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凍雪国編第3章
第65話 宗主国と部族2
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ダイザは、ディスガルド北半島に点在する各部族から、宗主国の宗主として崇め奉られている。
ダイザがこの立場に就いているのは、ダイザの生まれが大きく関係している。
「私は、ミショウ村の中でも、ヤグラムの血を色濃く受け継いでいる」
「そうなの?」
アロンは、思わず聞き返す。
これまで、アロンとジルは、父親の生まれについて、深く聞いたことはない。
ダイザとロナリアの両親は、アロンとジルが生まれる前に皆が他界している。
そのため、二人にとっての肉親とは、ダイザとロナリア、リリア、ニア、フレイだけである。
ただ、ミショウ村の者は、皆が家族同然に暮らしているため、特に寂しさを感じたことはない。
「あぁ。私の曾祖父は、ヤグラムの次男バイデンだ。だから、私は、ヤグラムの玄孫になり、ロシュフォール皇家の血を引く直孫に当たる」
ヤグラムは、生涯で四人の子どもを残している。
長男ケーシュは、ヤグラムがディスガルドへ逃避する途中、短命族の襲撃からヤグラムを守って犠牲になった。
長女ユザクは、ヤグラムを匿ったバルト民へと嫁ぎ、ヤグラムとバルトの仲立ちとなっている。
次男バイデンと次女ユルは、ヤグラムの死後、大陸から島へと渡り、ミショウ村を切り開いた。
ダイザは、その次男バイデンの曾孫で、ヤグラムの玄孫になる。
そのため、ダイザは、ヤグラムの血を色濃く受け継ぐ男子である。
なお、ロナリアは、ヤグラムの次女ユルの血を色濃く継ぐ女子である。
そのため、ダイザとロナリアの子どもたちであるアロン、リリア、ジル、ニア、フレイは、ダイザやロナリアよりもヤグラムの血が濃い。
宗主国を構成する各部族は、このうち男の兄弟の中から、次期宗主を迎えるつもりである。
「各部族は、私のことを宗主として崇め、宗主国を代表する者だと祭り上げている」
「勝手に、崇めているの?」
アロンの疑問は、当然である。
国都にいる国主は、自らがその地位に就くことを認めて就いている。
また、大陸にある各国の長も、周りが勝手に就かせたのではない。
宗主国の宗主も、ダイザ自らが就くべきなのである。
「私の気持ちから言えば、そうなる。だが、各部族にしてみれば、きちんと族長会議で承認したことで、宗主は私をおいてほかにいないらしい」
「ふ~ん……。よく分からないけど、テムさんやバージさんだと駄目なの?」
「私は、それでも構わないと思っている。現に、テムさんやバージにも、ヤグラムの血は流れているからな。だが、部族長たちは、血筋を重んじ、男系の直孫ということにこだわっている」
「断れないんだね?」
「まぁ……、そういうことだな」
ダイザは、今ではもう諦めに近い境地にいる。
実際に、ダイザは、これまで何度も宗主を辞退しようと動いている。
しかし、それらの行動は、すべて徒労に終わっており、各部族長の意志を変えさせるには至っていない。
「それって……、もしかして、俺たちも関係してくる?」
アロンは、自分が宗主に就くことがあるかもしれないと想像する。
「勘がいいな」
「なんとなくね……」
アロンは、この話の初めに、ダイザが硬い表情をしたのを見逃していない。
今になって、それは、自分たちの将来に関わってくる話だからだと理解している。
「私が死んだら、アロンに役目が回ってくる。そして、アロンに子がいなければ、ジルがその後を継ぐことになる」
「やっぱり……」
アロンは、ダイザの言葉を聞いて、些かげんなりとする。
アロンは、父親がルイビスたちの対応に困っている姿を見ている。
もし、自分が宗主なら、役目を投げ出していると思う。
だが、ジルは、アロンとは違い、宗主をやってみたそうな顔をして、宗主についてもっと詳しく聞きたがる。
「ところでさ……。父さんは、宗主国の仕事って、何をしているの?」
「はっきり言えば、何もしていない。現に、私はミショウ村から何年も外に出ていないだろう?」
「う、うん……」
ジルは、やや期待を外されて、戸惑ったように頷く。
「宗主の仕事なんて、何もないんだ。あくまでも、宗主は飾り物で、実際には、各部族長が定期的に集まって族長会議を行い、ディスガルド北半島のことや国都との関係性を話し合って決めている」
「ふ~ん……」
ジルは、少しつまらなさそうに返事をする。
「厳密には、宗主国なんて存在していない。また、宗主としての仕事もない。……ただ、各部族は、宗主を崇めているし、部族間の結束を高めるためにも宗主を必要としている」
