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第十章 エルフの里

第二十六話 善後策

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 いい方法が思い浮かばない。
 俺は、所詮はトラックの運転手だ。小難しい事を考えるのは、専門にやっている奴が行うべきだと考えてきた。

 しかし、このエルフの里の奴らは・・・・。
 最低限の事さえもできていない。説明をしても理解ができるとは思えない。最大の問題は、魔物の排除が行える力があるのかさえも怪しい。

「なぁ」

「なに?」

 リーゼが、俺の問いかけに返事をするが、俺が聞きたかったのは、リーゼではない。神殿のコアに善後策を考える上での、条件やできる事を聞きたかった。俺が考えた事がどこまでできるのか、確認が必要になってくる。

「あぁリーゼじゃなくて、神殿のコア」

 リーゼが少しだけ拗ねたので、頭を軽く撫でると機嫌を直してくれる。リーゼがリーゼで助かる。

『なんでしょうか?アルファ神殿のマスター様』

 リーゼの頭を撫でながら、神殿のコアに質問をする。

「そのアルファとかは、後でおしえてくれ、その前に、いくつかの事で聞きたい事があるけど、いいか?」

 マルスが摂取した神殿が、アルファ神殿だとしたら、マルスと神殿が融合したのか、乗っ取ったのか?それとも、もっと違う法則が働いているのか?
 それに、なぜ”アルファ”なのか知りたい。この世界に来てから言葉が通じるのは、マルスのおかげだと解っている。もしかしたら、アルファと言っているのも、マルスが適当に割り振った変換翻訳なのかもしれないと思うが、もし神殿の総数が24でなかったら?なぜ、ギリシャ文字が使われているのか?24箇所だった場合には、マルスが翻訳しているという可能性が残る。しかし、もし、多かったり、少なかったり、24でなかった場合には、なぜ?と、いう疑問だけが残ってしまう。

『はい。なんでしょうか?』

 言葉の問題は、横に置いておいて、まずは、エルフの里とこの神殿の事を考えよう。

「結局、神殿のコアには、魔物を近づけたくないのだな?」

 基本的な質問だ。
 マルスは、魔物が近くに居ても問題はないと思っている雰囲気がある。実際に、コアルームの前には、ボス部屋があり、魔物が存在している。マルスのコアルームに入ろうと思えば魔物は入る事ができる・・・。はずだ。

『はい』

「それは、魔物がコアを破壊してしまうからか?」

 マルスに聞いた事はないが、コアを破壊した場合にどうなるのか?
 神殿の終焉は、コアを破壊された時なのか?

『ピー【禁則事項】』

「あぁその反応で解った。もしかして、昔は神殿の数はもっと多かったのか?」

 また、マシンボイスだ。
 でも、これではっきりした。コアは破壊されてはダメだ。破壊されると、新しく産まれないのだろう。

『はい。24箇所の神殿がありました』

 過去形か・・・。そういう事なのだろう。

「ふーん。現存は?」

 24箇所。それでは、マルスの翻訳の可能性が残ってしまう。
 この世界を構築した”創造伸”が居るのなら、地球の出身者だと考えていた。または、地球に似た世界観で作ろうとしたのかもしれない。と、考えていたが、まだどんな可能性でも考えられる。手がかりが掴めるかも・・・。と、思ったが、そう甘くはなかったな。

『ピー【禁則事項】』

「数もダメなのか・・・。しょうがないな。魔物がいなくなれば、結界の張りなおしができるのか?」

 現存を教える事ができないのは、複数の神殿を攻略した時になにか想定外の事が発生するのか?それとも、もっと違う問題があるのか?
 これは、今後の課題だな。

『可能です』

「この神殿でも、お前たちが言っているアルファ神殿と同じ法則だと思っていいのか?」

 本題に踏み込んだ。
 結界の外側にいる魔物が問題になってくるだけで、魔物の排除が出来れば、大筋の問題は解決の道筋が見えそうだ。

『【質問の意味が不明】』

「あぁ施設を作ったり、眷属を作ったり、そういう事ができるのか?」

 マシンボイスが答えるのか?
 コアの仕組みは、マルスに聞けば解るのか?

