322 / 492
凍雪国編第3章
第98話 隔絶結界の破壊1
しおりを挟む
オンジは、無邪気に喜んでいるフレイを眺め、末恐ろしさを感じる一方、どこまで成長するのか見届けてみたい思いも抱く。
(もしかして……、紅寿様がこの子に目を掛けている理由が、これなのか?)
モールは、本来秘匿されるべき金雷を、フレイに教えるようにオンジへ催促した。
オンジも、最初は断るつもりでいたが、久しぶりに再会したモールの頼みを無下にはできなかった。
今思えば、それもすべては、フレイの才能を開花させたい一心であったと、思えなくもない。
「フレイ殿」
「うん? 何?」
フレイは、雷球を剣のように細長く引き伸ばそうと、一生懸命に両手で引っ張っている。
しかし、雷球は、楕円まではいくものの、それ以上は伸びないままである。
「金雷属性は、基本となる魔力波長さえ覚えてしまえば、あとは、剣や槍、矢などのイメージを重ねるだけで変形させることができます」
「へぇ~」
「この点は、ほかの属性魔法と大して差はありません」
「うん」
属性魔法は、主に基本となる魔法名に、形状を表す魔法名を加えることで形を変えることが出来る。
また、ブラストやストーム、ヘルなどの魔法名を追加することで、威力を上げたり、広範囲魔法に変えたりすることができる。
金雷属性の魔法も、サンダーボルトの魔法名にソードやスピアなどの魔法名を加えると、武器の形になり、ストームやヘルを加えることで、広範囲魔法となる。
もっとも、単に魔法名を加えたところで、それに見合う技量と魔力量がなければ、発動せず、フレイのように煙だけを生み出したり、暴発を招いたりする結果となる。
「ですから、剣はソード、槍はスピアやジャベリン、矢はアローなどと、サンダーボルトの後に追加して唱えればいいのです」
オンジは、フレイから一歩下がって、両手を左右に開く。
『thunderbolt javelin』
『thunderbolt shield』
バリバリバリバリバリッ
オンジの右手には、金雷の投槍が生まれ、左手には金雷の盾が生じる。
「うわっ!」
フレイは、オンジが魔法を発動させた瞬間、どんっという魔力波の衝撃を浴び、少しよろける。
フレイは、その衝撃により、生み出していた雷球を消滅させてしまう。
オンジの両手からは、圧倒的な魔力波長が生み出されており、それぞれの金雷魔法が桁違いの威力を持っていることが分かる。
「これが、金雷の刀姫と呼ばれる所以です。いつもなら、背中の長刀に金雷を纏わせますが、この形でも闘います」
「す、すごいね……」
フレイは、オンジの金雷の眩しさに目を細める。
フレイが生み出した金雷とは、光量や魔力波の強さにおいて段違いである。
オンジは、にこりと微笑んだあと、すっと金雷魔法を解除する。
結界内が一瞬にして静まり返り、オンジは、呆けたように見つめてくるフレイに優しく微笑みかける。
「私の講義は、これでお終いです。あとは、フレイ殿が精進され、金雷を使いこなすことを期待しています」
「う、うん……」
生返事を返したフレイは、オンジから受けた魔力波に驚いた余韻が尾を引いている。
「さて、それでは、ここから出ることを考えますか?」
モールが張った結界が消えるまでには、あと30分ほどの時間が要る。
オンジは、それまでどうするか思案し出す。
フレイは、どすんっと地面に腰を下ろしてしまい、疲れた顔でオンジを見上げる。
「モールさんが、声を掛けてくれるんじゃないの?」
「そう期待したいところですが、まだ声を掛けてくれませんね」
いつものモールなら、オンジが金雷を教え終わった段階で声を掛けてくるか、結界を解いてくれるはずである。
しかし、しばらく待っていても、その兆しは一向に現れない。
「ねぇ……。これって、破れないの?」
フレイは、地面に胡坐をかいて座り、天井付近を見上げて呟く。
「私では、おそらく無理でしょうね。最初に試しましたが、切り裂ける感覚は得られませんでした」
「ふ~ん……」
フレイは、結界に閉じ込められた気がしてきて、少し不機嫌になる。
「モールさ~ん!」
フレイは、無駄だとは分かりつつも大声を出し、外のモールに呼びかける。
「終わったよ~! 早く出して~!」
(もしかして……、紅寿様がこの子に目を掛けている理由が、これなのか?)
