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第四章 発展
第四十一話
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/*** イサーク Side ***/
「大丈夫か?」
後ろから来てる、ナーシャとガーラントとピムを見る。
皆無事のようだ。
「ピム!」
「うん。大丈夫だよ」
ここまで逃げれば大丈夫という事だろう。
少し落ち着こう。ツクモ殿には感謝しなければならないな。収納袋がなければ、こんなに早く移動できなかっただろう。
収納袋の中から、簡易テーブルを出す。
人数分の椅子も用意されている。料理は無いが、食材なら入っている。ガーラントが、なにか簡単に作るようだ。
「ねぇイサーク。イサークってば!!」
「ん。あっナーシャか、なんだ?」
「さっきから呼んでいるのに・・・何考えていたの?」
「ん?あぁどうやって領主に、ツクモ殿の話をしたらいいのかと思ってな」
「え?普通に話せばいいと思うけど?」
「その普通がわからないから考えていたのだけどな」
俺たちが主張すれば、会ってくれる可能性はすごく高い。
でも、警戒から入る会談は成功する確率が低い、それに、アンクラムの近くを通った感じでは、アンクラムはすごく疲弊している。アンクラムにとっては、ブルーフォレストは、ダンジョンと同じくらいの恵みを与えているに違いなかったが、ブルーフォレストに出ている人がいないのだ。
出られないといい換えたほうがいいのかも知れない。
ブルーフォレストの木々は、薪になり、魔物は、スキルカードや素材になる。少し奥に入れば、サラトガのダンジョンの10階層と同じくらいの稼ぎが期待できる。
そんな場所に誰も出ていないとは考えられない。もしかしたら、アンクラムのダメージは俺たちが考えている以上に大きいのではないか?
アントンの事は報告しなければならないだろう。カスパル殿の事もそうだ。気が重いが、これも俺たちの仕事で義務なのだろう。ツクモ殿は、拾ったからと言って、貴重なアイテムでもある”速駆の指輪”も渡してくれた。
街の事なぞ、冒険者である俺程度ではわからない事が多いだろうけど、ツクモ殿の街?と交易できれば、ミュルダの街は安泰だろう。ミュルダから何を出すのかという問題点はあるが、それは領主が考えれば良い事だ。
「イサーク!ナーシャ!ピム!」
ガーラントが呼んでいる。食事ができたのだろう。
「ガーラント!今日はなに?」
「ブルーボアを焼いた。あと、ツクモ殿から頂いた、野菜を付けてある」
「うん!」
リーリア殿と一緒に移動している時に、俺たちは基本的な事を学んだ。
塩や胡椒の使い方だ。それだけで、肉が断然美味しくなる。街のうまいと言われる宿屋で出てくる肉料理と同じくらいだ。あいつら、こんな方法で焼いていたのかと関心した。それに、俺たちには胡椒がある。また、胡椒が使い方も難しい。ただつければいいというものではなかった。多くかければ、それだけ美味しくなると思っていたが、違っていた。適量という物が有ると教わった。
その御蔭で、美味しく食べる事が出来るようになった。
あと、衝撃の事実を俺たちは知ってしまった。
あれは、リーリア殿とツクモ殿の街?を出てから、1日が経過したときだった。
--- 回想
「あっ!ちょっと待ってください」
「どうされた?」
「胡椒を忘れてしまって・・・残り少ないので、調達しようかと思っていたのです」
「胡椒を調達?」
「はい?」
「どうやって?」
「え?」
あの時のリーリア殿の表情を忘れないだろう。知らないのですか?そんな雰囲気さえ有った。
「これが胡椒ですよ?」
---
そう言って示されたのは、ブルーフォレストの浅い地域で見られる植物だ。
その植物の種子を乾燥させたものが、胡椒になると教えられた。つるのように木々に巻き付いていて育つと教えられました。エントやドリュアスが栽培した物には及ばないが、自然の物でも十分美味しいと教えられた。
胡椒は、落ちているのを拾うだけと教えられた。
そのために、数が少ないと・・・。そして、落ちている場所も不確定で、一度見つけた場所は数年は見つけられるらしいが、それでも、1~2kgが限界だと言われていた。それはそうだろう。蔓のように、木々に巻き付いているから、同じ種類の木々を探してみても、胡椒が発見できなかったわけだ。そして、聞いた話では、ミュルダで胡椒を作ろうと思えば出来るのだ。
リーリア殿が、ツクモ殿に確認してくれたが、問題ないとの事だ。栽培方法まで教えてもらった。ただ、エントやドリュアスの栽培方法なので、うまくいかない可能性があるので、試行錯誤してほしいと言われている。
胡椒ができれば、サラトガやアンクラムではなくても、交易先は見つかるだろう。
距離の問題も、ツクモ殿が改良した馬車で、ある程度は解決するだろう。作り方や、改良点は、ガーラントが知っている。ミュルダで量産する許可も貰っている。
俺は、土産となるかわからないと言われたが、レベル1~3の魔核を大量に貰っている。ミュルダは、食料は困らないが、魔核が不足しているかも知れないと言った所。魔核を大量に支援すると言われた。
そして、ぶっちゃけ話として、レベル1~3の魔核なら、多分数千個あると言われた。俺たちを気遣った嘘かもしれないが、ありがたく貰っていくことにした。あと、ピムが獣人族の代表たちと交渉して、低レベルのスキルカードも大量に貰ってきた。これは、ミュルダの奴らを撃退した時に、奴らが持っていた物らしい。
ツクモ殿も必要としないし、獣人族は気分的に使いたくない。それに、獣人族は、ダンジョンに入って、自分たちで必要なスキルカードを取得し始めているようで、全部持っていっても問題ないと言われたらしい。
それでも、ピムは半分だけ残して、レベル4までのスキルカードを貰ってきた。迷惑をかけられているミュルダへの土産としては、ちょうどいいだろう。
しかし、これからの他の街との交易を考えると、一番の土産は、ナーシャのポーチに入っている物だろう。
メイプルシロップと言っていたが、アレの作り方や、パンケーキを作る時に必要になる薄力粉の作り方。卵はツクモ殿も試行錯誤をしている最中らしく量産が出来るようになったら教えてくれると言っていた。それでも、卵を20個ほど貰ってきている。
ミュルダは穀物が大量にあるという話をして、穀物の種類を教えた所、いくつかの物がほしいと言われた。それを買って帰る事になった。同時に、穀物の食べ方や加工方法も教えてもらった。それらが、ナーシャのポーチの中に入っている。レシピ帳だ。
明日には、ミュルダに着けるだろう。どうなっているのか?
それに、リーリア殿ことも気になる。大丈夫だとは思うが、それでも女の子には違いない。
/*** カスパル=アラリコ・ミュルダ・メーリヒ Side ***/
どういう事だ。
アンクラムの常備兵9割の損失。
信じられないような報告が届けられた。そして、その中に、アトフィア教のNo.1~3が行方不明となっていることが告げられていた。
ミュルダへの侵攻は不可能だと結論付けられている。
そうなると怖いのは、サラトガだが、サラトガは怖いくらいに何も言ってこない。異端認定されてから、一度ミュルダ所属の冒険者と商隊のダンジョン及び街への出入りを規制する旨の通達があっただけだ。
それ以降、奴らは沈黙を守っている。
それよりも、今は、アンクラムの情報だ。
タイムラグが有る上に、なぜ?どうして?が先に出てしまう。ブルーフォレストに向かったのはほぼ間違いない。それがどうしたら、9割の損失に繋がる?
「おい。あれから誰も帰ってきていないのか?」
「はい」
「そうか・・・今、何チームを、アンクラムに出している?」
「6チームです」
「そうか・・・増やせないか?」
「ピムが帰ってくれば可能だとは思いますが、ピムは・・・」
そうだな。ピムはダメだろう。
イサークたちに情報を伝えるために、サラトガに走らせた。合流できていればと思うが、ここまで連絡がないとなると、ナーシャを含めて・・・最悪の事を考えなければならないな。
叔父上になんて言って詫びればいい。”生きていてくれるだけでいい”と、叔父上が言った時には驚いた。そのナーシャが、黒狼族の戦士であるイサークとくっつくとは、わからないものだな。でも、その二人もダメだろう。
「すまない。少し1人にしてくれ」
斥候をまとめている部隊長を退出させて、今ある資料をもう一度精査する事にした。
アンクラムがミュルダに対して、異端認定を発令させたのはほぼ間違いないだろう。
やつらが欲したのは、ミュルダの穀物だと考えていいだろう。ミュルダ自体を欲したのかもしれないが、それはわからない。だが、その可能性は皆無ではない。ミュルダの立地を考えた時に、アンクラム・・・と、いうよりも、アトフィア教の奴らが考えたのだろう。
アイツラが、教会の総本山に行こうとしたら、ミュルダを通るしか無い。他にも街道はあるが、賊が出没したり、魔物の生息域を通過しなければならない。比較的安全なルートは、ミュルダから伸びる街道を使うしか無い。
獣人族が、黒狼族に救援をだして、ヒルマウンテンの竜族が助力したと言われない限り、9割の損失を納得させる事ができない。竜族でも、9割の損失はかなりの無理をしなければならないだろう。
それならば、獣人族だけで撃退したのか?それはもっと無理だろう。
魔物の集団が襲った?それなら、考えられなくもないが、それでも、9割は・・・。
「領主様。メーリヒ様!」
「なんだ!ノックもしないで!」
「失礼しました。しかし」
「それでなんだ?」
「はっピムが帰ってきました。イサーク殿と、ナーシャ様と、ガーラント殿も一緒です!」
「何ィィ!本当か?」
「はい。今、門番からの連絡です。イサーク殿は、領主様との面談を希望されています」
「わかった、すぐに準備する。いつもの部屋に通しておいてくれ!」
「はっ!」
吉報か?
