異世界でもプログラム

北きつね

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第五章 共和国

第三十三話 エラー

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 次のダンジョンの攻略を考えている。
 食料の供給元を先に狙おう。魔物の肉だけではなく、ダンジョン内から果物や野菜の採取ができる。

 カルラからの情報では、狙っているダンジョンの現状、攻略を行っている階層は、47階層。
 それなりに、深い階層を探索中だ。このダンジョンは、50階層が最下層だと予測されている。

 攻略がストップしている理由が、40階層から下では食料がドロップしなくなり、物資が不足しだして、47階層で引き返したようだ。カルラが、軽く聞き込みをしてきてくれて判明した。40階層には、主が居るために、戻って採取を行うにしても、戦力配分が難しい。

 俺たちなら、食料を大量に持ち込める。
 準備は、既に整っている。

 入口で足止めされてしまっている。
 どうやら、攻略を行おうとしているダンジョンの中層でイレギュラーな魔物が発生しているようだ。

「旦那様」

「どうだった?」

「はい。許可は出ました」

「わかった。何か、条件が出たのか?」

「中層までの物資の輸送を頼まれました。まだ、了承はしていません」

「物資の量は?」

「保存食が1000名分です」

 そこそこの量だな。
 俺たちなら問題はないが・・・。持っていくだけのメリットが他に有れば・・・。

「メリットは?」

「ダンジョンへの入場の許可と、イレギュラーの情報です」

 このダンジョンは攻略しておきたい。
 共和国の首にナイフを突き付けることができる場所だ。残り2箇所は、一つはやはり食料がでるが、難易度がこのダンジョンよりも高い。もう一つは、鉱石が中心のダンジョンだ。そこは無視でいいと思っている余裕があれば、攻略を行うが、鉱石だけあっても食料を輸入しなければならない状況にあれば締め付けは可能だ。

「わかった。その話を受けよう」

「わかりました」

 カルラが俺たちから離れて、別の集団に歩み寄った。
 交渉を行っている。

「兄ちゃん」

「どうした?」

「イレギュラーはどうするの?」

「遭遇したら、倒す。でも、わざわざ見つける必要はない」

「え?」

「アル。俺たちの目的は?」

「あっ!」

「そうだ。攻略が完了して、ウーレンフートに組み込みが出来れば、イレギュラーの位置は把握できる。もしかしたら、排除が可能かもしれない」

「うん。わかった」

 アルバンは納得したのか、武器の手入れを始めた。
 一つだけ可能性が残っているけど、わざわざ説明しなくてもいいだろう。イレギュラーが、自然発生した物なら、俺の言った方法で消し去ることが可能だ。しかし、違った場合には、イレギュラーな存在が、本当にイレギュラーになってしまう可能性だってある。今、考えても解らない事は、考えても意味がない。実際に、イレギュラーな状況になった時に慌てないように、そんな可能性もあるとだけ思っておけばいい。
 ダンジョンが、壮大なプログラムならどこかに不具合エラーが入っていても不思議ではない。今回、それがヒットしただけなのかもしれない。
 従って、イレギュラーエラーな状況に、怒り狂っても前には進めない。幸いなことに、イレギュラーは徘徊型だ。回避することは可能だ。

「旦那様」

「ダンジョンの中までは、そのまま持っていこう」

「はい。許可証と、中層のキャンプへの指示書です」

「わかった。アル!」

「うん!」

 アルバンが立ち上がって、俺たちのほうに来る。
 荷物は、分担して持っていけばいい。どうせ、ダンジョンに入って、人の目がなくなれば、収納してしまえばいい。

 持ってみると、重さよりも嵩張る感じが酷い。
 確かに、これを持った状態で、戦闘は難しい。俺とカルラで持って、アルバンに遊撃として、エイダと一緒に近づいてくる魔物を討伐してもらったほうがよさそうだ。

「カルラ。アル。俺とカルラで荷物を持つ。アルとエイダで、中層までの魔物を頼む」

 周りに聞こえるように宣言する。
 荷物を持って、ダンジョンに潜るのは、俺たちだけではないようだ。他にも、何組か荷物を持っている。全員が届けなくても、大丈夫なようにはしているのだろう。中層で、イレギュラーを探している連中も上層や中層で狩りを行えば、物資には困らないだろう。他の者が持っている物は、武器や防具の補修に使う物資やポーションのようだ。分担するのなら、全部を分ければいいのに・・・。

