ロシュフォール物語

正輝 知

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凍雪国編第2章

第86話 ホレイの奮闘3

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 ホレイは、ゲナンを近くの収穫小屋に寝かせたあと、小屋から出て、村の入り口が見える位置まで潜行する。

(無傷そうだな……)

 ベドは、道の真ん中で、悠然とたたずんでいる。
 それを見て、ホレイは、やれやれと首をすくめる。

(さて……、どうしたものか……)

 ホレイは、激しい戦闘音が鳴り続く広場の状況が気になる。
 だが、村の入り口に陣取るベドを見逃すつもりはない。

(武闘派は、私の専門外なんだがな……)

 ホレイは、ため息をつきながら、飛び出すタイミングを見計らう。

ゴバァァァン
ジュンッ

 突然、広場から爆音がとどろき、巨大な火柱が天高く立ち上る。
 ベドは、視線を広場の上空へ向け、目を見開き、言葉を漏らす。

「エテンが逝ったか……」

 ホレイは、その瞬間を逃さず、建物の陰から飛び出し、ベドとの距離を一気に詰める。
 そして、ベドに対抗できるように、魔法を次々と発動させる。

『身体強化』
enchant swordエンチャントソード
air shieldエアシールド

 ベドは、ホレイの姿を視界に捉え、大地に突き刺した大剣を大きく跳ね上げる。
 土煙がもうもうと舞い上がり、ホレイの行く手がはばまれる。

furious sun flareフューリアスサンフレア

 ホレイは、ちょうど目隠しとなった土煙を逆に利用し、その隙間から猛烈な熱炎をベドへ見舞う。

バジュンッ

 ベドの氷属性の結界が砕け散り、魔道鎧の左肩装甲が弾け飛び、その周囲が焼け焦げる。

「ぐっ!」

 ベドから初めて焦りの声が漏れ、その双眼に憎しみの光が宿る。

(甘く見た代償だ……)

 ホレイは、走ってきた勢いを殺さず、ベドの間合いに跳び込む。
 ベドは、無傷の右手で大剣を担ぎ上げ、体重を載せてホレイに斬りつける。

ドガァァァン

 斬撃による衝撃波で、大地が大きくえぐられる。
 ホレイは、単調な攻撃となった衝撃波を易々とかわし、フェイントを交え、風魔法を纏わせた剣を振るう。

ガキィィィン
ギィギィン
ザンッ

「ぐぁっ!」

 右手のみで扱ったベドの大剣は遅く、剣術があまり得意ではないホレイでも、徐々に手傷を負わせることに成功する。
 今や、形勢は完全に逆転し、ホレイに有利となっている。

「なめるなぁ!」

 ベドは、重度の火傷を負った左手を大剣に添え、剣速を上げて応戦する。
 そして、懐に入り込んできたホレイを蹴りで迎え撃ち、ホレイを蹴り上げざま、衝撃波を放つ。

(しぶとい……)

 空中で体勢を立て直したホレイは、余裕を持って衝撃波をかわし、炎魔法を放つ。

flare blastフレアブラスト

 ホレイの左手から生まれた爆炎は、ベドを一瞬で包み込む。

「ぐあぁぁぁっ……!」

 氷属性の結界と魔道鎧の加護が無くなったベドは、たまらずに悲鳴を上げ、片膝をついて崩れ落ちる。
 ホレイは、大きく距離を取り、ベドの左半身に向けて煙爆玉を投げつける。

ボバァァァァァン

 炎魔法の熱波が残る左肩付近で、煙爆玉が炸裂する。
 ベドは、左肩の血肉を弾けさせ、煙爆玉の衝撃で後ろに大きく吹っ飛ばされる。

「がはっ!」

 ベドは、地面を転がりながら、血反吐ちへどを吐く。

fear stormフィアスストーム

 ホレイは、凄まじい嵐を発生させ、ベドを上空へと舞い上げる。

(これで、終わりだ!)

flare rayフレアレイ

ジュァッ

 炎の光線が、空中のベドを焼き払う。
 力を失ったベドは、ブスブスと煙を吐き出しながら、地面へ落下する。

ドチャッ

 重鈍く潰れる音がして、ベドの鎧が大きくひしゃげる。

(ふぅ……。危なかった……)

 ホレイは、安堵のため息を小さく吐き、ベドの生死を確認しに行く。

「!」

 ホレイは、右へ大きく跳ぶが、後ろから飛来した針が左足に突き刺さる。
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