ロシュフォール物語

正輝 知

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凍雪国編第1章

第61話 村民の年齢

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 長命族と短命族では、年の重ね方が異なる。
 長命族の多くの場合、成長の度合いが遅く、100歳を越える辺りで大人の体つきとなる。

「あぁ。我々は、4年ごとに年を重ねる。一方、短命族の人間は、1年ごとに年を取り、長くても100年ほどしか生きない」

 ダイザは、子どもたちが分かりやすいように息子を例に上げる。

「例えば、そこにいるアロンは、今年で24歳だ。短命族の計算で言うと、すでに96歳も生きたということになる。だから、短命族にしてみれば、アロンはすでに老人で、あと数年も生きられないことになってしまうんだ」

 大陸南部にいる短命族のなかには、長命族のことを『寿人じゅじん』と呼ぶ人々もいる。

「へぇ~。そうなんだ……」

「僕たち、すごいんだね」

 コウザとブエンが素直な感想をいい、ほかの子どもたちも、あちこちで興奮したようにささやきだす。
 そして、トイが素朴な疑問を口にする。

「僕たちは、何歳まで生きられるの?」

 それを聞いたダイザが答える。

「それは、血の濃さにもよるな。この村の人間なら、短命族の数え年で、だいたい350年は生きられるはずだ。ただ、村長のように血が濃い方は、500年以上生きていられるだろう」

「村長、すごいね」

 コウザが、尊敬の眼差しでドルマを見上げて褒める。

「そうか?わしなど、まだまだじゃぞ」

 ドルマは、満更まんざらでもない顔をして答える。
 それを聞いたクスリナが、興味津々で質問する。

「ねぇ、一番長く生きた人って何歳まで生きたの?」

「これまで、一番長生きされたのは、始祖しそさまじゃ」

 ドルマは、得意気な顔でクスリナに答える。

「始祖さま?」

「そうじゃ。始祖さまは、長命族の血を色濃く継がれた方で、ロシュフォール族のいしずえを築かれた方じゃ。その始祖さまは、567年に渡る生涯を終えられたと伝えられておる」

「そんなに長く……」

 クスリナは、途方もない寿命の長さに驚き、軽くため息をつく。

「そうだな。しかし、村長も、短命族の数え年で316年目を過ごされているし、まだまだお元気だ。あと200年ぐらいは問題なく過ごされそうだぞ」

 ダイザは、にこりと微笑んで、まだまだ精気溢れるドルマを見る。
 ドルマは、呵呵かかと笑う。

「わしは、この村では年寄りじゃが、先祖に比べれば、まだまだ若造じゃ。じゃがの……、これからの時代は、お主らが担っていくのじゃぞ」

 ドルマは、未来を託すような目で子どもたちを見渡し、ホレイやダイザを頼もしそうに見つめる。

「ダイザよ。そろそろ、子どもたちに聖脈について話してやってくれんか?」

「そうですね。分かりました。では、聖脈について説明をします」

 ダイザは、ドルマにそう答え、脇に座っているボーを見て言う。

「ボーの一族のことから話すよ」

「よかろう」

 ボーは、そう言って頷き、ダイザは皆を見て、話し始める。
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