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凍雪国編第3章
第62話 トセンの湯殿3
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「リターナ?」
テムは、意外そうな顔をして、バージを見る。
バージは、先ほどとは違い、真剣な表情をしてテムを見返している。
「リターナが、どうしたんだ?」
「リターナは、この部族の指導者になろうと、無理を重ねています」
バージは、国都で共に過ごしたリターナの様子からは想像できないほど、気を張りつめている姿に驚いていた。
国都でのリターナは、もっと自由に社交的に振舞い、明るい表情をしていた。
「そうか? ほかの獣装兵とも仲良くやっているようだったぞ」
「えぇ。部下との関係性は、悪くはありません。ただ、ルイビス殿からの期待が大きすぎるのか、全てを背負い込もうとしているように見受けられます」
「それは……、上に立つ者であれば、仕方のないことではないか? 部下の命を預かっているのだからな」
テムが見た限り、リターナに不自然なところはない。
あえて言えば、リターナに多少の気負いが見られるものの、獣装兵をよく統率し、信頼を得ている。
「確かに、部下への責任を持つことは当たり前のことです。……ただ、リターナは、その責任感から、指導者とは厳格であるべきだとの意識が強すぎる。現に、このトセンでは、リターナが悩みを打ち明けられる者は見当たりません。おそらく、ボーキョウへ戻ったとしても、リターナが弱みを見せる相手はいないでしょう」
バージは、リターナが悩みや苦しみを自分一人で抱え込んでいるのが気になっている。
テムは、バージの言葉を静かに聞いている。
「おそらく、俺が聞いても、上辺しか話さないでしょう。だから、テムさんにお願いをしたい」
「何をだ?」
「リターナの悩みを聞いてやってください。そして、テムさんから助言を与えてやって欲しい。俺の浅い人生経験からの言葉ではなく、テムさんの重みのある言葉で……」
(バージの人生経験が浅いとは、思わんがな……)
バージとて、すでに150年以上の年月を経ており、短命族よりもよほど長きに渡る人生経験を積んでいる。
(リターナが、バージの言葉を聞かぬのは、バージに近いしいのが原因ではないかな……?)
確かに、テムからすれば、リターナもバージも、まだまだ未熟なところが多い。
特に、リターナは、長命族の血が流れていても、まだ100年ちょっとしか生きていない。
また、トセンの長に就任したのも、ここ最近のことらしい。
「バージの話は、分かった。あとで、俺から話しかけてみよう」
「ありがたい。さすが、テムさん。話が早くて助かる」
「だが、リターナが心を開かないのであれば、俺は、深くは聞かん。その場合は、バージが何とかするのだな」
「それは、仕方がないと諦めます。俺も、ここに長居をするわけではありません。そうなった場合は、あくまでもリターナの問題と割り切ります」
「まぁ、それが正解だろうな。あまり口を出さない方が無難だ。所詮、俺たちは、部外者だからな」
バージとて、その辺りのことはよくわきまえている。
しかし、リターナは、かつて寝食を共にした仲間であるから、力になれるのであれば力になりたいと思ったまでである。
「バージよ……。いっそ、嫁に貰ったら、どうだ?」
テムは、からかいではなく、真面目な顔をしてバージへ問いかける。
バージも、テムの思いが分かったのか、真剣な表情をして答える。
「リターナは、島の魔素の中では暮らせません。また、俺も、ミショウ村以外では暮らせません」
「そうか……」
テムは、あえて「どうしてだ?」とは聞かない。
バージは、ミショウ村の未来を担うつもりであり、宗主のダイザを補佐し続けるつもりである。
テムは、そのことを十分に分かっているため、この話を早々に切り上げるようと腰を上げ、蒸し部屋を出る。
バージも、無言でテムに続き、のぼせてしまった頭と体を冷やすべく、隣の部屋に向かう。
テムは、意外そうな顔をして、バージを見る。
バージは、先ほどとは違い、真剣な表情をしてテムを見返している。
「リターナが、どうしたんだ?」
「リターナは、この部族の指導者になろうと、無理を重ねています」
バージは、国都で共に過ごしたリターナの様子からは想像できないほど、気を張りつめている姿に驚いていた。
国都でのリターナは、もっと自由に社交的に振舞い、明るい表情をしていた。
「そうか? ほかの獣装兵とも仲良くやっているようだったぞ」
「えぇ。部下との関係性は、悪くはありません。ただ、ルイビス殿からの期待が大きすぎるのか、全てを背負い込もうとしているように見受けられます」
「それは……、上に立つ者であれば、仕方のないことではないか? 部下の命を預かっているのだからな」
テムが見た限り、リターナに不自然なところはない。
あえて言えば、リターナに多少の気負いが見られるものの、獣装兵をよく統率し、信頼を得ている。
「確かに、部下への責任を持つことは当たり前のことです。……ただ、リターナは、その責任感から、指導者とは厳格であるべきだとの意識が強すぎる。現に、このトセンでは、リターナが悩みを打ち明けられる者は見当たりません。おそらく、ボーキョウへ戻ったとしても、リターナが弱みを見せる相手はいないでしょう」
バージは、リターナが悩みや苦しみを自分一人で抱え込んでいるのが気になっている。
テムは、バージの言葉を静かに聞いている。
「おそらく、俺が聞いても、上辺しか話さないでしょう。だから、テムさんにお願いをしたい」
「何をだ?」
「リターナの悩みを聞いてやってください。そして、テムさんから助言を与えてやって欲しい。俺の浅い人生経験からの言葉ではなく、テムさんの重みのある言葉で……」
(バージの人生経験が浅いとは、思わんがな……)
バージとて、すでに150年以上の年月を経ており、短命族よりもよほど長きに渡る人生経験を積んでいる。
(リターナが、バージの言葉を聞かぬのは、バージに近いしいのが原因ではないかな……?)
確かに、テムからすれば、リターナもバージも、まだまだ未熟なところが多い。
特に、リターナは、長命族の血が流れていても、まだ100年ちょっとしか生きていない。
また、トセンの長に就任したのも、ここ最近のことらしい。
「バージの話は、分かった。あとで、俺から話しかけてみよう」
「ありがたい。さすが、テムさん。話が早くて助かる」
「だが、リターナが心を開かないのであれば、俺は、深くは聞かん。その場合は、バージが何とかするのだな」
「それは、仕方がないと諦めます。俺も、ここに長居をするわけではありません。そうなった場合は、あくまでもリターナの問題と割り切ります」
「まぁ、それが正解だろうな。あまり口を出さない方が無難だ。所詮、俺たちは、部外者だからな」
バージとて、その辺りのことはよくわきまえている。
しかし、リターナは、かつて寝食を共にした仲間であるから、力になれるのであれば力になりたいと思ったまでである。
「バージよ……。いっそ、嫁に貰ったら、どうだ?」
テムは、からかいではなく、真面目な顔をしてバージへ問いかける。
バージも、テムの思いが分かったのか、真剣な表情をして答える。
「リターナは、島の魔素の中では暮らせません。また、俺も、ミショウ村以外では暮らせません」
「そうか……」
テムは、あえて「どうしてだ?」とは聞かない。
バージは、ミショウ村の未来を担うつもりであり、宗主のダイザを補佐し続けるつもりである。
テムは、そのことを十分に分かっているため、この話を早々に切り上げるようと腰を上げ、蒸し部屋を出る。
バージも、無言でテムに続き、のぼせてしまった頭と体を冷やすべく、隣の部屋に向かう。
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