ロシュフォール物語

正輝 知

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凍雪国編第2章

第29話 フレイとニアの弟子入り1

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「お主たちは、本当に優しいのぅ……」

 モールは、フレイとニアの申し出に感謝して微笑む。

「それに、僕は、モールさんに鍛えて欲しいから、ちょうどいいよね」

 フレイは、先ほどまでの悲しさが嘘のように、にたっと笑う。

「本音は、そっちか?」

 モールは、フレイの現金さに少し呆れたが、やはり嬉しそうに笑いながら言う。

「ううん。どっちも本当」

 フレイは、えへんっと胸を張って威張いばる。

「私からも、お願いします」

 ニアは、丁寧に頭を下げて、モールに許しを請う。

「分かった、分かった。お主たちの弟子入りを許そう」

 モールは、小さくため息をついて、座椅子の背もたれに身を預ける。

「本当?」

「あぁ、本当じゃ。ただし、わしは容赦せんぞ。簡単に音を上げるようなら、それ以上は教えん。それでもいいか?」

 モールは、優しい笑顔から厳しい師匠の顔に変え、フレイやニアの覚悟を問う。

「うん。僕、頑張るよ」

「私も、頑張ります」

 フレイとニアは、真剣な表情をして、意気込みを語る。

「うむ。では、ニアは、魔力量を増やす訓練を毎日やってもらう。フレイは、勉強じゃ」

「え~!」

 フレイは、早速抗議の声を上げる。

「なんじゃ? 文句があるのか?」

「……ありません……」

 少し意地悪そうに言うモールに、ぐうの音も出ないフレイは、しぶしぶながら受け入れる。
 そんな様子を見たモールは、さすがに良心の呵責かしゃくを覚え、優しく説明を加える。

「フレイは、魔法のことを知るためには、まずは言葉を知らなければならん」

 モールは、師匠らしくおごそかな物言いをして、フレイに今足りていないことを指摘する。

「……はい……」

 フレイは、しおらしく耳を傾ける。

「次に、世の中のことわりを知り、己のことを知るのじゃ」

「自分のこと?」

「そうじゃ」

「どうして?」

 フレイは、強くなるために、どうして自分のことを知らなければいけないのか理解できない。

「自分ができることと、できないことを知り、心の弱さを克服するためじゃよ」

「それが強くなる秘訣?」

「あぁ。どんな流派であろうとも、極意の根本は同じじゃからな」

 モールは、強者に共通する真理をフレイとニアに教える。

「三宝滅も?」

 フレイは、以前に聞いた話をモールへ聞いてみる。

「ん? フレイは、誰からそのことを聞いたんじゃ?」

「ホレイさん。モールさんがこの村で一番強くて、三宝滅っていう剣術の達人だって教えてくれた」

「なるほどのぅ……」

 モールは、軽く呟き、ホレイがフレイにそのことを語った理由を何となく想像する。
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