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凍雪国編第3章
第102話 オンジへの頼み事
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ドルマの家では、ヒュレイが村の婦人方の協力を得て、ブーキたちの食事を作っている。
そこに、ダイザを出迎え終えたロナリアやリリア、ニアが加わり、積み上がった使用済みの鍋や鉄板、食器類を洗っていく。
一方、大工のヨルテンは、修繕用の木材を流用して、中央広場の端に急拵えの簡易食堂を建築している。
この簡易食堂は、一時的には、ブーキらの休憩所として提供するが、その後、ヨルテンの作業小屋として使う予定である。
ヨルテンの以前の作業小屋は、爆風により、見事に破壊され、土台を残すだけとなってしまった。
ヨルテンは、その土台を再び基礎にして、簡易食堂兼作業小屋を建て直している。
「ヨルテン。無理を言って済まんな」
ドルマは、屋根板を張る作業をしているヨルテンを見上げて、声をかける。
簡易食堂は、すでに床板が張られ、壁や小窓も出来上がっている。
ヨルテンは、最後の仕上げに取り掛かっており、あと少しで完成する。
「村長、気にすることはない。これは、俺の仕事場にするものだ。遅かれ早かれ、建てていたさ」
ヨルテンは、そうドルマに答えている間にも、金槌を振るって金釘を打ちつけ、屋根板を梁に固定していく。
「そう言ってくれると、助かる。ヒュレイの方は、あともう少しでできる。先に、机や椅子を運び入れても構わんか?」
「あぁ。こっちは、気にしないでくれ。中は、もうできている。いつでも、使い始めてくれていいぞ」
「わかった。手の空いている者に、準備させよう」
ドルマは、周囲を見渡し、廃材で遊んでいるコウザとブエンを見つける。
「お前たち。済まんが、手伝いをしてくれんか?」
「何をすればいいの?」
「いいよ~」
コウザとブエンが、無邪気な笑顔を浮かべて、ドルマに近寄ってくる。
「あの木の根元にある机や椅子を、この小屋の中に運んでくれ」
ドルマが指差す先には、中央広場の端にある大きな木があり、ブーキやオンジらをもてなしたときに設置した机や椅子が置かれている。
「僕、頑張る」
「うん、分かった~」
コウザは、ドルマに力こぶを見せて頷き、ブエンは、やることができて嬉しいのか、兄の後を笑いながらついていく。
二人を見送ったドルマは、先に家の中に入ったダイザたちのもとへ向かう。
すると、フレイを背中に乗せたボーと、オンジが中央広場の中へ駆け込んでくる。
「村長。お父さんと兄さんたちは、どこ?」
「おぉ、待っておったぞ。こっちじゃ。ついてこい。オンジ殿も、こちらへ」
ドルマは、フレイとオンジを手招きする。
フレイは、ボーの背中からひらりと跳び降り、ボーに感謝を伝えたあとに聞く。
「ボーは、どうするの?」
フレイの問いに、ボーはそっけなく首を横に振り、尻尾でフレイを優しく包んだ後、セキガ山の方へ去っていく。
「ボー、ありがとうね」
ボーは、振り向きもせずに、尻尾を一度だけ振ってフレイに応える。
「ボー殿は、優しい方ですね」
「うん」
フレイは、自分が誉められたかのように、にこっと笑い、オンジを見上げる。
そんなフレイに、オンジはくすりと笑い返し、ドルマの方へ頭を下げる。
「メリングたちが、お邪魔しています」
「なに、構わんよ。皆は、土間の方にいるはずじゃ。フレイは、先にダイザたちに会ってくるがよい」
「うん!」
フレイは、嬉しそうに大きく頷いて、ドルマの家の中に駆け込んでいく。
ドルマは、はははっと陽気に笑った後、オンジに向き直る。
「オンジ殿。先ほどの金雷は、フレイの仕業じゃな?」
「はい。お気づきになられましたか?」
「まぁの……」
フレイの魔力波長は、今やオセイアのものに同調している。
セキガ山の中腹で爆雷が生じた際、ドルマは、その魔力波を感知した。
「フレイは、何とか金雷を修得できたようじゃの。オンジ殿には、フレイに貴重な金雷を授け渡してくれて、感謝しかない。ありがとうの」
「いえ……。私も、お力になれて嬉しく思います。フレイ殿は、この先、大いなる飛躍を遂げられる方ですね」
オンジは、まだ幼きフレイに敬意を抱き始めており、モールを超える逸材になるのではないかと想像を膨らませている。
ドルマも、オンジと似たような感想を持っている。
「オンジ殿。あれは、大陸に憧れを抱いておる」
「はい。それは、薄々承知しております」
フレイは、オンジが東大陸や雷龍キシアの話をしたとき、目をキラキラと輝かせていた。
それは、まだ見ぬ世界を夢見る少年の顔であった。
「じゃから、いずれはこの村を出て、大陸へ渡ることになる。そのとき、お主たちに、陰ながら助けてもらえると、有り難い」
「はい。今の段階で、誰を付けるとは明言ができません。しかし、助力は仕ります」
オンジは、ドルマにゼルスト国で通用している敬礼をし、ドルマの意向に沿うことを誓う。
「それで、構わん。なんなら、マティアスのもとへ送ってくれてもよい。あやつには、多くの国を見せてやりたいでの」
モールの話では、今、マティアスはダルドレット帝国にいるはずである。
ダルドレット帝国は、中央大陸の東南にあり、西北にあるディスガルドとは真反対の位置にある。
フレイをマティアスのもとに送れば、中央大陸を斜めに横断することができる。
そうすれば、中央大陸の主要な国々を通過することができ、その道中に様々な経験を積ませることができる。
「期待が大きいのですね」
「はははっ。フレイの素直な性格と才能故かの……」
ドルマは、一頻り笑った後、オンジを家の中へ迎え入れ、土間にいる皆のもとへ向かう。
そこに、ダイザを出迎え終えたロナリアやリリア、ニアが加わり、積み上がった使用済みの鍋や鉄板、食器類を洗っていく。
一方、大工のヨルテンは、修繕用の木材を流用して、中央広場の端に急拵えの簡易食堂を建築している。
この簡易食堂は、一時的には、ブーキらの休憩所として提供するが、その後、ヨルテンの作業小屋として使う予定である。
ヨルテンの以前の作業小屋は、爆風により、見事に破壊され、土台を残すだけとなってしまった。
ヨルテンは、その土台を再び基礎にして、簡易食堂兼作業小屋を建て直している。
「ヨルテン。無理を言って済まんな」
ドルマは、屋根板を張る作業をしているヨルテンを見上げて、声をかける。
簡易食堂は、すでに床板が張られ、壁や小窓も出来上がっている。
ヨルテンは、最後の仕上げに取り掛かっており、あと少しで完成する。
「村長、気にすることはない。これは、俺の仕事場にするものだ。遅かれ早かれ、建てていたさ」
ヨルテンは、そうドルマに答えている間にも、金槌を振るって金釘を打ちつけ、屋根板を梁に固定していく。
「そう言ってくれると、助かる。ヒュレイの方は、あともう少しでできる。先に、机や椅子を運び入れても構わんか?」
「あぁ。こっちは、気にしないでくれ。中は、もうできている。いつでも、使い始めてくれていいぞ」
「わかった。手の空いている者に、準備させよう」
ドルマは、周囲を見渡し、廃材で遊んでいるコウザとブエンを見つける。
「お前たち。済まんが、手伝いをしてくれんか?」
「何をすればいいの?」
「いいよ~」
コウザとブエンが、無邪気な笑顔を浮かべて、ドルマに近寄ってくる。
「あの木の根元にある机や椅子を、この小屋の中に運んでくれ」
