陸の空に入れば、できるだけ大人しくして、飛竜の体力を奪わないようにしなければならない。
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