モールは、本来秘匿されるべき金雷を、フレイに教えるようにオンジへ催促した。
オンジも、最初は断るつもりでいたが、久しぶりに再会したモールの頼みを無下にはできなかった。
今思えば、それもすべては、フレイの才能を開花させたい一心であったと、思えなくもない。
「フレイ殿」
「うん? 何?」
フレイは、雷球を剣のように細長く引き伸ばそうと、一生懸命に両手で引っ張っている。
しかし、雷球は、楕円まではいくものの、それ以上は伸びないままである。
「金雷属性は、基本となる魔力波長さえ覚えてしまえば、あとは、剣や槍、矢などのイメージを重ねるだけで変形させることができます」
「へぇ~」
「この点は、ほかの属性魔法と大して差はありません」
「うん」
属性魔法は、主に基本となる魔法名に、形状を表す魔法名を加えることで形を変えることが出来る。
また、ブラストやストーム、ヘルなどの魔法名を追加することで、威力を上げたり、広範囲魔法に変えたりすることができる。
金雷属性の魔法も、サンダーボルトの魔法名にソードやスピアなどの魔法名を加えると、武器の形になり、ストームやヘルを加えることで、広範囲魔法となる。
もっとも、単に魔法名を加えたところで、それに見合う技量と魔力量がなければ、発動せず、フレイのように煙だけを生み出したり、暴発を招いたりする結果となる。
「ですから、剣はソード、槍はスピアやジャベリン、矢はアローなどと、サンダーボルトの後に追加して唱えればいいのです」
オンジは、フレイから一歩下がって、両手を左右に開く。
『thunderbolt javelin』
『thunderbolt shield』
バリバリバリバリバリッ
オンジの右手には、金雷の投槍が生まれ、左手には金雷の盾が生じる。
「うわっ!」
フレイは、オンジが魔法を発動させた瞬間、どんっという魔力波の衝撃を浴び、少しよろける。
フレイは、その衝撃により、生み出していた雷球を消滅させてしまう。
オンジの両手からは、圧倒的な魔力波長が生み出されており、それぞれの金雷魔法が桁違いの威力を持っていることが分かる。
「これが、金雷の刀姫と呼ばれる所以です。いつもなら、背中の長刀に金雷を纏わせますが、この形でも闘います」
「す、すごいね……」
フレイは、オンジの金雷の眩しさに目を細める。
フレイが生み出した金雷とは、光量や魔力波の強さにおいて段違いである。
オンジは、にこりと微笑んだあと、すっと金雷魔法を解除する。
結界内が一瞬にして静まり返り、オンジは、呆けたように見つめてくるフレイに優しく微笑みかける。
「私の講義は、これでお終いです。あとは、フレイ殿が精進され、金雷を使いこなすことを期待しています」
「う、うん……」
生返事を返したフレイは、オンジから受けた魔力波に驚いた余韻が尾を引いている。
「さて、それでは、ここから出ることを考えますか?」
モールが張った結界が消えるまでには、あと30分ほどの時間が要る。
オンジは、それまでどうするか思案し出す。
フレイは、どすんっと地面に腰を下ろしてしまい、疲れた顔でオンジを見上げる。
「モールさんが、声を掛けてくれるんじゃないの?」
「そう期待したいところですが、まだ声を掛けてくれませんね」
いつものモールなら、オンジが金雷を教え終わった段階で声を掛けてくるか、結界を解いてくれるはずである。
しかし、しばらく待っていても、その兆しは一向に現れない。
「ねぇ……。これって、破れないの?」
フレイは、地面に胡坐をかいて座り、天井付近を見上げて呟く。
「私では、おそらく無理でしょうね。最初に試しましたが、切り裂ける感覚は得られませんでした」
「ふ~ん……」
フレイは、結界に閉じ込められた気がしてきて、少し不機嫌になる。
「モールさ~ん!」
フレイは、無駄だとは分かりつつも大声を出し、外のモールに呼びかける。
「終わったよ~! 早く出して~!」
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢ですが最強ですよ??
鈴の音
ファンタジー
乙女ゲームでありながら戦闘ゲームでもあるこの世界の悪役令嬢である私、前世の記憶があります。
で??ヒロインを怖がるかって?ありえないw
ここはゲームじゃないですからね!しかも、私ゲームと違って何故か魂がすごく特別らしく、全属性持ちの神と精霊の愛し子なのですよ。
だからなにかあっても死なないから怖くないのでしてよw
主人公最強系の話です。
苦手な方はバックで!
