208 / 492
凍雪国編第2章
第95話 襲撃の犠牲者
しおりを挟む
「準備ができたぞ」
ドルマは、肩掛けにできる麻袋を持ってやってくる。
麻袋には、3日分の非常食と飲料水、3つの煙爆玉が詰め込まれている。
「すまんな」
モールは、ドルマから麻袋を受け取る。
ドルマは、隣に立つホレイに声をかける。
「ようやってくれた。大丈夫そうか?」
「はい。これから、モールさんとともに行って参ります」
「そうか……。負傷した後で悪いが、よろしく頼む。じゃが、決して無理をするではないぞ」
「分かっています」
ホレイは、ドルマの気遣いに感謝し、力強く頷く。
「心配は、要らん。敵の追跡行は、わしとボーがやる。ホレイには、ニコルたちを村へ連れ帰って貰いたいだけじゃ」
モールの言葉を聞き、ドルマは、安心したように頷く。
「分かった。お主も、無理をせぬようにな」
「それは、敵次第じゃな」
モールは、麻袋の中身を確認し終え、それを肩に掛け、隣のホレイを促す。
「では、行こう」
ホレイは、無言で頷き、ドルマに頼む。
「妻と娘をお願いします」
「分かった」
ドルマは、ホレイの頼みを了承し、二人の無事を祈る。
モールとホレイは、村の柵を越える近道を選び、東の凍土林の中へ入る。
その中は、僅かながら、地面が踏み荒らされた跡があり、モールとホレイは、その跡を辿り、獣道を奥へ奥へと進んで行く。
「足跡から察するに、敵は二人じゃな」
「えぇ。追ったのは、ニコルとマルザ、ハイトですか?」
「そのようじゃな」
モールとホレイは、周囲を警戒しながら、獣道を進む。
夜明け前の凍土林は、ひんやりとした空気を湛え、動植物が寝静まり、森閑とした静謐さを保っている。
「むっ!」
モールは、獣道の先にある木に傷ができているのを見つける。
目の高さの位置に、剣で切りつけられた傷が残っている。
「まだ新しい……。これは、ニコルがつけた印じゃな」
「では、この道で間違いがありませんね」
「そのようじゃの」
モールとホレイは、足を速め、凍土林の奥へと続く獣道を急ぐ。
「!」
村から1時間ほど周囲を警戒しながら進んだとき、先頭にいたモールは異変を発見する。
凍土林が少し開け始める辺りで、地面が大きく乱され、その奥に人が横たわっているのが見える。
モールは、後ろのホレイへ合図をして、先を急ぐ。
「マルザ! ハイト!」
モールは、血を流して倒れている二人に呼びかけ、『aqua heal』と唱える。
しかし、回復魔法は、効果を発揮せずに弾かれる。
モールは、二人の死を悟り、悔恨の情を抱く。
「遅かったか……」
「二人とも、後ろからやられています」
追いついたホレイは、表情を曇らせながらも、二人の致命傷がともに背中からの一撃によるものと瞬時に見抜く。
「敵は、暗殺に長けた手練れのようじゃの」
「何人でしょうか?」
「足跡は、二人分が続いておった。じゃが、三人目がここに隠れておったようじゃの」
モールは、三人目の存在を裏付ける足跡を、すぐ近くの木の側に見つける。
そこには、ナジキが地面を大きく蹴った跡がはっきりと残っている。
「どうしますか?」
「二人には悪いが、ニコルたちが先じゃ。事が済んでから村に運び、丁重に弔うとしよう」
「はい」
モールとホレイは、二人に短く祈りを捧げ、先を急ぐ。
ドルマは、肩掛けにできる麻袋を持ってやってくる。
麻袋には、3日分の非常食と飲料水、3つの煙爆玉が詰め込まれている。
「すまんな」
モールは、ドルマから麻袋を受け取る。
ドルマは、隣に立つホレイに声をかける。
「ようやってくれた。大丈夫そうか?」
「はい。これから、モールさんとともに行って参ります」
「そうか……。負傷した後で悪いが、よろしく頼む。じゃが、決して無理をするではないぞ」
「分かっています」
ホレイは、ドルマの気遣いに感謝し、力強く頷く。
「心配は、要らん。敵の追跡行は、わしとボーがやる。ホレイには、ニコルたちを村へ連れ帰って貰いたいだけじゃ」
モールの言葉を聞き、ドルマは、安心したように頷く。
「分かった。お主も、無理をせぬようにな」
「それは、敵次第じゃな」
モールは、麻袋の中身を確認し終え、それを肩に掛け、隣のホレイを促す。
「では、行こう」
ホレイは、無言で頷き、ドルマに頼む。
「妻と娘をお願いします」
「分かった」
ドルマは、ホレイの頼みを了承し、二人の無事を祈る。
モールとホレイは、村の柵を越える近道を選び、東の凍土林の中へ入る。
その中は、僅かながら、地面が踏み荒らされた跡があり、モールとホレイは、その跡を辿り、獣道を奥へ奥へと進んで行く。
「足跡から察するに、敵は二人じゃな」
「えぇ。追ったのは、ニコルとマルザ、ハイトですか?」
「そのようじゃな」
モールとホレイは、周囲を警戒しながら、獣道を進む。
夜明け前の凍土林は、ひんやりとした空気を湛え、動植物が寝静まり、森閑とした静謐さを保っている。
「むっ!」
モールは、獣道の先にある木に傷ができているのを見つける。
目の高さの位置に、剣で切りつけられた傷が残っている。
「まだ新しい……。これは、ニコルがつけた印じゃな」
「では、この道で間違いがありませんね」
「そのようじゃの」
モールとホレイは、足を速め、凍土林の奥へと続く獣道を急ぐ。
「!」
村から1時間ほど周囲を警戒しながら進んだとき、先頭にいたモールは異変を発見する。
凍土林が少し開け始める辺りで、地面が大きく乱され、その奥に人が横たわっているのが見える。
モールは、後ろのホレイへ合図をして、先を急ぐ。
「マルザ! ハイト!」
モールは、血を流して倒れている二人に呼びかけ、『aqua heal』と唱える。
しかし、回復魔法は、効果を発揮せずに弾かれる。
モールは、二人の死を悟り、悔恨の情を抱く。
「遅かったか……」
「二人とも、後ろからやられています」
追いついたホレイは、表情を曇らせながらも、二人の致命傷がともに背中からの一撃によるものと瞬時に見抜く。
「敵は、暗殺に長けた手練れのようじゃの」
「何人でしょうか?」
「足跡は、二人分が続いておった。じゃが、三人目がここに隠れておったようじゃの」
モールは、三人目の存在を裏付ける足跡を、すぐ近くの木の側に見つける。
そこには、ナジキが地面を大きく蹴った跡がはっきりと残っている。
「どうしますか?」
「二人には悪いが、ニコルたちが先じゃ。事が済んでから村に運び、丁重に弔うとしよう」
「はい」
モールとホレイは、二人に短く祈りを捧げ、先を急ぐ。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
聖女の姉ですが、宰相閣下は無能な妹より私がお好きなようですよ?
渡邊 香梨
ファンタジー
コミックシーモア電子コミック大賞2025ノミネート! 11/30まで投票宜しくお願いします……!m(_ _)m
――小説3巻&コミックス1巻大好評発売中!――【旧題:聖女の姉ですが、国外逃亡します!~妹のお守りをするくらいなら、腹黒宰相サマと駆け落ちします!~】
12.20/05.02 ファンタジー小説ランキング1位有難うございます!
双子の妹ばかりを優先させる家族から離れて大学へ進学、待望の一人暮らしを始めた女子大生・十河怜菜(そがわ れいな)は、ある日突然、異世界へと召喚された。
召喚させたのは、双子の妹である舞菜(まな)で、召喚された先は、乙女ゲーム「蘇芳戦記」の中の世界。
国同士を繋ぐ「転移扉」を守護する「聖女」として、舞菜は召喚されたものの、守護魔力はともかく、聖女として国内貴族や各国上層部と、社交が出来るようなスキルも知識もなく、また、それを会得するための努力をするつもりもなかったために、日本にいた頃の様に、自分の代理(スペア)として、怜菜を同じ世界へと召喚させたのだ。
妹のお守りは、もうごめん――。
全てにおいて妹優先だった生活から、ようやく抜け出せたのに、再び妹のお守りなどと、冗談じゃない。
「宰相閣下、私と駆け落ちしましょう」
内心で激怒していた怜菜は、日本同様に、ここでも、妹の軛(くびき)から逃れるための算段を立て始めた――。
※ R15(キスよりちょっとだけ先)が入る章には☆を入れました。
【近況ボードに書籍化についてや、参考資料等掲載中です。宜しければそちらもご参照下さいませ】
レディース異世界満喫禄
日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。
その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。
その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
魔術師セナリアンの憂いごと
野村にれ
ファンタジー
エメラルダ王国。優秀な魔術師が多く、大陸から少し離れた場所にある島国である。
偉大なる魔術師であったシャーロット・マクレガーが災い、争いを防ぎ、魔力による弊害を律し、国の礎を作ったとされている。
シャーロットは王家に忠誠を、王家はシャーロットに忠誠を誓い、この国は栄えていった。
現在は魔力が無い者でも、生活や移動するのに便利な魔道具もあり、移住したい国でも挙げられるほどになった。
ルージエ侯爵家の次女・セナリアンは恵まれた人生だと多くの人は言うだろう。
公爵家に嫁ぎ、あまり表舞台に出る質では無かったが、経営や商品開発にも尽力した。
魔術師としても優秀であったようだが、それはただの一端でしかなかったことは、没後に判明することになる。
厄介ごとに溜息を付き、憂鬱だと文句を言いながら、日々生きていたことをほとんど知ることのないままである。
ブレードステーション
カレサワ
ファンタジー
この国の交通の要とも言える鉄道駅。その地下構内からそれは突如として現れた。高い純度の金属で形成された外殻に既存の水準を遥かに超えた技術とで構成された、機械と生物が融合したようななんとも奇妙でおぞましい姿をしたそれ……リソーサーは、瞬く間にその数を増やし、周囲の生物を手当たり次第に襲うだけでなく、電気や金属までをも喰らうその習性は、人間や既存の生物とは全く相容れない存在であり、文明社会を破壊するその侵略的新種に人々は恐怖した。
政府は自衛軍を投入しての殲滅作戦を実行するものの、リソーサーは一つの駅だけでなく、多くの主要な駅からも出現。そのあまりの多さに、自衛軍を管轄する国防省もリソーサーの殲滅から周囲への進出を阻止する方針へと転換せざる得なくなった。
代わってダンジョンと化した駅構内へと入りリソーサーの駆除を担ったのは、そこから得られる資源の回収を目当てに参入した民間の軍事資源回収企業に所属し、機動鎧甲と呼ばれるパワーアシストスーツを纏い戦いへと身を投じる社員達"スペキュレイター"であった……
これはそんな世界で今日も駅ダンジョンに稼ぎに出る、ある(弱小零細)新興企業のお話。
小説家になろう、カクヨムにも連載しています
家族もチート!?な貴族に転生しました。
夢見
ファンタジー
月神 詩は神の手違いで死んでしまった…
そのお詫びにチート付きで異世界に転生することになった。
詩は異世界何を思い、何をするのかそれは誰にも分からない。
※※※※※※※※※
チート過ぎる転生貴族の改訂版です。
内容がものすごく変わっている部分と変わっていない部分が入り交じっております
※※※※※※※※※
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
生産性厨が異世界で国造り~授けられた能力は手から何でも出せる能力でした~
天樹 一翔
ファンタジー
対向車線からトラックが飛び出してきた。
特に恐怖を感じることも無く、死んだなと。
想像したものを具現化できたら、もっと生産性があがるのにな。あと、女の子でも作って童貞捨てたい。いや。それは流石に生の女の子がいいか。我ながら少しサイコ臭して怖いこと言ったな――。
手から何でも出せるスキルで国を造ったり、無双したりなどの、異世界転生のありがちファンタジー作品です。
王国? 人外の軍勢? 魔王? なんでも来いよ! 力でねじ伏せてやるっ!
感想やお気に入り、しおり等々頂けると幸甚です!
モチベーション上がりますので是非よろしくお願い致します♪
また、本作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨムで公開している作品となります。
小説家になろうの閲覧数は170万。
エブリスタの閲覧数は240万。また、毎日トレンドランキング、ファンタジーランキング30位以内に入っております!
カクヨムの閲覧数は45万。
日頃から読んでくださる方に感謝です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる