ロシュフォール物語

正輝 知

文字の大きさ
上 下
140 / 492
凍雪国編第2章

第27話 高魔力体質者の悲哀1

しおりを挟む
 モールは、虹石に隠された秘密をフレイとニアに教える。

「あぁ。大陸では、虹石で魔力の質が判定できることも伝わってはおらん。じゃが、禁書と呼ばれるこの属性事典などには、虹石の光量で魔力の質を判定すると書かれておる。しかし、この本にも、その最高の質は目もくらむようなまぶしい光、もしくは、太陽光と同じと書かれておる」

「さっき、私たちが見た光ですね」

「そうじゃ」

「でも、その虹石は違いますね」

 ニアは、モール手の中にある虹石を指差して言う。

「虹石はな……、魔力の質が高すぎると光を発しなくなるじゃ。そしてさらに、質の高い魔力に触れると砕け散ってしまう。これは、禁書にも載っておらんことじゃ」

「へぇ~」

 フレイは、禁書にも載っていない秘密を知ることができて、嬉しそう微笑む。

「では、モールさんは、私たちよりも魔力の質が高いということなんですね」

「そうじゃよ。試しに持ってみるか?」

 モールは、握っていた虹石をニアの手のひらの上に置く。

「!」

 ニアは、虹石を持った途端に顔色を変え、驚いてモールを見る。

「分かったか?」

「はい……」

 ニアは、恐る恐る手の中の虹石に視線を移し、信じられない顔をして見つめる。

「なに? なに? どうしたの?」

 フレイは、ニアに起きていることを理解できずに、少し駄々をこね出す。

「フレイも、持ってみれば分かるわ」

 そう言ってニアは、モールの虹石をフレイの手の中へ移す。

「わっ!」

 フレイは、虹石を持った瞬間に声を上げ、自身の魔力が大きく乱されるのを感じとる。

「何これ! 気持ち悪い!」

 フレイは、それ以上虹石を持っていることができずに、机の上に放り投げる。

「どういうことですか?」

 ニアは、フレイの様子を眺めながら、疑問に感じたことを口にする。

「わしの魔力は、濃すぎるがゆえに、人の魔力をかき乱すんじゃよ」

 モールは、寂しげに言い、フレイが手放した虹石を大事に箱の中に収める。

「わしは、高魔力体質じゃよ。しかも、異常なほどのな……」

「高魔力体質?」

 フレイは、気持ち悪い感覚をなくそうと必死に手を擦り合わせていたのをやめて、モールへ聞き返す。

「そうじゃ。高魔力体質は、ほとんどが生まれもった体質じゃ。まぁ……、わしの場合は少々違ったがの」

「そうなんですね……」

「じゃが、お主らも、大陸へ行けば、高魔力体質じゃと恐れられ、迫害を受けることになるやもしれん」

「私たちも……ですか?」

「あぁ。大陸の人間は、そのほとんどが魔力に乏しい。じゃから、短命族の人間が、虹石で魔力量を調べてみても、光はほとんど変化しない。それ故、虹石で魔力の質が判定できることを知らん」

 モールは、大陸で虹石の光が問題とはならない理由をフレイとニアに教える。

「しかも、その魔力量も、良くて橙か黄色ぐらいじゃしな」

「ふ~ん……」

 フレイは、モールの悲しさを何となく感じとり、寂しそうに語るモールに控えめに頷く。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

政略結婚で結ばれた夫がメイドばかり優先するので、全部捨てさせてもらいます。

hana
恋愛
政略結婚で結ばれた夫は、いつも私ではなくメイドの彼女を優先する。 明らかに関係を持っているのに「彼女とは何もない」と言い張る夫。 メイドの方は私に「彼と別れて」と言いにくる始末。 もうこんな日々にはうんざりです、全部捨てさせてもらいます。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」  何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?  後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!  負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。  やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*) 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/06/22……完結 2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位 2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位 2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

侯爵夫人は子育て要員でした。

シンさん
ファンタジー
継母にいじめられる伯爵令嬢ルーナは、初恋のトーマ・ラッセンにプロポーズされて結婚した。 楽しい暮らしがまっていると思ったのに、結婚した理由は愛人の妊娠と出産を私でごまかすため。 初恋も一瞬でさめたわ。 まぁ、伯爵邸にいるよりましだし、そのうち離縁すればすむ事だからいいけどね。 離縁するために子育てを頑張る夫人と、その夫との恋愛ストーリー。

処理中です...