スキルイータ

北きつね

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第四章 発展

第四十七話

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/*** カズト・ツクモ Side ***/

「ツクモ様。あれが、黒狼族の村落です」

 確かに、ブルーフォレストにあった、他の村とは違う。
 村落という言葉が合っている。簡単な柵で守られているが、それだけだ。

 俺たちの住処から、眷属たちが先導しながら、麓を迂回するように進んだ。大河を渡るのに苦労したが、それだけだった。どこから、これだけの水量が産まれているのか不思議だが、この世界は何でもありのご都合主義で成り立っていると割り切ることにした。

 ヨーン殿も、黒狼族にお土産を持っている。魔物の素材だ。ダンジョンで自分たちが狩った物だと話していた。

 あとは、ダンジョン内で作っている、穀物を持ってきてる。白狼族に割り当てられた物を、部族の総意として集められた物だ。

「ツクモ様。それで、本当によろしいのですか?」
「ん?念話の事か?」
「・・・はい」
「うーん。ヨーンがやめてほしいのなら出さないけど、望まない婚姻を続ける意味は無いと思うのだけどな。それに、巫女姫になってしまうと、ヒルマウンテンに縛られて、一生出られないのだろう?それじゃナーシャが逃げ出したのはしょうがないと思うぞ?」
「あの馬鹿は、ツクモ様の所まで来ておきながら・・・」
「それは、許してやってほしい」
「はぁ・・・ツクモ様がそうおっしゃるのでしたら、本当に、あの娘はいつまで経っても・・・」

 村落から、若い黒狼族が2名ほど出てきた。

「止まれ!人族よ!何をしに来た。返答次第では、我らが相手する!」

『主様!殺っていい?』
『カイ。大丈夫だよ。ウミも、オリヴィエも、スーンも殺気を出さない。通過儀礼だよ』

 この黒狼族は、カイ達の殺気を浴びても何も感じ・・・なかった事はないのね。しっぽが可愛く丸まっている。
 おっ!村から、10名ほどの、さっきの二人よりいい装備を身に着けた者が出てきた。

「お待ち下さい!」

 ヨーンがカイたちの殺気から開放されて、復帰した。

「お前は、たしか白狼族の族長だったな。久しいな」
「おぉ黒狼族の跡継だったな。娘の件はすまん。今日は、その詫びを含めて、族長に話が有ってきた」
「それは、いい。終わった話だ。その人族と、フォレストキャット・・・エルダーエントは、なんだ?お主が支配したのか?」
「馬鹿な事を申すな。この方は、カズト・ツクモ様。ブルーフォレストのフログレンスリバー以東を支配されておられる」

 え?俺?支配なんてしていないよ?
 スーンは少し不満気味だが、まぁいい。

「その人族がか?白狼族よ耄碌したか?」

 フンっとでも鼻息が聞こえてきそうな雰囲気だが、テンプレートでは、この辺りで、ヨーンやカイ辺りが”ふざけるなよ”ってなるのだけど、”可哀想な人”という雰囲気だ。俺としても、無駄な争いは避けたいので丁度よい。

 あぁダメな奴・・・。スーンの方を見る。
 俺に向けて一礼している。そういう事だろう。

/*** イサーク Side ***/

 リーリア殿が、ミュルダの街に到着する。正確には、到着している。
 あれから、1日で、ミュルダとアンクラムの街の間を移動してきた事になる。信じられない速度だが、ツクモ殿の関係者だから、何らかのスキルを利用したのだろう。
 今、ナーシャが迎えに行っている。

 領主の通行証を持っているので大丈夫だろう。

「イサーク。リーリアちゃんを連れてきたよ。クリスちゃんの所に行こう!」
「おい。ナーシャ。リーリア殿は、着いたばかりだろう。一旦休んでからでもいいと思うぞ?」

「イサーク様。しかし、ご主人様から、クリスティーネ様の治療を優先しろと命令をうけております。お気遣いありがとうございます」

 本人がいいと言っているのに止めるのはおかしい。

「あっイサーク様。ご領主様のお時間が有るのでしたら、面会のお約束を頂きたいのですが大丈夫ですか?」
「かまいませんが?」
「はい。ご主人様から、アンクラム内部の情報も欲しいだろうから、ご領主様がお望みなら、私が知っている事は、全部話して構わないと言われました」
「え?本当ですか?」
「えぇ?眷属からの情報も入ってきますので、かなりタイムリーな情報をお伝えできると思います?必要ですか?」
「もちろんです。領主には話をしてきます。ナーシャ!リーリア殿と一緒にいてくれ!」

