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序章
第二話 登校日
しおりを挟む表現には注意していますが、”いじめ”や虐待の描写があります。苦手な人は、スキップしてください。
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なんで、夏休みなのに、学校に行かなければならない?
アイツらに会いたくない。僕が何をした。何もしていない。
パパは、助けてくれない。それどころか、僕がアイツらに言われて、パパの財布からお金を盗んでも何も言わない。最初は、1,000円だった。それが、5,000円になって、10,000円になった。パパは、僕に無関心なのだ。僕が、殴られて、顔を腫らして帰ってきて何も言わない。見てもくれない。
ママは、話を聞いてくれた。でも、聞いてくれただけだ。『僕が、悪い』と言った。僕は、悪くない。それから、ママは、僕を叱るようになった。殴ってくる、夜中にママとパパが喧嘩するようになった。喧嘩が終わると、ママは泣きながら僕を殴る。
昨日も、ママに殴られた。僕が、『勉強を頑張らない』からいじめられるのだと言って、勉強をしなさいと怒ってきた。勉強は、学校でトップだと言ったら、『一番じゃないから』と殴られた。ご飯も、食べさせてもらえなかった。寝る時間があるのなら、『勉強をしなさい』と言われて、椅子に腰を縛られた。おしっこをしたいと言ったら、殴られた。おしっこに行きたくならないように、のどが渇いても飲み物を我慢しろと言われた。
パパは、僕に無関心だ。僕が、椅子に縛られていても、見ないふりをする。そして、ママと喧嘩をして家を出ていく。
ママは、パパに文句を言っている。パパはママを殴って黙らせる。僕は、ママの殴られる音を聞いて”ざまぁ”と思う。パパは、ママを殴った後で、僕の部屋に来て、お金を置いていった。パパは、僕の部屋から出ると、お酒を飲んで寝てしまう。
パパが寝てしまったあとで、ママは僕の所に来て、『私は悪くない。私は悪くない』そう言いながら、僕を叩く。僕が”痛い、やめて”と言うと『うるさい。勉強をしなさい』そう言いながら、僕を叩く。
夏休みに入って、アイツらに会わなくて済んだ。
僕が家に居るとママに叩かれる。でも、外に行こうとすると『勉強をしなさい』と叩かれる。僕が何かを言おうとしたら『私を見捨てるの!』と言って、僕を叩く。僕の居場所は、学校にも家にもない。
登校日だ。
夏休みなのに・・・。アイツらに・・・。でも、ママが居る家には居たくない。パパも、僕と同じ気持ちなのか、家に帰ってこなくなった。夏休みに入ってから、パパが僕にスマホを渡してきた、”困ったら連絡してきなさい”と言われた。でも、パパに連絡しても、何も変わらない。スマホを持っていることは、ママには内緒にしていなさいと言われた。
学校には、スマホを持っていっても問題にはならない。
初めて持つスマホ。クラスの人が使っているのを知っている。それに、アイツらが使える物が僕に使えないはずがない。
僕は、勉強でもトップだし、何をやってもアイツらよりはうまくできる。だから、アイツらは固まって僕に暴力を振るうことで、自己のプライドを満たしている。僕は、アイツらとは違う。高校を卒業して、いい大学に入るのは決まったことだ。そして、アイツらを顎で使う人生を送る。僕は、勝ち組で、アイツらは負け組だ。僕は、エリートだ。アイツらとは違う。違う。違う。違う。違う。違う。
朝になり、学校に向かった。
やはり、学校に着いたら、アイツらが僕に絡んできた。
「おい!」
「何。高橋くん」
「あぁ!”くん”だぁ!お前は、何度、教えれば解る。俺のことは、”様”と呼べ!」
「あっ・・・。高橋様」
「そうだ!ウスノロ!何も出来ないお前でも、俺たちの、俺様の為に働いてもらおう!」
「え?僕・・・」
「”僕”じゃないよ。お前が、俺の役に立ちたいのだろう?そうだろう!えぇ!」
高橋は、僕の制服を掴んだ。臭い。息が臭い。
「何をすれば」
「市内に、魔物が出たのは知っているか?」
「え?魔物?本当?」
「あ?俺が、嘘を言っていると?」
「いや、ごめん。でも、魔物は、管理されて居て・・・」
「洋平が見たと言っていた。お前、捕まえて、俺の前に連れてこい」
「え・・・。無理だよ・・・。魔物だよ?捕まえたら消えるよね?」
「あぁそれな。早苗の奴が、魔物は人の血に寄ってくるって話していた」
「え?」
「お前が餌になれ!お前は、足が早いのだろう?魔物に襲われても逃げられるだろう!俺の前に連れてこいよ。そうしたら、俺が倒してやる」
高橋が、僕を乱暴に突き飛ばす。
話が終わったと言うのか?僕はやるとは言っていない。でも・・・。
「あぁ出来なくてもいいぞ!そうしたら、お前が・・・。万引したことを・・・」
「わかった。やるよ。やればいいでしょ」
「ハハハ。そうだ。お前は、俺の為に、俺の言うことを聞けばいい!おぉい。美保。お前も来るだろう!ウスノロが、魔物を釣ってくるぞ」
「えぇ私・・・。面倒だからいい。それよりも、財布から5,000円ほど借りてよ。カラオケに行こう!」
「そうだな。おい、10,000。よこせ」
高橋は、僕のカバンを乱暴に奪って、中身を床にばらまく。
「お!こいつ、20,000も、持っている。借りておく!」
財布を僕に投げつける。
高橋は、美保の所に行った。集まっている奴らが僕を見て笑っている。
「何をしている!」
先生が教室に入ってくる。僕を見て、”ため息”を吐き出すだけで、何も言わない。僕も、この教師には、何も期待していない。
僕が偉くなって、TVに出たときに全部を暴露してやる。教師に見捨てられたと・・・。社会的に抹殺してやる。僕が、有名になって、人気者になって、インタビューで、お前たちのことを、暴露してやる。その時になって後悔しても遅い!
でも・・・。魔物か・・・。
たしか、倒すとかなりの確率でスキルが得られるのだったよな。
天才な僕が、スキルを得られば・・・。そうだ、高橋なんかに負けない。強大な魔法スキルを得て、ヒーローにだってなれる。
今は、自衛隊が富士山を封鎖しているから、魔物を倒すのも許可が必要になっている。でも、市内に居るのなら、襲われて倒したと言えば、許されるはずだ。そうだ、僕が倒して、スキルを得たら、自衛隊に感謝される。そうしたら、ママもパパも頑張ったって褒めてくれる。
ホームルームだけの登校日に、意味があるのか解らない。解らないが、終わった。アイツらに絡まれる前に、教室を出る。村上が自慢していた、魔物を見たと言っている場所に向かう。他にも、土屋も見たと行っていた。間違いなく、コボルトだったと言っている。
コボルト。犬の魔物だったよな?優秀な僕だから、怖くはないし、倒せるのは当然だけど、”万が一”があるから、家に帰って・・・。ダメだ、ママが居る。どうしよう。武器が欲しい。そうだ!学校の家庭科室なら、包丁がある。それに、理科準備室!なんだ、やっぱり、僕は天才だ。すぐに、方法を思いつく。
家庭科室に忍び込むのは、高橋たちがやっていたから知っている。理科準備室も同じだ。盗むのではない。借りるだけ、僕がスキルを得るのに必要なことで、学校も許してくれる。僕は、間違っていない。
そうだ、僕がスキルを得たら、高橋たちに自慢しないとダメだな。
魔法で脅せば、僕の偉大さを思い知るはずだ。
確か、学年の名簿に、連絡先が書かれているはずだ。僕は、スマホを持っていなかったから、連絡先は家の番号だけが書かれている。
僕だと知られないで、アイツらを呼び出せる。そこで、魔法を使えばいい。なんだ、簡単なことだ。
ふふふ。僕は、選ばれた。僕が、得るのにふさわしいスキルが手に入るはずだ。そして、皆が僕を敬うに違いない。
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