ロシュフォール物語

正輝 知

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凍雪国編第1章

第21話 来訪者への備え4

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 ドルマとホレイとの会話を静かに聞いていたフレイとロナリアは、ホレイを見送ったあと、ドルマに声を掛ける。

「村長。では、私たちも、家へ戻りますわね」

「あぁ、すまんの。こういうことじゃから、少々、立て込んだ話になるかもしれんわい」

「えぇ。何となく面倒なことになりそうな予感がしますわね」

 ロナリアは、隣のフレイの頭をなでながら言う。

「そうじゃな。ここ何十年も、外から人間が来ることなどなかったからのぅ……。用心をせねばいかん」

「私とフレイは、家で待機していますわ」

「あぁ、そうしてくれると助かる。それと、ロナリア。帰り際で構わぬから、畑に出ているものに、すぐに帰宅するように伝えてくれぬか?」

「分かりました。戦いの準備も……ですわね」

「そうじゃ。万が一に備えておかねばならぬ。ジョティルとやらが、悪さをしでかすかもしれんからのぅ」

 やれやれと、ドルマは首を振り、小さく呟く。

「厄介ごとが舞い込んで来なければいいがのぅ……」

 それを聞いたロナリアとフレイは、わずかに顔を引き締めて、村長宅をあとにする。



 ジョティルは、地面に残された足跡をできるだけ辿りながら、周りの景色を注意深く観察する。
 そうして、ようやく凍土林に変化が現れたのに気がつく。

(おや?)

 ジョティルは、凍土林の切れ間に、少し小高くなっている岩場を見つける。

(おぉ……。これが、地図に記されていた岩場ですね)

 ガサガサと、荷物袋をあさって、中から地図を取り出し、現在位置を確認する。

(ふむふむ。ようやく、ここまで来ましたか……)

 ジョティルは、地図から顔を上げて、岩場の上を見る。

(あの上に出れば、村が見えそうですね)



 大して苦労することなく岩場の頂上に辿り着いたジョティルは、遠方を眺める。

(あぁ、目的のミショウ村を発見しましたよ。今は、少し霧がかかっていますね)

 目的の村を見つけて、長旅の疲れが吹き飛んだかのような顔をする。

(今回の旅は、長かったですね……)

 ジョティルは、一月あまりにも及ぶこれまでの旅程を思い返して、しばし感慨にふける。
 しばらく、そうしてたたずんでいると、目的の村から2人の人間が出てくるのを目撃する。
 ジョティルは、遠目に確認して、目を凝らしながら推測する。

(あれは……、もしかして、バージとダイザですかね?)

 まだ、遠過ぎてよく確認できないが、何となくあの2人に雰囲気が似ていることを感じとる。

(はて? あの2人が、お迎えに来てくれたのであれば、嬉しいことですが……。いつ、ここにいる私のことを見つけたのでしょうか?)

 しばらく、ジョティルはそのまま動かずに、村から出てきた2人を目で追いかける。
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