ナーシャは別にして、イサークとピムとガーラントが居て、面談を申し込む。何かしらの情報を持って帰ってくれたのかも知れない。
/*** ピム Side ***/
「なぁイサーク?」
「なんだ?」
「間違いじゃないよね?」
「あぁミュルダの街で間違いはないと思うぞ?」
「アンクラムとの紛争中だよね?」
「そう、俺は”お前から”聞いたぞ?」
「そうだよね?」
ミュルダの街は、何も変わった様子はなかった。
門を入る。多少審査が厳しかったがそれだけだ。
顔見知りが居たので、挨拶した。驚かれた。
俺たちは、死んだことになっていたらしい。
領主様に報告するが問題ないかと言われたので、問題ないと答えた。その上で、時間があれば面談を申し込みたい旨も伝えた。
イサークとナーシャは、定宿にしている店に向かった。
ガーラントは馴染みにしている鍛冶屋に顔を出すと言っていた、ツクモ殿から貰った(預かった)素材を試したくてたまらないのだろう。門から入ってからそわそわしていた。
僕は、この時間を利用して、街領隊の屯所に顔をだす事にした。作戦から帰ったら、補給を受けるのが一般的だが、出た時よりも荷物が増えている上に、補給が必要ない状況なのだ。余剰になっている分を置いておきたいと思ったのだ。
屯所に着いた所で、現隊長から呼び出しが掛かった、すぐに領主の所に行って欲しいという事だ。
ガーラントは問題ない。問題は、大変な二人だ。事情はわかっているので、大丈夫だとは思いたいが、我慢してくれているといい。すぐに、定宿に人を飛ばした。ガーラントと合流して、先に領主の館に向かう事にした。最悪は、あの二人は後から合流すればいい。
ガーラントの所にも伝令は走っていたようだ。ガーラントと途中で合流して、イサークとナーシャが遅れてきた時の事を話し合っていた。
僕たちが領主の館前に到着して、5分後にイサークとナーシャが走ってきた。イサークが不満そうな顔をしている所を見ると、やり始める前に踏み込まれたのだろう。節操を守ってくれといいたいが、イサークだからと諦める事にした。
確かに、種族が違うので、なんとも思わないが、ツクモ殿の所行ってから、ナーシャは綺麗になったと思う。毛並みが違う。それは間違いない。もともと、ナーシャの毛並みに惚れていたイサークならしょうがないのだろう。そう思ってあげる事にした。
「イサーク。遅いぞ」
「悪い。悪い。それで?」
「領主様がすぐに面会してくれるという事じゃ」
「ほぉ対応が早いな」
「儂もそう思う。ピムはなにか聞いているか?」
「ううん。小耳に挟んだ程度だけど、アンクラムに6チーム向かわせているらしいよ」
「そうか、まっ俺たちは、俺たちが頼まれた事を優先しよう」
「うん!」
最後に何故か、ナーシャが元気よく答えた。
ナーシャとしては、これが終われば、ツクモ殿の所に戻れると思っているのだろう。もしかしたら、ミュルダでもパンケーキやメイプルシロップが手に入るかもと考えているのかも知れない。
さて、僕はどうしよう。
ツクモ殿の所に戻るのは魅力を感じるけど、街領隊の仕事をないがしろにするわけには行かないだろうからな。隊長と話してみないとわからないな。
「大丈夫か?」
後ろから来てる、ナーシャとガーラントとピムを見る。
皆無事のようだ。
「ピム!」
「うん。大丈夫だよ」
ここまで逃げれば大丈夫という事だろう。
少し落ち着こう。ツクモ殿には感謝しなければならないな。収納袋がなければ、こんなに早く移動できなかっただろう。
収納袋の中から、簡易テーブルを出す。
人数分の椅子も用意されている。料理は無いが、食材なら入っている。ガーラントが、なにか簡単に作るようだ。
「ねぇイサーク。イサークってば!!」
「ん。あっナーシャか、なんだ?」
「さっきから呼んでいるのに・・・何考えていたの?」
「ん?あぁどうやって領主に、ツクモ殿の話をしたらいいのかと思ってな」
「え?普通に話せばいいと思うけど?」
「その普通がわからないから考えていたのだけどな」
俺たちが主張すれば、会ってくれる可能性はすごく高い。
でも、警戒から入る会談は成功する確率が低い、それに、アンクラムの近くを通った感じでは、アンクラムはすごく疲弊している。アンクラムにとっては、ブルーフォレストは、ダンジョンと同じくらいの恵みを与えているに違いなかったが、ブルーフォレストに出ている人がいないのだ。