 俺が頭を悩ませる必要はない。

「行くぞ」

 二人とエイダから、返事が貰えた。
 荷物を持って、ダンジョンに向かう。カルラが、許可証を出した。門番?が確認して、扉が開けられる。

「カルラ。キャンプは何層だ?」

「私たちが物資を届けるのは、25層のセーフエリアです」

「わかった。飛ばすぞ」

 荷物を担いで、人が少ない方向に走り出す。
 3階層まで来たら、近くに人の気配が無くなったので、荷物を収納して俺とカルラも武器を取り出す。

 アルバンが不満を口にする。
 魔物が弱くて、手ごたえがなかったことや、エイダが索敵を行い、魔物が居ない方向に案内した為に、魔物とのエンカウントが少なかった。簡単に言えば、俺とカルラの手が塞がっている間に活躍が出来なかったのが不満だった。

 些細な問題はあったが、中層に踏み込むと、人が増え始める。
 中身は軽い物に入れ替えた袋だけを取り出した。何も背負っていないのは不自然だと考えたからだ。エイダが、人が居ない方向に案内したので、人との接触も最小限に抑えられた。

「旦那様」

「あぁ」

 袋の中身を詰め込んで、キャンプ地に向かう。
 キャンプには、いくつかのパーティーが休憩をしていた。

「カルラ。頼む」

「はい」

 俺が出て行かなくても、カルラでも大丈夫だと言われている。
 カルラもそのつもりで居たので、交渉はカルラに一任した。

 雰囲気から問題はなさそうだ。
 友好的とは言わないが、事務的に話が進んでいる。荷物を受け渡して、検品されているだけのようだ。

 カルラが、相手から割符を貰っているので、これで大丈夫なのだろう。

「旦那様」

「問題は?」

「ありません。今後の予定を聞かれたので、打ち合わせ通りに答えました」

「承諾していたか?」

「はい」

「アル!休んだら、出発するぞ」

「うん!」

『マスター。イレギュラーの情報は?』

「そうだ。カルラ。イレギュラーの情報は?」

「はい。何人かは確認しているようです。40階層の階層主が中層を徘徊しているようです」

「主?階層の?部屋から出ていると言うのか?」

「はい。そして、イレギュラーは、黒い靄を纏っているという情報があります。階層を越えて、追尾してくるので、見つかったら、階層を越えても全力で逃げるように助言を受けました」

「そうか・・・」

 黒い靄が気になる。
 40階層の主なら、たしかに中層を主戦場にしている者だと捕捉されたら対応が難しい。ダンジョンへの入場が規制される意味はある。階層を越えて追尾してくるのも気になる。人の・・・。悪意のような物を感じるが、考えすぎか?

「カルラ姉ちゃん。階層主ってことは、40階層の階層主は居ないの?」

 そういえば、階層主が居なくなったと判断されているのだとしたら、40階層はどうなっている?
 イレギュラーの存在が際立っているが、下層で何かが発生している可能性すらある。

「居ないことが、確認されている。下層への侵入は、禁止されていませんが、推奨もされていません」

 推奨されていない。自己責任だろう。俺たちには都合がいい。自己都合でも、下層に足を踏み入れることができれば、そのまま攻略を行える。

「兄ちゃん。イレギュラーを倒しても、階層主だとしたら、復活するよね?」

「そうだな」

「それなら、ほら、兄ちゃんが、アルトワでやったように、ボスを変えちゃえば?」

「!!そうだな」

 討伐は考えていなかったが、討伐を行ってから、階層主に挑戦を行えば、”黒い靄”の謎が解ける可能性がある。
 攻略後に、ボスを変えても、同じようにイレギュラーになるのなら、ダンジョンになにか仕掛けが施されている可能性が高い。全部をサーチするのに、やはり攻略をしなければならない。同じ手間なら、攻略してから考えればいい。
 もし、何も仕掛けがされていなければ、アルトワダンジョンでもイレギュラーが産まれて来る可能性がある。それだけは避けたい。
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