ロシュフォール物語

正輝 知

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凍雪国編第1章

第94話 蒼炎属性2

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 フレイは、手のひらの間に生み出した青い炎をあらためてじっと見る。

「炎属性からさらに派生した属性だ……。話には聞いていたが、生まれて初めて見た……」

 火属性の最上級属性である蒼炎は、すべてのものを一瞬で焼き尽くすほどの威力を持つ。
 思わず青い炎に手を伸ばしかけたホレイは、圧倒的な熱量を感じて、慌てて手を引っ込める。

「フレイは、熱くないのか?」

「うん、全然。……というか、ほんわかして気持ちいいよ。ほら……」

 フレイは、ゆらゆらと立ち昇る青い炎を左手に移し、右手を炎の中に入れる。

「信じられん……」

 ホレイは、絶句して、青い炎で遊ぶフレイを見る。

「これって、すごいことなの? ……ホレイさん?」

「……あぁ、すまない。あまりにも驚き過ぎて、言葉が出なかった」

 ホレイは、壁際の机に置いてある水差しから、よく冷えたイタヤカエデのお茶をグラスに注ぎ、一息に飲み干す。
 その間に、フレイは、ニアやランジェに青い炎を見せて、近づける。

「ニア姉さんとランジェも、熱く感じる?」

「えぇ……。近寄りたくないぐらい熱いわ」

「私も……」

 フレイが青い炎を近づけた分だけ、2人は体を遠ざける。

「フレイ、蒼炎を消してくれ。その炎は、危険すぎる」

 ホレイは、自分の椅子に座り直して、フレイに頼む。

「うん。ごめんね」

 素直に応じたフレイは、左手を握り締めて、青い炎を握り潰す。

「僕、知らなかったよ。この炎が危険だなんて……」

「実践で使ったことはないのか?」

「うん。僕にとっては、気持ちのいい温かさだから、狩りでは通用しないと思ってた。それに、これを人に見せたのも初めてだよ。皆できると思っていたし……」

「フレイは、ものを知らなさ過ぎる……」

 ホレイは、深いため息とともに、酷く疲れたようにぼそりと呟く。

「……それ、今朝も言われた……」

 フレイは、泣きそうな顔をしてニアを見る。

「フレイ……。少しずつ賢くなっていこうよ。私も一緒に勉強するから……」

「うん。ありがとう、ニア姉さん」

「ニアも、知らなかったのか?」

「はい。普段、フレイが魔法を使うときには、そばにいなかったので……」

「……一度、きちんと調べた方がいいかもな……」

 ホレイは、フレイとニアを見比べて、再びぼそりと呟く。

「お父さん。私も、フレイみたいに、すごいことができないかな?」

「分からん。ただ、2人がいろいろとできるように、ランジェも試してみたら、案外とできてしまうのかもしれん。……要は、やり方しだいだろうな」

「僕も、いろいろと考えたんだよ。アロン兄さんやジル兄さんが優秀だからさ……。それに追いつこうと思って……」

 フレイは、口をとがらせて、すねた口調でホレイやランジェに向かって言う。

「努力の証だな」

 ホレイは、ほがらかに笑い、フレイに答える。
 それを聞いて、少し嬉しくなったフレイも、にっと笑う。

「僕も、頑張っているよ」

「そうだな。無詠唱には、驚かされたし、蒼炎に至っては想像の範囲外だったからな……」
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