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第二十二章 結婚
第二百二十八話
しおりを挟む今日も特にやる事がなかったので、ホーム内にあるモンスターをハントする訓練施設の拡張をしながら、カイとウミと一緒に訓練していた。
何体か新しいモンスターを追加して、眷属達が倒すのを見ていると、リーリアが近づいてきた。
「マスター。ルートガー殿が面会を求めています。追い返しますか?殺しますか?ご指示いただければすぐに皆で襲いかかります」
物騒な事をいい出している。リーリアもまだルートの事が許せないらしい。
表面的には許しているように見えるのだが、ホームに居るときや眷属達と過ごしているとどうしても許せない気持ちが吹き出してしまうのだという事だ。本人を前にすればおとなしくなるので問題は無いと思っている。ルートだけではなくクリスもリーリアや眷属達が正しいと言っているので俺が口出す事ではないと思って放置している。
「そうだな。結婚式関連でなにかあったのだろう。ログハウスで会おう」
「わかりました。ログハウスの執務室で待たせておきます」
「頼む」
リーリアの後ろ姿を見送ってから立ち上上がって伸びをする。
少し集中しすぎたのかもしれない。背中から肩にかけての関節が悲鳴に近い音が聞こえる。
「カイ!ウミ!エリン!ログハウスに行ってくる。護衛はいらない。向こうにリーリアとオリヴィエが居る」
3人?から了承の返事が来る。
他の訓練をしていた眷属からも”いってらっしゃい”と送り出される。
毎回のことだし、聞き慣れた言葉だが、少しじゃなくて・・・。かなり嬉しい。
ログハウスに行くと、オリヴィエが控えて待っていた。スーンは元老院に詰めていてログハウスや俺の身の回りはオリヴィエが担当する様になっている。
「旦那様。ルートガーが執務室で待っています」
オリヴィエも表面的にはルートを許しているが、俺を含めた身内だけになると、ルートガーの事が嫌いだという雰囲気を出してくる。
「わかった」
そのまま、オリヴィエが先に歩いて執務室に行く。
途中、近くに居たメイド数名にオリヴィエが指示を出している。
飲み物を持ってくるように指示を出していた。俺の記憶に間違いなければ、最低ランクのコーヒーと最高ランクの紅茶を用意するように指示を追加で出している。
まぁいいけどさぁルートはコーヒーも好きだから文句は言わないだろう・・・けどさぁもう少しだけ、ルートにも優しくしてあげようよ・・・などと思っても口に出さない。ルート自身が信頼を回復しなければならないのだろう!
部屋に入るといつもの場所にルートが座って待っていた。
俺に気がつくと立ち上がって頭を下げる。臣下の礼をとる。それを見て、オリヴィエの険しい表情が少しだけ和らぐ。
メイドが指示されたとおりに俺の前にはティーポットを置いて横に立つ。ルートの前には、コーヒーを置いた。ルートは砂糖もミルクも使わないので、そのままだ。俺の前には空のカップと蜂蜜が置かれている。今日の紅茶にはミルクは合わないようだ。蜂蜜だけだ。
話し始める前に、メイドが俺の前に置かれたカップに紅茶を注いで蜂蜜を垂らす。
柑橘系の匂いがついた紅茶のようだ。確かに、ミルクは合わないだろう。
一口紅茶を飲んでからルートを見ると、少しだけ呆れた表情を浮かべている。
「それで?」
「ツクモ様。式の日取りですが・・・」
それから、いろいろ言われたのだが、ルートの最後のセリフで全部が飛んだ。
「スケジュールを調整したのですが、フラビア殿とローレンツ殿が来られて、スケジュールは白紙になりました。ツクモ様。何か、ありますか?」
そう言えば・・・。
「すまん」
「いえ、僕たちも、ツクモ様の事だけを考えていて、シロ様のことを考えていませんでした。申し訳ありません」
「それで、調整はできそうなのか?」
「問題ありません。すでに、チアル周辺に来ていた者に関しても滞在延長の許可をだしました」
「苦情はなかったのか?」
「ツクモ様への苦情や文句は一切ありません」
「そうか、それならよかった。それで新しいスケジュールは?」
