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凍雪国編第2章
第47話 秘石+蒼炎の威力
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翌朝。
フレイは、また、いつもよりも早くに目が覚めてしまう。
ロナリアやリリア、ニアは、まだ寝ているようで、起き出した気配はない。
そのため、フレイは、朝の日課として行うと決めた魔法の練習をするために、静かに家を抜け出し、家の裏手へと回る。
(今日は、ボーは来ていないよね?)
フレイは、辺りをきょろきょろと見渡し、ボーやほかの人の姿が見えないことに安心する。
(秘密の特訓は、隠れてするものだよね……)
くふふっと、ひとり忍び笑いを漏らし、秘め事ができた嬉しさに浸る。
そして、薪山から薪を1つ持ち上げ、開けた地面の上にそれを置く。
(さてと……。オセイアの秘石を発動させてから、魔力の流れを感じようかな……)
フレイは、指輪を覆っている魔防布を取り除き、右手を体よりも少し前に突き出す。
『generating power』
『fire』
フレイは、右手に生み出した火が一直線に薪に当たる様子をじっと見つめる。
火は、薪に火が当たったところで、1cmほどの穴を開けながら、奥へ奥へと燃え進んでいく。
(全然……分かんないんだけど……?)
フレイは、全くと言っていいほど魔力の流れがつかめず、やや諦めたように火を出し続ける。
火は、すでに薪を貫通してしまい、薪の向こう側にある地面を焦がし続けている。
(モールさんは、この指輪を使って、どう魔力を感じろというのかな?)
フレイは、火を切り、右手の中指で淡く光るオセイアの秘石を見て思う。
オセイアの秘石は、石の中心から光を発しており、時折、その光がやわらかく揺らいでいるように見える。
(とりあえず、蒼炎も使ってみようかな?)
フレイは、薪にする前の丸太を持ってきて、先ほどの薪の隣に置く。
そして、丸太の前で右手を突き出し、手のひらの魔力に、蒼炎属性を乗せる。
すると、無詠唱で発動された青い炎が、指輪から閃光とともに一直線に勢いよく噴き出し、じゅっという音を立てて、丸太を瞬時に煤にする。
「わっ!」
フレイは、驚いて大きな声を出し、慌てて青い炎を消す。
丸太があった場所には、煤の山だけが残り、高熱の余波を食らった隣の薪が勢いよく火を吹き上げる。
また、丸太の向こう側にあった石は、赤く焼けただれ、灼熱した溶岩石のように溶けている。
「どうしたの!?」
ばたんっと、大きな音がして窓が開き、ロナリアが心配そうに声をかけてくる。
「う、ううん……。何でもないよ……」
フレイは、動揺を隠せずに答える。
地面では薪が勢いよく燃え続け、フレイの周囲には熱気が立ちこめる。
「また、魔法の練習をしていたの?」
「う、うん……。そうだよ……」
「上手に燃えているじゃない。魔法の扱いが上手くなったのね」
ロナリアは、フレイの様子を訝しく思いながらも、魔法の成果を見て褒める。
「う、うん。ありがとう」
フレイは、ありえない現象見て驚き、胸がばくばくしている。
しかし、できるだけ平静を装って、ロナリアに答える。
ロナリアは、フレイの様子から、フレイが自分の知らない属性魔法を試していたことを何となく理解する。
丸太の成れの果てである煤は、隣の薪が上げる火に蹴散らされて、徐々に少なくなっていく。
「フレイ。火の魔法は、燃え広がると火事になるわよ。だから、魔法の練習は、ほかの属性でしなさいね。フレイは、水魔法が使えたでしょ?」
「う、うん。今度から、水属性で練習するよ」
フレイは、ロナリアの注意を素直に聞き、蒼炎はやはり危険な属性なんだと心の中で秘かに思う。
「あと少しで、ご飯にするわよ。フレイは、その薪の火を消して、火事にならないようにしてから家の中に入ってきてね」
「うん、分かった」
ロナリアは、丸太の残骸に気がついていたが、結局、それについては何も言わず、そのまま窓を閉めてしまう。
フレイは、閉じられた窓をしばらく眺めた後、薪の火が小さくなり、炭になっていく様子をじっと見つめる。
(蒼炎って……、僕には使えないじゃない……)
この村にいる限り、蒼炎属性を使う場面はない。
また、狩りに出かけたときも、蒼炎属性を獲物に当ててしまっては灰か煤しか残らない。
強すぎる力は嬉しいが、使い道のない力は悩みの種になりうることを、フレイはようやく理解する。
(お母さんやホレイさんが言いたかったことって、このことだったのかな?)
はぁっと、深いため息をついたフレイは、まだ燻り続けている薪に向かって、水魔法を唱える。
『water』
(わっ!)
オセイアの秘石から噴き出した水は、ほとんど炭と化していた薪を吹き飛ばし、地面を大きく抉り取る。
フレイは、またもや慌てて水を止め、水浸しや泥だらけになった周りを呆然として見つめる。
(何なの……、この指輪……)
フレイは、魔力の流れを感じとるどころか、魔法の威力さえコントロールできないことに愕然とする。
これは、オセイアの秘石の特性を理解していないために起きたことだが、フレイには何がなんだかさっぱり分からない。
(そういえば……、お母さんはこの指輪を以前に使ったことがあるって言っていたよね)
フレイは、抉れた地面を急いで埋め戻し、指輪に魔防布を被せる。
そして、ロナリアに指輪のことを聞くために、家の中へ駆け戻る。
フレイは、また、いつもよりも早くに目が覚めてしまう。
ロナリアやリリア、ニアは、まだ寝ているようで、起き出した気配はない。
そのため、フレイは、朝の日課として行うと決めた魔法の練習をするために、静かに家を抜け出し、家の裏手へと回る。
(今日は、ボーは来ていないよね?)
