ロシュフォール物語

正輝 知

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凍雪国編第1章

第44話 国都での任務

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 ドルマは、アロンやジル、キントを近くに呼んで話しかける。

「3人は、今の話を聞いておったの?」

「「「はい」」」

 元気よく、3人が同時に答える。

「うむ。良い返事じゃな。アロンとジル、それにキントは、それぞれが教練の師範を務めに国都へ赴くことになる。それは、いいな?」

「はい」

 3人を代表して、年長のアロンが答える。

「まぁ、教える内容に関しては、お主らが身につけた範囲で構わん。というよりも、国都の兵の未熟さに驚いて、小難しい話はできなくなるじゃろうな」

 ドルマは、国軍のレベルの低さを思い起こし、少々苛立ちを表す。

「それほど……ですか?」

 アロンは、国軍の現状については想像をするしかない。

「あぁ。ディスガルドの地は、長らく平和じゃった。じゃから、軍の錬度が、著しく落ちておる。もし、ルシタニアの本隊がやってきたら、間違いなく蹂躙されるの」

「それって、大変なことではないのですか?」

「大変じゃな。じゃから、そのような事態が起きたときには、奥地の部族が兵を出して、国都を救う手筈てはずになっておる」

「この村からも……ですか?」

「いや……。この村は離島にあるゆえ、そのような兵役は課されておらん。……というか、国都からも独立した存在じゃ。じゃから、国主も、この村へは協力要請という形でしか物を言うてこん。そもそも、国主からの使いも、ここ数十年なかったことじゃしな」

 ドルマは、国主とこの村との関係を若者たちに教える。

「最近は、ダイザとの30年ぐらい前のことで、それ以前は、モールさんとの80年ぐらい前のことでしたな」

 ホレイが、ドルマの話を補い、アロンたちに聞かせる。

「そうじゃな。我らは長命じゃから、時の流れをゆっくりと感じる。じゃから、それほど昔のことのようには感じんが、今の国主は、すでにダイザのときの国主ではない」

「亡くなられたのですか?」

 ダイザが疑問を口にする。

「それは、分からん。文には、国主ドラインとあるだけで、前の文に記されておったノール国主の名前はなかったでな。まだジョティルからも、詳しく聞いてはおらんから、子細は不明じゃの」

「そうですか……」

 ダイザは、元気のない声を出し、ややしんみりとした空気が部屋を覆う。

「ダイザは、ノール国主によくして貰っておったからの。恩義があるのじゃな」

「えぇ」

 ダイザは、時の流れの違いを実感して、力なく頷く。

「では、話を戻すが、国都では、3人は国主の配下ではなく、客人として遇されることになると思う。じゃから、国が寝る場所や食事を提供してくれるはずじゃ」

「分かりました」

「そして、いくらかのお手当ても支給されるはずじゃ」

「お手当てとは、何のことですか?」

「お金じゃよ。この村では、お金など何の価値もないが、大陸では、貨幣というものを使用して、モノと交換しておる。まぁ、その辺りのことは、明日にでも、ダイザやテムから聞けばよい」

「「「はい」」」

 アロンたちは、いよいよ国都へ行けるという期待に満ちた目で返事をする。
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