ロシュフォール物語

正輝 知

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凍雪国編第3章

第100話 ダイザたちの帰還1

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 ボーキョウからミショウ村までは、飛竜が気流に乗れば、僅か5時間ほどで到着できる。
 ブーキたちは、無事にダイザたちを見つけ出し、ミショウ村まで連れ帰ることに成功した。
 ミショウ村に帰ってきたのは、ダイザとテム、アロン、ジル、キントである。
 バージは、サイバジ族の集落リポウズを目指して、トセンから東進中であり、ジョティルとともに、国都を目指している。

「無事によく帰ってきた」

 ダイザたちを河川敷で出迎えたドルマは、皆の変わりない姿を見て安堵する。

「村長。状況は、いかがですか?」

「うむ。ハイトとマルザ、デュークが犠牲となった。村も、この有り様じゃ」

 ドルマは、破壊された村の結界柱を示し、中央広場一帯が壊滅している現状を嘆く。
 ダイザは、生まれ故郷の惨状に強い悲しみを抱く。

「まさか、ここまでとは……」

「すまんな。油断したわい。結界に頼りすぎたでの」

 ドルマは、己の見通しが甘かったことを悔やむ。
 村には、大陸ではすでに失われた魔方陣魔法が発動され、その強力な魔法結界で覆われていた。
 だが、それ以上の魔法技術で作成されたベアトリス八名剣に対しては無力であった。

「あなた……」

 ダイザは、近寄ってきたロナリアやリリア、ニアの無事を確認し、ほっとする。
 しかし、そこには、フレイの姿はない。

「皆は、無事だな。フレイは、どうした?」

「フレイは、モールさんのところへ行ったままよ。大丈夫、フレイも無事よ」

「そうか……」

 ダイザは、ロナリアたちを順番に抱き締めていく。
 そこに、アロンやジルが加わり、皆が無事を喜び合う。

「ブーキよ。ようやってくれた」

 ドルマは、迅速に目的を果たしてくれたブーキを労う。
 ブーキは、ダイザたち家族の再会を心から喜び、任務を完遂した達成感に満ち溢れる。

「はい。宗主様たちの機転もあり、ボーキョウでお会いできました」

「ボーキョウ?」

 ボーキョウは、国都へ向かう途中にはない。
 島から対岸に渡れば、リポウズを経由するのが、通常のルートである。

「村長。俺たちがボーキョウにいたのは、島の対岸で獣装兵に会ったことが原因だ」

 飛竜隊に感謝の礼を述べ終えたテムが、ドルマに近づき、声をかける。

「獣装兵にか?」

 ドルマは、クウザミ族がトセンという新たな集落を築いたことも、獣装兵という特殊な部隊を作り上げたことも知っている。

「あぁ。俺たちが狩りをしている途中にばったりと出会い、それでトセンへ招かれた。その翌朝……、といっても昨日の朝のことだが、ここの襲撃を知らされたんだよ」

「誰にじゃ?」

「ボーキョウの魔嶽鋒だな」

「そうか……」

(この村を常時見張っているボーキョウのクウザミ族が、トセンへ知らせたところ、そこにダイザたちがいたのであろう)

 ドルマは、テムの説明から、ダイザたちがボーキョウへ向かった理由を大まかであるが理解する。

「ところで、バージはどうしたんじゃ? ボーキョウに残ったのか?」

 ドルマは、先程からバージの姿が見えないことに不安を感じていた。
 だが、ダイザやテムも平然としており、バージの身に危機が迫った様子がないことは察している。

「バージは、リポウズへ向かったよ。俺たちが村へ帰れるように、飛竜隊を呼びに行った」

「行き違いになったのか?」

「結果的には、そうなる。だが、バージは、その後、国都へ向かう。ジョティルと一緒にな」

「ふむ。教練師の任務を果たすのじゃな」

 ドルマは、意外なところで義理堅さを見せたバージに感心する。

「それもあるが、バージは、襲撃の裏を取りに行った」

「ほぅ……。バージは、よく気が回るようになったのじゃな」

「あいつはあいつで、自分にできることを必死に考えたんだろうよ」

 テムは、バージが言い出したことに理解を示している。
 ミショウ村が襲撃されたのであれば、国都を調査しにいく人員が必要である。
 まして、国主からの依頼後に襲われたとあっては、なおさら国都の関与を疑いたくなる。

「何はともあれ、バージは無事なのじゃな?」

「あぁ、心配ない。ジョティルのほかにも、魔嶽鋒のビーバ、獣装兵のイザックらが護衛として随行している」

 テムは、バージの実力を認めている。
 大陸では、バージを倒せる者はそうそういない。
 わざわざ、ビーバたちが護衛に付かなくても問題ないぐらいである。

「ビーバ? イザック? わしの知らん兵たちじゃの」

「俺も、初めて会ったぞ」

「どんな兵たちじゃった?」

 ドルマは、魔嶽鋒と獣装兵の実力に興味を抱く。

「ビーバの力は、まぁまぁだったな。だが、ほかの者たちは、まだまだ成長途中だ。この村に来ることはできない」

「そうか……」

 ドルマは、クウザミ族の若者が力をつけてくれることを望む。
 しかし、魔素の濃いこの島へは、相当な修練を積まなければ来ることができない。
 この村へ移住したいと願うクウザミ族が、この村へ来るのは、まだまだ先のことになりそうである。
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