ロシュフォール物語

正輝 知

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凍雪国編第2章

第21話 フレイとニアの魔力測定2

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「魔力を流しながらでええから、二人とも、これを枕にして横になるんじゃ」

 モールは、持ってきた丸太を床に並べて、そこに頭を乗せるように指示を出す。

「モールさんって、先に準備をするってことをしないの?」

 フレイは、虹石を握り締めながら、至極しごくまっとうな意見を述べる。

「文句を言うな、フレイ。ただ単に、忘れとっただけじゃ。虹石を使うなんて、久しぶりのことじゃからな」

 モールは、勝手に自己弁護して、フレイとニアが横たわるのを確認する。

「魔力を急に流し続けると、頭がぼうっとなって意識が途切れるかもしれんから、気をつけるのじゃぞ」

「それを、早く言ってよ」

 フレイの隣でも、ニアがこくこくと強く頷く。

「フレイのは黄色じゃが、まだまだ元気があるのぅ……」

 モールは、フレイの手の中にある虹石の色を確認して、独り言のように呟く。

「眠くなったり、ぼうっとなったりはせんか?」

「ううん。まだ、大丈夫だよ」

「私は、頭が少し痛い……」

 ニアは、頭に手を当てて、少し苦しげな表情をする。

「続けるのが無理そうなら、止めても構わんぞ?」

 モールは、言葉に優しさを込めて言う。
 しかし、ニアは首を横に振り、「まだ大丈夫……」と言い、魔力を流し続ける。

「まぁ……、死ぬことはないじゃろ……」

 魔力切れは、運が悪いと命を落とすこともある。
 しかし、すぐに魔力を補充できれば、命に関わることはない。
 モールは、意地になって魔力を注ぎ込むフレイと、辛そうな顔で魔力を流し続けるニアを見比べて評価する。

(フレイは無茶じゃが、ニアは我慢強いのぅ……)

 それから、モールは、『darknessダークネス』と唱え、眩しさが増してきた虹石の光を闇でさえぎる。
 しばらくして、フレイが力尽きて虹石を手放し、ニアは意識を保ちながらも、自分の限界を目でモールに訴えかける。

「うむ、終わりじゃな」

 ニアは、荒い息を繰り返しながら、苦悶の表情を浮かべ続ける。
 モールは、二人から虹石を取り上げて、机の上に置き、闇を払って色を調べる。

「こりゃまた……、ずいぶんと眩しいのぅ」

 モールは、あまりの眩しさに目を細めながら、二つの虹石を覗き込み、色を確認する。

(フレイは透明で、ニアは赤……?)

 モールは、もう一度、『darknessダークネス』と唱え、虹石の光を闇で遮る。

(なんじゃ、こやつらは……。まったくの出鱈目でたらめじゃな……)

 モールは、床に寝転がっているフレイとニアを見て、小さくため息をつく。

(やれやれ……。ドルマとホレイは、面白い奴らを寄越よこしたもんじゃて……)

 モールは、くくくっと忍び笑いを漏らし、なにやら楽しくなってきた自分を見て、愉快に思う。

「モールさん?」

 ニアは、苦しげながらも息を整えつつ、変な声を出しているモールを見上げて、声をかける。

「ん? どうした?」

「いえ……。モールさんが笑っていましたから、どうしたのかと……?」

「なに、気にするでない。それよりも、苦しいじゃろう?」

「えぇ……」

 モールは、『magical distributionマジカルディストリビューション』と唱え、己の魔力をフレイとニアに分け与える。
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