ロシュフォール物語

正輝 知

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凍雪国編第1章

第48話 村民の来訪3

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「むろん、そのつもりで来た」

 ボーは、ドルマの問いに肯定の答えを返す。

「そうか。それは、感謝する」

「我が子らも、この村との関わり合いを教えるには良い時期だからな」

「そうか……。しかし、この子らも、だいぶ大きくなったのぅ。もう話せるのか?」

 ドルマは、一番近くにいたヤーの背中をなでる。

「まだまだだな。声帯が完全に発育するまでには、もう少し時間がかかるであろう」

「それは、待ち遠しいな。早く言葉をしゃべれるようになって、わしの話し相手になって欲しいわい」

 ヤーがドルマに向かって立ち上がり、しきりに尻尾を振る。

「気が向いたら、ここへも足を運ぶようになる。それまでの辛抱だな」

「そうか。では、期待しておくとしようかの」

 ドルマは、焼き魚をきれいに平らげ、足元に寄ってきたフイやビーも可愛がる。
 すると、そこへ、ダイザがやってくる。

「村長。お取り込み中ですか?」

「おぉ、ダイザか」

 ドルマは、ボーの子どもらに土間へ行くように示して、ダイザを近くへ呼び寄せる。

「いや、すまんかった。あまりに可愛いので、つい……な」

「甘やかしては困る」

 ボーは、ドルマに苦言を呈し、子どもたちの後を追う。
 そして、ボーは、ダイザとすれ違いざまに、「フレイはどこだ?」と聞き、「土間へ行ったよ」との答えを得る。
 ダイザは、土間へ駆けて行くボーを見送って、ドルマに向き直る。

「村長。あとは、テムとキントが来れば、全員そろいます」

「そうか。早かったな」

 ドルマは、ダイザに頷き、ボーの子どもたちが食べ終えた皿を仕舞う。

「えぇ。みんな、何か面白いことが起こるのではないかと期待していますよ」

「うん? お主とテムは、何と言って呼び集めたのじゃ?」

「昔話をすると言いましたよ。あと、秘密の話もすると……」

「そうか……。まぁ、あながち間違ってはいないが、なんとも緊張感のないことだな」

 ドルマは、やれやれと首を振って、軽くため息をつく。

「それは……、仕方がありませんね。ここ数十年、このような事態はなかったことですから……」

「そうよな……」

 ドルマは、深く息を吸い込み、少し深刻な表情を見せた後、ダイザに笑いかける。

「少々、平和ボケしておるな」

「そうですね」

 ダイザも、軽く笑ってドルマに同意する。

「……なら、ここいらで、みなの気を引き締めんといかんの。今日は、わしらの転換点になるかもしれんでな」

「はい。では、そろそろ皆のもとへ行かれますか?」

「そうじゃな。そのうち、テムとキントも来るであろう」

 ドルマは、そう言って、食べ終えたヒュレイの手料理を持ち上げ、そばにあった焼き魚を見る。

「おぉ、そうじゃった……。この魚も持っていこうかの」

「どうされたのですか? そんなに一杯?」

 ダイザは、山盛りになっている焼き魚を見て、少し呆れたように言う。
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