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凍雪国編第3章
第104話 国都派遣への準備1
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ドルマが土間に集まった一同に向けて、これまでの状況を整理するため、皆に報告を求め、その上で今後の方針を協議する。
それによると、今回、ミショウ村を襲撃してきた者たちは、子どもの誘拐が目的であり、宗主国を狙った可能性が低いことが分かる。
ただし、ダイザたちが、当初の旅程を外れ、トセンに身を寄せてしまったがために、敵が襲撃機会を逃した可能性も残る。
分かっていることは、ゼノス教が関与し、国都やルシタニア帝国内にも協力者がいることである。
また、国都の外交相ヒュブは、闇ギルドとのつながりがあり、今回の件も裏で手引きしていたことが推測される。
「さて……。ハイトやマルザ、デュークの仇を討たねばならん。また、今後の禍根も断たねばならん」
ドルマは、皆を見渡して、その表情に浮かんでいる考えを読み取ろうとする。
ミショウ村の者には、悲哀と悔しさが見て取れ、飛竜隊やギルド員には義憤の感情が宿っている。
「皆の者に問いたい。忌憚のない意見を述べてくれ」
「私は、賛成です」
先ず真っ先に、ダイザが名乗りを上げる。
ダイザの気持ちとしては、宗主国の代表として、己が意見を表明し、覚悟を示さなければならない。
「これまで、この村が標的になることはありませんでした。此度の件で、どこまでこの村のことが大陸に知れ渡っているのかを調べる必要があります。また、敵対する勢力を洗い出し、対抗策を立てねばなりません」
「うむ。ほかには、ないか?」
ドルマは、ダイザの考えに理解を示すように大きく頷く。
「わしは、仇を討つのには賛成じゃが、国都へは行かんぞ」
モールが、国都嫌いを発揮して、村からの出兵を拒否する。
「はははっ。分かっておる。お主に、それは期待しておらんわい」
ドルマは、端からモールの出兵は当てにしていない。
ドルマの考えでは、己とモールは、村の守りとして備え置くつもりである。
「ふん。なら、わしから何も言うことはない……、いや、まだあるな」
「何をじゃ?」
「アロンやジル、キント、フレイもじゃが、子どもの出兵には反対じゃ。これらの子には、まだ早い」
モールは、存外優しい目でアロンたちを見つめて微笑む。
皆は、モールの意外な一面を見た思いで、一瞬驚く。
だが、オンジとメリング、ブーキだけは、昔を思い出し、懐かしそうに笑う。
「うむ。それは、心配せずともよい。この村の未来を背負う若者たちに、危険な役回りを押し付けるつもりはない。彼らには、わしらとともに、村を守る役目を担ってもらう。今出払っておるホレイとナートも、娘の看病をせんといかんし、ゲナンも村の守りとして残すつもりじゃ」
「なら、誰を派遣するんだ?」
テムが、口を挟む。
「そこが問題じゃな。バージは、すでに国都へ向かっておる。あとこの村から出せるのは、ダイザかテム……、お主らぐらいしかおらん」
ドルマは、二人を「どうじゃ?」と言いながら、交互に見る。
「やはり……、俺が行くのか?」
「お主の気が向かんのなら、代わりは、ゲナンに頼むしかないの」
ドルマは、意外と器用に何でもこなすテムに期待している。
また、ゲナンは国都へ行ったことがないが、テムは過去に大陸を旅行したことがあり、国都の習俗にも詳しい。
「キントは、誰が面倒を見る?」
テムの気掛かりは、息子のキントのことである。
キントは、魔法が使えないために、襲撃があれば、誰かが敵の魔法を防いでやらねばならない。
テムがいれば、キントを真っ先に守ってやれるが、ほかの者は守るべき者がいる。
親としては、キントが後回しにされ、命を落とすようなことになれば、悔やんでも悔やみきれない。
「わしが、面倒を見てやろう」
モールが、テムに申し出る。
「わしは、キントの師でもあるし、独り者じゃ。キントが嫌でなければ、テムが帰ってくるまで、わしのあばら家に住めばよい」
モールは、キントに笑いかけ、キントも微笑みを持って頷く。
「父さん。僕は、師匠のもとへ行くよ。だから、心配しないで……」
「そうか? まぁ、モール爺なら安心だが、俺が出向けば、一月以上は帰って来れんぞ?」
「大丈夫。無事を祈りながら、待っているよ」
キントは、テムを安心させるように、大きく頷きながら笑う。
「分かった」
テムは、キントが少しずつ成長しているのを見て、楽しくなり、キントの肩を軽く叩く。
「……ということだ。村長、俺は、国都へ行っても構わない」
「悪いの。頼りにさせてもらう」
ドルマは、テムの申し出に満足そうに頷く。
