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第七章 暗雲
第七十三話
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/*** カズト・ツクモ Side ***/
商業区での作業は、それほど多くない・・・はずだった。
ミュルダ老は、どう考えているのだろうか?
俺は、13歳の餓鬼だぞ?
俺がスーンから予定を聞かされた時の感想だ。
なんだよ、この打ち合わせの予定は?
居住区と、ミュルダからの人が来る?俺に話を通したい?
勝手にしろよ。
お前たちのほうが経験が有るだろう。うまくやってくれよ。報告だけは聞くから、計画段階のことまで説明しなくていいよ。
打ち合わせの予定をこなしながら、当初の予定だった商業区の下にダンジョンを作る作業に取り掛かる。
当初予定していた、商業区の地下にダンジョンを作って、居住区と神殿区と宿区まで通路を伸ばす。居住区と神殿区と宿区の入口は、決められた者だけを通すようにする。
商業区の入口は、カモフラージュの意味もあるから、ブルーフォレストの近くに小屋を作って、そこからダンジョンに入るようにする。円を書くように回廊と作って、そこに部屋を作る。ここでは商売ができるようにする。後は、ミュルダ老にお任せでいいだろう。
「クリス。ひとまず落ち着いたから、ペネムを設置しようと思うけど、問題はないよな?」
「うん。ねぇカズトさん」
「なんだ?」
「僕に、ペネムとダンジョンの管理をさせてもらえない?」
「いいけど・・・どうした?」
「僕、考えたけど、僕が、カズトさんの役に立とうと思ったら、これが1番じゃないかと思って、お祖父様にダンジョンを任せるのもいいとは思うけど、ペネムがダンジョンコアだって知っている人は少ないほうがいいよね?」
「そうだな」
「それに、ペネムがスキル変体で、姿を例えば耳飾りとか、ネックレスとかになってくれれば、僕と常に一緒に居るし、僕が商業区や宿区にいれば、ダンジョン運営は困らないよね?」
「あぁでも、クリス。お前が、商業区や宿区に縛られてしまうぞ?いいのか?」
「ウーン。それも考えたけど、ペネムと話をしたら、宿区まで地下通路を伸ばす計画ですよね?」
「あぁ・・・そうか、そうしたら、宿区ならペネムを置いておいても安全な場所は用意できそうだな」
「うん。宿区にペネムを置いておけば、カズトさんのログハウスには行けるよね?たまにだろうけど・・・」
「わかった。それじゃ、ミュルダ老には、ペネムの事は秘匿して小屋をスーンに命令して作らせるか。そこに、ダンジョンの入口を作ればいいだろう」
「うん!それでね・・・カズトさん」
「ん?」
「魔核が沢山必要になるけどどうしたらいい?」
「そうだな。ペネム。レベル6魔核が10個ほど有るけど、まず、クリスに従って、宿区まで通路を伸ばすのは可能か?」
『はい。可能です』
「クリス。宿区まで行けば、居住区の倉庫にある魔核なら自由にしていいぞ」
「わかった」
「クリス。ミュルダ老との話や、ペネムの事を頼むな」
「うん。僕頑張る!」
あとは、ミュルダ老と交渉して、小屋を作ってもらおう。
「ねぇカズトさん」
「ん?」
「サラトガの事、お祖父様に話していい?」
「サラトガ?」
「うん。ダンジョンが無くなりそうだって事と、もしかしたら街が維持できなくなるかもしれないって事・・・だけど、だめ?」
「そうだな・・・クリス。俺が、ミュルダ老に説明する。クリスも一緒に居てフォローしてくれ」
「わかった!」
クリスを伴って、ミュルダ老に面会の申し込みをする事にした。
すぐに執事が来て、会談を行う事になった。
話しの筋は理解してくれて、ペネムの事も突っ込まない。
ペネムと話をして、ペネムの分身をミュルダ老に預ける事も決めた。ダミーのダンジョンコアを商業区・・・行政区に、置くことにした。ペネム(偽)は魔素が抜けた魔核を俺が球体にした物だ。見るものが見たら解ってしまうだろうから、偽装も施してある。
鑑定結果で、ダンジョンコアと出るようにしてある。
俺が知らない間に・・・実際には、俺が許可したので、どこかで報告を受けたのだろう・・・、商業区は、行政区と商業区と自由区に分けられていた。これらの責任者は、ミュルダ老になっているが、これらを別々に分けたいそうだ、それらの事は全部許可した。新しく増える、ダンジョン区も作成して、表向きの責任者はミュルダ老が担当する事にした。
ミュルダ老との話し合いが終わった。
会議をしていた行政区を出て、スーンに小屋の作成を指示した場所に向かった。
商業区に関する会議は、全部終わったと思う。多分・・・。会議の席上に、居住区の連中まで来ているとは思わなかった。獣人族の長達が揃っていた。
ペネムのダンジョンができれば、移動がもう少し楽になるから、そうしたら、行政区を獣人族が仕切ればいい。獣人族の街になっていると思えるだろう。
「ペネム。それで、ダンジョンを作るのに、どのくらいかかる?」
『流石に、この規模だと、10日くらいは欲しいです』
「魔核を好きなだけ使ってもか?」
『申し訳ありません。流石に、広すぎます』
「そうか・・・クリス。悪いけど、手伝ってやってくれ、それから、ペネム。俺から、魔物の知識を吸収しただろう?」
『はい。魔物の配置に関しては、クリス殿に従います』
「カズトさん・・・僕、頑張る」
「あぁでも無理する必要は無いからな。魔物の配置も話をした通りでいいからな」
「うん」
「わかった。そうだ、リーリア。オリヴィエ。お前たち、クリスの護衛として、宿区に行ってくれ。向こうで、宿区と居住区の連中と話をして、ダンジョンの入口を作るようにしてくれ。洞窟の中でもいいからな。それから、ペネムに吸収させる魔核を、宿区の倉庫から持っていってやれ」
「ご主人様の護衛は?」「マスター。僕だけでもお側に」
「エリンを連れて行く、それに、カイとウミとライが居るから大丈夫だ。それよりも、クリスとペネムも、これからの事を考えると大切になる。絶対に魔物や人族に傷つけさせるな」
「カズトさん。僕のほうが大切なんて・・・」
「意味が違っていますけど・・・解っていますよね?護衛は、かしこまりました。ご主人様」
「かしこまりました。マイマスター。宿区での仕事は?」
「そうだな。オリヴィエは、イサークたちは知っているよな?」
「はい。存じ上げております」
「イサークたちに、商業区に行くように言ってくれ」
「かしこまりました。理由はどうしましょうか?」
「そうだな。商業区にダンジョンができたみたいだから、探索を頼みたいと言えばいいかな?他には、先程言った通り、魔核を届けてやってくれ、足りなくなりそうなら、魔蟲を使って、チアルから回収してくれ」
リーリアとクリスを見るが、二人ともその理由で問題ないと考えているようだ。
「かしこまりました。他には?」
「宿区を別荘地的な物にしたい」
「別荘地?」
別荘地では通じないか・・・そうだよな。
娯楽が少ない世界だし、”休み”という概念が乏しいからな。
「宿区の敷地を広げて、一軒一軒を少し間を離して、そうだな川には魚が居るだろうから、捕まえるような施設とか作ってもいいかもしれないな・・・。あっすまん。まずは、敷地を広げて、宿同士の間を広げろ。お互いに見えないように木で目隠しをしておけ、あぁクリスとリーリアとオリヴィエが住む家を作っていいぞ」
「カズトさん!いいの?」
「あぁダンジョンコアの世話をしてもらうのだからな」
「やった!僕、嬉しいです」
「リーリアとオリヴィエも問題ないな?」
「はい」「もちろんです」
「メイドや執事が必要になるだろうから、スーンに手配させる」
こんな話をしながら、ペネムは俺が指示した通りに、商業区をぐるっと廻るように地下通路を作成した。部屋の設置も完了したという事だ。丁度反対に当たる場所に、転移門の部屋を作成する。そこから、サイレントヒル下の空間に出られるようにさせる。
空間が有る方が、ダンジョンを作るのが楽だと言っていた。
そこからは時間がかかるようだ。魔核を吸収しながら、同じ広さで、下層を作っていく。
5階層までは、草原層とした。魔物も、それほど強くないものを配置した。イサークたちが倒せられる程度の魔物だ。
一度倒してしまえば、ポップしないようにしてある。階層の解放という感じだ。
後々、農業を行う場所にしたいと考えている。
チアルがどう出るのかわからないので、チアルでは実験にとどめ、本格的な農業や開発は、ペネムの中1~5階層で行う事にする。人手は、そのうち考えよう。
