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凍雪国編第3章
第57話 トセンでの歓待1
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トセンの集落は、ゴンスル地方南方の山岳地帯にあり、山の裾野に築かれている。
トセン村は、豪雪にも耐え得る茅葺き屋根が載った木造住居が車座に建てられ、その中心には馬で駆け回ることができるほど広い空間が設けられている。
村の周囲には、背の高い垣根が巡らされていて、獣の侵入を阻み、馬が逃げ出さないような工夫が施されている。
そして、山麓側の垣根は、一部が大きく村の外側へ突出しており、そこでは、山肌から湧き出る水を利用して、野菜畑が営まれている。
リターナたち獣装兵は、広場を通り、村で一番大きな屋敷へと向かう。
そこは、リターナの住居であり、今はルイビスが留守番をしていて、リターナたちの帰りを待っている。
「遅かったではないか。心配したぞ」
ルイビスは、屋敷の外で皆を待ち構えており、騎馬に乗るリターナへ声をかける。
ルイビスは、白髪の背の高い男であり、筋骨が隆々とした偉丈夫である。
「ルイビス様。お待たせ致しました」
「うむ。狩りは、無事に終えたようだな」
リターナが乗る鞍の後ろには、スノーヘェアが数匹括りつけられており、ほかの者の鞍にも、熊や狼などの獲物が多数括りつけられている。
「はい。……それと、宗主様をお連れ致しました」
「なに? 宗主様だと?」
ルイビスは、リターナが言った言葉を頭の中で反芻したあと、驚きを目元に表して聞き返す。
「どこにいるのだ!?」
ルイビスは、村の入り口の方へ駆け出し、ダイザを出迎えようとする。
「お待ちください! まだ、こちらには、いらしておりませぬ!」
リターナは、慌ててルイビスを追い、馬を走らせ、ルイビスの前に回り込む。
「どういうことだ!?」
ルイビスは、眉根にやや険しさを表して、リターナへ詰め寄る。
リターナは、ルイビスの気勢を反らすかのように、馬をくるりと反転させ、獣装兵の先頭へと戻る。
「ルイビス様。落ち着いてください」
「ぐぬっ!」
ルイビスは、気が逸るが、両拳を握り締め、一度リターナのところまで戻る。
「きちんと説明しろ」
「分かっています。宗主様は、海峡を渡られ、狩りを行っておりました」
「……」
ルイビスは、無言で顎をしゃくり、リターナに続きを促す。
「そこへ、我らが駆けつけ、宗主様を迎え入れました」
リターナは、細かい経緯を省いて、ルイビスに説明する。
特に、ダイザへ攻撃を仕掛けたことまで報告すると、ルイビスの青筋がぶち切れることは明白だからである。
「うむ」
「それが、昨日の夜のことで、宗主様は、今こちらへ向かっております」
「よくやった。……と言いたいが、なぜ、馬に乗って来られない?」
ルイビスは、どうしてダイザを騎乗させなかったのかと眼光を鋭くして問う。
「それが……。宗主様は、お一人ではなく、お連れの方とご一緒でした」
「何人だ?」
「七人です」
「そうか……」
ルイビスは、リターナの答えを聞いて、少し試案する。
(宗主様は、どうして大陸に渡られたのか……?)
ルイビスは、先日、国都からの使者ハイザックがボーキョウを訪れ、国主の要請を携えて来たことを思い出す。
「ふむ。宗主様は、国都へ行かれるおつもりか?」
「はい。そう……、伺っております」
リターナは、神妙な顔をしてルイビスの問いに答える。
「そうか……。では、リターナ。荷物を降ろし、宗主様を出迎えてこい」
「分かりました」
ルイビスは、リターナの後ろに控えるボフトスとネグルを見やる。
「ボフトス、ネグル」
「「はっ!」」
「お主らは、歓迎の用意を整えよ」
「承知! 早速、取りかかります」
「承りました」
ボフトスとネグルは、ルイビスの命に頷き、馬小屋へ向けて駆け出す。
リターナは、クイたちに荷物を降ろすように指示し、残った獣装兵の半分を引き連れて、村の外へと駆け出す。
残り組となったイザックは、ルイビスの前に行き、ダイザ一行の面々について説明を加える。
ルイビスは、イザックの報告にいちいち大仰に反応し、興奮が抑え切れない。
そして、段々と気が急いてきたのか、残った者たちへ荷物を運ばせ、村の者を集めるように指示を出す。
そして、自身は、屋敷の中へと入り、ダイザが到着するまでに、できる限りのもてなしをするため、準備を整え始める。
トセン村は、豪雪にも耐え得る茅葺き屋根が載った木造住居が車座に建てられ、その中心には馬で駆け回ることができるほど広い空間が設けられている。
村の周囲には、背の高い垣根が巡らされていて、獣の侵入を阻み、馬が逃げ出さないような工夫が施されている。
そして、山麓側の垣根は、一部が大きく村の外側へ突出しており、そこでは、山肌から湧き出る水を利用して、野菜畑が営まれている。
リターナたち獣装兵は、広場を通り、村で一番大きな屋敷へと向かう。
そこは、リターナの住居であり、今はルイビスが留守番をしていて、リターナたちの帰りを待っている。
「遅かったではないか。心配したぞ」
ルイビスは、屋敷の外で皆を待ち構えており、騎馬に乗るリターナへ声をかける。
ルイビスは、白髪の背の高い男であり、筋骨が隆々とした偉丈夫である。
「ルイビス様。お待たせ致しました」
「うむ。狩りは、無事に終えたようだな」
リターナが乗る鞍の後ろには、スノーヘェアが数匹括りつけられており、ほかの者の鞍にも、熊や狼などの獲物が多数括りつけられている。
「はい。……それと、宗主様をお連れ致しました」
「なに? 宗主様だと?」
ルイビスは、リターナが言った言葉を頭の中で反芻したあと、驚きを目元に表して聞き返す。
「どこにいるのだ!?」
ルイビスは、村の入り口の方へ駆け出し、ダイザを出迎えようとする。
「お待ちください! まだ、こちらには、いらしておりませぬ!」
リターナは、慌ててルイビスを追い、馬を走らせ、ルイビスの前に回り込む。
「どういうことだ!?」
ルイビスは、眉根にやや険しさを表して、リターナへ詰め寄る。
リターナは、ルイビスの気勢を反らすかのように、馬をくるりと反転させ、獣装兵の先頭へと戻る。
「ルイビス様。落ち着いてください」
「ぐぬっ!」
ルイビスは、気が逸るが、両拳を握り締め、一度リターナのところまで戻る。
「きちんと説明しろ」
「分かっています。宗主様は、海峡を渡られ、狩りを行っておりました」
「……」
ルイビスは、無言で顎をしゃくり、リターナに続きを促す。
「そこへ、我らが駆けつけ、宗主様を迎え入れました」
リターナは、細かい経緯を省いて、ルイビスに説明する。
特に、ダイザへ攻撃を仕掛けたことまで報告すると、ルイビスの青筋がぶち切れることは明白だからである。
「うむ」
「それが、昨日の夜のことで、宗主様は、今こちらへ向かっております」
「よくやった。……と言いたいが、なぜ、馬に乗って来られない?」
ルイビスは、どうしてダイザを騎乗させなかったのかと眼光を鋭くして問う。
「それが……。宗主様は、お一人ではなく、お連れの方とご一緒でした」
「何人だ?」
「七人です」
「そうか……」
ルイビスは、リターナの答えを聞いて、少し試案する。
(宗主様は、どうして大陸に渡られたのか……?)
ルイビスは、先日、国都からの使者ハイザックがボーキョウを訪れ、国主の要請を携えて来たことを思い出す。
「ふむ。宗主様は、国都へ行かれるおつもりか?」
「はい。そう……、伺っております」
リターナは、神妙な顔をしてルイビスの問いに答える。
「そうか……。では、リターナ。荷物を降ろし、宗主様を出迎えてこい」
「分かりました」
ルイビスは、リターナの後ろに控えるボフトスとネグルを見やる。
「ボフトス、ネグル」
「「はっ!」」
「お主らは、歓迎の用意を整えよ」
「承知! 早速、取りかかります」
「承りました」
ボフトスとネグルは、ルイビスの命に頷き、馬小屋へ向けて駆け出す。
リターナは、クイたちに荷物を降ろすように指示し、残った獣装兵の半分を引き連れて、村の外へと駆け出す。
残り組となったイザックは、ルイビスの前に行き、ダイザ一行の面々について説明を加える。
ルイビスは、イザックの報告にいちいち大仰に反応し、興奮が抑え切れない。
そして、段々と気が急いてきたのか、残った者たちへ荷物を運ばせ、村の者を集めるように指示を出す。
そして、自身は、屋敷の中へと入り、ダイザが到着するまでに、できる限りのもてなしをするため、準備を整え始める。
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