「はい。ローレンツ殿が提示していった予定では、急げば2週間といっていたのですが2ヶ月後に延長する事にしました。フラビア殿が、そうなると”シロ様”の誕生日が近いということでしたので、シロ様の誕生日前日を式になるようにしようかと思います」
「ん?前日?」
「はい。クリスに聞いた所、結婚してからの初めての誕生日は二人だけで過ごしたいという事でした。それに、いろいろごまかせるのではないかという事です」
そうだな。
シロにバレても、リカルダあたりから”誕生日”の準備をしてくれているのでは?と、言って貰えればいいのだから、いろいろ都合が良さそうだな。
「二ヶ月半後という所か?」
「・・・。はい」
「なんだ?」
「いえ、少し驚いていただけです。ツクモ様がシロ様の誕生日を認識しておられた事に・・・」
「お前、俺をなんだと思っている?」
「え?あっ・・・」
「ルート。目をそらすな。こっちを向け!」
「ツクモ様。あの・・・、ですね。今まで、あまりツクモ様からシロ様への想いとかきいた事がなかったので、少しだけ・・・。本当に、少しだけ驚いただけです」
「まぁいい。そういう事にしておく」
「ありがとうございます。それで、2ヶ月半後で再スケジュールしてよろしいですか?」
「問題ない。元老院にも迷惑かけると謝っておいてくれ」
「かしこまりました」
ルートは、残っていたコーヒーを一気に飲み干してから立ち上がって執務室から出ていった。
「オリヴィエ」
後ろに控えていたオリヴィエが横に来て膝を折る
「はい」
「ルートと・・・。そうだな。ルートとクリスと元老院にそれぞれ護衛をつけろ、それと解る護衛と、眷属たちに言ってわからないような護衛を付けて、接触してきた者たちを調べろ」
ルートが口を滑らした感じがするのだが、”俺への苦情”はなかったと言ってきた。
ようするに、元老院やルートへの風当たりが強いという事なのだろう。俺に文句を言ってきても、嫌なら出ていけで終わってしまうから、余計に間の緩衝材になっている元老院やルートに強くあたるのだろう。
力や能力が有る奴らは、元老院やルートに取って代わろうとは思わないだろう。面倒事を押し付けられる事がわかってしまうのだろうからな、問題は中途半端に能力が有る奴らだろう。元老院やルートがやっている位の事なら自分でできる。もっと言えば、うまく回せると考えるかもしれない。短絡的な行動に出る者が出てくる可能性は高い。そういう短絡的に物事を考える奴らが行うのは俺への襲撃ではない。元老院やルートの周りに居る連中への襲撃を考えるだろう。
「はっ」
オリヴィエはすぐにスーンに連絡をして護衛の手配を始めた。
あぶり出す為の計略も検討すると連絡が入った。
1週間後に、ダース単位のバカどもの捕縛に成功したと報告が入った。
冒険者上がりだったり、他の大陸から来た獣人族だったり、いろいろだ。
皆は厳罰を望んだのだが、シロと俺の結婚式前だしわざわざ血を流す必要も無いだろうと説得して、大陸からの追放とした。
追放先は、あえてアトフィア大陸にした。これで、なにか問題があっても、アトフィア教が対応してくれるだろう。
シロもロックハンドへの単身赴任から戻した。
主な理由は、どっかの冒険者に結婚式の事がばれて、日常会話でシロにバレてしまう可能性があったためだ。
今、シロはホーム内で、眷属達と模擬戦を行ったり、リーリアやエーファたちと買い物にでかけたり、皆でモンスターをハントする訓練を行っている。
最近では、毎日ではないが一緒に風呂に入るようになっている。
そのまま全裸のまま布団に入る事もあるのだが、まだ一線は超えていない。
シロが全裸で抱きついてくるのが愛おしいのだが、シロの次の誕生日まで我慢しろと伝えたら、納得していた。それから、なぜか訓練が激しく長い時間行うようになっていった。シロは訓練で身体を鍛える事が夜にも繋がるとでも思っているのだろうか?
俺は、少しだけ心配になってリカルダとフラビアに聞いたら、笑いながら「シロ様は、夜の戦い」だと思っていますので、訓練に力を入れて、強くなろうとしていらっしゃいますと教えてくれたのだが、フラビアもリカルダもシロの勘違いを正す気はないようだ。
初めての時に、俺はシロに殺されないか少しだけ考えてしまった。
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