「私も、行きます」
ダイザも、当然のように宣言する。
「私も、宗主として、国主と話をしなければなりません。また、皇衛兵のこともあります。私が行って、皆が困らないように働いてきます」
それによると、今回、ミショウ村を襲撃してきた者たちは、子どもの誘拐が目的であり、宗主国を狙った可能性が低いことが分かる。
ただし、ダイザたちが、当初の旅程を外れ、トセンに身を寄せてしまったがために、敵が襲撃機会を逃した可能性も残る。
分かっていることは、ゼノス教が関与し、国都やルシタニア帝国内にも協力者がいることである。
また、国都の外交相ヒュブは、闇ギルドとのつながりがあり、今回の件も裏で手引きしていたことが推測される。
「さて……。ハイトやマルザ、デュークの仇を討たねばならん。また、今後の禍根も断たねばならん」
ドルマは、皆を見渡して、その表情に浮かんでいる考えを読み取ろうとする。
ミショウ村の者には、悲哀と悔しさが見て取れ、飛竜隊やギルド員には義憤の感情が宿っている。
「皆の者に問いたい。忌憚のない意見を述べてくれ」
「私は、賛成です」
先ず真っ先に、ダイザが名乗りを上げる。
ダイザの気持ちとしては、宗主国の代表として、己が意見を表明し、覚悟を示さなければならない。
「これまで、この村が標的になることはありませんでした。此度の件で、どこまでこの村のことが大陸に知れ渡っているのかを調べる必要があります。また、敵対する勢力を洗い出し、対抗策を立てねばなりません」
「うむ。ほかには、ないか?」
ドルマは、ダイザの考えに理解を示すように大きく頷く。
「わしは、仇を討つのには賛成じゃが、国都へは行かんぞ」
モールが、国都嫌いを発揮して、村からの出兵を拒否する。
「はははっ。分かっておる。お主に、それは期待しておらんわい」
ドルマは、端からモールの出兵は当てにしていない。
ドルマの考えでは、己とモールは、村の守りとして備え置くつもりである。
「ふん。なら、わしから何も言うことはない……、いや、まだあるな」
「何をじゃ?」
「アロンやジル、キント、フレイもじゃが、子どもの出兵には反対じゃ。これらの子には、まだ早い」
モールは、存外優しい目でアロンたちを見つめて微笑む。
皆は、モールの意外な一面を見た思いで、一瞬驚く。
だが、オンジとメリング、ブーキだけは、昔を思い出し、懐かしそうに笑う。
「うむ。それは、心配せずともよい。この村の未来を背負う若者たちに、危険な役回りを押し付けるつもりはない。彼らには、わしらとともに、村を守る役目を担ってもらう。今出払っておるホレイとナートも、娘の看病をせんといかんし、ゲナンも村の守りとして残すつもりじゃ」
「なら、誰を派遣するんだ?」
テムが、口を挟む。
「そこが問題じゃな。バージは、すでに国都へ向かっておる。あとこの村から出せるのは、ダイザかテム……、お主らぐらいしかおらん」
ドルマは、二人を「どうじゃ?」と言いながら、交互に見る。
「やはり……、俺が行くのか?」
「お主の気が向かんのなら、代わりは、ゲナンに頼むしかないの」
ドルマは、意外と器用に何でもこなすテムに期待している。
また、ゲナンは国都へ行ったことがないが、テムは過去に大陸を旅行したことがあり、国都の習俗にも詳しい。
「キントは、誰が面倒を見る?」
テムの気掛かりは、息子のキントのことである。
キントは、魔法が使えないために、襲撃があれば、誰かが敵の魔法を防いでやらねばならない。
テムがいれば、キントを真っ先に守ってやれるが、ほかの者は守るべき者がいる。
親としては、キントが後回しにされ、命を落とすようなことになれば、悔やんでも悔やみきれない。
「わしが、面倒を見てやろう」
モールが、テムに申し出る。
「わしは、キントの師でもあるし、独り者じゃ。キントが嫌でなければ、テムが帰ってくるまで、わしのあばら家に住めばよい」
モールは、キントに笑いかけ、キントも微笑みを持って頷く。
「父さん。僕は、師匠のもとへ行くよ。だから、心配しないで……」
「そうか? まぁ、モール爺なら安心だが、俺が出向けば、一月以上は帰って来れんぞ?」
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「分かった」
テムは、キントが少しずつ成長しているのを見て、楽しくなり、キントの肩を軽く叩く。
「……ということだ。村長、俺は、国都へ行っても構わない」
「悪いの。頼りにさせてもらう」
ドルマは、テムの申し出に満足そうに頷く。
「私も、行きます」
ダイザも、当然のように宣言する。
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