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第二章 ギルドと魔王
第五話 リニューアル
しおりを挟む魔王城を守るための城壁は三重になった。内壁と六芒壁と外壁だ。外壁は、幹部となった子どもたちと武官であるカンウたちの意見で作った。
六芒の形になっている城壁の周りには、水堀が存在している。幅は10メートルほどだ。その水堀の一部が湖になり、カプレカ島が存在している。湖の中心くらいから、魔王城を囲うように、新たな城壁が出現した。魔王ルブランから、カプレカ島を介して城塞村には伝えられていた。一晩にして現れた城壁は驚愕を持って迎えられた。この城壁の出現で、魔王城の守りは強固になった。野営が出来る場所が、一箇所に絞られてしまった。正確には、二箇所になるのだが、その場所には、カプレカ島が存在している。ここで、野営を行うのは、魔王だけではなく、帝国にも敵対する意思が”ある”ととられかねない。
野営が出来る場所は、カプレカ島とは反対側に作られた、不自然に開けた場所だ。設定は、『魔王城を作る時に、木々を伐採した場所だ』と、思わせるような細工をした。もちろん、魔王城の領域に組み込んだ。
「マイマスター」
「セバスか?どうした?」
「愚かにも攻め込んできた者たちを使った実験は終了しました」
「そうか、今回は外れだったな」
「はい。まさか、同士討ちを始めるとは・・・」
「魔王様がおっしゃっていた通りになってしまいました。私たちの考えが足りませんでした」
「それは、いいよ。俺も、あんな簡単な策で・・・」
俺がやったのは、カンウが推薦した者たちによる暗殺だ。正確には、”暗殺した”ことに”見せかける”ことだ。死体候補は、まだ地下に蠢いている。自分から死にたいと言い出している者たちが大量に存在している。その者たちを、侵略者が張っている陣で殺してあげた。そのときに、”魔王に恭順をする”と、いう書類を持たせた。手土産に、自分の”派閥以外の重要情報を渡す”と書かれていた。
俺の策を見て、セバスや子どもたちが暴走した。
魔王城(仮称)の中で、子どもたちとセバスたちによる。殲滅作戦が実行された。人数が、前回の6倍。無駄に装飾品を持ってきている。食材も、高級な物が多い。それらを奪ってから、地獄を見せた。
四天王に寄って呼び出された。拷問官たちが楽しく仕事をしている。情報は、抜き出す必要はないが、今後の為に限界を見極めたいと言っている。拷問を行うために、地下を拡張した。拷問官のトップを決めて、地下の変更を許可した。
セバスたちの要望で、魔王城(仮称)を正式な魔王城に改修することが決定した。
内容も変更した。地上1階と2階は、俺が設定したままにした。効率を考えれば、地上1階でほとんどの侵入者が排除出来るだろう。2階は、捕まえた者たちの個室で隔離する部屋だ。魔物が徘徊するように修正はしたが、1階から上がった者たちは直線で3階に向かうことが出来る。両側には、牢屋と徘徊する魔物が居る。両者からは見えるし、声が聞こえるが、接触は不可能だ。強固な”透明な壁”で遮っている。
地上3階からは、コンセプトが変わる。
3階は、バチョウのフロアになる。多分、ここまで上がってこられる者はすくないだろうと予測されるが、ここではバチョウとの戦闘になる。フロアには、死なない仕組みを入れているので、何度でもバチョウとの戦いを楽しんでもらいたい。バチョウと、バチョウの従卒になった子どもたちの力作だ。お披露目が出来るのかは微妙だが、渡したポイントで楽しく作業を行っている。
4階は、カンウのフロアだ。コンセプトは、バチョウに似ているが、カンウが戦わない。魔物との対戦で、階層を抜けられるようにしたようだ。カンウが言うには、4階まで来た者なら、強さには自信があるのだろう。ということだ。
5階/6階は、カエデとナツメと従者をしている子どもたちの力作だ。罠と魔物が主体のフロアになっている。階層主になる魔物を配置している。罠も、子どもたちが考えた物だ。容赦がない極悪な物だ。最初は、カエデとナツメのフロアが、3階と4階だったが、あまりの極悪ぶりで、階層を入れ替えた。
7階は、セーフエリアにしている。何もない部屋だ。モミジが担当する予定になっているが、モミジは、カプレカ島や城塞村に関わる業務で忙しいようだ。どうせ、7階まで上がってこないだろうという話だ。俺も、そう思う。