ドルマが指差す先には、中央広場の端にある大きな木があり、ブーキやオンジらをもてなしたときに設置した机や椅子が置かれている。
「僕、頑張る」
「うん、分かった~」
コウザは、ドルマに力こぶを見せて頷き、ブエンは、やることができて嬉しいのか、兄の後を笑いながらついていく。
二人を見送ったドルマは、先に家の中に入ったダイザたちのもとへ向かう。
すると、フレイを背中に乗せたボーと、オンジが中央広場の中へ駆け込んでくる。
「村長。お父さんと兄さんたちは、どこ?」
「おぉ、待っておったぞ。こっちじゃ。ついてこい。オンジ殿も、こちらへ」
ドルマは、フレイとオンジを手招きする。
フレイは、ボーの背中からひらりと跳び降り、ボーに感謝を伝えたあとに聞く。
「ボーは、どうするの?」
フレイの問いに、ボーはそっけなく首を横に振り、尻尾でフレイを優しく包んだ後、セキガ山の方へ去っていく。
「ボー、ありがとうね」
ボーは、振り向きもせずに、尻尾を一度だけ振ってフレイに応える。
「ボー殿は、優しい方ですね」
「うん」
フレイは、自分が誉められたかのように、にこっと笑い、オンジを見上げる。
そんなフレイに、オンジはくすりと笑い返し、ドルマの方へ頭を下げる。
「メリングたちが、お邪魔しています」
「なに、構わんよ。皆は、土間の方にいるはずじゃ。フレイは、先にダイザたちに会ってくるがよい」
「うん!」
フレイは、嬉しそうに大きく頷いて、ドルマの家の中に駆け込んでいく。
ドルマは、はははっと陽気に笑った後、オンジに向き直る。
「オンジ殿。先ほどの金雷は、フレイの仕業じゃな?」
「はい。お気づきになられましたか?」
「まぁの……」
フレイの魔力波長は、今やオセイアのものに同調している。
セキガ山の中腹で爆雷が生じた際、ドルマは、その魔力波を感知した。
「フレイは、何とか金雷を修得できたようじゃの。オンジ殿には、フレイに貴重な金雷を授け渡してくれて、感謝しかない。ありがとうの」
「いえ……。私も、お力になれて嬉しく思います。フレイ殿は、この先、大いなる飛躍を遂げられる方ですね」
オンジは、まだ幼きフレイに敬意を抱き始めており、モールを超える逸材になるのではないかと想像を膨らませている。
ドルマも、オンジと似たような感想を持っている。
「オンジ殿。あれは、大陸に憧れを抱いておる」
「はい。それは、薄々承知しております」
フレイは、オンジが東大陸や雷龍キシアの話をしたとき、目をキラキラと輝かせていた。
それは、まだ見ぬ世界を夢見る少年の顔であった。
「じゃから、いずれはこの村を出て、大陸へ渡ることになる。そのとき、お主たちに、陰ながら助けてもらえると、有り難い」
「はい。今の段階で、誰を付けるとは明言ができません。しかし、助力は仕ります」
オンジは、ドルマにゼルスト国で通用している敬礼をし、ドルマの意向に沿うことを誓う。
「それで、構わん。なんなら、マティアスのもとへ送ってくれてもよい。あやつには、多くの国を見せてやりたいでの」
モールの話では、今、マティアスはダルドレット帝国にいるはずである。
ダルドレット帝国は、中央大陸の東南にあり、西北にあるディスガルドとは真反対の位置にある。
フレイをマティアスのもとに送れば、中央大陸を斜めに横断することができる。
そうすれば、中央大陸の主要な国々を通過することができ、その道中に様々な経験を積ませることができる。
「期待が大きいのですね」
「はははっ。フレイの素直な性格と才能故かの……」
ドルマは、一頻り笑った後、オンジを家の中へ迎え入れ、土間にいる皆のもとへ向かう。
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