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凍雪国編第3章
第88話 フレイの差し入れ2
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メリングは、内心驚いている。
だが、平静を装い、フレイという少年を見つめる。
フレイからは、オセイアの魔力波長が絶えず漏れ出ており、体内で循環している魔力量も尋常ではない。
「紅寿様。ミショウ村の子どもたちは、皆、このような感じなのですか?」
「いいや、ごく普通じゃよ」
モールは、フレイから籠を受け取り、中身を縁側に広げていく。
フレイが差し入れてくれた野菜は、どれも瑞々しく、さっき採ったばかりであることが分かる。
「そうですか……?」
メリングは、今一つ腑に落ちない。
魔素の濃い島で育つと、このような異常な魔力量を持つようになるのではないかと勘繰ってしまう。
実際、フレイに宿る魔力量は、メリングのものより桁違いに多く、大陸でもこれほどの魔力量の持ち主は数人しかいない。
メリングは、竈から離れ、縁側にいるモールとフレイのもとまで歩いていく。
そして、フレイの前でしゃがみこみ、フレイと目線を合わせて、握手の手を差し出す。
「少年よ、すまない。不躾な視線を送ってしまった。私は、メリングという。よろしくな」
「う、うん……。よ、よろしくお願いします」
フレイは、島外の人との初めての接触に、多少どぎまぎしながら、メリングの手を握り返す。
メリングの手のひらからは、圧倒的な魔力を感じ、フレイは、目を見開く。
モールに比べれば、魔力量は遥かに劣るが、洗練され研ぎ澄まされた魔力波長は、村の人にはない力強さがある。
「どうした?」
メリングは、驚きを表したフレイに軽い疑問を抱く。
フレイは、離された手をちらりと見てから、首を横に振る。
「う、ううん。外の人は、初めてだから……」
フレイは、失礼にならないように、戸惑いながらも、笑みを浮かべる。
それをそばで見ていたモールは、にやりと笑う。
「メリングは、隻眼の水禍という二つ名を持っておる。お主が感じたのは、強き者だけが持つ洗練された魔力じゃよ」
モールは、フレイが何を感じとったのか、フレイの体内に流れる魔力を見て理解する。
(今、フレイは、メリングから放たれる魔力波に感じるものがあったはずじゃ)
フレイは、己の内にある魔力を掴んでから、魔力の流れに敏感になっている。
「二つ名って、何?」
フレイは、大陸での慣わしに疎い。
二つ名という言葉を聞いたこともなければ、水禍という言葉の意味も分からない。
「二つ名とは、称号みたいなもんじゃな。強き者は、尊敬や憧憬の対象となり、人となりを敬意を込めて言い表される。メリングの場合は、隻眼の水禍と呼ばれ、水魔法に秀でた者であるという称号じゃな」
「へぇ~」
それを聞いて、フレイも、目差しに憧れを宿し、メリングをまじまじと見つめる。
端正な顔立ちには不釣り合いな眼帯が目を引く。
だが、眼帯をしていない目には優しさがあり、女性らしい微笑みを浮かべている。
均整の取れた体には、しなやかさがあり、技と速さを武器に戦うことが見て取れる。
「紅寿様。そんな紹介の仕方は、なんだか気恥ずかしいです」
「別に隠すことではないじゃろ? それよりも、オンジとガンドが戻ってくるぞ」
モールは、先程フレイが登ってきた山道を指差す。
しかし、そこには誰もおらず、風にそよぐ木々がかさかさと音を立てるだけである。
「誰もいないよ?」
フレイは、不思議そうに思い、モールを仰ぎ見る。
「はははっ。フレイは、魔力感知がまだまだじゃな。メリングは、もう気がついておるぞ」
「ええっ!? そうなの?」
フレイは驚いて、メリングの方へ振り返る。
メリングは、フレイと話している間も周囲の気配を探っており、二人の接近に気がついている。
「ふふふっ。フレイ君は、もっと感覚を研ぎ澄まさないとね」
「はははっ。フレイよ、言われておるぞ。もっと魔力を意識せんといかんな」
「う、うん……」
フレイは、優しく包み込むように笑うメリングを見て、顔を赤らめる。
未熟さを指摘されての恥ずかしさもあるが、村の人にはない魅力に触れ、眩しさを覚える。
フレイがそんなことを考えていると、山道からオンジとガンドが、山菜や小魚を抱えて現れる。
フレイには、オンジとガンドの姿を確認しても、まだ二人の魔力が分からない。
