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凍雪国編第2章
第100話 モールの自白術2
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モールは、ナジキに向き直り、魔力を練り上げる。
そして、深呼吸をしたあと、術式詠唱の秘文を唱える。
『抗いがたき漆黒の闇よ。理性を喰らい、隠忍されし欲望を解き放ち、今ここに、その本性を現せ』
モールは、わずかに恐怖がよぎるナジキの目を見据えたまま、一拍を置き、続けて魔法を詠唱する。
『jet black eater』
「あがががっ……!」
突如、ナジキは、体を小刻みに痙攣させ、上を向いて苦しみだす。
ナジキの目や鼻、口、耳の穴からは、漆黒の闇が霧のごとく漏れ出し、ナジキの体を包み込むように闇が覆い尽くす。
「急に……、どうしたのだ?」
ボーは、ナジキの体に起こった異変に驚きながらも、冷静にモールへ尋ねる。
「禁忌魔法を使用したのじゃよ」
モールは、莫大な魔力を一度に消費したため、軽く息を乱しながら、ボーへ答える。
「どんな魔法だ?」
「この男に宿る狂気を利用して、深い心の闇を解放させてやった。今、わずかに残る自我が、闇に喰われまいと、もがいておるところじゃ」
モールは、暗殺を生業とするであろうナジキを指し示し、少し疲れた顔をしてボーに説明を加える。
ボーは、これまで疲れたモールを見たことがなく、珍しいものを見たという表情を浮かべる。
ナジキは、身悶えをしながら、体中を這いずり回る闇に抵抗する。
「難しい魔法だったのか?」
「大陸では禁忌魔法とされておる魔法で、失われた古代魔法の1つじゃな……」
「魔力を大量に消費するのか? ずいぶんと疲れているように見えるぞ?」
「確かに、膨大な魔力を必要とする……。なに……、わしが精神干渉魔法を苦手としているだけじゃて……」
モールは、深呼吸をして息を整え、魔臓から魔力を引き出し、失われた分を補充する。
『ジェットブラックイーター』は、魔力波長が複雑で、魔法の発動技術が要求される魔法である。
「あぁ……。だから、普段は唱えない術式詠唱を唱えていたのか……」
「苦手なわしでは、詠唱破棄が難しいのでな。また、氷属性があると邪魔じゃから、無属性のみにしておいたのよ」
禁忌魔法は、その扱いも難しい。
そのため、あらかじめ他属性魔法との干渉を排除しておく必要がある。
モールは、魔法名のみの発動ではなく、術式詠唱を行い、魔力波長を丁寧に整えた上で発動している。
「ん?」
ボーは、ナジキの異変に気がつく。
ナジキの頭がガクンっと下に落ち、仰け反らせていた体が急に弛緩する。
「案外早かったな……。無駄な抵抗じゃよ」
モールは、ナジキの体に闇の霧がまとわりつき、己の禁忌魔法が効力を発揮しているのを確認する。
「闇に支配されたのか?」
「あぁ……。こやつは、心の奥底に仕舞いこんでいた自分の闇に喰われよった」
「それで、どうなるのだ?」
「こやつの自我はもうない。あるのは、己の欲望だけじゃ」
「それは、役に立つのか?」
「欲望は嘘をつかん。少々耳障りじゃが、本音を聞けるじゃろうて……」
モールは、ナジキの猿轡を外し、しゃべれるようにしてやる。
「ひぃ……、いぃぃ……。ひぃひひひっ……。ひっ、ひっ……」
ナジキは、目をとろんとさせ、よだれをだらしなく垂れ流す。
そして、意味不明の言葉を絶え間なく吐き出し続ける。
そして、深呼吸をしたあと、術式詠唱の秘文を唱える。
『抗いがたき漆黒の闇よ。理性を喰らい、隠忍されし欲望を解き放ち、今ここに、その本性を現せ』
モールは、わずかに恐怖がよぎるナジキの目を見据えたまま、一拍を置き、続けて魔法を詠唱する。
『jet black eater』
「あがががっ……!」
突如、ナジキは、体を小刻みに痙攣させ、上を向いて苦しみだす。
ナジキの目や鼻、口、耳の穴からは、漆黒の闇が霧のごとく漏れ出し、ナジキの体を包み込むように闇が覆い尽くす。
「急に……、どうしたのだ?」
ボーは、ナジキの体に起こった異変に驚きながらも、冷静にモールへ尋ねる。
「禁忌魔法を使用したのじゃよ」
モールは、莫大な魔力を一度に消費したため、軽く息を乱しながら、ボーへ答える。
「どんな魔法だ?」
「この男に宿る狂気を利用して、深い心の闇を解放させてやった。今、わずかに残る自我が、闇に喰われまいと、もがいておるところじゃ」
モールは、暗殺を生業とするであろうナジキを指し示し、少し疲れた顔をしてボーに説明を加える。
ボーは、これまで疲れたモールを見たことがなく、珍しいものを見たという表情を浮かべる。
ナジキは、身悶えをしながら、体中を這いずり回る闇に抵抗する。
「難しい魔法だったのか?」
「大陸では禁忌魔法とされておる魔法で、失われた古代魔法の1つじゃな……」
「魔力を大量に消費するのか? ずいぶんと疲れているように見えるぞ?」
「確かに、膨大な魔力を必要とする……。なに……、わしが精神干渉魔法を苦手としているだけじゃて……」
モールは、深呼吸をして息を整え、魔臓から魔力を引き出し、失われた分を補充する。
『ジェットブラックイーター』は、魔力波長が複雑で、魔法の発動技術が要求される魔法である。
「あぁ……。だから、普段は唱えない術式詠唱を唱えていたのか……」
「苦手なわしでは、詠唱破棄が難しいのでな。また、氷属性があると邪魔じゃから、無属性のみにしておいたのよ」
禁忌魔法は、その扱いも難しい。
そのため、あらかじめ他属性魔法との干渉を排除しておく必要がある。
モールは、魔法名のみの発動ではなく、術式詠唱を行い、魔力波長を丁寧に整えた上で発動している。
「ん?」
ボーは、ナジキの異変に気がつく。
ナジキの頭がガクンっと下に落ち、仰け反らせていた体が急に弛緩する。
「案外早かったな……。無駄な抵抗じゃよ」
モールは、ナジキの体に闇の霧がまとわりつき、己の禁忌魔法が効力を発揮しているのを確認する。
「闇に支配されたのか?」
「あぁ……。こやつは、心の奥底に仕舞いこんでいた自分の闇に喰われよった」
「それで、どうなるのだ?」
「こやつの自我はもうない。あるのは、己の欲望だけじゃ」
「それは、役に立つのか?」
「欲望は嘘をつかん。少々耳障りじゃが、本音を聞けるじゃろうて……」
モールは、ナジキの猿轡を外し、しゃべれるようにしてやる。
「ひぃ……、いぃぃ……。ひぃひひひっ……。ひっ、ひっ……」
ナジキは、目をとろんとさせ、よだれをだらしなく垂れ流す。
そして、意味不明の言葉を絶え間なく吐き出し続ける。
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