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凍雪国編第2章
第81話 未明の急襲2
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上空から滝のように流れ落ちてくる炎に、モールの放った巨大な氷山が激突して、威力が相殺される。
「凄い!」
フレイは、モールが放った氷魔法の威力に称賛の声を上げる。
「キャァァァッ!」
広場の端にいたクスリナが、空を見上げて、甲高い悲鳴を上げる。
魔法が途切れた上空からは、飛竜の群れが突如として現れ、広場にいる人々を襲い始める。
「『コンシール』か!」
『コンシール』は、姿を隠し、気配や魔力を遮断する隠遁魔法である。
ドルマは、盛大に舌打ちをする。
だが、モールはすでに気がついており、手近な場所に降りてきた一匹の首を軽々と斬り飛ばす。
「飛竜は、わしに任せておけ!」
モールは、ドルマにそう叫び、ヨルテンを尻尾で弾き飛ばした飛竜を背後から一刀両断する。
「頼む!」
ドルマは、飛竜を難なく仕留めていくモールを視界の端に収め、上空からの魔力の高まりに対処すべく、己の魔力を練り上げ、魔法を放つ。
『shining rubble』
ドルマの持つ杖の先から、眩い光を発する大量の礫が生まれ、上空へ向けて打ち出される。
『dark cloud』
暗闇よりも濃い闇の雲が、光の礫を次々と飲み込み、無効化していく。
しかし、ドルマは、なおも光の礫を打ち出し続け、闇の雲を徐々に払いのける。
エテンは、光の礫が乗っている飛竜の体に当たりそうになったため、慌てて距離をとり、空高くで旋回する。
「今のうちに、飛竜をやるのじゃ! 気持ちを強く持て!」
ドルマは、防戦一方の皆を叱咤し、まごつく者へ指示を出していく。
「ニコルは、ハイトと組み、撃退せよ! ヒュレイは、メラニアたちを庇って家の中へ行け!」
ハイトは、ヨルテンの弟で、多少なりとも魔法が使える。
ニコルは、ハイトのサポートを得て、子どもたちに襲い掛かろうとしていた飛竜に斬りかかる。
ヒュレイは、メラニアとその娘のアラインの手を引き、飛竜たちから距離をとる。
「ナート! ロナリアと合流し、子どもたちを守れ!」
「はい!」
ナートは、近づいてきた飛竜を火魔法で吹っ飛ばし、ランジェを連れて、ロナリアの近くへ行く。
そのロナリアの側で、数匹の飛竜を相手に善戦をしているのが、フレイとボーである。
「ボー! 右から来る!」
「分かっている! フレイは、正面の奴に蒼炎を叩き込め!」
「うん!」
ボーは、ニアを庇いながら、飛竜の頭を爪で切り裂き、体当たりを食らわせて弾き飛ばす。
フレイは、両手に宿した蒼炎で噛み付いてきた飛竜の頭ごと消し炭にし、ボーの攻撃を食らって体をよろめかせている飛竜に、両手を組み合わせた拳をハンマーのごとく振り下ろす。
バジュッ
フレイの一撃を食らった飛竜は、胸に大きな穴を開けて息絶える。
ドゴォッ
「油断するな!」
ボーは、大きく跳び上がり、フレイの背中目掛けて舞い降りてくる飛竜を、体を器用に捻って後ろ足で蹴り飛ばす。
「ご、ごめん……。ありがとう、ボー!」
フレイとボーは、ニアを囲み直す。
ボーに蹴り飛ばされ、地上に転がった飛竜は、激しく羽をばたつかせて怒りを表し、牙を剝いて威嚇する。
フレイとボーは、油断なく構えを取り、そこに、ナートとランジェが加わる。
ロナリアとリリアは、少し離れたところで、尻尾を振り回し、前足の爪を何度も振り下ろす飛竜と戦っている。
「フレイちゃん! 少しの間、ランジェをお願いできる?」
「うん!」
ナートは、そう言い置くと、ロナリアたちを襲っている飛竜の背後から近づき、愛用の細剣で飛竜の胴体へ鋭い突きを入れる。
グギャァァァッ
たまらず悲鳴を上げた飛竜は、後ろにいるナートを振り返り、爪を振り回す。
『flare javelin』
ロナリアは、その隙を逃さず、炎の投槍を放ち、飛竜の腹を串刺しにする。
しかし、炎の槍は、飛竜の急所から僅かに外れていたため、飛竜は、のた打ち回りながらも、攻撃意欲を失わず、尻尾を振るってナートを弾き飛ばし、ロナリアに向けて爪の一撃を叩きつける。
ロナリアは、即座に後ろへ大きく飛び退く。
『wind burst』
ロナリアの背後では、リリアがファミアンの杖を前へ突き出し、爆風魔法を唱える。
爪を空振りして、体勢を大きく崩した飛竜は、突如として足元から吹き上がった竜巻に巻き上げられ、体を急速回転させながら、ずたずたに切り裂かれる。
「ナートさん! 大丈夫!?」
「油断したわ!」
ナートは、大した怪我を負わず、すぐに起き上がって、ロナリアに答える。
「加勢してくれて、助かりました」
「お互い様よ。私も、ランジェをフレイちゃんに守ってもらっているから……」
