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第二十章 攻撃
第二百九話
しおりを挟む昨日は失敗してしまった。
シロに間違いを指摘されるまで気が付かなかった。
でも、少し考えてみよう。
人型の操作対象・・・・。
・新種の魔物を生け捕りにできないか?
現状難しそうだな。
出没する場所やタイミングが判明すれば、なんとかなるかも知れないけど、今の所手がかりが一切ない。ロックハンドに出てきた物では可動部分がよくわからなかった。
・プラモデルとかで作っている腕や足の稼働で作ってみるか?
これが実現に一番近いけど、モンスターをハントするのが目的となると強度とかで問題が出てきそうだ。
一応作ってみるか?バランスは、シロを基準に考えればいいかな?
「カズトさん。今度は何を?」
そうか・・・!!
スキル縮小を使えばいろいろできるかも知れない。
プログラムで縮小と拡大ができる・・・・。うーん。ライト?ダメだと解っても、ポケットから取り出して、”スモ○ルライト”と叫んでしまいたくなる。よし、まずはライト型の物を作って、内側に鏡を張って・・・。ライトの原型をモデリングして、電球は無いけど、スキル光を魔核に付けて代用して正面ではなく、鏡の方に向けて照射して・・・。
うん。いい感じだな。
光があたっている範囲に、10段階に調整した縮小と拡大のスキルを適用すれば、実用的な”スモー○ライト”が出来上がる。
「よし!シロ」
違うな。シロをそのままモデルにするのは間違っているな
「はい?」
「ごめん。そうだな。実験区に行くけどどうする?」
「ご一緒します。着替えてきますね」
そう、シロはまだ全裸だ。
綺麗な肢体を顕な状態で過ごしていた。
俺の服も一緒に持ってきてくれた。着替えを済ませて、実験区に移動する。
自重を忘れたホームからは、各ダンジョンに非公開にしているエリアを作成して転移門を設置した。
俺が行ったわけではなく、クローンたちでできるという事なので、クローンたちと眷属で設置を行ってもらった。
何箇所か間違っていたところがあるが、それほど致命的な間違いではなかったので、放置してしまっている。設置した転移門は、各ダンジョンに配置してあるのだが、頑丈な扉でしか守られていない。
ティリノの権能では、複雑なパーミッションを付与する事ができなかったからだ。そのかわり、ホームでは転移門から来た場合に、パーミッションが正しくないと入ってきた場所に戻されてしまうように設定した。
実験区では、執事が出迎えてくれた。
「旦那様。奥様。本日は、どうされましたか?」
「心が壊れた者で、動けなくなった者はいるか?」
「はい。何体か居ますが?雄ですか?雌ですか?」
ちらっとシロを見るが気にしている様子はない。
「多いのはどっちだ?」
「雄です」
「それなら、雄を頼む」
「はっ」
執事が実験区に作った転移門を設置するためだけの部屋から出ていった。
実験区を、ロックハンドに移動させるか?
イサークと相談だな。
10分くらいして、執事が数名の雄を連れてきた。
どれでも良かったのだが、シロを見て股間を大きくした奴がいたので、そいつにした。
ホームの中に連れて行くよりも、執事に命令して実験区で働く奴らに、この雄の型取りを指せる事にした。
まずは、姿形をそのまま型取りをする。その後で殺して、骨の型取りを一本一本してもらう事になる。
作ろうと思っているのは、理科室にあるような骨の模型だ。
それも魔物由来の皮を被せて、内側をヌラ達に作ってもらう伸縮する糸で、筋肉状の物を作成して満たす。
あとは微調整を繰り返せば、いいだろう。作る時に細かい作業が予測されるので、縮小/拡大ができるライトで、小さくしたり、大きくしたりして、調整を行えばいいだろうと思っている。
シロがドローンを直接操作したときの感じから、音はそのまま聞こえたという事なので、耳や目を再現する必要は無いだろう。
あるのは筋肉の様な可動部分だけだと思っている。
問題は、パワーがどのくらい出るのかがわからないけど、調整していけばいいだろう。
もし、パワーが出なかったら、関節に魔核を埋め込んでスキルでなんとかできないか考えればいいだろう。
「それで、どのくらいでできそうだ?」
「そうですね。急がせますか?」
「いや、いい。そこまで急いでいない。無理のない範囲でやってくれ」
「それでしたら、10日程度いただけますか?」
「わかった。できたら、ホームに持ってきてくれ」
「かしこまりました。私自らお持ちしてよろしいですか?」
「そうしてくれ」
「はっ!謹んでお受けいたします」
執事やメイドやスパイダーやアントやビーナは、ホームに入る事をすごく喜ぶのだ。
たしかに直臣としての眷属しか入られない設定にはなっているが・・・。喜ぶのなら、ライの眷属まで許すようにしてもいいかも知れない。
「そうだ。イサークの許可が出たらだけど、実験区をロックハンドダンジョンに移動させたいと思うが問題ない?」