『可能です』

「俺が呼び出せる物が呼び出せるのか?」

 重要な事だ。
 イエスなら簡単だが、ノーなら・・・。

『不可能です。コアができる事は、マスターの記憶や認識が必要です』

 ノーだな。そうだろう。

「お前のマスターは?」

 でも、一つこれで確かな事がある。俺以外の地球から来た奴は、居る。間違いない。しかし、言葉の問題があった。俺には、マルスが居た。マルスがどうやって、知識を得たのかは解らないが、重要なことは、俺以外に神殿を攻略した者が居ないという事だ。

 もし、神殿を攻略した者が俺と似たような時代に居た者なら、もっと違った発展をしているだろう。
 技術レベルという意味ではなく、生活レベルの話で、衛生・・・。そうか、時代が違う者だった可能性もあるのか・・・。産業革命以前に来て、神殿を・・・。あっもしかして、皇国や神国の開祖は・・・。
 あぁ考え出すと面倒になってくる。こういう小難しい事や宗教が絡みそうな事は・・・。

『ピー【禁則事項】』

「だろうな・・・。困ったぞ。このまま放置という選択肢もあるが・・・」

 十中八九。リーゼの関係者。父親だろう。でも、そうなると、知識レベル。
 そうか、マルスが言っていたな・・・。召喚ができる物は、”俺が保有していた物”だと・・・。それに、アフネスの話を聞いた限りでは、かなりリーゼの母親に惚れこんでいたから、リーゼの母親が望まなかった可能性もある。
 でも・・・。だから、携帯電話のような仕組みだけは・・・。連絡手段として、必要だったのかもしれない。スマホや携帯は召喚できても、基地局は無理だろう。基地局を”保有”している奴がいるとは思えない。

 リーゼを見ると、俺を期待した目で見つめている。
 これは、俺ならなんとかしてくれると思っている目だ。期待ではない。信頼とも少しだけ違う。表現が難しいが、リーゼの期待には、満点は無理でも、及第点が貰えるくらいの答案を提出したい。採点を行うのが誰なのか?神なのかもしれないが、呆れられない程度の方法を考えよう。

「ヤス?」

「ん?少しだけ考える。けど、心配するな。お前の母親が眠る場所を、魔物に荒らされるのは、俺も気分が悪い」

「うん!」

 リーゼが抱きついてくる。育ち切っていないが、女を感じさせる匂いと柔らかさだ。抱きついてきた、リーゼの頭を撫でながら考える。

「なぁお前が、魔物を召喚して、その魔物を使って神殿の周りにいる魔物を駆逐できないのか?」

『実行しましたが、契約者の居ない魔物は、野良の魔物と変わりありません。里の者から攻撃されてしまいました』

「だぁアイツら・・・。ん?そういえば・・・」

 栗鼠カーバンクルと、キャスパリーグと、ガルーダは、神聖な生物だと思われているのだよな?

「コア。カーバンクルやキャスパリーグとガルーダの召喚は可能か?」

『可能です』

「エルフから、神聖な生き物だと思われているようだが?」

『確認ができません』

「そうか、エルフは3体の魔物は、神聖で神樹の使いだと思っているようだぞ?3体なら攻撃を受けないと思うぞ」

『検索しました。提案を”是”とします。ただし、召喚した魔物では、外周に居る魔物と変わり無くなってしまいます』

「そうだよな。そう言っていたよな・・・」

 どうしよう・・・。
 そういえば、リーゼの事を、”巫女の末裔”と呼んでいたな。魔物を召喚して、リーゼの眷属にして、エルフの里に貸し出して・・・。リーゼが、デルタ神殿の巫女になったと言えば、エルフの里の奴らも納得するだろう。
 この方法がいいように思えるが、その場合にはリーゼはどうなる?
 エルフの里に縛り付けられるのなら、リーゼの望む形にはならない。それに、誰かの犠牲の上に成り立つような里なら潰れてしまったほうがいい。里の文化を壊さないように別の場所に・・・。それこそ、俺たちの神殿に新しい階層を作って、そこに移住させてもいい。エルフたちが望む環境をマルスなら提供ができるだろう。
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