166 / 492
凍雪国編第2章
第53話 高魔力体質者の魔力1
しおりを挟む
昼食を食べ終えたフレイは、モールの家へ向かう。
その途中、ボーの棲み処へ立ち寄り、ロナリアが蒸してくれたアスタルテと黒斑牛の乳から作ったバターを手渡す。
ボーは、素直に喜びを表し、帰宅したらロナリアへ礼を伝えるようにフレイへ頼む。
ヤーやフイ、ビーも、嬉しそうに尻尾を振って、フレイを舐め回す。
そうしてしばらく、ボーの子どもたちとじゃれ合ったフレイは、ボーたちに別れを告げてモールの家を訪れる。
「モールさん!」
フレイは、昨日見たときと同じように、縁側で空を見上げて日向ぼっこをしているモールへ呼びかける。
「ん?」
モールは、眠たそうな目をしてフレイを見る。
そして、かったるそうにして起き上がり、フレイへ手招きをする。
「今日は、どうしたんじゃ?」
「モールさんに聞きたいことができたから、やってきたの。迷惑だった?」
「いや、構わんぞ。ほれ、見ての通り、暇じゃからな」
モールは、縁側で座りなおし、大きく伸びをしながら、欠伸をする。
「モールさんって、することないの?」
フレイは、暢気な様子のモールを見て、思わず疑問が口をついて出る。
「フレイには分からんか?」
「何を?」
モールは、フレイをじっと見つめて、可笑しそうに含み笑いをする。
「まだまだじゃな」
モールは、ひとりで納得して、肩を回しながら立ち上がる。
フレイは、モールの言っていることが分からず、顔に疑問を浮かべたままである。
「今は、分からずともよい。魔力感知ができるようになれば、おのずと分かるようになるからの」
「さっぱり分からないけど……」
「はははっ。今はまだ、いつも暇そうにしておるモールさんということじゃ。深く聞くでない」
そう言って、モールは、部屋の中に入り、フレイのためにイタヤカエデの花蜜甘茶を入れてやる。
「遠慮せずに入ってこい。用があったんじゃろ?」
「うん」
何がなんだか分からないものの、当初の目的を果たすために、フレイは靴を脱いで部屋へと上がる。
「ほれ。昨日、好きだと言っておった甘茶じゃ。菓子はいるか?」
「うん、ちょうだい。……モールさんの甘茶、好きなんだよね。ありがとう」
フレイは、座椅子に腰掛けて、湯気を立てる甘茶をふーふーと息を吹きかけながら飲み始める。
「よしよし。なら、今日は、テムから貰った紅玉を糖蜜漬けにした菓子を出してやろう」
モールは、台所へ行き、少し大きめの瓶を持って戻ってくる。
「ありがとう、モールさん」
フレイは、初めて食べる糖蜜菓子を心行くまで堪能し、最後にもう一度甘茶をすする。
「満足したか?」
「うん」
「では、話を聞こうとするかの。フレイは、何のようで来たのじゃ?」
「この指輪のこと」
フレイは、昨日、モールに貰った指輪を嵌めている右手を差し出し、少し口を尖らせて続きを話す。
「モールさんって、どうしてきちんと説明してくれないの?」
「なんじゃ? 急に怒り出して?」
「だって、モールさんのせいで、危うく火事を起こすところだったんだよ」
その途中、ボーの棲み処へ立ち寄り、ロナリアが蒸してくれたアスタルテと黒斑牛の乳から作ったバターを手渡す。
ボーは、素直に喜びを表し、帰宅したらロナリアへ礼を伝えるようにフレイへ頼む。
ヤーやフイ、ビーも、嬉しそうに尻尾を振って、フレイを舐め回す。
そうしてしばらく、ボーの子どもたちとじゃれ合ったフレイは、ボーたちに別れを告げてモールの家を訪れる。
「モールさん!」
フレイは、昨日見たときと同じように、縁側で空を見上げて日向ぼっこをしているモールへ呼びかける。
「ん?」
モールは、眠たそうな目をしてフレイを見る。
そして、かったるそうにして起き上がり、フレイへ手招きをする。
「今日は、どうしたんじゃ?」
「モールさんに聞きたいことができたから、やってきたの。迷惑だった?」
「いや、構わんぞ。ほれ、見ての通り、暇じゃからな」
モールは、縁側で座りなおし、大きく伸びをしながら、欠伸をする。
「モールさんって、することないの?」
フレイは、暢気な様子のモールを見て、思わず疑問が口をついて出る。
「フレイには分からんか?」
「何を?」
モールは、フレイをじっと見つめて、可笑しそうに含み笑いをする。
「まだまだじゃな」
モールは、ひとりで納得して、肩を回しながら立ち上がる。
フレイは、モールの言っていることが分からず、顔に疑問を浮かべたままである。
「今は、分からずともよい。魔力感知ができるようになれば、おのずと分かるようになるからの」