「ありません」
「わかった。その時に、また相談するよ」
「はっ。お待ちしております」
実験区からホームに戻る。
10日間は、ドローンの調整でもしていよう。
「カズトさん」
「どうした?」
「実験区をロックハンドに移動されるのですか?」
「ん?その方がいいだろう?ロックハンドのダンジョンならいくら拡張しても、イサークの承諾を取ればいいからな」
「・・・。あの・・・。」
「ん?どうした?」
「フラビアとリカルダとギュアンとフリーゼなのですが、ロックハンドに移住させることはできませんか?」
「ん?別にいいぞ?本人たちの希望なら問題ないぞ?」
「!!良かったです。この前から、フラビアとリカルダから相談されていたのです」
シロのまとまりのない話を統合すると・・・。宿区に住んでいる、フラビアとリカルダとギュアンとフリーゼは、宿区の一等地?に住んでいる為に、チアル街の重鎮か重鎮に繋がる者として見られてしまっている。
執事やメイドがついているために余計に新参者からは余計にそう思われていて、元老院やルートガーに取次をお願いされたりしてしまうのだと言っていた。断りきれなくなってきたので、ルートガーに相談したのが、余計に重鎮に繋がっていると思われてしまったようだ。幸いな事に、フラビアとリカルダのやっていた仕事はルートガーやモデストたちに引き継がれた。
アトフィア教のローレンツとの顔つなぎも終わった。
ギュアンとフリーゼの仕事は残っているのだが、神殿区から来た新しい子たちに引き継ぎもほぼ終わっているのだと言っていた。
フラビアとリカルダよりは、ギュアンとフリーゼの方を急いで移住させたほうが良さそうだ。
新参者の商隊や冒険者が近寄り始めているという事だ。
「わかった。ギュアンとフリーゼを先に移住させよう。リーリアとステファナとレイニーとライで引っ越しを行って欲しい」
「わかりました。カズトさんは?」
「オリヴィエとロックハンドに向かって、ギュアンとフリーゼの家を作る場所を確保する」
「わかりました」
シロが、ホームに一旦戻って、ライとリーリアとステファナとレイニーを連れて宿区に向かった。
「オリヴィエ」
「はっ」
「ロックハンドに、フラビアとリカルダとギュアンとフリーゼが住める場所を確保する。あと、実験区をロックハンドダンジョンに移す」
「はい」
「イサークへの許可を求めてからになるけど、準備を始めようと思っている」
オリヴィエを連れて、ロックハンドに向かった。
イサークは居なかったが、ナーシャが居たので、イサークが戻ってきたら、俺の家まで来るように頼んだ。
1時間くらいしてから、イサークがピムと一緒に家を訪ねてきた。
「ツクモ様。用事があるのなら、呼んでくれればよかったのに」
「そんな、代官様をお呼びするなんて・・・」
「おい!」「相変わらずですね」
イサークとピムと顔を合わせて笑いあった。
「それで、ツクモ様。何か有ったのですか?」
「緊急な要件じゃないけど、ピムが来ているって事はなにか頼みがあるのか?」
ピムがなにかいいにくそうにしている。
イサークが背中を押している。
「あの・・・。ツクモ様」
「なんだ?子供でもできたか?」
二人がびっくりした顔をしている。
え?当たり?
「本当か?ピム?」
「え?あっ・・・。そうです。俺に子供が・・・その・・・あの・・・」
「おめでとう。ピム!予定は?その前に、そうか、医者を手配しないとな?教会はどうする?それとも・・・転移門は・・・。胎児に悪いかもしれないな」
「ツクモ様」「ツクモ様。落ち着いてください」
「あっすまない。俺が慌ててもしょうがないな」
「いえ、ありがとうございます。それで、ツクモ様もおっしゃった通り、転移門は怖いのですが・・・。ここには医者が居ないので、申し訳ないのですが、誰か派遣していただきたいというのが一つと・・・」
「ん?いいぞ?ピムの要望を聞く代わりに、イサークに俺の要望を聞いてもらうから遠慮するな」
「え?そうなのですか?それじゃ遠慮なく!」「ピム!ツクモ様もあんまり無茶は言わないでくださいよ」
ピムの要望は、医者と母体に栄養がある物を食べさせたいという事だったので、叶える事にした。
オリヴィエに、ルートガーとカトリナに連絡をして、信頼できて口が堅い医者や助産の経験がある者を数名送ってもらう事にした。
栄養があるものはよくわからないので、医者が手配できてから準備する事にした。
温かい部屋がいいだろうという事で、ホームから温かい風と冷たい風がでるスキル道具をピムとイサークにプレゼントした。
ここまで手配してからピムを帰らせた。
あまり、嫁さんを1人にしておくのも良くないと思ったからだ。
「さて、イサーク!」
「はい。はい。俺は何をすればいいのですか?」
「大丈夫。許可をくれるだけでいい。それに、今回はピムの為にやった事だが、お前にも・・・。お前たちにも必要になってくるのだろう?」
実際、イサークとナーシャにはいつ子供ができても不思議ではない。今までできていないのが不思議なくらいだ。
「え?あっ・・・。そうですね」
「それで、イサークに許可を求めているのは、4点・・・。いや、5点になるかな?」
「5点?」
「そうだ。まずは、フラビアとリカルダをロックハンドに住まわせてくれ」
「え?大丈夫ですよ。家も空いていますし、来てくれるのなら大歓迎ですよ?魔の森にも入られますよね?」
「大丈夫だ。多分、一般的な冒険者よりも強いだろう」
「そりゃぁ嬉しい。ピムが抜けてしまうと、俺だけになっていたから、丁度いい!ほかは?」
「お前も会った事があると思うけど、ギュアンとフリーゼの面倒を見て欲しい」
「構わないのですが?なにか問題が有ったのですか?」
「問題ではないが、フラビアとリカルダが移り住む理由と根本が同じなのだが、チアル街の新参者には、フラビアとリカルダとギュアンとフリーゼは街の重鎮に見えるようで、厄介な立場になっているようで、ロックハンドなら問題ないだろう?」
「えぇそうですね。ここには、ツクモ様と関係が深い者しかいませんし・・・来ません」
「そうだな。だから、一番いい場所だと思っている」
「そうですね。それで・・・。ほかは?」
「3点目は、4人に関係している事だけど、スーンたちにいじってもらって、湖と滝を作るつもりだけどいいか?」
「問題ないですよ?そんな事できるのですか?」
「あぁ。それと、魔の森の地質を調べてみると、お湯が湧き出す場所もありそうだから、もしかしたら、温泉施設が作られるかも知れないからな。これはできたらやってみるけどいいよな?」
「もちろんです。湖ができれば、飲水の手配とかができるようなれば嬉しいですからね」
飲水の問題はまだ解決していなかったな。
偶然を装って井戸でも掘り当てておくか!
「4点目は、これもできればだけど、湖が作られたら、魚の養殖をやって見るからな。ギュアンとフリーゼの仕事だな」
「わかりました。問題ないです。というよりも、海での養殖も手伝って欲しいくらいですよ」
「わかった。そっちは、スーンたちが移住してきたら頼んでみてくれ。あと、神殿区から人を移動させてもいいかもしれないな。ここなら偏見や差別はまず起きないだだろう?」
「もちろんですよ」
「それで、最後だけどな」
「はい」
「ダンジョンが成長しそうだから、ロックハンドのダンジョンを成長させようと思っている」
「え?」
「今、各街にダンジョンができつつあるのは知っているよな?」
「えぇこの前ナーシャが聞いてきました」
「これ以上、チアル街や近隣にできてしまうと問題になりそうだし、ヤバそうな魔物が産まれてしまうかもしれないから、それなら、ロックハンドのダンジョンに集中させて、育ったら階層が増えるだけだから、ちょうどいいだろう?」
「・・・。いろいろ騙された気分になっていますが、もう決定事項ですよね?」
「まぁそうだな」
「はぁ・・・。わかりました。でも、ヤバそうな魔物が産まれたときには、助けてくださいよ?」
「解っている。それに、スーンたちもこっちに移住してくるから、よほどの事が無い限りは大丈夫だと思うぞ?」
「それで、どのくらい成長しそうなのですか?」
「うーん。2-3階層くらいだと思うぞ?実際には成長していくから、それ以上になるかもしれない」
「そうですか、それなら、ヤバそうな魔物は大丈夫ですかね?」
「そうだな。あっ安全が確認されたら、ペネムダンジョンの安全地帯にある。実験区を移すからよろしくな」
「へい。へい。・・・・?え?実験区?え?はぁぁぁぁ?」
イサークが驚いている間に、肩を叩いて退散する事にした。
承諾が取れたので、医者の手配や栄養のある食物の運搬をやりつつ、スーンたちの移住を開始する事にしよう。
---
すべての移住を終えて、魔の森に湖を作って、崖の一部から温泉を発見して、ついでに淡水が出る井戸を掘って、ロックハンドの住環境が充実させた。
湖は、俺の記憶にある淡水の魚が湧き出すポットを配置した。野生化するかの実験を兼ねて行う事になった。
湖はスキル水を付与した魔核を配置している。一定量が湧き出す仕組みになっているが、実際、魔の森を掘っていると真水が湧き出す場所も見つかっていて、そこから湖まで流れを作った。
湖からダンジョンの入り口の真上に当たる部分まで流れを作って、そこから海に滝の様に落とした。
ロックハンドダンジョンは、結局スーンたちの意見を取り入れて5階層のダンジョンにした。
入り口の階層は今までどおりで、2階層は何も無い草原にしてある。予備階層と呼んでいる。3階層は、眷属達の修練の場所にした。ホームで使っているような、モンスターが湧き出すようになっている。
4階層も同じだが、少し強くなっている。そして、5階層が実験区と実験区で働く者たちの住処になっている。
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