ロシュフォール物語

正輝 知

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凍雪国編第2章

第63話 モールとの実践訓練3

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フレイは、もう一度頭を触り、両手と頭に蒼炎を生み出した感じを思い起こす。

「う~ん……。どうかなぁ~」

「あとは、訓練あるのみじゃ。では、次にいくぞ」

「えぇっ! 早すぎない?」

「贅沢を言うな。ほれ、手に蒼炎を宿して構えよ」

 モールは、両手に氷の盾を作り出し、フレイの拳を受ける態勢になる。
 それを見たフレイは、「だから急すぎるよ」とか、ぶつぶつと小さく文句を呟くも、両手に蒼炎を生み出して拳を握る。

「よいか。実践では、敵は常に動く。じゃから、フレイは動く的を狙って拳を当てなければならん」

「うん」

「じゃが、蒼炎を宿した拳は、軽く触れただけで敵を灰にすることができる。これは、蒼炎が使えるものの特権じゃな」

「うん!」

 フレイは、モールの指摘に嬉しそうに返事をする。

「わしは、これから動く。フレイは、わしの両手に生み出した氷の盾を叩いてみよ。もたもたしておると、この氷の盾がフレイを襲うぞ」

 モールは、左右の氷の盾をガツンガツンとぶつけ合い、その硬さをフレイに見せつける。

「手加減してよね」

「適度にな」

 モールは、フレイの言葉に軽く頷くが、やり過ぎないように細心の注意を払っている。

「その前に靴を履いていい?」

 フレイは、先ほど脱いだ靴を指差し、モールへ尋ねる。

「ならん」

「どうして?」

 フレイは、少し膨れる。

「素足の方が地面をつかむ感触が得られるからじゃ」

「つかむ?」

「そうじゃ。足の指で地面をしっかりと踏み締め、体を安定させるのじゃよ。これができなければ、浮き足立ち、体の方向転換が遅れたり、必殺の一撃が叩き込めなくなったりする」

 モールは、体術の基礎となる足捌あしさばきが如何に重要なことなのかを説明する。

「ふ~ん……」

「どの流派の体術でも、地面をつかむ感触をマスターするのが基本じゃ。じゃから、フレイは、素早く動けるようになるまで、素足で訓練を続けるのじゃぞ」

「うん、分かった。じゃぁ、いくね」

 フレイは、1mほどの距離を一気に飛び、右拳をモールの左手の盾に叩きつける。

バジュッ

 フレイの蒼炎とモールの氷がぶつかり合い、瞬時に氷が蒸発する。
 モールは、解けた箇所を即座に新たな氷で塞ぎ、フレイが繰り出す拳を器用にいなし、弾き返していく。

「ほれほれ。左手が使えておらんぞ」

ガンッ

 モールの右手の盾が、フレイの左拳を弾き、そのままの勢いでフレイの左肩を打ちえる。

「痛っ!」

 フレイは、顔を歪めて、数歩後ろへ後退する。

「手加減するって言ったよね!」

「これでも、手加減をしておる。戦場では、今のでフレイの左腕は肩からばっさりと無くなっておる」

「そうだけどさ……。まだ始めたばかりだよ?」

「甘えるでない。打たれたくなくば、肩に蒼炎を宿して、防げばよかろう。敵は、手加減などしてくれぬぞ」

「分かっているよ!」

 フレイは、頭では理解できるものの、優しさをまったく見せないモールに憤慨し、睨みつける。

「良い目つきじゃ。次からは、頭であろうと、足であろうと、隙があればどんどん打っていく。まずは、体で覚えよ」

「もう!」
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