「さっぱり分からないけど……」
「はははっ。今はまだ、いつも暇そうにしておるモールさんということじゃ。深く聞くでない」
そう言って、モールは、部屋の中に入り、フレイのためにイタヤカエデの花蜜甘茶を入れてやる。
「遠慮せずに入ってこい。用があったんじゃろ?」
「うん」
何がなんだか分からないものの、当初の目的を果たすために、フレイは靴を脱いで部屋へと上がる。
「ほれ。昨日、好きだと言っておった甘茶じゃ。菓子はいるか?」
「うん、ちょうだい。……モールさんの甘茶、好きなんだよね。ありがとう」
フレイは、座椅子に腰掛けて、湯気を立てる甘茶をふーふーと息を吹きかけながら飲み始める。
「よしよし。なら、今日は、テムから貰った紅玉を糖蜜漬けにした菓子を出してやろう」
モールは、台所へ行き、少し大きめの瓶を持って戻ってくる。
「ありがとう、モールさん」
フレイは、初めて食べる糖蜜菓子を心行くまで堪能し、最後にもう一度甘茶をすする。
「満足したか?」
「うん」
「では、話を聞こうとするかの。フレイは、何のようで来たのじゃ?」
「この指輪のこと」
フレイは、昨日、モールに貰った指輪を嵌めている右手を差し出し、少し口を尖らせて続きを話す。
「モールさんって、どうしてきちんと説明してくれないの?」
「なんじゃ? 急に怒り出して?」
「だって、モールさんのせいで、危うく火事を起こすところだったんだよ」
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
聖女の姉ですが、宰相閣下は無能な妹より私がお好きなようですよ?
渡邊 香梨
ファンタジー
コミックシーモア電子コミック大賞2025ノミネート! 11/30まで投票宜しくお願いします……!m(_ _)m
――小説3巻&コミックス1巻大好評発売中!――【旧題:聖女の姉ですが、国外逃亡します!~妹のお守りをするくらいなら、腹黒宰相サマと駆け落ちします!~】
12.20/05.02 ファンタジー小説ランキング1位有難うございます!
双子の妹ばかりを優先させる家族から離れて大学へ進学、待望の一人暮らしを始めた女子大生・十河怜菜(そがわ れいな)は、ある日突然、異世界へと召喚された。
召喚させたのは、双子の妹である舞菜(まな)で、召喚された先は、乙女ゲーム「蘇芳戦記」の中の世界。
国同士を繋ぐ「転移扉」を守護する「聖女」として、舞菜は召喚されたものの、守護魔力はともかく、聖女として国内貴族や各国上層部と、社交が出来るようなスキルも知識もなく、また、それを会得するための努力をするつもりもなかったために、日本にいた頃の様に、自分の代理(スペア)として、怜菜を同じ世界へと召喚させたのだ。
妹のお守りは、もうごめん――。
全てにおいて妹優先だった生活から、ようやく抜け出せたのに、再び妹のお守りなどと、冗談じゃない。
「宰相閣下、私と駆け落ちしましょう」
内心で激怒していた怜菜は、日本同様に、ここでも、妹の軛(くびき)から逃れるための算段を立て始めた――。
※ R15(キスよりちょっとだけ先)が入る章には☆を入れました。
【近況ボードに書籍化についてや、参考資料等掲載中です。宜しければそちらもご参照下さいませ】
ブレードステーション
カレサワ
ファンタジー
この国の交通の要とも言える鉄道駅。その地下構内からそれは突如として現れた。高い純度の金属で形成された外殻に既存の水準を遥かに超えた技術とで構成された、機械と生物が融合したようななんとも奇妙でおぞましい姿をしたそれ……リソーサーは、瞬く間にその数を増やし、周囲の生物を手当たり次第に襲うだけでなく、電気や金属までをも喰らうその習性は、人間や既存の生物とは全く相容れない存在であり、文明社会を破壊するその侵略的新種に人々は恐怖した。
政府は自衛軍を投入しての殲滅作戦を実行するものの、リソーサーは一つの駅だけでなく、多くの主要な駅からも出現。そのあまりの多さに、自衛軍を管轄する国防省もリソーサーの殲滅から周囲への進出を阻止する方針へと転換せざる得なくなった。
代わってダンジョンと化した駅構内へと入りリソーサーの駆除を担ったのは、そこから得られる資源の回収を目当てに参入した民間の軍事資源回収企業に所属し、機動鎧甲と呼ばれるパワーアシストスーツを纏い戦いへと身を投じる社員達"スペキュレイター"であった……
これはそんな世界で今日も駅ダンジョンに稼ぎに出る、ある(弱小零細)新興企業のお話。
小説家になろう、カクヨムにも連載しています
