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第四章 ダンジョン・プログラム
第十二話 カルラからの報告.2
しおりを挟むアルバンとエイダが、”地上に出る”ことにしたようだ。
エイダの新装備を軽く試すのが主題だ。それと、外に居る魔物を倒して、新装備の長子を確かめてくることになった。4-5日の予定だと報告された。ついでに、共和国への遠征に伴う準備の状況を確認してくるように指示を出した。
カルラもアルバンとエイダについていってホームの様子を見てくると言っていた。
久しぶりに、2-3日は1人で過ごすことになった。食事は、ヒューマノイドたちが準備をしてくれる。
訓練所の難易度を上げて、魔法や武器の調整に時間を使う。
カルラたちがやっていた訓練を魔物の数を2倍に増やした。魔物の数を、6倍まではなんとか対応することができた。
しかし、俺が求めている訓練にはならない。量ではなく質の訓練を行うのが難しい。
対人戦は、ホームで訓練を行ったが、アイツには届かない。イメージで戦っているが・・・。そうか!アイツをイメージした敵を想定すればいい。ダンジョンでの戦いをトレースして学習させよう。体格の問題もあるが、エイダに学習させておくのもいいかもしれない。
『マスター。カルラ様がお待ちです』
ヒューマノイドが呼びに来てくれた。
カルラは、外に出てすぐに戻ってきたのか?
「早いな、まだ半日くらいしか経っていないよな?」
『いえ、マスターが訓練室に入られてから、1日と15時間が経過しています』
「え?」
『訓練室に入られる前に、制御室で16時間、過ごされています』
「・・・。そうか、わかった」
1日以上戦っていたのか?気がつかなかった。何度か食事はした記憶がある・・・。栄養補給しただけだ。徹夜で仕事をしていたときのような疲労感はない。部屋の機材を組み立てているような感覚だ。身体と心が若いのか?負荷を感じない。
「カルラに、待っていてもらってくれ、シャワーを浴びてから、執務室に行く」
『かしこまりました』
ヒューマノイドが頭をさげてから、訓練室を出ていく、動きが洗練されてきている。
ホームの様子をモニタリングして、メイドたちの動きを、学習データとした意味が出てきたのだろう。まだ、決められた動きに”毛”が生えた程度しか出来ないが、受け答えは、概ね満足できる状況になってきている。
シャワーを浴びてから、執務室に入るとカルラが待っていた。
「悪いな。待たせた」
「大丈夫です。まずは、ご指示があった、調査の件ですが、あの方々に連絡をいたしました」
「解った」
クリスたちだな。
確かに、調査を行うにしても、貴族家が絡んでくる可能性が有るのなら、クリスやユリウスが絡んだほうがやりやすいだろう。特に、辺境伯の名前が使えるクリスなら適任だな。
「馬車は、アルバンとエイダが受け取りまして、試運転をしております。明日には、ホームに戻ってくると思います」
「問題は?」
「ありません。ただ・・・」
「なんだ?」
「はい。馬車を見た、ホームの者たちが、自分たちも欲しいと言っています」
「構わないぞ?魔法の付与までは出来ないけど、別に馬車を作るなとは言わないぞ?」
「マナベ様がお書きになった設計図ですよ?」
「うーん。別にいいぞ?ホームで管理するのだろう?」
「はい。売りに出しても?」
「いいぞ。それこそ、勝手に売ってくれていい。そうだな。一応、クリスに話を通しておいてくれ」
馬車では取引にならないだろうが、ライムバッハ家の武器に仕えるのなら、使ってもらったほうが嬉しい。
「わかりました」
「馬車を作った職人たちにも迷惑をかけることになるな」
「仕事が増えて喜ぶと思います」
「わかった。それで、共和国は?」
カルラの顔色が変わる。
何かしらの問題が発生していると考えられる。
「一部で、魔物の氾濫が発生している”らしい”と情報があります」
「スタンピード?」
「わかりません。共和国内で、対応が出来ているのかさえも不明です」
「新しいダンジョンでも見つかったのか?たしか、共和国内には、管理されているダンジョンが3箇所だったか・・・。それだけだよな?」
管理されているダンジョンがあるのは認識している。