8階は、セバスが居るだけの玉座だ。
玉座はすぐに調整ができた。罠を仕掛けずに、ただ装飾を施した部屋だ。
「マイマスター。掃討作戦に移ります」
「任せるよ。殺さずに、捕らえる方向でお願い。地下二階に送っておけばいいからな」
「かしこまりました」
「マイマスター。掃討作戦以上に、魔王城の外装を整えたく思います」
「ん?あぁそうだな。任せるよ」
外装は、セバスが中心となって、子どもたちの中から希望者を募った。実際には、ドワーフやエルフが協力して整えることになった。
うん。魔王城は、今日も平和だ。
魔王城(仮称)の1階では、まだ同士討ちが続いている。子どもたちのえげつない作戦が当たった。
生き残ってくれても、死んでくれても、ポイントは入ってくる。
帝国の奴隷を解放して、六芒壁と外壁の間に住まわせているだけで、収支としてはプラスになっている。
ギルドから面会の申込みが頻繁にある。
面倒なので、ルブランに丸投げしているが、ギルドとしては、カプレカ島や魔王城での活動を許可して欲しいという事だが、カプレカ島はダンジョンに関しては、許可している。魔王城は許可を出すつもりはない。カプレカ島も、ダンジョン以外での活動は基本的には許可しないと伝えている。
どうやら、ギルドは派閥争いに発展してしまったようだ。
ギルドは自然発生ではない。商業が盛んな街から街に行商する時に、魔物や盗賊から襲われないように人を雇っていた。雇う者たちが、組織化したのが”ギルド”だ。そのために、総本部は連合国の首都に置かれている。
そして、城塞村に作られたギルドが、公然とギルド本部のやり方を批判し始めた。帝国の良識派と結びついて、違法奴隷の摘発の徹底や、人族優遇処置の撤廃を各国に提言した。
「マイマスター。よろしかったのですか?」
「ん?どれ?」
「ご指示の通りに、ギルドのメンバーや帝国が、攻められた時には、カプレカ島や魔王城内への避難を許可しましたが・・・」
「あぁ問題ないよ。セバスが気にしているのは、俺を狙う刺客が紛れ込むことだろう?」
「はい」
「うーん。一部を除いて、ルブランが魔王だと信じているのだろう?」
「はい。それでも・・・」
「うん。解っている。でも、俺たちの魔王城の攻略は難しいと思うぞ?それこそ、セバスとモミジと四天王が居なければ、無理だろう?」
「それは・・・。はい。マイマスターは、お守りいたします」
「そうだね。だから、安心しているよ」
セバスが、跪いて頭を下げる。
そんな態度は必要ないと言っているのに、辞めてくれない。他の者たちも同じで、俺の話を聞く時には、椅子に座っていても、一度は跪いて頭を下げないと気がすまないようだ。俺が許可を出して、改めて椅子に座り直してくれる。非効率だと思っているが、どうやら、セバスたちにとっては大事な儀式のようだ。だから、許容しようと思っているが、できれば辞めて欲しい。
「それに、他の国が、いきなり帝国に宣戦布告するのは無いと思うよ?」
「?」
「他の国は、帝国が魔王と密約を結んだと考えるだろうね」
「はい。そうなるように誘導しました」
「うん。神聖国と連合国とギルド本部だろう?人族を優遇しているのだろう?」
「はい」
「だったら、カプレカ島は許せないだろうね。カプレカ島を許容している魔王が居なければ、帝国もギルドの分派も大人しくなると考えると思うよ」
「それでは!」
「うん。魔王城の攻略を行うだろうね。魔王城の攻略が難しいと考えたら、ギルドを動かして、魔王の暗殺を行う者を送り込むかな?」
「・・・」
「だから、セバス。十分に、注意をしてね」
「はい。それで、ルブランに手を出してきたら?」
「もちろん、滅ぼすよ。暗殺者を殺しても、面白いスキルが見つかったから大丈夫だよ」
「スキルですか?」
「うん。”死者蘇生”ってスキルだけど、蘇らせる感じだけど、このスキルは罠スキルで、”アンデッド化”するスキルで、スキルの利用者に絶対に忠誠を誓ってしまう。知識の保持は、難しいらしいけど、ここには実験体が多いからね。拷問官たちに使わせればいいと思わない?殺した後でも、有効利用ができる。命令に従って、働き続けるからね。外壁の外側に、彼らの街を作ってもいいと思わない?」
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