大人の恋愛の始め方

文字の大きさ
上 下
195 / 222
【第4部】浩輔編

15.嫉妬の矛先

しおりを挟む
 七月に入り、浩輔は見習社員から正社員に昇格した。
 特に待遇が厚くなったわけではないが、バイト扱いだったのが正社員になった。前職ほどではないが、元々待遇はいい職場だ。
 相変わらずプライベートは堕落している。
 最近はマユカの誘いはないが、今日はミサに誘われ、彼女の部屋とやってきた。
 店に行ってもマユカの姿はないのだ。
(どうしたんだろ、体調悪いのかな)
 裕美ママの店の、ユリという女性が入院していたように、マユカも出られない理由があるのかもしれない。しかし心配は人並みにするだけで、あまり真剣に心配はしない浩輔だった。ミサの身体だけで欲を満たすしかないかな、と勝手なことを考えていた。
「いらっしゃい。上がって」
「うん、お邪魔します」
 そう言われ、いつものようにキラキラしたミサの部屋に上がり込む。
 上がり込むなり、彼女に抱きつかれた。
「わっ……」
「早くしたくて」
 唇を押しつけながら、浩輔のシャツの上から二つの先端の実をまさぐった。
 薄着になった今は、シャツ一枚を脱げばすぐ裸体になれる。
「ミ、ミサさん……」
 ふと、何か違和感があった。
(……?)
 なんだろう、と思うが、確定できるものがない。何に違和感を抱いたのか、はっきりとはわからない。
 ミサが急かすように浩輔のチノパンを脱がせ、下着をずらした。
 飛び出した浩輔のものを手で握り、咥える姿は淫乱そのものだ。
「どうしたの、なんでそんなに慌ててるの」
「んん……っ……んぐ……」
 欲しかったのだろうか。
 無心で咥えるミサの髪をそっと撫でてやる。時折上目遣いで浩輔を見遣り、嬉しそうに微笑んだ。
「巧すぎ……」
 ミサに初めてしてもらった時は、あまりの快感に気を失いそうになったものだ。
「ミサさん、いいよ、もう。俺もミサさんを良くしてあげたいから」
 ね、と優しく言い、ミサの口からそれを離すと立ち上がらせた。
「可愛い、ミサさん」
 首に腕を回し、またキスをしてきた。
「今日、なんか甘えんぼさんみたいだな」
「そんなことない」
 そう言いながらミサは着ているものを脱ぎ捨てた。
「いつ見てもミサさんの身体、キレイだよね」
「早く……」
「うん」
 浩輔は、ミサの身体を貪った。
 ミサも、浩輔の身体をいつも以上に求めてきた。

(なんだろうな……今日のセックス、良かったけど、何か違和感……)
 ミサがシャワーを浴びている間に、浩輔は服を着た。
 先にシャワーを借りたので、寛がせてもらっている。
(なんでこんなこと思うんだろう……)
 スマホをチェックしていると、ミサがシャワーを浴び終え、薄着で戻ってきた。
「もう帰る?」
「うん、ミサさんが戻ってきてから帰ろうと思って待ってた」
 いつも、情事が終われば帰宅をする浩輔だ。
 泊まることはない。
「待たせてごめんね」
「そんなことないよ。ミサさんの部屋、居心地いいし」
 ただセックスするだけだけど、とは言わなかった。
 リラックスできるのは事実だ。
 帰ろうかな、と腰掛けていたベッドから立ち上がると、ミサが前に立った。
「?」
 帰りのキスかな、と思って彼女を見下ろすと、ミサのほうからキスをしてきた。いつもはミサがせがんで浩輔がするのだが。
(……まただ)
 今度は身体がぞわりとする、そんな違和感があった。
「三原君」
「ん?」
「マユカとはいつから?」
「え」
 突然の切り出しに浩輔は目を見開いた。
「マユカともしてるでしょ?」
「……え……」
「マユカのほうがいい?」
「……ごめん」
 何も言えず、ただ謝罪の言葉しか出てこなかった。
「気づいてないと思った?」
「…………」
「別に悪いとは言わないよ。三原君が誰と寝ようと、構わないんだから。でも……わたしの知ってる人は嫌だって言ったのにな」
 本当にごめん、と浩輔はもう一度言った。
「ミサさん、嫉妬してる?」
「そんなのじゃない」
 ミサの顔は怒っていた。甘えるような、可愛らしいものではなかった。
 茶化してる場合じゃない、と直感で思った。
「約束破って、ごめん」
「いいよ、もう。じゃあ、これで最後にしよっか」
「えっ!」
 ミサの言葉に浩輔は動揺した。
「ごめん、マユカさんとはもうしないから。ミサさんだけにするから」
「他の人は?」
「してない、他にはしてない」
「そう」
「もう……マユカさんとしないし、ほんとに、他にはしてないから」
「ふうん……」
 なんだかぞわりとする。
 逃げたいけど逃げられないような、しかしミサとはつながっていたい、心と身体が混乱している。
「マユカとしてないんだ」
「……うん。最近は店でも会ってないし、誘われてない」
「……そう」
 ミサはにやりと笑った気がしたが、気のせいだろうか。
(なんだろう、今日のミサさん、ちょっと怖い気がする……)
「じゃあ、マユカとは会わないでね。わたしからのお願い」
 ミサは浩輔の身体にしなだれかかってきた。
「う、うん」
「まあ、あの子ももう三原君と会うことはないと思うけど」
「え? どういう……」
「じゃあ、わたしの所に来てね。来れる時でいいから、さ」
 わかった、と頷いた。
 じゃあ、と軽く挨拶をしてミサの部屋を出た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

エッチな下着屋さんで、〇〇を苛められちゃう女の子のお話

まゆら
恋愛
投稿を閲覧いただき、ありがとうございます(*ˊᵕˋ*) 『色気がない』と浮気された女の子が、見返したくて大人っぽい下着を買いに来たら、売っているのはエッチな下着で。店員さんにいっぱい気持ち良くされちゃうお話です。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

幼馴染じゃなくなる日

恋愛
幼馴染たちにまつわる恋愛のお話(王道もあり)。 R18シーンのある話、ない話、混ざっています(若干卑猥な表現等有)。 短編をいくつか。短編は四本の予定。あれやこれやとネタが浮かぶので、不定期に投稿予定。 追記:久々追加しました(2024.4.14)

女の子がいろいろされる話

ききょきょん
恋愛
女の子がいじめらたり、いじられたり色々される話です。 私の気分であげるので、性癖とか方向性はぐちゃぐちゃです、よろしくお願いします。 思いついたら載せてくゆるいやつです。。

【R18】エリートビジネスマンの裏の顔

白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます​─​──​。 私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。 同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが…… この生活に果たして救いはあるのか。 ※完結済み、手直ししながら随時upしていきます ※サムネにAI生成画像を使用しています

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

【R18】カッコウは夜、羽ばたく 〜従姉と従弟の托卵秘事〜

船橋ひろみ
恋愛
【エロシーンには※印がついています】 お急ぎの方や濃厚なエロシーンが見たい方はタイトルに「※」がついている話をどうぞ。読者の皆様のお気に入りのお楽しみシーンを見つけてくださいね。 表紙、挿絵はAIイラストをベースに私が加工しています。著作権は私に帰属します。 【ストーリー】 見覚えのあるレインコート。鎌ヶ谷翔太の胸が高鳴る。 会社を半休で抜け出した平日午後。雨がそぼ降る駅で待ち合わせたのは、従姉の人妻、藤沢あかねだった。 手をつないで歩きだす二人には、翔太は恋人と、あかねは夫との、それぞれ愛の暮らしと違う『もう一つの愛の暮らし』がある。 親族同士の結ばれないが離れがたい、二人だけのひそやかな関係。そして、会うたびにさらけだす『むき出しの欲望』は、お互いをますます離れがたくする。 いつまで二人だけの関係を続けられるか、という不安と、従姉への抑えきれない愛情を抱えながら、翔太はあかねを抱き寄せる…… 托卵人妻と従弟の青年の、抜け出すことができない愛の関係を描いた物語。 ◆登場人物 ・ 鎌ヶ谷翔太(26) パルサーソリューションズ勤務の営業マン ・ 藤沢あかね(29) 三和ケミカル勤務の経営企画員 ・ 八幡栞  (28) パルサーソリューションズ勤務の業務管理部員。翔太の彼女 ・ 藤沢茂  (34) シャインメディカル医療機器勤務の経理マン。あかねの夫。

【R-18】残業後の上司が甘すぎて困る

熊野
恋愛
マイペースでつかみどころのない上司とその部下の話。【R18】

処理中です...