出られないといい換えたほうがいいのかも知れない。
ブルーフォレストの木々は、薪になり、魔物は、スキルカードや素材になる。少し奥に入れば、サラトガのダンジョンの10階層と同じくらいの稼ぎが期待できる。
そんな場所に誰も出ていないとは考えられない。もしかしたら、アンクラムのダメージは俺たちが考えている以上に大きいのではないか?
アントンの事は報告しなければならないだろう。カスパル殿の事もそうだ。気が重いが、これも俺たちの仕事で義務なのだろう。ツクモ殿は、拾ったからと言って、貴重なアイテムでもある”速駆の指輪”も渡してくれた。
街の事なぞ、冒険者である俺程度ではわからない事が多いだろうけど、ツクモ殿の街?と交易できれば、ミュルダの街は安泰だろう。ミュルダから何を出すのかという問題点はあるが、それは領主が考えれば良い事だ。
「イサーク!ナーシャ!ピム!」
ガーラントが呼んでいる。食事ができたのだろう。
「ガーラント!今日はなに?」
「ブルーボアを焼いた。あと、ツクモ殿から頂いた、野菜を付けてある」
「うん!」
リーリア殿と一緒に移動している時に、俺たちは基本的な事を学んだ。
塩や胡椒の使い方だ。それだけで、肉が断然美味しくなる。街のうまいと言われる宿屋で出てくる肉料理と同じくらいだ。あいつら、こんな方法で焼いていたのかと関心した。それに、俺たちには胡椒がある。また、胡椒が使い方も難しい。ただつければいいというものではなかった。多くかければ、それだけ美味しくなると思っていたが、違っていた。適量という物が有ると教わった。
その御蔭で、美味しく食べる事が出来るようになった。
あと、衝撃の事実を俺たちは知ってしまった。
あれは、リーリア殿とツクモ殿の街?を出てから、1日が経過したときだった。
--- 回想
「あっ!ちょっと待ってください」
「どうされた?」
「胡椒を忘れてしまって・・・残り少ないので、調達しようかと思っていたのです」
「胡椒を調達?」
「はい?」
「どうやって?」
「え?」
あの時のリーリア殿の表情を忘れないだろう。知らないのですか?そんな雰囲気さえ有った。
「これが胡椒ですよ?」
---
そう言って示されたのは、ブルーフォレストの浅い地域で見られる植物だ。
その植物の種子を乾燥させたものが、胡椒になると教えられた。つるのように木々に巻き付いていて育つと教えられました。エントやドリュアスが栽培した物には及ばないが、自然の物でも十分美味しいと教えられた。
胡椒は、落ちているのを拾うだけと教えられた。
そのために、数が少ないと・・・。そして、落ちている場所も不確定で、一度見つけた場所は数年は見つけられるらしいが、それでも、1~2kgが限界だと言われていた。それはそうだろう。蔓のように、木々に巻き付いているから、同じ種類の木々を探してみても、胡椒が発見できなかったわけだ。そして、聞いた話では、ミュルダで胡椒を作ろうと思えば出来るのだ。
リーリア殿が、ツクモ殿に確認してくれたが、問題ないとの事だ。栽培方法まで教えてもらった。ただ、エントやドリュアスの栽培方法なので、うまくいかない可能性があるので、試行錯誤してほしいと言われている。
胡椒ができれば、サラトガやアンクラムではなくても、交易先は見つかるだろう。
距離の問題も、ツクモ殿が改良した馬車で、ある程度は解決するだろう。作り方や、改良点は、ガーラントが知っている。ミュルダで量産する許可も貰っている。
俺は、土産となるかわからないと言われたが、レベル1~3の魔核を大量に貰っている。ミュルダは、食料は困らないが、魔核が不足しているかも知れないと言った所。魔核を大量に支援すると言われた。
そして、ぶっちゃけ話として、レベル1~3の魔核なら、多分数千個あると言われた。俺たちを気遣った嘘かもしれないが、ありがたく貰っていくことにした。あと、ピムが獣人族の代表たちと交渉して、低レベルのスキルカードも大量に貰ってきた。これは、ミュルダの奴らを撃退した時に、奴らが持っていた物らしい。
ツクモ殿も必要としないし、獣人族は気分的に使いたくない。それに、獣人族は、ダンジョンに入って、自分たちで必要なスキルカードを取得し始めているようで、全部持っていっても問題ないと言われたらしい。
それでも、ピムは半分だけ残して、レベル4までのスキルカードを貰ってきた。迷惑をかけられているミュルダへの土産としては、ちょうどいいだろう。
しかし、これからの他の街との交易を考えると、一番の土産は、ナーシャのポーチに入っている物だろう。
メイプルシロップと言っていたが、アレの作り方や、パンケーキを作る時に必要になる薄力粉の作り方。卵はツクモ殿も試行錯誤をしている最中らしく量産が出来るようになったら教えてくれると言っていた。それでも、卵を20個ほど貰ってきている。
ミュルダは穀物が大量にあるという話をして、穀物の種類を教えた所、いくつかの物がほしいと言われた。それを買って帰る事になった。同時に、穀物の食べ方や加工方法も教えてもらった。それらが、ナーシャのポーチの中に入っている。レシピ帳だ。
明日には、ミュルダに着けるだろう。どうなっているのか?
それに、リーリア殿ことも気になる。大丈夫だとは思うが、それでも女の子には違いない。
/*** カスパル=アラリコ・ミュルダ・メーリヒ Side ***/
どういう事だ。
アンクラムの常備兵9割の損失。
信じられないような報告が届けられた。そして、その中に、アトフィア教のNo.1~3が行方不明となっていることが告げられていた。
ミュルダへの侵攻は不可能だと結論付けられている。
そうなると怖いのは、サラトガだが、サラトガは怖いくらいに何も言ってこない。異端認定されてから、一度ミュルダ所属の冒険者と商隊のダンジョン及び街への出入りを規制する旨の通達があっただけだ。
それ以降、奴らは沈黙を守っている。
それよりも、今は、アンクラムの情報だ。
タイムラグが有る上に、なぜ?どうして?が先に出てしまう。ブルーフォレストに向かったのはほぼ間違いない。それがどうしたら、9割の損失に繋がる?
「おい。あれから誰も帰ってきていないのか?」
「はい」
「そうか・・・今、何チームを、アンクラムに出している?」
「6チームです」
「そうか・・・増やせないか?」
「ピムが帰ってくれば可能だとは思いますが、ピムは・・・」
そうだな。ピムはダメだろう。
イサークたちに情報を伝えるために、サラトガに走らせた。合流できていればと思うが、ここまで連絡がないとなると、ナーシャを含めて・・・最悪の事を考えなければならないな。
叔父上になんて言って詫びればいい。”生きていてくれるだけでいい”と、叔父上が言った時には驚いた。そのナーシャが、黒狼族の戦士であるイサークとくっつくとは、わからないものだな。でも、その二人もダメだろう。
「すまない。少し1人にしてくれ」
斥候をまとめている部隊長を退出させて、今ある資料をもう一度精査する事にした。
アンクラムがミュルダに対して、異端認定を発令させたのはほぼ間違いないだろう。
やつらが欲したのは、ミュルダの穀物だと考えていいだろう。ミュルダ自体を欲したのかもしれないが、それはわからない。だが、その可能性は皆無ではない。ミュルダの立地を考えた時に、アンクラム・・・と、いうよりも、アトフィア教の奴らが考えたのだろう。
アイツラが、教会の総本山に行こうとしたら、ミュルダを通るしか無い。他にも街道はあるが、賊が出没したり、魔物の生息域を通過しなければならない。比較的安全なルートは、ミュルダから伸びる街道を使うしか無い。
獣人族が、黒狼族に救援をだして、ヒルマウンテンの竜族が助力したと言われない限り、9割の損失を納得させる事ができない。竜族でも、9割の損失はかなりの無理をしなければならないだろう。
それならば、獣人族だけで撃退したのか?それはもっと無理だろう。
魔物の集団が襲った?それなら、考えられなくもないが、それでも、9割は・・・。
「領主様。メーリヒ様!」
「なんだ!ノックもしないで!」
「失礼しました。しかし」
「それでなんだ?」
「はっピムが帰ってきました。イサーク殿と、ナーシャ様と、ガーラント殿も一緒です!」
「何ィィ!本当か?」
「はい。今、門番からの連絡です。イサーク殿は、領主様との面談を希望されています」
「わかった、すぐに準備する。いつもの部屋に通しておいてくれ!」
「はっ!」
吉報か?
ナーシャは別にして、イサークとピムとガーラントが居て、面談を申し込む。何かしらの情報を持って帰ってくれたのかも知れない。
/*** ピム Side ***/
「なぁイサーク?」
「なんだ?」
「間違いじゃないよね?」
「あぁミュルダの街で間違いはないと思うぞ?」
「アンクラムとの紛争中だよね?」
「そう、俺は”お前から”聞いたぞ?」
「そうだよね?」
ミュルダの街は、何も変わった様子はなかった。
門を入る。多少審査が厳しかったがそれだけだ。
顔見知りが居たので、挨拶した。驚かれた。
俺たちは、死んだことになっていたらしい。
領主様に報告するが問題ないかと言われたので、問題ないと答えた。その上で、時間があれば面談を申し込みたい旨も伝えた。
イサークとナーシャは、定宿にしている店に向かった。
ガーラントは馴染みにしている鍛冶屋に顔を出すと言っていた、ツクモ殿から貰った(預かった)素材を試したくてたまらないのだろう。門から入ってからそわそわしていた。
僕は、この時間を利用して、街領隊の屯所に顔をだす事にした。作戦から帰ったら、補給を受けるのが一般的だが、出た時よりも荷物が増えている上に、補給が必要ない状況なのだ。余剰になっている分を置いておきたいと思ったのだ。
屯所に着いた所で、現隊長から呼び出しが掛かった、すぐに領主の所に行って欲しいという事だ。
ガーラントは問題ない。問題は、大変な二人だ。事情はわかっているので、大丈夫だとは思いたいが、我慢してくれているといい。すぐに、定宿に人を飛ばした。ガーラントと合流して、先に領主の館に向かう事にした。最悪は、あの二人は後から合流すればいい。
ガーラントの所にも伝令は走っていたようだ。ガーラントと途中で合流して、イサークとナーシャが遅れてきた時の事を話し合っていた。
僕たちが領主の館前に到着して、5分後にイサークとナーシャが走ってきた。イサークが不満そうな顔をしている所を見ると、やり始める前に踏み込まれたのだろう。節操を守ってくれといいたいが、イサークだからと諦める事にした。
確かに、種族が違うので、なんとも思わないが、ツクモ殿の所行ってから、ナーシャは綺麗になったと思う。毛並みが違う。それは間違いない。もともと、ナーシャの毛並みに惚れていたイサークならしょうがないのだろう。そう思ってあげる事にした。
「イサーク。遅いぞ」
「悪い。悪い。それで?」
「領主様がすぐに面会してくれるという事じゃ」
「ほぉ対応が早いな」
「儂もそう思う。ピムはなにか聞いているか?」
「ううん。小耳に挟んだ程度だけど、アンクラムに6チーム向かわせているらしいよ」
「そうか、まっ俺たちは、俺たちが頼まれた事を優先しよう」
「うん!」
最後に何故か、ナーシャが元気よく答えた。
ナーシャとしては、これが終われば、ツクモ殿の所に戻れると思っているのだろう。もしかしたら、ミュルダでもパンケーキやメイプルシロップが手に入るかもと考えているのかも知れない。
さて、僕はどうしよう。
ツクモ殿の所に戻るのは魅力を感じるけど、街領隊の仕事をないがしろにするわけには行かないだろうからな。隊長と話してみないとわからないな。
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能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
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