ロナリアとナートは、お互いに顔を見合わせて笑い、フレイたちを援護すべく、急いで駆け寄る。
「凄い!」
フレイは、モールが放った氷魔法の威力に称賛の声を上げる。
「キャァァァッ!」
広場の端にいたクスリナが、空を見上げて、甲高い悲鳴を上げる。
魔法が途切れた上空からは、飛竜の群れが突如として現れ、広場にいる人々を襲い始める。
「『コンシール』か!」
『コンシール』は、姿を隠し、気配や魔力を遮断する隠遁魔法である。
ドルマは、盛大に舌打ちをする。
だが、モールはすでに気がついており、手近な場所に降りてきた一匹の首を軽々と斬り飛ばす。
「飛竜は、わしに任せておけ!」
モールは、ドルマにそう叫び、ヨルテンを尻尾で弾き飛ばした飛竜を背後から一刀両断する。
「頼む!」
ドルマは、飛竜を難なく仕留めていくモールを視界の端に収め、上空からの魔力の高まりに対処すべく、己の魔力を練り上げ、魔法を放つ。
『shining rubble』
ドルマの持つ杖の先から、眩い光を発する大量の礫が生まれ、上空へ向けて打ち出される。
『dark cloud』
暗闇よりも濃い闇の雲が、光の礫を次々と飲み込み、無効化していく。
しかし、ドルマは、なおも光の礫を打ち出し続け、闇の雲を徐々に払いのける。
エテンは、光の礫が乗っている飛竜の体に当たりそうになったため、慌てて距離をとり、空高くで旋回する。
「今のうちに、飛竜をやるのじゃ! 気持ちを強く持て!」
ドルマは、防戦一方の皆を叱咤し、まごつく者へ指示を出していく。
「ニコルは、ハイトと組み、撃退せよ! ヒュレイは、メラニアたちを庇って家の中へ行け!」
ハイトは、ヨルテンの弟で、多少なりとも魔法が使える。
ニコルは、ハイトのサポートを得て、子どもたちに襲い掛かろうとしていた飛竜に斬りかかる。
ヒュレイは、メラニアとその娘のアラインの手を引き、飛竜たちから距離をとる。
「ナート! ロナリアと合流し、子どもたちを守れ!」
「はい!」
ナートは、近づいてきた飛竜を火魔法で吹っ飛ばし、ランジェを連れて、ロナリアの近くへ行く。
そのロナリアの側で、数匹の飛竜を相手に善戦をしているのが、フレイとボーである。
「ボー! 右から来る!」
「分かっている! フレイは、正面の奴に蒼炎を叩き込め!」
「うん!」
ボーは、ニアを庇いながら、飛竜の頭を爪で切り裂き、体当たりを食らわせて弾き飛ばす。
フレイは、両手に宿した蒼炎で噛み付いてきた飛竜の頭ごと消し炭にし、ボーの攻撃を食らって体をよろめかせている飛竜に、両手を組み合わせた拳をハンマーのごとく振り下ろす。
バジュッ
フレイの一撃を食らった飛竜は、胸に大きな穴を開けて息絶える。
ドゴォッ
「油断するな!」
ボーは、大きく跳び上がり、フレイの背中目掛けて舞い降りてくる飛竜を、体を器用に捻って後ろ足で蹴り飛ばす。
「ご、ごめん……。ありがとう、ボー!」
フレイとボーは、ニアを囲み直す。
ボーに蹴り飛ばされ、地上に転がった飛竜は、激しく羽をばたつかせて怒りを表し、牙を剝いて威嚇する。
フレイとボーは、油断なく構えを取り、そこに、ナートとランジェが加わる。
ロナリアとリリアは、少し離れたところで、尻尾を振り回し、前足の爪を何度も振り下ろす飛竜と戦っている。
「フレイちゃん! 少しの間、ランジェをお願いできる?」
「うん!」
ナートは、そう言い置くと、ロナリアたちを襲っている飛竜の背後から近づき、愛用の細剣で飛竜の胴体へ鋭い突きを入れる。
グギャァァァッ
たまらず悲鳴を上げた飛竜は、後ろにいるナートを振り返り、爪を振り回す。
『flare javelin』
ロナリアは、その隙を逃さず、炎の投槍を放ち、飛竜の腹を串刺しにする。
しかし、炎の槍は、飛竜の急所から僅かに外れていたため、飛竜は、のた打ち回りながらも、攻撃意欲を失わず、尻尾を振るってナートを弾き飛ばし、ロナリアに向けて爪の一撃を叩きつける。
ロナリアは、即座に後ろへ大きく飛び退く。
『wind burst』
ロナリアの背後では、リリアがファミアンの杖を前へ突き出し、爆風魔法を唱える。
爪を空振りして、体勢を大きく崩した飛竜は、突如として足元から吹き上がった竜巻に巻き上げられ、体を急速回転させながら、ずたずたに切り裂かれる。
「ナートさん! 大丈夫!?」
「油断したわ!」
ナートは、大した怪我を負わず、すぐに起き上がって、ロナリアに答える。
「加勢してくれて、助かりました」
「お互い様よ。私も、ランジェをフレイちゃんに守ってもらっているから……」
ロナリアとナートは、お互いに顔を見合わせて笑い、フレイたちを援護すべく、急いで駆け寄る。
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