今のところ、直接触れるのでなければ、魔力を感知できないようである。
だが、平静を装い、フレイという少年を見つめる。
フレイからは、オセイアの魔力波長が絶えず漏れ出ており、体内で循環している魔力量も尋常ではない。
「紅寿様。ミショウ村の子どもたちは、皆、このような感じなのですか?」
「いいや、ごく普通じゃよ」
モールは、フレイから籠を受け取り、中身を縁側に広げていく。
フレイが差し入れてくれた野菜は、どれも瑞々しく、さっき採ったばかりであることが分かる。
「そうですか……?」
メリングは、今一つ腑に落ちない。
魔素の濃い島で育つと、このような異常な魔力量を持つようになるのではないかと勘繰ってしまう。
実際、フレイに宿る魔力量は、メリングのものより桁違いに多く、大陸でもこれほどの魔力量の持ち主は数人しかいない。
メリングは、竈から離れ、縁側にいるモールとフレイのもとまで歩いていく。
そして、フレイの前でしゃがみこみ、フレイと目線を合わせて、握手の手を差し出す。
「少年よ、すまない。不躾な視線を送ってしまった。私は、メリングという。よろしくな」
「う、うん……。よ、よろしくお願いします」
フレイは、島外の人との初めての接触に、多少どぎまぎしながら、メリングの手を握り返す。
メリングの手のひらからは、圧倒的な魔力を感じ、フレイは、目を見開く。
モールに比べれば、魔力量は遥かに劣るが、洗練され研ぎ澄まされた魔力波長は、村の人にはない力強さがある。
「どうした?」
メリングは、驚きを表したフレイに軽い疑問を抱く。
フレイは、離された手をちらりと見てから、首を横に振る。
「う、ううん。外の人は、初めてだから……」
フレイは、失礼にならないように、戸惑いながらも、笑みを浮かべる。
それをそばで見ていたモールは、にやりと笑う。
「メリングは、隻眼の水禍という二つ名を持っておる。お主が感じたのは、強き者だけが持つ洗練された魔力じゃよ」
モールは、フレイが何を感じとったのか、フレイの体内に流れる魔力を見て理解する。
(今、フレイは、メリングから放たれる魔力波に感じるものがあったはずじゃ)
フレイは、己の内にある魔力を掴んでから、魔力の流れに敏感になっている。
「二つ名って、何?」
フレイは、大陸での慣わしに疎い。
二つ名という言葉を聞いたこともなければ、水禍という言葉の意味も分からない。
「二つ名とは、称号みたいなもんじゃな。強き者は、尊敬や憧憬の対象となり、人となりを敬意を込めて言い表される。メリングの場合は、隻眼の水禍と呼ばれ、水魔法に秀でた者であるという称号じゃな」
「へぇ~」
それを聞いて、フレイも、目差しに憧れを宿し、メリングをまじまじと見つめる。
端正な顔立ちには不釣り合いな眼帯が目を引く。
だが、眼帯をしていない目には優しさがあり、女性らしい微笑みを浮かべている。
均整の取れた体には、しなやかさがあり、技と速さを武器に戦うことが見て取れる。
「紅寿様。そんな紹介の仕方は、なんだか気恥ずかしいです」
「別に隠すことではないじゃろ? それよりも、オンジとガンドが戻ってくるぞ」
モールは、先程フレイが登ってきた山道を指差す。
しかし、そこには誰もおらず、風にそよぐ木々がかさかさと音を立てるだけである。
「誰もいないよ?」
フレイは、不思議そうに思い、モールを仰ぎ見る。
「はははっ。フレイは、魔力感知がまだまだじゃな。メリングは、もう気がついておるぞ」
「ええっ!? そうなの?」
フレイは驚いて、メリングの方へ振り返る。
メリングは、フレイと話している間も周囲の気配を探っており、二人の接近に気がついている。
「ふふふっ。フレイ君は、もっと感覚を研ぎ澄まさないとね」
「はははっ。フレイよ、言われておるぞ。もっと魔力を意識せんといかんな」
「う、うん……」
フレイは、優しく包み込むように笑うメリングを見て、顔を赤らめる。
未熟さを指摘されての恥ずかしさもあるが、村の人にはない魅力に触れ、眩しさを覚える。
フレイがそんなことを考えていると、山道からオンジとガンドが、山菜や小魚を抱えて現れる。
フレイには、オンジとガンドの姿を確認しても、まだ二人の魔力が分からない。
今のところ、直接触れるのでなければ、魔力を感知できないようである。
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