それ以降の階層は、クリスが担当する事になった。
「それじゃ3人とも頼むな」
クリスとリーリアとオリヴィエの話は終わった。
概ね、ミュルダ老からの話は許可を出した。
なにか却下したと思うが、それはそれだろう。スーンや、エント達には、しばらくは、SA/PAと商業区と行政区と自由区とダンジョン区の護衛も担当してもらう。監視を含めてだ。
問題が有った時には、行政区で対応をしてもらう事にした。
さて、次は、商売の話だ。
商隊の人と会おうかと言ったが、ミュルダ老やスーンだけではなく、他の者たちからも止められた。
そんな感じもしていたので、スーンに言って、魔核にスキルを付与する方法は、公開して使って良いと伝えてある。秘伝の方法と一緒にだ。偶然発見した方法だが、イサークたちに確認したら、今までそんな方法では使った事がないと言われた。
そのために、スーン達が実験して”使える”というレベルまで引き上げた理論を公開する事にした方法だ。
商人は喜んでくれたらしい。どのくらいの価値にするのかは、ミュルダ老におまかせする事になった。
さて、俺の役目もこれで終わりだろう。
10日後にダンジョンができるまで、ここに残っていても面倒な会議に駆り出されるだけだろう。
明日、アンクラムに向けて出発する事にした。
今度は、馬車は使わない。聞いている、アンクラムの情勢が不確かな事もあるが、街として機能していない可能性もある。馬車の管理をする人が避けない事もあり、”徒歩”で移動する事にした。
カイととウミとライとエリンを連れて行くから危険は無いと思うのだが、移動中の食事や俺が楽しむおやつや、俺以外が楽しむためのおやつを準備するのに時間がかかってしまった。
---
そして、今日商業区を出るのだが、思った以上におおごとになってしまっている。
スーン達が見送りをしたいと言ったので許可を出した。その時点では、数名から多くても10名くらいだろと思っていた。クリスとリーリアとオリヴィエとペネムは、俺を見送ってから、自分達も宿区に向かうと言ってきた。
それを聞いて、ミュルダ老が見送りに出るといい出した。この辺りで止めておけばよかったのだが、ミュルダ老から”他にも見送りをしたいと言っている者が居る”と言われて、商業区ではそれほど俺の名前は売れていないだろうと思って、許可を出した。
今、目の前に200名を越える者が居る。俺の見送りに出てきているという事だ。
一部の者を除いて、一度言葉を交わした程度が半分くらい居るだけで、残りの半数は”あぁ居たな”程度の者たちだ。
スーンとミュルダ老が一歩前に出てくる。
「大主様。行ってらっしゃいませ」
「スーン。それじゃ行ってくる。なんだかんだで、10日くらいしたら戻ってくるつもりだ」
「かしこまりました」
ミュルダ老にも一声かけておくべきだろう
「ミュルダ老も頼むな」
「はい。万事任されました。ミュルダにお寄りの際には、領主を訪ねてくだされ」
「あぁ解った。書類を見せればいいのだよな?」
「はい。それで解ると思います」
ミュルダ老から、現在のミュルダ領主への手紙を受け取っている。今後の関係に関しての事が書かれているらしい。
SAやPAの事もあるので、ミュルダ領主とは仲良くしておきたい。
「カズトさん!」
「ご主人様」
「マスター」
「3人ともペネムを頼むな」
「もちろん!」「かしこまりました」「かしこまりました」
クリスが自分からやるといい出した事だし大丈夫だろう。
なんだかわからないが、沢山の人から挨拶された。
全部に答えられないので、皆に向けて一言いう事になってしまった。
なんて言ったのか・・・俺の記憶の中にない。
ウミとライからはかっこよかったと言われたが、カイからは
『主様。もう少し練習したほうがよろしいかと思います』
と、意味がわからない事を言われた。
自分でも解っているよ。演説なんてできるわけがない。でも、拍手が聞こえたから良かったと思う事にする。
エリンも
「パパ。かっこよかった!」
と言ってくれた。
エリンの頭をなでながら、その場から逃げ出した。
けして、演説が失敗して、恥ずかしくなって逃げ出したわけではない。
「カイ。ウミ。ライ。エリン。行くぞ!」
商業区での作業は、それほど多くない・・・はずだった。
ミュルダ老は、どう考えているのだろうか?