 ナーシャはもとからそのつもりだったのだろう。リーリア殿の腕に、自分の腕を絡めている。

 俺は、すぐに領主への面談の申し込みをした。
 領主も、なにかあると思ったのだろう、すぐに面談する事になった。

「イサーク。どうした?なにか有ったのか?」
「えぇ!とびっきりの爆弾を持ってきました」
「なにぃ?、ツクモ殿の関係か?」
「”また”と言われると心外なのですが、そうです」
「今度はなんだ?確か、リーリア殿が来られるのだよな?」
「えぇ先ほど来られました。それで、ナーシャと一緒に、クリスティーネ嬢の所に向かいましたよ」
「おぉぉぉそれはいいことだ。完治しなくても、咳が止まるだけでだいぶ楽になれるらしいからな」
「えぇそうですね。それでですね」
「そうじゃったな。それで?」

 領主が身構えるのを待ってから

「リーリア殿がどこから来られたかわかりますか?」
「?あっアンクラムか?でも、中に入られないのではないか?あそこは、身分証がないと無理じゃぞ?だから、潜入の人が限られてしまっている」
「えぇ俺もうかつでした、領主に言っていなかったのですが、ツクモ殿は、アトフィア教の司祭を捕らえて、完全に気持ちを折っていましてね」
「は?」
「そうなりますよね。アトフィア教の司祭と、護衛が俺たちが作った何の肉かわからない物を食べたのですよ?信じられますか?」
「はぁ?なぜそんな・・・いや、今はいい。それよりもだ、リーリア殿はどうされたのだ」
「えぇそうですね。司祭に囲われているという設定で、アンクラムの街に入ったのでしょう。そんな事を・・・”お約束”だとは言っていましたよ」
「”お約束”がわからないが、確かに、司祭に囲われていると・・・でも、どの司祭かわからないが、No.1だとしたら、ダメだぞ?」

「領主。そのNo.1ですよ捕らえていたのは?」
「は?でも、奴の性癖は知っておろう?」
「えぇ知っていますよ。15歳未満でないとダメだという事ですよね?」
「あぁそうじゃ。あの気持ち悪い奴が、物資と引き換えに、クリスをよこせと言ってきた時には、殺してやろうと本気で思ったのじゃがな」
「領主!」
「あぁすまん。門番もそれを知っておろう、奴に囲まれていると言っても、ダメじゃろう?脅されていると受け取られて、身分証の提示を求められるぞ?」
「・・・領主。リーリア殿は、見た目は、12~3歳なのですよ。実際の年齢はわかりませんけどね」
「は?クリスと同じくらい?」
「えぇそうです。その娘が、司祭に囲われているとなったらどうですか?」
「・・・門番は、何も言わずに通すじゃろうな。面倒な匂いしかしてこないからな」
「でしょ?それでいて、リーリア殿は、俺たちと普通に話もできますし、戦闘に至っては、俺たちがスキルで強化した状態と同等ですよ。自信なくしますよ」
「は?・・・ちょっとまて、もしかして・・・カズト・ツクモ殿・・・も?なのか?」

 やっと言える。言わないで面談した時の領主の顔も見てみたかったが、後で文句を言われるのは間違いないだろうからな。

「そうですよ。13~4歳です」
「はぁ?そんな事あるか?そんな人物が、”借り”に思うことだったり、経済的な格差をなくすような事を考えるか?考える視線が、お主たちよりも上だぞ?そんな事が有る分けがない!」
「えぇそうですね。俺たちもそう思っていますが、現実的にはそうでなのですよ。あっそれから、これは、俺とガーラントとピムの統一した意見なのですが、アンクラムのぼんくら500名相手にするよりも、カズト・ツクモ殿1人を相手にするのが死が近い。そう考えています」

