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凍雪国編第2章
第111話 未明の出立
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「さて、あんたらは、クスリナとランジェをあたしの治療部屋に運んでおくれ。あと、クスリナの母親を呼んで世話をさせておくれ」
「マルザは、救えんかった。その代わりを、ロナリアに頼むとしよう」
ヒュレイは、ドルマの言葉に静かに頷き、ロナリアに事情を話すために部屋を出る。
メラニアは、少し悲しげな思いを顔に表すが、すぐに元の表情を取り戻し、モールとドルマに告げる。
「今は感傷に浸るときではないね……。各自、やれることを優先してやるよ。ホレイとナートには、夜明け前だが、すぐに出発させておくれ。でないと、手遅れになるからね」
「分かった。わしが、二人の準備を整えよう」
ドルマが、そう言って部屋を出る。
「では、わしは、クスリナを運ぶ。ボーは、ランジェを運んでくれるか?」
「よかろう」
それまで、部屋の隅で静かに見守っていたボーが、モールの頼みを快諾する。
メラニアは、モールとボーを促し、すぐに自身の治療部屋を目指す。
アラインは、母娘の二人で、治療部屋や調剤部屋がある村外れの家に住んでいる。
アラインは、一足先にホレイとナートをその家に連れていき、書棚から古びた薬草書を引っ張り出してくる。
その表紙には、『薬種大全(禁書版)』と記されており、古今東西に渡る薬の原料が詳細に記載されている。
そして、その中には、ハシリドコロの根茎に関する記述があり、その特長が絵柄入りで説明されている。
アラインは、ホレイとナートに、その本を見せながら、ハシリドコロの葉形や背丈、採取する部位などを教える。
また、アラインは、寝室から持ってきた麻布に、ハシリドコロの絵柄を転写魔法で焼き付ける。
「ハシリドコロは、どこに生えているんだ?」
ホレイは、妹のアラインからハシリドコロが正確に転写された麻布を受け取りながら尋ねる。
「湿気の多い谷底かしら。この辺りだと、テラ湖の南岸か、島の西岸にある渓谷が、そうね」
「分かった。テラ湖の南岸なら、昼過ぎには戻ってこれるはずだ。すぐに、出よう」
ホレイは、ナートを促し、メラニアの家を出る。
すると、ドルマがタイミングよくやって来る。
「これを持っていってくれ」
ドルマは、非常食や水筒のほか、体力回復薬、魔力補充用の輝石、救難信号用の煙爆玉が入った麻袋を手渡す。
「ありがとうございます」
「何かあれば、煙爆玉を上げるのじゃぞ」
「はい」
ホレイとナートは、顔を引き締めて答える。
「娘を頼みます」
「うむ。任せておけ」
「兄さん、義姉さん、気をつけてね」
ホレイとナートは、大きく頷き、ドルマとアラインに出立を告げる。
そして、日の出前の薄明かりの中、村の外へと出て、テラ湖の南岸へと急ぐ。
村付近の凍土林は、不気味なほどに静まり返っている。
どの獣も、昨日の魔法の応酬に驚き、遠くへ去っているようである。
「マルザは、救えんかった。その代わりを、ロナリアに頼むとしよう」
ヒュレイは、ドルマの言葉に静かに頷き、ロナリアに事情を話すために部屋を出る。
メラニアは、少し悲しげな思いを顔に表すが、すぐに元の表情を取り戻し、モールとドルマに告げる。
「今は感傷に浸るときではないね……。各自、やれることを優先してやるよ。ホレイとナートには、夜明け前だが、すぐに出発させておくれ。でないと、手遅れになるからね」
「分かった。わしが、二人の準備を整えよう」
ドルマが、そう言って部屋を出る。
「では、わしは、クスリナを運ぶ。ボーは、ランジェを運んでくれるか?」
「よかろう」
それまで、部屋の隅で静かに見守っていたボーが、モールの頼みを快諾する。
メラニアは、モールとボーを促し、すぐに自身の治療部屋を目指す。
アラインは、母娘の二人で、治療部屋や調剤部屋がある村外れの家に住んでいる。
アラインは、一足先にホレイとナートをその家に連れていき、書棚から古びた薬草書を引っ張り出してくる。
その表紙には、『薬種大全(禁書版)』と記されており、古今東西に渡る薬の原料が詳細に記載されている。
そして、その中には、ハシリドコロの根茎に関する記述があり、その特長が絵柄入りで説明されている。
アラインは、ホレイとナートに、その本を見せながら、ハシリドコロの葉形や背丈、採取する部位などを教える。
また、アラインは、寝室から持ってきた麻布に、ハシリドコロの絵柄を転写魔法で焼き付ける。
「ハシリドコロは、どこに生えているんだ?」
ホレイは、妹のアラインからハシリドコロが正確に転写された麻布を受け取りながら尋ねる。
「湿気の多い谷底かしら。この辺りだと、テラ湖の南岸か、島の西岸にある渓谷が、そうね」
「分かった。テラ湖の南岸なら、昼過ぎには戻ってこれるはずだ。すぐに、出よう」
ホレイは、ナートを促し、メラニアの家を出る。
すると、ドルマがタイミングよくやって来る。
「これを持っていってくれ」
ドルマは、非常食や水筒のほか、体力回復薬、魔力補充用の輝石、救難信号用の煙爆玉が入った麻袋を手渡す。
「ありがとうございます」
「何かあれば、煙爆玉を上げるのじゃぞ」
「はい」
ホレイとナートは、顔を引き締めて答える。
「娘を頼みます」
「うむ。任せておけ」
「兄さん、義姉さん、気をつけてね」
ホレイとナートは、大きく頷き、ドルマとアラインに出立を告げる。
そして、日の出前の薄明かりの中、村の外へと出て、テラ湖の南岸へと急ぐ。
村付近の凍土林は、不気味なほどに静まり返っている。
どの獣も、昨日の魔法の応酬に驚き、遠くへ去っているようである。
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