「なんだか、ややこしいね……」
「おっ。アロンは、分かってくれるか? 私がどれだけ辛い立場にあるのかを……」
ダイザがこの立場に就いているのは、ダイザの生まれが大きく関係している。
「私は、ミショウ村の中でも、ヤグラムの血を色濃く受け継いでいる」
「そうなの?」
アロンは、思わず聞き返す。
これまで、アロンとジルは、父親の生まれについて、深く聞いたことはない。
ダイザとロナリアの両親は、アロンとジルが生まれる前に皆が他界している。
そのため、二人にとっての肉親とは、ダイザとロナリア、リリア、ニア、フレイだけである。
ただ、ミショウ村の者は、皆が家族同然に暮らしているため、特に寂しさを感じたことはない。
「あぁ。私の曾祖父は、ヤグラムの次男バイデンだ。だから、私は、ヤグラムの玄孫になり、ロシュフォール皇家の血を引く直孫に当たる」
ヤグラムは、生涯で四人の子どもを残している。
長男ケーシュは、ヤグラムがディスガルドへ逃避する途中、短命族の襲撃からヤグラムを守って犠牲になった。
長女ユザクは、ヤグラムを匿ったバルト民へと嫁ぎ、ヤグラムとバルトの仲立ちとなっている。
次男バイデンと次女ユルは、ヤグラムの死後、大陸から島へと渡り、ミショウ村を切り開いた。
ダイザは、その次男バイデンの曾孫で、ヤグラムの玄孫になる。
そのため、ダイザは、ヤグラムの血を色濃く受け継ぐ男子である。
なお、ロナリアは、ヤグラムの次女ユルの血を色濃く継ぐ女子である。
そのため、ダイザとロナリアの子どもたちであるアロン、リリア、ジル、ニア、フレイは、ダイザやロナリアよりもヤグラムの血が濃い。
宗主国を構成する各部族は、このうち男の兄弟の中から、次期宗主を迎えるつもりである。
「各部族は、私のことを宗主として崇め、宗主国を代表する者だと祭り上げている」
「勝手に、崇めているの?」
アロンの疑問は、当然である。
国都にいる国主は、自らがその地位に就くことを認めて就いている。
また、大陸にある各国の長も、周りが勝手に就かせたのではない。
宗主国の宗主も、ダイザ自らが就くべきなのである。
「私の気持ちから言えば、そうなる。だが、各部族にしてみれば、きちんと族長会議で承認したことで、宗主は私をおいてほかにいないらしい」
「ふ~ん……。よく分からないけど、テムさんやバージさんだと駄目なの?」
「私は、それでも構わないと思っている。現に、テムさんやバージにも、ヤグラムの血は流れているからな。だが、部族長たちは、血筋を重んじ、男系の直孫ということにこだわっている」
「断れないんだね?」
「まぁ……、そういうことだな」
ダイザは、今ではもう諦めに近い境地にいる。
実際に、ダイザは、これまで何度も宗主を辞退しようと動いている。
しかし、それらの行動は、すべて徒労に終わっており、各部族長の意志を変えさせるには至っていない。
「それって……、もしかして、俺たちも関係してくる?」
アロンは、自分が宗主に就くことがあるかもしれないと想像する。
「勘がいいな」
「なんとなくね……」
アロンは、この話の初めに、ダイザが硬い表情をしたのを見逃していない。
今になって、それは、自分たちの将来に関わってくる話だからだと理解している。
「私が死んだら、アロンに役目が回ってくる。そして、アロンに子がいなければ、ジルがその後を継ぐことになる」
「やっぱり……」
アロンは、ダイザの言葉を聞いて、些かげんなりとする。
アロンは、父親がルイビスたちの対応に困っている姿を見ている。
もし、自分が宗主なら、役目を投げ出していると思う。
だが、ジルは、アロンとは違い、宗主をやってみたそうな顔をして、宗主についてもっと詳しく聞きたがる。
「ところでさ……。父さんは、宗主国の仕事って、何をしているの?」
「はっきり言えば、何もしていない。現に、私はミショウ村から何年も外に出ていないだろう?」
「う、うん……」
ジルは、やや期待を外されて、戸惑ったように頷く。
「宗主の仕事なんて、何もないんだ。あくまでも、宗主は飾り物で、実際には、各部族長が定期的に集まって族長会議を行い、ディスガルド北半島のことや国都との関係性を話し合って決めている」
「ふ~ん……」
ジルは、少しつまらなさそうに返事をする。
「厳密には、宗主国なんて存在していない。また、宗主としての仕事もない。……ただ、各部族は、宗主を崇めているし、部族間の結束を高めるためにも宗主を必要としている」
「なんだか、ややこしいね……」
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