 領主がなにか考え込んでしまった。

「なぁイサーク」
「何でしょうか?」
「カズト・ツクモ殿は・・・いや・・・いい。それよりも、リーリア殿からの話が聞きたい。今、クリスの所に来ているのだよな?」
「そうだと思いますよ?ナーシャの事だから、リーリア殿に、お菓子の作り方をねだっているかも知れませんけどね?」
「そうだ、思い出した!イサーク!お前達が持ってきた、あの服!何だあれは?」
「なんだと言われましても、あの時に説明しましたよね?」
「あぁイリーガル・・・なんちゃら・・・スパイダーの布だとな。クリスが気に入って、他の服・・・下着もらしいが、着ようとしない、どうしてくれる!」
「はぁそれこそ、知りませんよ。ツクモ殿と交渉してくださいよ」
「わかった!お主達ノービス全員をツクモ殿の好きにしていいから、クリスの要望に応えてくれるよ頼むとしよう!」
「なにぃこのクソジジイ!下手に出ればいい気になって!」

「コホン!」

 控えていた執事が咳払いをする。

「お二人とも、子供ではなのですから、お控えください。それよりも、リーリア殿との面談を急いだ方がよろしいのでは無いですか?治療を終えて、咳が止まったクリスティーネ様がいつまでも部屋に籠もっているとは思えません」
「そうだ!クリス!お前、行ってクリスに部屋に居るように言ってくれ!」
「イヤです。クリスティーネ様に嫌われたくありません」

 執事が、主人の言葉を断る。
 まぁこの屋敷の権力を持っているのは、クリスなのだろうから、当然と言えば当然だろうな。

 ドアがノックされて、メイドが部屋に入ってきた。

「リーリア様が、いらっしゃっていますがどういたしましょうか?」
「入ってもらえ、クリスは?」
「クリスティーネ様は、リーリア様が持ってこられた、お菓子をナーシャ様と食べておいでです」
「そうか・・・わかった」

 ドアが大きく開けられて、リーリア殿がメイドがするようなお辞儀をする。

 一歩前に踏み出してから
「初めて御意を得ますリーリア・ファン・デル・ヘイデンでございます」

 領主も立ち上がって、
「カスパル=アラリコ・ミュルダ・メーリヒ。孫が世話になった」
「いえ。主人カズト・ツクモからの命令です。お気になさらないでください」

「・・・。そうじゃ。イサークから話を聞いたのだが、リーリア殿は、アンクラムから来たのじゃな?」
「はい。そうです」
「アンクラムの様子はどんな感じなのじゃ?」

 リーリアが語った話は信じられない物だ。
 しかし、その場にいなければわからないような話もされている。実際に居たのだろう。そして、領主が持っていた、9割損失の中身がほぼ正しい事まで解ってきた。そして、スーン殿が話した、ミュルダが、アンクラムやサラトガから捨てられたのではなく、ミュルダが2つの街を見捨てたという意味も解ってきた。今のアンクラムと商売をするのなら、領主側とするのか、教会側とするのか、または獣人族とするのか?
 両方共メリットが少ない。それならば、カズト・ツクモ殿が保護している獣人族とした方が、ミュルダとしてのメリットは大きい。

 それにしても、本当に、領主側と教会側が紛争状態に入ったのか?
 リーリア殿の話では、司祭が、領主の娘二人を求めた事がきっかけだという話だ。しかし、それならば・・・リーリア殿はこうして無事に抜け出せた?正直な話、アンクラム領主の娘はたしか、10歳かそこらだと思った。いくら司祭でも・・・いやだからか・・・それでも、リーリア殿の容姿を見れば・・・。

「そんな事になっていたのですね」
「えぇそうです。あっ些細な事でしたので、忘れる所でした、アンクラムにいた、ガーラント様のお知り合いの鍛冶屋のヤルノ様にお話した所、快く引き受けてくれまして」
「え?」「は?」
「あぁ申し訳ありません。大事な事柄が抜けていました。アンクラム居た、獣人族のほぼ全員を教会が救済するという名目で、街の外に連れ出しまして、街の外で眷属化を解除いたしました。教会が保有する馬車や荷車、後、冒険者達が使っていた移動手段のすべてを司祭の名で徴収いたしました。あと、獣人族から聞きまして、アンクラムの街で、好意的であったすべての人族。あと、街にあった武器や防具や食料を買い占めて持ってきております。街に入る許可を頂けませんか?1人クズを護衛につけていますが、その者からの報告では、5日後には到着すると思います。街で保護できない者は、サイレントヒルとブルーフォレストの境界に用意しております。商業の街、ビックスロープに移動してもらう事になると思います。今、主人カズト・ツクモが、ヒルマウンテンの黒狼族の下を訪れていまして、竜族を支配したら、こちらに向かうと連絡があり、それまでは仮の決定になってしまいます。申し訳ございません」

「・・・」「・・・」

 いろいろ聞いたのは理解した。
 内容が理解できていない。途中で俺の中の何かが、話を理解するのを拒否した。

 かろうじて理解できたのは、アンクラムの街は終わりだという事だ。あの街は、表は人族の街だが、屋台骨を支えているのは、獣人なのだ。それも、捕らえられて、奴隷として売られて、隷属化させられた。その獣人を連れ出した?どうやって?そもそも、隷属化の解除?どうやって?武器や防具や食料の買い占め?どこに・・・あっ魔核があった。でも、それだけでは足りない。どこにその資金が?

 リーリア殿は、1つ1つ丁寧に説明してくれた。
 資金に関しては、魔核を使った事もだが、教会が溜め込んでいたスキルカードを全部放出したという事だ。獣人族に関しても、奴隷商は、獣人達が襲って解放した。教会のの徴収に従わない者は、獣人に話を聞いて、しっかりと管理されているのなら、スキルカードでの売買を求めて、そうじゃなければ、主人を他の獣人に襲わせたり、朝になったら死んでいたりした。
 司祭の名で、全ての聖職者を動かして、徴収した。そして、教会の名前の下で、街の外で救済を行うとした。
 救済は行われないで、見物に来ていた、獣人族否定派の者たちを全員殺した。

 そして、ヤルノや獣人族や亜人種と友好関係を築いていた者たちと共に、ミュルダに向かったということだ。

 話を聞くと簡単そうだが、とんでもない事だ。
 これを、リーリア殿は3日程度で行っている。どうやったら、そんな事が出来るのか?

 リーリア殿は、”すべて、主人カズト・ツクモ様のご命令に従った結果です”と言っている。
 恐怖さえも感じる。

「それで、リーリア殿。どのくらいの人数が移動してくるのですか?」
「正確な数は把握しておりませんが、多くて、3000。少ないと、2500と言った所でしょうか?全員を救えなくて、大変申し訳なく思っております。食料も十二分にありますので、日持ちしない物から優先して消費する様にお願いしておりますから、2~3ヶ月は支援なしでも大丈夫だと思います。武器や防具の数が多くて、移動速度がこれ以上上がらないのと、女子供が多いために、到着の日数が読めなくて申し訳ありません」

 3000?
 あの街は、2万人程度の街だったはずだ。そこから、3000が逃げ出す?領主は、それを見逃したのか?
 あっ止めるための兵がブルーフォレストで消耗していたのだった。本当に、あの街終わったぞ?

 領主も同じような考えなのだろう。

「リーリア殿。申し訳ないが、全員を街の中にいれるのは無理だ。差別とかではなく、物理的な問題だ」
「えぇわかります。ですので、代表者や女性や子供や身体の弱っている者を受け入れてください。治療が必要な者は私が治療を行います」

 なんか、大事な事が抜けているようだけど、それは俺が考えることではないな。

/*** クリスティーネ=アラリコ・ミュルダ・マッテオ Side ***/

 きっと、僕・・・いけない。私は、ここで死んでいく事になるのでしょう。
 昨日からまた咳が酷い。横になっているのも辛い。部屋の中もジメジメして気持ち悪い。

 この前、お祖父様が持ってこられた服と下着を着たら、確かに部屋はジメジメしているけど、今までと全然違う。咳は止まらないけど、快適に過ごせる。すごい、さすがはお祖父様だ。この服と下着をもっと欲しい。でも、ダメなの。私は、ここから出てはダメだから、お祖父様が来られた時にだけ頼むことになる。

 この部屋には、お祖父様と数名のメイドと、ナーシャお姉ちゃんしか来ない。お父様は前は沢山来てくれたけど、私が10歳になる時に、お祖父様から、”アラリコ”の名前を頂いてからは、来てくれない。

 カスパル叔父様も、来てくれなくなった。ナーシャお姉ちゃんのお兄さんのアントンさんも来てくれない。
 ううん。違う。お父様が来てくれなくなったのは、別の理由がある。カスパル叔父様もアントンさんも、私のために”レベル7回復”を求めて、ダンジョン街のサラトガに行って戻ってこない。その時に、お父様が大事されていた”速駆の腕輪”を持ち出したから、お父様は怒ってしまわれた。

 全部、僕の病気が悪い。
 僕なんて、産まれてこなければよかった。お母様は、私の弟を産んですぐに・・・。お父様は、弟を立派な領主にするために、教育している。僕は、領主なんてなりたくない。自由に、いろんな所を見て回りたい。学園にも行ってみたい。サイレントヒルを越えた先にあるというブルーフォレストにも行ってみたい。
 でも、僕は、15歳まで生きられないと、アトフィア教の人に言われた。
 身体の中に、魔物が住んでいると言われた。白狼族の孫娘だから、魔物に取り憑かれたと・・・そのまま、咳で苦しんで死ぬのが嫌なら、アトフィア教に入信しろと言われた。入信したら助かると言われた。そんなわけないのは、僕でも解る。でも、お父様は、アトフィア教の聖職者を追い返した、お祖父様に対して文句を言っている。

 僕が生きているせいで・・・お祖父様とお父様はよく喧嘩している。

 今日久しぶりに、ナーシャお姉ちゃんが来てくれた。お友達だと言って、リーリアちゃんを紹介された。不思議な人だ。お父様にもお祖父様にも内緒なのだけど。僕には、念話のスキルを持っている。いつも1人で居たからなのか、10歳の時に、念話のスキルが使えるようになった。
 リーリアちゃんも念話が使えるそうだ。ナーシャお姉ちゃんも使えるのは知っている。今日のメイドは、お父様からあてがわれたメイドで、僕の事を監視している。なんで、そんな事をするのかわからないけど、お祖父様が来られる時には、必ずお父様になにか報告している嫌なメイドだ。

 だから、ナーシャお姉ちゃんに念話で話しかけた。そうしたら、リーリアちゃんも念話が使えるから、3人で念話でお話する事になった。
 魔力を使うから、休み休みだけど、楽しい。ナーシャお姉ちゃんとリーリアちゃんが美味しい食べ物や飲み物を沢山持ってきてくれた。それだけじゃなくて、リーリアちゃんは”レベル5治療”持ちで、僕の事を治療してくれた。

 久しぶりに身体の調子がいい。咳が出ないだけでもすごいのに、悪い所がなくなったみたいだ。

 その後、リーリアちゃんは、お祖父様とお話をするために、部屋を出た。
 その時に、ナーシャお姉ちゃんにそっと何かを渡していた。お姉ちゃんは、少しびっくりしていた。

「あのね。クリスちゃん」

 普通に話しかけられた。お父様のメイドに聞かれてもいい話なのだろうか?

「リーリアちゃんが言うには・・・ううん。違うわね。リーリアちゃんのご主人様が言うには、クリスちゃんの病気は、あまり部屋の中を湿らせると、余計に悪化する可能性が高いんだって」
「え?だって、アトフィア教の偉い人が・・・」
「うん。それも書いてある。間違いではないけど、それで悪化しているのなら、部屋を少し乾燥させて、寝る時に、布を湿らせて、軽く絞った物を置いて見てくださいだって、後、部屋の隅や布団に、青色や黒のシミみたいな物ができていたら、徹底的に掃除して、部屋を一度完全に乾燥させた方がいいみたいだよ。あとね。起きている時に、咳で喉がきつかったら・・・」
「どうしたのお姉ちゃん?」

「ううん。なんでもない。”ナーシャさんに持たせた”はちみつを溶かしたお湯を飲んで、少しだけ湿らせた布で”口だけ”を覆って過ごせば楽になるはずだって書かれているよ」

 そう言って、ナーシャお姉ちゃんは、腰のポーチから小瓶を取り出してくれた。
 少しだけ手に付けてもらって舐めたら、ものすごく甘かった。でも、これはお薬だから、辛い時にだけ飲むように言われた。

 そうか、ナーシャお姉ちゃん。はちみつを隠していたのがバレているとは思わなかったのかな?

 暫くは、リーリアちゃんもお屋敷に泊まってくれると言っていて、毎日僕に治療をしてくれると言ってくれた。だから、その間に、部屋の掃除をやろうと言われた。
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