ブラック・スワン ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~
碧
ファンタジー
「詰んだ…」遠い眼をして呟いた4歳の夏、カイザーはここが乙女ゲーム『亡国のレガリアと王国の秘宝』の世界だと思い出す。ゲームの俺様攻略対象者と我儘悪役令嬢の兄として転生した『無能』なモブが、ブラコン&シスコンへと華麗なるジョブチェンジを遂げモブの壁を愛と努力でぶち破る!これは優雅な白鳥ならぬ黒鳥の皮を被った彼が、無自覚に周りを誑しこんだりしながら奮闘しつつ総愛され(慕われ)する物語。生まれ持った美貌と頭脳・身体能力に努力を重ね、財力・身分と全てを活かし悪役令嬢ルート阻止に励むカイザーだがある日謎の能力が覚醒して…?!更にはそのミステリアス超絶美形っぷりから隠しキャラ扱いされたり、様々な勘違いにも拍車がかかり…。鉄壁の微笑みの裏で心の中の独り言と突っ込みが炸裂する彼の日常。(一話は短め設定です)
私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。
アーエル
ファンタジー
旧題:私は『聖女ではない』ですか。そうですか。帰ることも出来ませんか。じゃあ『勝手にする』ので放っといて下さい。
【 聖女?そんなもん知るか。報復?復讐?しますよ。当たり前でしょう?当然の権利です! 】
地震を知らせるアラームがなると同時に知らない世界の床に座り込んでいた。
同じ状況の少女と共に。
そして現れた『オレ様』な青年が、この国の第二王子!?
怯える少女と睨みつける私。
オレ様王子は少女を『聖女』として選び、私の存在を拒否して城から追い出した。
だったら『勝手にする』から放っておいて!
同時公開
☆カクヨム さん
✻アルファポリスさんにて書籍化されました🎉
タイトルは【 私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください 】です。
そして番外編もはじめました。
相変わらず不定期です。
皆さんのおかげです。
本当にありがとうございます🙇💕
これからもよろしくお願いします。
異世界で神の使徒になりました
みずうし
ファンタジー
突如真っ白な空間に呼び出された柊木 真都は神と対面する。
そして言われたのが「気にくわない奴をぶっ飛ばしてほしい。チートあげるから」だった。
晴れて神の使徒となった柊木は『魔法創造』の力で我が道を行く!
追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~
さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。
全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。
ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。
これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。
チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~
ふゆ
ファンタジー
私は死んだ。
はずだったんだけど、
「君は時空の帯から落ちてしまったんだ」
神様たちのミスでみんなと同じような輪廻転生ができなくなり、特別に記憶を持ったまま転生させてもらえることになった私、シエル。
なんと幼女になっちゃいました。
まだ転生もしないうちに神様と友達になるし、転生直後から神獣が付いたりと、チート万歳!
エーレスと呼ばれるこの世界で、シエルはどう生きるのか?
*不定期更新になります
*誤字脱字、ストーリー案があればぜひコメントしてください!
*ところどころほのぼのしてます( ^ω^ )
*小説家になろう様にも投稿させていただいています
王女の夢見た世界への旅路
ライ
ファンタジー
侍女を助けるために幼い王女は、己が全てをかけて回復魔術を使用した。
無茶な魔術の使用による代償で魔力の成長が阻害されるが、代わりに前世の記憶を思い出す。
王族でありながら貴族の中でも少ない魔力しか持てず、王族の中で孤立した王女は、理想と夢をかなえるために行動を起こしていく。
これは、彼女が夢と理想を求めて自由に生きる旅路の物語。
※小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる