ロシュフォール物語

正輝 知

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凍雪国編第1章

第107話 出立日の朝2

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「フレイは、いい弟だな……」

「そうだな」

 ジルが漏らした感想に、アロンが同意する。
 フレイは、涙目のまま、口角を指でり上げ、無理に笑顔を維持しようと頑張っている。

「フレイ。3年後に帰って来たら、大陸の土産みやげ話をたくさん持ってきてやるからな。フレイは、冒険がしたいんだろう?」

「うん……」

「それじゃぁ、フレイへの土産は、冒険グッズだな」

「あぁ、それはいいな」

 ジルの提案に、アロンが乗る。

「……ありがとう」

 作り笑いを顔に張りつかせたフレイは、素直に感謝の気持ちを表す。

「その調子だ、フレイ。無理にでも笑え。アロンとジルが、安心して旅立てるようにな」

「……うん」

 フレイは、また、にぃ~と、口角を吊り上げて、いびつな笑顔を作る。
 しかし、目からは、大粒の涙が零れ落ちる。

「うんうん。少しぎこちないが、ないよりはましだ。それより、フレイは、アロンとジルに言っておきたいことはないのか?」

「……無事に帰ってきてくれれば、それでいい……。なるべく早く帰ってきて」

「そ、そうか……」

(お使いに行くのではないのだが……)

 ダイザは、心の中で思いながらも、口に出してはこう言う。

「アロンとジルも、フレイに言っておくことはないか?」

「早く帰ってくるよ、フレイ。良い子で待っていてくれるな?」

 ジルは、フレイの気持ちをんで、早期の帰還を約束する。

「うん」

 フレイは、嬉しそうに頷く。

「俺たちが留守の間は、フレイが父さんと一緒に、母さんやリリアたちを守るんだぞ?」

「ん。任せておいて」

 フレイは、目に力を込めて、大きく頷く。

「あと、俺たちがやってきた手伝いをよろしく」

「うん。それも、頑張る」

「でも、無理はするなよ。フレイは、真面目で、こんを詰め過ぎるから……。要領よく手を抜いて、空き時間を作れよ」

「分かった」

 それを聞いて、アロンとジルは安心したかのように笑い、フレイの肩や背中をぽんぽんとする。

「さて、別れ話はこれくらいにして、アロンとジルは荷物を持ち、村長のところへ行くぞ」

 二人は、意識を切り替えて頷き、すでに荷造りを終え、1つにまとめていた麻袋を背負う。

「あと、この短剣を持っていけ」

 そう言って、ダイザは、つかに精巧な模様が施された短剣をアロンに手渡す。

「これは?」

「昔、国主から賜ったものだ。国都で困ったことがあれば、役に立つかもしれん」

「助けになる?」

「たぶんな。だが、金に困って売るなよ」

「売らないよ」

 アロンは、思わず噴き出し、笑って答える。

「お前たちが帰ってきたら、その短剣は、フレイに持たせるつもりだからな」

「僕?」

 フレイは、話の成り行きが分からずに、ダイザを見上げる。
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