ロシュフォール物語

正輝 知

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凍雪国編第2章

第5話 始祖の誕生秘話1

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 夕食を食べ終えたフレイは、慣れない手伝いに疲れがどっと出る。
 しかし、体が緊張しているのか、睡魔が全く寄ってこない。
 そこで、台所で片付けものをしているロナリアのもとへ行く。
 台所には、リリアとニアもいて、皆が食べた料理の食器類を洗っている。

「ねぇ、お母さん。寝る前に、何かお話しくれる?」

 寝巻きに着替え終えたフレイは、かまどの火を落としているロナリアへお願いをする。

「いいわよ。フレイは、どんなお話が聞きたいの?」

「う~ん……。始祖さまの話がいい」

 フレイは、この間から気になっていた始祖のことが聞きたくてしょうがない。

「始祖さまの話ね」

 快く頷いたロナリアは、隣のリリアやニアにも声をかける。

「あなたたちも、一緒に聞く?」

「あたしは、もう知っているからいいわよ。これが終わったら、寝るわ」

 リリアは、欠伸あくびをかみ殺して、そう言い、食器をじゃぶじゃぶと洗いながら眠たげな目をする。

「ニアは、どう?」

「私は、聞きたい。フレイ、一緒でもいい?」

 ニアは、リリアが洗い終わった皿を拭き、食器棚に仕舞いながら答える。

「うん、いいよ」

 フレイは、嬉しそうにして頷く。

「じゃぁ、フレイは、先に寝室に行って寝床を整えていなさい。私たちも、これが終わったらフレイの部屋に行くから……」

「はぁい」

 フレイは、甘えの残る声で返事をして、部屋に戻っていく。



 ロナリアとニアは、台所の片付けを終え、フレイの部屋に入る。
 真っ暗の部屋の中では、フレイが、すでにベッドの上で横になっている。

「寝たの? フレイ?」

 ロナリアは、壁に掛けてある魔道具を作動させ、あかりをともし、部屋に入る。
 そして、ベッドの横に腰掛け、フレイの体をする。
 ニアは、ロナリアの隣に座り、フレイを覗き込む。

「ううん。起きているよ」

 フレイは、少しまぶしげにして上半身を起こし、ロナリアとニアを見上げる。
 フレイは、いつもなら、この時間にはすでに眠りについているはずである。
 しかし、今日は、体が疲れてはいるものの、眠気は全くやってこない。

「眠くないの?」

 ロナリアは、フレイの体を心配して気遣う。

「うん」

 フレイは、大丈夫だよというように、大きく伸びをして、目をぱっちりと開ける。

「そう……。フレイは、アロンとジルがいなくなって、少し気が張っているのかもね」

 そう言って、ロナリアは、隣のニアに声をかける。

「ニアは平気?」

「お母さん、私も少し不安だよ」

 ニアは、父や兄たちがいなくなった心細さを隠さずに言う。

「そうね。私も寂しいし、二人のことは心配かな……」

 ロナリアは、フレイとニアの頭をなでて、優しく笑う。
 そして、二人を抱き寄せ、ぎゅっと抱きしめる。

「分かったわ。それじゃぁ、始祖さまの話をして、始祖さまから少し勇気を貰いましょうか」

 フレイは、嬉しげに頷き、ニアも微笑みながら首を縦に振る。
 ロナリアは、すでに御伽噺おとぎばなしの主人公として語り継がれている始祖について話し始める。

「じゃぁ、始祖さまの誕生秘話を話してあげる」

「うん」
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