電光石火の雷術師~聖剣で貫かれ奈落で覚醒しましたが、それはそれとして勇者は自首して下さい~
にゃーにゃ
ファンタジー
「ありとあらゆる魔獣の動きを完全に停止させることしかできない無能は追放だッ!」
クロノは魔獣のからだに流れる電気を支配するユニークスキル雷術を使いこなす冒険者。
そんなクロノを勇者はカッとなった勢いで聖剣で刺し貫き、奈落の底に放り投げた。
「いきなり殺しとか、正気か?」死の淵で雷術が覚醒、体内の電気をあやつり身体を超強化する最強スキルに覚醒する。
覚醒した雷術で魔獣をケチらし奈落最深部へ。 そこで死にかけの吸血姫の少女を救い、びっくりするほどホレられる。一方、勇者パーティーは雷術師クロノを失ったことでドンドン迷走していくのであった。
※本作は主人公の尽力で最終的には『勇者サイド』も救いのある物語となっております。
ブラック・スワン ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~
碧
ファンタジー
「詰んだ…」遠い眼をして呟いた4歳の夏、カイザーはここが乙女ゲーム『亡国のレガリアと王国の秘宝』の世界だと思い出す。ゲームの俺様攻略対象者と我儘悪役令嬢の兄として転生した『無能』なモブが、ブラコン&シスコンへと華麗なるジョブチェンジを遂げモブの壁を愛と努力でぶち破る!これは優雅な白鳥ならぬ黒鳥の皮を被った彼が、無自覚に周りを誑しこんだりしながら奮闘しつつ総愛され(慕われ)する物語。生まれ持った美貌と頭脳・身体能力に努力を重ね、財力・身分と全てを活かし悪役令嬢ルート阻止に励むカイザーだがある日謎の能力が覚醒して…?!更にはそのミステリアス超絶美形っぷりから隠しキャラ扱いされたり、様々な勘違いにも拍車がかかり…。鉄壁の微笑みの裏で心の中の独り言と突っ込みが炸裂する彼の日常。(一話は短め設定です)
王女の夢見た世界への旅路
ライ
ファンタジー
侍女を助けるために幼い王女は、己が全てをかけて回復魔術を使用した。
無茶な魔術の使用による代償で魔力の成長が阻害されるが、代わりに前世の記憶を思い出す。
王族でありながら貴族の中でも少ない魔力しか持てず、王族の中で孤立した王女は、理想と夢をかなえるために行動を起こしていく。
これは、彼女が夢と理想を求めて自由に生きる旅路の物語。
※小説家になろう様にも投稿しています。
ある日仕事帰りに神様の手違いがあったが無事に転移させて貰いました。
いくみ
ファンタジー
寝てたら起こされて目を開けたら知らない場所で神様??が、君は死んだと告げられる。そして神様が、管理する世界(マジョル)に転生か転移しないかと提案され、キターファンタジーとガッツポーズする。
成宮暁彦は独身、サラリーマンだった
アラサー間近パットしない容姿で、プチオタ、完全独り身爆走中。そんな暁彦が神様に願ったのは、あり得ない位のチートの数々、神様に無理難題を言い困らせ
スキルやらetcを貰い転移し、冒険しながらスローライフを目指して楽しく暮らす場を探すお話になると?思います。
なにぶん、素人が書くお話なので
疑問やら、文章が読みにくいかも知れませんが、暖かい目でお読み頂けたらと思います。
あと、とりあえずR15指定にさせて頂きます。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
聖女の姉ですが、宰相閣下は無能な妹より私がお好きなようですよ?
渡邊 香梨
ファンタジー
コミックシーモア電子コミック大賞2025ノミネート! 11/30まで投票宜しくお願いします……!m(_ _)m
――小説3巻&コミックス1巻大好評発売中!――【旧題:聖女の姉ですが、国外逃亡します!~妹のお守りをするくらいなら、腹黒宰相サマと駆け落ちします!~】
12.20/05.02 ファンタジー小説ランキング1位有難うございます!
双子の妹ばかりを優先させる家族から離れて大学へ進学、待望の一人暮らしを始めた女子大生・十河怜菜(そがわ れいな)は、ある日突然、異世界へと召喚された。
召喚させたのは、双子の妹である舞菜(まな)で、召喚された先は、乙女ゲーム「蘇芳戦記」の中の世界。
国同士を繋ぐ「転移扉」を守護する「聖女」として、舞菜は召喚されたものの、守護魔力はともかく、聖女として国内貴族や各国上層部と、社交が出来るようなスキルも知識もなく、また、それを会得するための努力をするつもりもなかったために、日本にいた頃の様に、自分の代理(スペア)として、怜菜を同じ世界へと召喚させたのだ。
妹のお守りは、もうごめん――。
全てにおいて妹優先だった生活から、ようやく抜け出せたのに、再び妹のお守りなどと、冗談じゃない。
「宰相閣下、私と駆け落ちしましょう」
内心で激怒していた怜菜は、日本同様に、ここでも、妹の軛(くびき)から逃れるための算段を立て始めた――。
※ R15(キスよりちょっとだけ先)が入る章には☆を入れました。
【近況ボードに書籍化についてや、参考資料等掲載中です。宜しければそちらもご参照下さいませ】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる