大人の恋愛の始め方

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【第1部】4.アルバイト

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 週に三回から四回、店に出勤している。
 金曜と土曜日は遅くまで出勤させてもらっている。
 他のホステスたちは、金曜日と土曜日は気合いが入っており、人気ホステスがテーブルの掛け持ちで、聡子もヘルプが忙しい。
 未だお酒は飲めないが、今年中に飲める年齢になる。しかし聡子はきっと酒は口に合わないだろうと予感していた。
 以前よりはヘルプのトークも捌き具合も上達し、ミヅキ、という名前も浸透するようになっていた。
 時折聡子の「ミヅキ」を気にかける客もいたが「あの子は見習いなので」「接客が下手で客前に出せないので」と、ママもホステスもボーイも、彼女がテーブルに付くことをさりげなく避けてくれていた。そのかわり時給も低いままだが。
(可愛くもないのに、なんで気にかける人がいるんだろう。ろくに接客してもないのに)
 今のままでも充分で、不満はない聡子だった。


 ある日、ママが聡子を呼んだ。
「どうしてもミヅキだけをテーブルに付けろっていうお客様がいらっしゃるんだけど、どうする? この前も来てそう言ってたのよね。でもあなたが出勤してない日だったから、断ったんだけど。何曜日に出るんだ、ってしつこくて」
 奇特な方もいるものですね、と聡子は言った。その言葉にママは苦笑している。
「どうやらあなたのことを気に入ったみたい。何かした?」
「いえ、どなたにも何かした記憶はないんですけど……どちらのお客様ですか?」
「あそこの。ほら」
(えっ……)
 見覚えのある男性だ。
「以前神崎会長と城戸様とが来られた時、あなたはいたかしら」
「あ……はい。でもその時はレイナさんのヘルプにちょっと入っただけの日だったかと記憶しています」
 接客をしてはないですね……、と聡子は首を傾げた。
「神崎会長の部下の方だから、素性がわからないわけじゃないけど」
 ママは少し口ごもった。
「ちょっと人相悪いから……あなたを行かせるのは心配で」
 どうする、と言われ聡子は顔が強ばった。
(人相、悪い……確かに)
「あの……あの方はお一人で来られてるんですか」
「恐らくね。以前は会長とご一緒だったけど、あの日からお一人で来られるようになったわね」
 あの日、というのが、いつを指しているのか聡子にもわかった。
「わかりました、ちょっと行ってみますね」
「じゃあお願いね。でも何かあったらすぐ、佳祐に合図送りなさい」
「はい」
 ママは佳祐に目配せをした。
 自分たちホステスのフォローをしてくれる彼に、聡子のテーブルにも気にかけるよう伝えた。


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