174 / 492
凍雪国編第2章
第61話 モールとの実践訓練1
しおりを挟む
「そこに立つのじゃ」
モールは、自分から1mほど離れた場所を指し示す。
フレイは、素直にモールの言うこと従い、指示された場所に立って、モールと向かい合う。
「うむ。それでは、師匠らしくするぞ」
「うん、いいよ」
フレイは、いよいよ訓練が始まるんだという期待のこもった目で頷く。
モールは、おほんっと一つ咳払いをして、腰の後ろで両手を握って立つ。
「では、まずは、蒼炎の発動からじゃが、フレイはすでに無詠唱ができるの?」
「うん。でも、何でそれを知っているの?」
「そんなものは、魔力の流れを見れば分かる」
モールは、魔力の流れを目で見ることができる。
フレイの魔力は、魔臓から絶えず溢れ出しており、魔力が行き場を探して体中を不規則に巡っている。
「そうなの?」
「あぁ。フレイは、魔臓から魔力を引き出して魔法を使っておらんからな。手や足に集まった魔力にそのまま属性を乗せておる」
モールは、フレイが魔法を発動させたときの魔力の流れをしっかりと確認している。
「へぇ~。僕は、そうやって使っているんだね」
「何じゃ? それも分かっておらなんだのか?」
「うん。僕は、こうやって手をぎゅうっと握って、魔力を感じてから、魔法を発動させているだけだよ」
フレイは、右手を前に突き出し、手に宿る魔力を圧縮して、蒼炎属性を乗せる。
すると、手のひらから、ごく自然に蒼炎が燃え上がる。
「フレイには、もっと基本から教えんといかんの」
「うん」
「では、講釈を少し垂れてやるかの」
「講釈?」
フレイは、聞いたことがない言葉に、首をかしげる。
「意味を説明することじゃ。この場合は、魔法の意味じゃな」
「ふ~ん」
フレイは、そういうものなんだと、ひとり納得する。
「これも言葉の勉強じゃ。ひとつひとつを理解していけばよい」
「うん」
「そもそも、無詠唱ができるのは、魔力の質が濃い者だけじゃ」
モールは、さらりと魔法の極意をフレイに説明する。
「そうなの?」
「うむ。このことはあまり知られておらんがな。まぁ……、それはいいとして、通常、魔法を発動するときには、魔力を練り上げる必要がある。フレイも、そう習ったはずじゃな?」
「うん。お母さんから、そう教わったよ」
「うむ。それ自体は間違っておらんし、魔法の基本動作じゃから守るべき手順じゃな。じゃが、魔力を練り上げる動作が、どのような意味を持つのかを理解せねば、魔法を上達させることができん」
フレイは、素直に頷く。
「魔力を練り上げるという動作は、魔臓から魔力を引き出し、魔力の質を高める動作なのじゃ」
魔臓に蓄えられている魔力は、活性化していない魔力である。
魔法を発動させるためには、魔臓から引き出した魔力を圧縮して濃度を増し、活性化させる必要がある。
この一連の流れが、魔力を練り上げる動作であり、魔力の質を高める動作となる。
「つまり、すでに高魔力の質を持つものは、魔力を練り上げるまでもなく、常に魔法を放てる状態にあるということなのじゃ。わしやフレイがそうであるようにの」
「へぇ~。僕が、無詠唱で魔法を発動できる理由が、今、分かったよ」
フレイは、うんうんと頷き、両手をにぎにぎして、嬉しそうに手のひらを見つめる。
「じゃから、高魔力体質のものは、発動の準備動作をしなくても、いつでも魔法が放てる。それ故、無詠唱も簡単に行うことができるのじゃよ。このようにの……」
モールは、そう言って、右の手のひらを体の少し前に出し、無詠唱で火を生み出す。
「モールさんもできるだね」
「うむ、たやすいことじゃな」
モールは、そう言って、手のひらを庭の端に向け、ぽぽぽぽぽんっと、小さな水球をたくさん生み出して、木にぶつける。
「わぁ~、すご~い……」
フレイは、自在に魔法を操るモールに感動して、賞賛の声を上げる。
「おそらく、ニアにもこれができるはずじゃ」
「うん。ニア姉さんも、僕と同じようにできてたよ」
「やはりの。虹石が示した魔力の質は伊達ではないということじゃな」
「伊達?」
「見えを張ること……、もっと噛み砕いて言うと、よく見せかけようとすることかの」
「ふ~ん」
先ほどの感動を引きずっているフレイは、少々上の空で聞く。
「つまり、伊達ではないということは、飾りではないということじゃよ。大陸では、よく使われる言い回しじゃな」
「うん。覚えておくよ」
フレイは、素直に頷いて、目をキラキラと輝かせる。
モールは、自分から1mほど離れた場所を指し示す。
フレイは、素直にモールの言うこと従い、指示された場所に立って、モールと向かい合う。
「うむ。それでは、師匠らしくするぞ」
「うん、いいよ」
フレイは、いよいよ訓練が始まるんだという期待のこもった目で頷く。
モールは、おほんっと一つ咳払いをして、腰の後ろで両手を握って立つ。
「では、まずは、蒼炎の発動からじゃが、フレイはすでに無詠唱ができるの?」
「うん。でも、何でそれを知っているの?」
「そんなものは、魔力の流れを見れば分かる」
モールは、魔力の流れを目で見ることができる。
フレイの魔力は、魔臓から絶えず溢れ出しており、魔力が行き場を探して体中を不規則に巡っている。
「そうなの?」
「あぁ。フレイは、魔臓から魔力を引き出して魔法を使っておらんからな。手や足に集まった魔力にそのまま属性を乗せておる」
モールは、フレイが魔法を発動させたときの魔力の流れをしっかりと確認している。
「へぇ~。僕は、そうやって使っているんだね」
「何じゃ? それも分かっておらなんだのか?」
「うん。僕は、こうやって手をぎゅうっと握って、魔力を感じてから、魔法を発動させているだけだよ」
フレイは、右手を前に突き出し、手に宿る魔力を圧縮して、蒼炎属性を乗せる。
すると、手のひらから、ごく自然に蒼炎が燃え上がる。
「フレイには、もっと基本から教えんといかんの」
「うん」
「では、講釈を少し垂れてやるかの」
「講釈?」
フレイは、聞いたことがない言葉に、首をかしげる。
「意味を説明することじゃ。この場合は、魔法の意味じゃな」
「ふ~ん」
フレイは、そういうものなんだと、ひとり納得する。
「これも言葉の勉強じゃ。ひとつひとつを理解していけばよい」
「うん」
「そもそも、無詠唱ができるのは、魔力の質が濃い者だけじゃ」
モールは、さらりと魔法の極意をフレイに説明する。
「そうなの?」
「うむ。このことはあまり知られておらんがな。まぁ……、それはいいとして、通常、魔法を発動するときには、魔力を練り上げる必要がある。フレイも、そう習ったはずじゃな?」
「うん。お母さんから、そう教わったよ」
「うむ。それ自体は間違っておらんし、魔法の基本動作じゃから守るべき手順じゃな。じゃが、魔力を練り上げる動作が、どのような意味を持つのかを理解せねば、魔法を上達させることができん」
フレイは、素直に頷く。
「魔力を練り上げるという動作は、魔臓から魔力を引き出し、魔力の質を高める動作なのじゃ」
魔臓に蓄えられている魔力は、活性化していない魔力である。
魔法を発動させるためには、魔臓から引き出した魔力を圧縮して濃度を増し、活性化させる必要がある。
この一連の流れが、魔力を練り上げる動作であり、魔力の質を高める動作となる。
「つまり、すでに高魔力の質を持つものは、魔力を練り上げるまでもなく、常に魔法を放てる状態にあるということなのじゃ。わしやフレイがそうであるようにの」
「へぇ~。僕が、無詠唱で魔法を発動できる理由が、今、分かったよ」
フレイは、うんうんと頷き、両手をにぎにぎして、嬉しそうに手のひらを見つめる。
「じゃから、高魔力体質のものは、発動の準備動作をしなくても、いつでも魔法が放てる。それ故、無詠唱も簡単に行うことができるのじゃよ。このようにの……」
モールは、そう言って、右の手のひらを体の少し前に出し、無詠唱で火を生み出す。
「モールさんもできるだね」
「うむ、たやすいことじゃな」
モールは、そう言って、手のひらを庭の端に向け、ぽぽぽぽぽんっと、小さな水球をたくさん生み出して、木にぶつける。
「わぁ~、すご~い……」
フレイは、自在に魔法を操るモールに感動して、賞賛の声を上げる。
「おそらく、ニアにもこれができるはずじゃ」
「うん。ニア姉さんも、僕と同じようにできてたよ」
「やはりの。虹石が示した魔力の質は伊達ではないということじゃな」
「伊達?」
「見えを張ること……、もっと噛み砕いて言うと、よく見せかけようとすることかの」
「ふ~ん」
先ほどの感動を引きずっているフレイは、少々上の空で聞く。
「つまり、伊達ではないということは、飾りではないということじゃよ。大陸では、よく使われる言い回しじゃな」
「うん。覚えておくよ」
フレイは、素直に頷いて、目をキラキラと輝かせる。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
素質ナシの転生者、死にかけたら最弱最強の職業となり魔法使いと旅にでる。~趣味で伝説を追っていたら伝説になってしまいました~
シロ鼬
ファンタジー
才能、素質、これさえあれば金も名誉も手に入る現代。そんな中、足掻く一人の……おっさんがいた。
羽佐間 幸信(はざま ゆきのぶ)38歳――完全完璧(パーフェクト)な凡人。自分の中では得意とする持ち前の要領の良さで頑張るが上には常に上がいる。いくら努力しようとも決してそれらに勝つことはできなかった。
華のない彼は華に憧れ、いつしか伝説とつくもの全てを追うようになり……彼はある日、一つの都市伝説を耳にする。
『深夜、山で一人やまびこをするとどこかに連れていかれる』
山頂に登った彼は一心不乱に叫んだ…………そして酸欠になり足を滑らせ滑落、瀕死の状態となった彼に死が迫る。
――こっちに……を、助けて――
「何か……聞こえる…………伝説は……あったんだ…………俺……いくよ……!」
こうして彼は記憶を持ったまま転生、声の主もわからぬまま何事もなく10歳に成長したある日――
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~
ふゆ
ファンタジー
私は死んだ。
はずだったんだけど、
「君は時空の帯から落ちてしまったんだ」
神様たちのミスでみんなと同じような輪廻転生ができなくなり、特別に記憶を持ったまま転生させてもらえることになった私、シエル。
なんと幼女になっちゃいました。
まだ転生もしないうちに神様と友達になるし、転生直後から神獣が付いたりと、チート万歳!
エーレスと呼ばれるこの世界で、シエルはどう生きるのか?
*不定期更新になります
*誤字脱字、ストーリー案があればぜひコメントしてください!
*ところどころほのぼのしてます( ^ω^ )
*小説家になろう様にも投稿させていただいています
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
ブレードステーション
カレサワ
ファンタジー
この国の交通の要とも言える鉄道駅。その地下構内からそれは突如として現れた。高い純度の金属で形成された外殻に既存の水準を遥かに超えた技術とで構成された、機械と生物が融合したようななんとも奇妙でおぞましい姿をしたそれ……リソーサーは、瞬く間にその数を増やし、周囲の生物を手当たり次第に襲うだけでなく、電気や金属までをも喰らうその習性は、人間や既存の生物とは全く相容れない存在であり、文明社会を破壊するその侵略的新種に人々は恐怖した。
政府は自衛軍を投入しての殲滅作戦を実行するものの、リソーサーは一つの駅だけでなく、多くの主要な駅からも出現。そのあまりの多さに、自衛軍を管轄する国防省もリソーサーの殲滅から周囲への進出を阻止する方針へと転換せざる得なくなった。
代わってダンジョンと化した駅構内へと入りリソーサーの駆除を担ったのは、そこから得られる資源の回収を目当てに参入した民間の軍事資源回収企業に所属し、機動鎧甲と呼ばれるパワーアシストスーツを纏い戦いへと身を投じる社員達"スペキュレイター"であった……
これはそんな世界で今日も駅ダンジョンに稼ぎに出る、ある(弱小零細)新興企業のお話。
小説家になろう、カクヨムにも連載しています
家族もチート!?な貴族に転生しました。
夢見
ファンタジー
月神 詩は神の手違いで死んでしまった…
そのお詫びにチート付きで異世界に転生することになった。
詩は異世界何を思い、何をするのかそれは誰にも分からない。
※※※※※※※※※
チート過ぎる転生貴族の改訂版です。
内容がものすごく変わっている部分と変わっていない部分が入り交じっております
※※※※※※※※※
ノン・ホモ・マギア
みらいつりびと
ファンタジー
絵画魔法使い春日井虹と魔法を使えない先祖返り冬月筆子のラブストーリー。
ホモ・サピエンスは魔法人類ホモ・マギアに進化した。
僕は春日井虹。
絵画魔法使いだけど、絵を描くのが嫌いだ。
でも魔法を使えない少女、冬月筆子との出会いが僕の心に一石を投じた。
彼女は絵が下手なのに、描くのが大好きだった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる