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凍雪国編第4章
第1話 メガボアの討伐依頼1
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ダイザたちを乗せた飛竜が、ミショウ村を飛び立ち、東の空の彼方へ消えていく。
すると、河川敷に集まった皆は、それぞれの家へ戻るべく、村の方へ移動していく。
だが、ただ一人、ギルド員として残ったメリングは、次の行動に悩む。
メリングは、村に残留したものの、特にやることがないからである。
そこで、まだ飛竜隊の魔力波長を追い続けているモールの側に立ち、静かに待機する。
しばらく、そのままじっとしていたモールは、飛竜隊が無事に東の海峡を越えたのを確認し、意識を隣に立つメリングへ向ける。
河川敷にいるのは、モールとメリングだけになっている。
「なんじゃ? 自由にしていいんじゃぞ」
モールは、指示待ちの姿勢を崩さないメリングに呆れ顔になる。
「いえ……。何をしていいのか、よく分からないのです。私は、どうすればいいですか?」
「知らん。好きにすればよい」
襲撃は、一度きりで、その後、敵の気配はない。
また、村を出ていたダイザたちも、無事に戻ってきており、新たな目的のために旅立ったばかりである。
そのため、モールとて、特に何かを急いでしなければならないという予定はなく、いつも通りの生活を送ることしか、当面はすることがない。
「そうですか……」
メリングは、モールの言葉を聞いて、途方に暮れたような顔になる。
メリングは、慣れない土地で手持ちぶさたになり、困惑の度合いを深めるしかない。
「ふむ」
モールは、かつての部下が困っているのを見て、助け船を出してやる。
「お主に頼むほどのことではないが、今、ホレイとナートがあっちの方から戻ってきておる」
モールは、南西にあるテラ湖の方角を指差す。
ホレイとナートは、ランジェとクスリナを救うべく、バチアの秘薬に含まれるカラバル豆を中和するため、ハシリドコロの根茎を採取しに行っている。
「ホレイ殿とナート殿? 村の方ですか?」
メリングは、ミショウ村のことに詳しくない。
そのため、ホレイとナートという村人の名前も初めて聞いた。
「そうじゃ。彼らは、敵が子どもたちへ盛った薬の中和薬を採りに行っておる。今朝方から、村へ近づいてきており、どうやら首尾よく採取できたようじゃの」
モールは、ホレイとナートが村を出てから、その行方を追い続けており、昨日からその動きに変化が生じていることに気がついている。
ホレイとナートは、夜通し歩き続けており、疲労はピークに達しているはずである。
「それは、朗報ですが……。私に頼むとは?」
メリングは、モールの索敵能力の高さを十分に理解している。
そのため、モールがホレイとナートという村人が、こちらへ向かってきているというならば、その通りであると信じている。
「タイミングが悪い」
「何がですか?」
「メガボアも、こちらへ向かってきておる。このままいくと、あと3時間ほどで遭遇するじゃろうな」
メガボアとは、大型の猪のことである。
この猪は、魔法を使用しないものの、気性が荒く、人に出合えば容赦なく攻撃してくる。
そのメガボアが、ホレイとナートの進行方向へ進んできているのである。
「分かりました。私が退治してくれば、よいのですね」
「頼めるか? やることがなくて困っておるお主なら、丁度よい案件じゃろう?」
「えぇ。お役に立てそうで、安心しました」
メリングは、言葉通り、ほっとした表情を浮かべ、モールの頼みに飛びつく。
「では、頼む。道案内は、フレイにでもさせよう」
モールは、島の外の人間であるメリングが、突然ホレイとナートに出くわすと、話がこじれ、最悪ホレイとナートが剣を抜くことになるかもしれぬと危惧する。
だから、メリングには、村の者をつける必要があり、その役目は、フレイが適任である。
フレイにとっては、メリングの戦いを見て、剣や魔法の使い方を参考にすることができる。
「フレイ殿? 危険はないのですか?」
「多少の危険は、あるじゃろ。じゃが、自分の身は、もう守れる。じゃから、お主は、フレイのことは気にせず、メガボアと対峙してくれればよい」
「はぁ……」
メリングは、正直フレイの実力を測りかねている。
魔力量が異常に多いことを除けば、所持属性がまったく分からず、剣の腕も見ていないのである。
「心配ない。フレイは、わしの弟子じゃ。それなりに、戦える」
「それならば、いいのですが……」
「はははっ。フレイは、まだ剣を使えぬ。じゃから、剣には期待せん方がいい。じゃが、魔法はそこそこ使いよるし、いざとなれば、拳に魔法を宿して戦いよる」
フレイは、武器を使うことよりも、拳に魔力を集め、属性を乗せて戦う方を好む。
おそらく、メガボアと戦っても、負けることはない。
(それよりも、蒼炎や金雷を使い、一撃で倒してしまうのかもしれん)