フレイは、辺りをきょろきょろと見渡し、ボーやほかの人の姿が見えないことに安心する。
(秘密の特訓は、隠れてするものだよね……)
くふふっと、ひとり忍び笑いを漏らし、秘め事ができた嬉しさに浸る。
そして、薪山から薪を1つ持ち上げ、開けた地面の上にそれを置く。
(さてと……。オセイアの秘石を発動させてから、魔力の流れを感じようかな……)
フレイは、指輪を覆っている魔防布を取り除き、右手を体よりも少し前に突き出す。
『generating power』
『fire』
フレイは、右手に生み出した火が一直線に薪に当たる様子をじっと見つめる。
火は、薪に火が当たったところで、1cmほどの穴を開けながら、奥へ奥へと燃え進んでいく。
(全然……分かんないんだけど……?)
フレイは、全くと言っていいほど魔力の流れがつかめず、やや諦めたように火を出し続ける。
火は、すでに薪を貫通してしまい、薪の向こう側にある地面を焦がし続けている。
(モールさんは、この指輪を使って、どう魔力を感じろというのかな?)
フレイは、火を切り、右手の中指で淡く光るオセイアの秘石を見て思う。
オセイアの秘石は、石の中心から光を発しており、時折、その光がやわらかく揺らいでいるように見える。
(とりあえず、蒼炎も使ってみようかな?)
フレイは、薪にする前の丸太を持ってきて、先ほどの薪の隣に置く。
そして、丸太の前で右手を突き出し、手のひらの魔力に、蒼炎属性を乗せる。
すると、無詠唱で発動された青い炎が、指輪から閃光とともに一直線に勢いよく噴き出し、じゅっという音を立てて、丸太を瞬時に煤にする。
「わっ!」
フレイは、驚いて大きな声を出し、慌てて青い炎を消す。
丸太があった場所には、煤の山だけが残り、高熱の余波を食らった隣の薪が勢いよく火を吹き上げる。
また、丸太の向こう側にあった石は、赤く焼けただれ、灼熱した溶岩石のように溶けている。
「どうしたの!?」
ばたんっと、大きな音がして窓が開き、ロナリアが心配そうに声をかけてくる。
「う、ううん……。何でもないよ……」
フレイは、動揺を隠せずに答える。
地面では薪が勢いよく燃え続け、フレイの周囲には熱気が立ちこめる。
「また、魔法の練習をしていたの?」
「う、うん……。そうだよ……」
「上手に燃えているじゃない。魔法の扱いが上手くなったのね」
ロナリアは、フレイの様子を訝しく思いながらも、魔法の成果を見て褒める。
「う、うん。ありがとう」
フレイは、ありえない現象見て驚き、胸がばくばくしている。
しかし、できるだけ平静を装って、ロナリアに答える。
ロナリアは、フレイの様子から、フレイが自分の知らない属性魔法を試していたことを何となく理解する。
丸太の成れの果てである煤は、隣の薪が上げる火に蹴散らされて、徐々に少なくなっていく。
「フレイ。火の魔法は、燃え広がると火事になるわよ。だから、魔法の練習は、ほかの属性でしなさいね。フレイは、水魔法が使えたでしょ?」
「う、うん。今度から、水属性で練習するよ」
フレイは、ロナリアの注意を素直に聞き、蒼炎はやはり危険な属性なんだと心の中で秘かに思う。
「あと少しで、ご飯にするわよ。フレイは、その薪の火を消して、火事にならないようにしてから家の中に入ってきてね」
「うん、分かった」
ロナリアは、丸太の残骸に気がついていたが、結局、それについては何も言わず、そのまま窓を閉めてしまう。
フレイは、閉じられた窓をしばらく眺めた後、薪の火が小さくなり、炭になっていく様子をじっと見つめる。
(蒼炎って……、僕には使えないじゃない……)
この村にいる限り、蒼炎属性を使う場面はない。
また、狩りに出かけたときも、蒼炎属性を獲物に当ててしまっては灰か煤しか残らない。
強すぎる力は嬉しいが、使い道のない力は悩みの種になりうることを、フレイはようやく理解する。
(お母さんやホレイさんが言いたかったことって、このことだったのかな?)
はぁっと、深いため息をついたフレイは、まだ燻り続けている薪に向かって、水魔法を唱える。
『water』
(わっ!)
オセイアの秘石から噴き出した水は、ほとんど炭と化していた薪を吹き飛ばし、地面を大きく抉り取る。
フレイは、またもや慌てて水を止め、水浸しや泥だらけになった周りを呆然として見つめる。
(何なの……、この指輪……)
フレイは、魔力の流れを感じとるどころか、魔法の威力さえコントロールできないことに愕然とする。
これは、オセイアの秘石の特性を理解していないために起きたことだが、フレイには何がなんだかさっぱり分からない。
(そういえば……、お母さんはこの指輪を以前に使ったことがあるって言っていたよね)
フレイは、抉れた地面を急いで埋め戻し、指輪に魔防布を被せる。
そして、ロナリアに指輪のことを聞くために、家の中へ駆け戻る。
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