俺は、13歳の餓鬼だぞ?
俺がスーンから予定を聞かされた時の感想だ。
なんだよ、この打ち合わせの予定は?
居住区と、ミュルダからの人が来る?俺に話を通したい?
勝手にしろよ。
お前たちのほうが経験が有るだろう。うまくやってくれよ。報告だけは聞くから、計画段階のことまで説明しなくていいよ。
打ち合わせの予定をこなしながら、当初の予定だった商業区の下にダンジョンを作る作業に取り掛かる。
当初予定していた、商業区の地下にダンジョンを作って、居住区と神殿区と宿区まで通路を伸ばす。居住区と神殿区と宿区の入口は、決められた者だけを通すようにする。
商業区の入口は、カモフラージュの意味もあるから、ブルーフォレストの近くに小屋を作って、そこからダンジョンに入るようにする。円を書くように回廊と作って、そこに部屋を作る。ここでは商売ができるようにする。後は、ミュルダ老にお任せでいいだろう。
「クリス。ひとまず落ち着いたから、ペネムを設置しようと思うけど、問題はないよな?」
「うん。ねぇカズトさん」
「なんだ?」
「僕に、ペネムとダンジョンの管理をさせてもらえない?」
「いいけど・・・どうした?」
「僕、考えたけど、僕が、カズトさんの役に立とうと思ったら、これが1番じゃないかと思って、お祖父様にダンジョンを任せるのもいいとは思うけど、ペネムがダンジョンコアだって知っている人は少ないほうがいいよね?」
「そうだな」
「それに、ペネムがスキル変体で、姿を例えば耳飾りとか、ネックレスとかになってくれれば、僕と常に一緒に居るし、僕が商業区や宿区にいれば、ダンジョン運営は困らないよね?」
「あぁでも、クリス。お前が、商業区や宿区に縛られてしまうぞ?いいのか?」
「ウーン。それも考えたけど、ペネムと話をしたら、宿区まで地下通路を伸ばす計画ですよね?」
「あぁ・・・そうか、そうしたら、宿区ならペネムを置いておいても安全な場所は用意できそうだな」
「うん。宿区にペネムを置いておけば、カズトさんのログハウスには行けるよね?たまにだろうけど・・・」
「わかった。それじゃ、ミュルダ老には、ペネムの事は秘匿して小屋をスーンに命令して作らせるか。そこに、ダンジョンの入口を作ればいいだろう」
「うん!それでね・・・カズトさん」
「ん?」
「魔核が沢山必要になるけどどうしたらいい?」
「そうだな。ペネム。レベル6魔核が10個ほど有るけど、まず、クリスに従って、宿区まで通路を伸ばすのは可能か?」
『はい。可能です』
「クリス。宿区まで行けば、居住区の倉庫にある魔核なら自由にしていいぞ」
「わかった」
「クリス。ミュルダ老との話や、ペネムの事を頼むな」
「うん。僕頑張る!」
あとは、ミュルダ老と交渉して、小屋を作ってもらおう。
「ねぇカズトさん」
「ん?」
「サラトガの事、お祖父様に話していい?」
「サラトガ?」
「うん。ダンジョンが無くなりそうだって事と、もしかしたら街が維持できなくなるかもしれないって事・・・だけど、だめ?」
「そうだな・・・クリス。俺が、ミュルダ老に説明する。クリスも一緒に居てフォローしてくれ」
「わかった!」
クリスを伴って、ミュルダ老に面会の申し込みをする事にした。
すぐに執事が来て、会談を行う事になった。
話しの筋は理解してくれて、ペネムの事も突っ込まない。
ペネムと話をして、ペネムの分身をミュルダ老に預ける事も決めた。ダミーのダンジョンコアを商業区・・・行政区に、置くことにした。ペネム(偽)は魔素が抜けた魔核を俺が球体にした物だ。見るものが見たら解ってしまうだろうから、偽装も施してある。
鑑定結果で、ダンジョンコアと出るようにしてある。
俺が知らない間に・・・実際には、俺が許可したので、どこかで報告を受けたのだろう・・・、商業区は、行政区と商業区と自由区に分けられていた。これらの責任者は、ミュルダ老になっているが、これらを別々に分けたいそうだ、それらの事は全部許可した。新しく増える、ダンジョン区も作成して、表向きの責任者はミュルダ老が担当する事にした。
ミュルダ老との話し合いが終わった。
会議をしていた行政区を出て、スーンに小屋の作成を指示した場所に向かった。
商業区に関する会議は、全部終わったと思う。多分・・・。会議の席上に、居住区の連中まで来ているとは思わなかった。獣人族の長達が揃っていた。
ペネムのダンジョンができれば、移動がもう少し楽になるから、そうしたら、行政区を獣人族が仕切ればいい。獣人族の街になっていると思えるだろう。
「ペネム。それで、ダンジョンを作るのに、どのくらいかかる?」
『流石に、この規模だと、10日くらいは欲しいです』
「魔核を好きなだけ使ってもか?」
『申し訳ありません。流石に、広すぎます』
「そうか・・・クリス。悪いけど、手伝ってやってくれ、それから、ペネム。俺から、魔物の知識を吸収しただろう?」
『はい。魔物の配置に関しては、クリス殿に従います』
「カズトさん・・・僕、頑張る」
「あぁでも無理する必要は無いからな。魔物の配置も話をした通りでいいからな」
「うん」
「わかった。そうだ、リーリア。オリヴィエ。お前たち、クリスの護衛として、宿区に行ってくれ。向こうで、宿区と居住区の連中と話をして、ダンジョンの入口を作るようにしてくれ。洞窟の中でもいいからな。それから、ペネムに吸収させる魔核を、宿区の倉庫から持っていってやれ」
「ご主人様の護衛は?」「マスター。僕だけでもお側に」
「エリンを連れて行く、それに、カイとウミとライが居るから大丈夫だ。それよりも、クリスとペネムも、これからの事を考えると大切になる。絶対に魔物や人族に傷つけさせるな」
「カズトさん。僕のほうが大切なんて・・・」
「意味が違っていますけど・・・解っていますよね?護衛は、かしこまりました。ご主人様」
「かしこまりました。マイマスター。宿区での仕事は?」
「そうだな。オリヴィエは、イサークたちは知っているよな?」
「はい。存じ上げております」
「イサークたちに、商業区に行くように言ってくれ」
「かしこまりました。理由はどうしましょうか?」
「そうだな。商業区にダンジョンができたみたいだから、探索を頼みたいと言えばいいかな?他には、先程言った通り、魔核を届けてやってくれ、足りなくなりそうなら、魔蟲を使って、チアルから回収してくれ」
リーリアとクリスを見るが、二人ともその理由で問題ないと考えているようだ。
「かしこまりました。他には?」
「宿区を別荘地的な物にしたい」
「別荘地?」
別荘地では通じないか・・・そうだよな。
娯楽が少ない世界だし、”休み”という概念が乏しいからな。
「宿区の敷地を広げて、一軒一軒を少し間を離して、そうだな川には魚が居るだろうから、捕まえるような施設とか作ってもいいかもしれないな・・・。あっすまん。まずは、敷地を広げて、宿同士の間を広げろ。お互いに見えないように木で目隠しをしておけ、あぁクリスとリーリアとオリヴィエが住む家を作っていいぞ」
「カズトさん!いいの?」
「あぁダンジョンコアの世話をしてもらうのだからな」
「やった!僕、嬉しいです」
「リーリアとオリヴィエも問題ないな?」
「はい」「もちろんです」
「メイドや執事が必要になるだろうから、スーンに手配させる」
こんな話をしながら、ペネムは俺が指示した通りに、商業区をぐるっと廻るように地下通路を作成した。部屋の設置も完了したという事だ。丁度反対に当たる場所に、転移門の部屋を作成する。そこから、サイレントヒル下の空間に出られるようにさせる。
空間が有る方が、ダンジョンを作るのが楽だと言っていた。
そこからは時間がかかるようだ。魔核を吸収しながら、同じ広さで、下層を作っていく。
5階層までは、草原層とした。魔物も、それほど強くないものを配置した。イサークたちが倒せられる程度の魔物だ。
一度倒してしまえば、ポップしないようにしてある。階層の解放という感じだ。
後々、農業を行う場所にしたいと考えている。
チアルがどう出るのかわからないので、チアルでは実験にとどめ、本格的な農業や開発は、ペネムの中1~5階層で行う事にする。人手は、そのうち考えよう。
それ以降の階層は、クリスが担当する事になった。
「それじゃ3人とも頼むな」
クリスとリーリアとオリヴィエの話は終わった。
概ね、ミュルダ老からの話は許可を出した。