ウーレンフートのように街が出来ている場所は少ないようだが、それでも共和国の領主たちが私兵をダンジョンに潜らせて魔物を駆除していると聞いている。管理されているダンジョンなら、スタンピードが発生するとは考えにくい。
「魔物の種類は?」
「わかりません。ただ、複数の種類で、上位種も確認されているらしいです」
「わかった。様子見だな」
「はい。共和国行きを延期しますか?」
「混乱しているのだよな?」
「はい」
「目標のダンジョンは、国境を越えてすぐの場所に有るのだったよな?」
「はい。国境から、5日程度の距離です」
時間的距離は、感覚がつかめない。5日程度とカルラが言っているが、新しい馬車でヒューマノイドと同じ技術で作られた、魔馬が引くのなら単純計算でも半分の時間になる。急げば、もっと短くできる。
指摘してもしょうがない。カルラが出してくる時間の半分だと思えばいいだろう。
「ダンジョンに入ることができるのか確認してくれ、可能なら共和国に行こう。無理なら、その時に考える」
「かしこまりました」
カルラは、他の報告に関しては、ホームでまとめられた資料を持ってきていた。
資料を受け取った。アルバンやエイダに関係している資料も存在している。
エイダに関する問題は発生していない。
機能も十全に動いているようだ。ウーレンフートでも、従魔だと思われていると報告されている。街以外から来ている商人からは、エイダと同じ様に、”獣魔にできる魔物が居たら捕獲して欲しい”という依頼がホームに来たらしい。
獣魔として提供するのなら、ヒューマノイドタイプを作っても良いとは思っているが、エイダと同等を期待されると提供は難しい。いろいろな意味で、エイダはダンジョンと深く連携してしまっている。
連携部分を切り離して、ヒューマノイドベアなら提供はできるが・・・。無視しておこう。商人が求めるのは、パートナーではなく、商材だろう。エイダだけではなく、ヒューマノイドタイプを商材として考えるのは、”何か違う”と思える。
報告は、ウーレンフートの外部にも及んでいた。
特に、鍛冶師の村は外部からの侵入を防ぐ方法を強化していた。ホーム以外からは行けない状況にしてしまった。ホームに居た樹木を扱える者たちで、鍛冶師の村の周りを森にしてしまった。元々は、鍛冶で使う燃料の確保を目的としていたのだが、ダンジョンから燃料が供給出来てしまうので、必要が無くなってしまった。建築の資材の役割も有ったのだが、森の成長が早かった。奴隷になってしまった者や、心に傷を持つものが多かったために、森が広がったのを幸いとして、外部との接触を断ってしまった。ホームを通しての依頼は受けているようなので、生活には困らないようだ。
それにしても、森にしてしまって問題は無かったのか?カルラが、クリスに連絡をしているのだろうから、問題は無いのだろう。
「カルラ」
報告書の中に気になる部分が有った。控えていたカルラを見ると、同じ様な考えのようだ。
「マナベ様。その件は少しだけ時間をください。調べます」
「解った。ウーレンフートには関係していないのだよな?」
「大丈夫です。ただ、近隣の村では、数名の行方不明者が出ております」
「領内なのか?」
「領内なら、簡単に調べられるのですが・・・」
「それもそうだな。それにしても、成人前の子供だけを狙うのか?」
「はい。最初は、口減らしだと考えたのですが、比較的余裕のある家庭の子供が突然居なくなっています」
「両親は?」
「それが・・・」
「何も訴えていないのか?」
「はい。不自然なくらいに静かに暮らしています」
「そう・・・。街や村は変わりが無いのだよな?」
「・・・。正確には、わかりませんが、自然な様子です。子供だけが消えている状況です」
「保護者が絡んでいるのか?」
「わかりません。しかし、保護者が関係していると考えるのが自然だと思います」
「わかった。貴族や国が絡んでいるようなら、クリスに連絡してくれ」
「かしこまりました」
カルラからの報告は、読んだが、”子供が不自然な状況で居なくなっている”以外の問題はなさそうだ。
馬車が来て、共和国のスタンピードの問題の情報が入ってきたら、共和国に向けて出発してもよさそうだ。
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