フレイが魔法を乗せて放つ拳には、圧倒的なまでの威力が加わっている。
フレイは、単純な攻撃力でいえば、この島の魔獣に遅れを取ることはないほどの力を、すでに手に入れている。
すると、河川敷に集まった皆は、それぞれの家へ戻るべく、村の方へ移動していく。
だが、ただ一人、ギルド員として残ったメリングは、次の行動に悩む。
メリングは、村に残留したものの、特にやることがないからである。
そこで、まだ飛竜隊の魔力波長を追い続けているモールの側に立ち、静かに待機する。
しばらく、そのままじっとしていたモールは、飛竜隊が無事に東の海峡を越えたのを確認し、意識を隣に立つメリングへ向ける。
河川敷にいるのは、モールとメリングだけになっている。
「なんじゃ? 自由にしていいんじゃぞ」
モールは、指示待ちの姿勢を崩さないメリングに呆れ顔になる。
「いえ……。何をしていいのか、よく分からないのです。私は、どうすればいいですか?」
「知らん。好きにすればよい」
襲撃は、一度きりで、その後、敵の気配はない。
また、村を出ていたダイザたちも、無事に戻ってきており、新たな目的のために旅立ったばかりである。
そのため、モールとて、特に何かを急いでしなければならないという予定はなく、いつも通りの生活を送ることしか、当面はすることがない。
「そうですか……」
メリングは、モールの言葉を聞いて、途方に暮れたような顔になる。
メリングは、慣れない土地で手持ちぶさたになり、困惑の度合いを深めるしかない。
「ふむ」
モールは、かつての部下が困っているのを見て、助け船を出してやる。
「お主に頼むほどのことではないが、今、ホレイとナートがあっちの方から戻ってきておる」
モールは、南西にあるテラ湖の方角を指差す。
ホレイとナートは、ランジェとクスリナを救うべく、バチアの秘薬に含まれるカラバル豆を中和するため、ハシリドコロの根茎を採取しに行っている。
「ホレイ殿とナート殿? 村の方ですか?」
メリングは、ミショウ村のことに詳しくない。
そのため、ホレイとナートという村人の名前も初めて聞いた。
「そうじゃ。彼らは、敵が子どもたちへ盛った薬の中和薬を採りに行っておる。今朝方から、村へ近づいてきており、どうやら首尾よく採取できたようじゃの」
モールは、ホレイとナートが村を出てから、その行方を追い続けており、昨日からその動きに変化が生じていることに気がついている。
ホレイとナートは、夜通し歩き続けており、疲労はピークに達しているはずである。
「それは、朗報ですが……。私に頼むとは?」
メリングは、モールの索敵能力の高さを十分に理解している。
そのため、モールがホレイとナートという村人が、こちらへ向かってきているというならば、その通りであると信じている。
「タイミングが悪い」
「何がですか?」
「メガボアも、こちらへ向かってきておる。このままいくと、あと3時間ほどで遭遇するじゃろうな」
メガボアとは、大型の猪のことである。
この猪は、魔法を使用しないものの、気性が荒く、人に出合えば容赦なく攻撃してくる。
そのメガボアが、ホレイとナートの進行方向へ進んできているのである。
「分かりました。私が退治してくれば、よいのですね」
「頼めるか? やることがなくて困っておるお主なら、丁度よい案件じゃろう?」
「えぇ。お役に立てそうで、安心しました」
メリングは、言葉通り、ほっとした表情を浮かべ、モールの頼みに飛びつく。
「では、頼む。道案内は、フレイにでもさせよう」
モールは、島の外の人間であるメリングが、突然ホレイとナートに出くわすと、話がこじれ、最悪ホレイとナートが剣を抜くことになるかもしれぬと危惧する。
だから、メリングには、村の者をつける必要があり、その役目は、フレイが適任である。
フレイにとっては、メリングの戦いを見て、剣や魔法の使い方を参考にすることができる。
「フレイ殿? 危険はないのですか?」
「多少の危険は、あるじゃろ。じゃが、自分の身は、もう守れる。じゃから、お主は、フレイのことは気にせず、メガボアと対峙してくれればよい」
「はぁ……」
メリングは、正直フレイの実力を測りかねている。
魔力量が異常に多いことを除けば、所持属性がまったく分からず、剣の腕も見ていないのである。
「心配ない。フレイは、わしの弟子じゃ。それなりに、戦える」
「それならば、いいのですが……」
「はははっ。フレイは、まだ剣を使えぬ。じゃから、剣には期待せん方がいい。じゃが、魔法はそこそこ使いよるし、いざとなれば、拳に魔法を宿して戦いよる」
フレイは、武器を使うことよりも、拳に魔力を集め、属性を乗せて戦う方を好む。
おそらく、メガボアと戦っても、負けることはない。
(それよりも、蒼炎や金雷を使い、一撃で倒してしまうのかもしれん)
フレイが魔法を乗せて放つ拳には、圧倒的なまでの威力が加わっている。
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