なにか却下したと思うが、それはそれだろう。スーンや、エント達には、しばらくは、SA/PAと商業区と行政区と自由区とダンジョン区の護衛も担当してもらう。監視を含めてだ。
問題が有った時には、行政区で対応をしてもらう事にした。
さて、次は、商売の話だ。
商隊の人と会おうかと言ったが、ミュルダ老やスーンだけではなく、他の者たちからも止められた。
そんな感じもしていたので、スーンに言って、魔核にスキルを付与する方法は、公開して使って良いと伝えてある。秘伝の方法と一緒にだ。偶然発見した方法だが、イサークたちに確認したら、今までそんな方法では使った事がないと言われた。
そのために、スーン達が実験して”使える”というレベルまで引き上げた理論を公開する事にした方法だ。
商人は喜んでくれたらしい。どのくらいの価値にするのかは、ミュルダ老におまかせする事になった。
さて、俺の役目もこれで終わりだろう。
10日後にダンジョンができるまで、ここに残っていても面倒な会議に駆り出されるだけだろう。
明日、アンクラムに向けて出発する事にした。
今度は、馬車は使わない。聞いている、アンクラムの情勢が不確かな事もあるが、街として機能していない可能性もある。馬車の管理をする人が避けない事もあり、”徒歩”で移動する事にした。
カイととウミとライとエリンを連れて行くから危険は無いと思うのだが、移動中の食事や俺が楽しむおやつや、俺以外が楽しむためのおやつを準備するのに時間がかかってしまった。
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そして、今日商業区を出るのだが、思った以上におおごとになってしまっている。
スーン達が見送りをしたいと言ったので許可を出した。その時点では、数名から多くても10名くらいだろと思っていた。クリスとリーリアとオリヴィエとペネムは、俺を見送ってから、自分達も宿区に向かうと言ってきた。
それを聞いて、ミュルダ老が見送りに出るといい出した。この辺りで止めておけばよかったのだが、ミュルダ老から”他にも見送りをしたいと言っている者が居る”と言われて、商業区ではそれほど俺の名前は売れていないだろうと思って、許可を出した。
今、目の前に200名を越える者が居る。俺の見送りに出てきているという事だ。
一部の者を除いて、一度言葉を交わした程度が半分くらい居るだけで、残りの半数は”あぁ居たな”程度の者たちだ。
スーンとミュルダ老が一歩前に出てくる。
「大主様。行ってらっしゃいませ」
「スーン。それじゃ行ってくる。なんだかんだで、10日くらいしたら戻ってくるつもりだ」
「かしこまりました」
ミュルダ老にも一声かけておくべきだろう
「ミュルダ老も頼むな」
「はい。万事任されました。ミュルダにお寄りの際には、領主を訪ねてくだされ」
「あぁ解った。書類を見せればいいのだよな?」
「はい。それで解ると思います」
ミュルダ老から、現在のミュルダ領主への手紙を受け取っている。今後の関係に関しての事が書かれているらしい。
SAやPAの事もあるので、ミュルダ領主とは仲良くしておきたい。
「カズトさん!」
「ご主人様」
「マスター」
「3人ともペネムを頼むな」
「もちろん!」「かしこまりました」「かしこまりました」
クリスが自分からやるといい出した事だし大丈夫だろう。
なんだかわからないが、沢山の人から挨拶された。
全部に答えられないので、皆に向けて一言いう事になってしまった。
なんて言ったのか・・・俺の記憶の中にない。
ウミとライからはかっこよかったと言われたが、カイからは
『主様。もう少し練習したほうがよろしいかと思います』
と、意味がわからない事を言われた。
自分でも解っているよ。演説なんてできるわけがない。でも、拍手が聞こえたから良かったと思う事にする。
エリンも
「パパ。かっこよかった!」
と言ってくれた。
エリンの頭をなでながら、その場から逃げ出した。
けして、演説が失敗して、恥ずかしくなって逃げ出したわけではない。
「カイ。ウミ。ライ。エリン。行くぞ!」
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