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第一章 少年期
第三十話 ラウラとカウラ
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★☆★☆ Side ラウラ
「ロミルダさんまで一緒に来られて大丈夫だったのでしょうか?」
「アルノルト様の事?」
「えぇ私だけでも残っていれば・・・」
「そうね。でも、今回は伯爵様からのご命令だし、ラウラとカウラにしっかりした物を着せて、卒業式に出させたいというお考えですからね」
「ロミルダさんまで・・」
「私は、カウラの母親役ですからね。ラウラは、ルグリタが母役なのでしょ」
「あっはい。そうです。でも・・・私達は、アル様の従者です。アル様のお側にこそ居るべきでは無いでしょうか」
「う~ん。実はね。この話をいいだしたのは、ユリウス様なのですよ。そして、アルノルト様もご承諾されています」
「え?」「うそにゃ?」
「どうして・・・。アル兄ィは私達がいらなくなったにょか?」
「カウラ。違うのです。ユリウス様から依頼されたのは、『二人をしっかり着飾って、卒業式に出して欲しい』ですよ」
「なんでにゃ?」「そうですよ。私達は、十分良くしてもらっています」
「そういうだろうと思って、アルノルト様は話さなかったのですが・・・。二人の事を、奴隷上がりの従者だって馬鹿にする奴らが居るのは・・」
「はい。知っています。事実ですから」「うん。知っているにゃ」
「アルノルト様も気にされていないのですが、ユリウス様やクリスティーネ様が、二人には卒業式で堂々とアルノルト様の後ろを歩いて欲しいと・・・」
「え?」「なんでにゃ?」
ロミルダは、二人に言い聞かせるように話をした。
最初は、ライムバッハ家に居るルグリタからの手紙だったのだが、卒業式には、ルグリタも出ると言う事だ。
そうなると、ラウラとカウラが出ないのは問題になってしまう。ルグリタも最初は王都まで来るつもりはなかったらしいが、クラーラが”せっかく養子に迎えたのだから、行くべきだ”と、助言してくれたと言う事だ。
ルグリタは、ロミルダに手紙を送って、その旨を問い合わせた。
その時には、二人は”卒業式”には出ないと決めていた様だ。元奴隷の従者が、辺境伯の息子の後を歩くのは問題があると思っていた。
従者だから、歩く事は問題ではないが、二人は卒業考査でアルノルトに次の結果を出してしまったのだ。アルノルトが主席なのは、いいとしても、元奴隷の従者が次席と3位を取得してしまったのだ。二人は、自分からクヌート先生に言って卒業式の辞退を申し出た。
その話を聞いた、ユリウスがアルノルトに猛然と突っかかった。
”二人が辞退したのを知っているのか”と、アルノルトは知らない事なので、正直に知らなかったと答えたのが、ユリウスの怒りに火を付けた。ユリウスは、アルノルトとラウラとカウラが、自分とクリスティーネに遠慮して、辞退したのだと考えていたのだ。ラウラとカウラがそう考えたのはあたっていたが、アルノルトは絡んでいなかった。
クリスティーネが、二人を式に出させましょうという事になって、事情を考えれば、ルグリタやロミルダを巻き込むのがいいと判断した。
そんな時に、丁度ルグリタがこちらに向かっていると聞いて、二人にロミルダを護衛させながら、"ベルリッツ"で式典用の服を新調させようという事になった。
「そんな・・・。アル様」「アル兄ィ」
「解ってもらえたかしら?」
「はい」「はいにゃ」
「うん。しっかり着飾って、アルノルト様をびっくりさせましょう」
「はい」「はいにゃ!」
(それでもなんで、私とカウラだけでロミルダさんまで来る必要があったのでしょうか?)
「ラウラ」
「はい」
「あなた、アルノルト様の事をどう思っているの?」
「アル様ですか?大切なご主人様です」
ロミルダさんはにこやかに笑いながら
「違う。違う。女としてどう思っているのかって事?好きなのでしょう。アルノルト様の事が?」
「え?なにを・・・私などが、好きなど、あってはならない事です。身分も違います。それに、それに・・・」
これ以上言い訳が出てこない。
中等部にあがってはっきり認識した。エヴァ様やクリス様。イレーネ様。それに、ザシャ様やディアナ様。みんな私と違って、しっかりした身分の人で綺麗な女性だ。特に、エヴァ様とイレーネ様・・・もしかしたら、ザシャ様も、アル様に好意を寄せている。私がアル様を意識しだしてから、アル様を目で追っていると、エヴァ様かイレーネ様と目が合う。お二人も、アル様を目で追っているのだ。
そう私は、アルノルト・フォン・ライムバッハを男性として意識して・・・好きなのだ。
ロミルダさんは、私の頭を優しく撫でてから
「ラウラ。アルノルト様が、後継ぎの返上を申し出た事は知っていますよね?」
「はい。受理されたと聞いています」
「そうです。ラウラ。貴方との身分差も少なくなるのです」
「・・・・」
「その上で、アルノルト様は、ライフバッハ家の名前も返上されようとしていました」
「え?なぜですか?」
「・・・わかりません。旦那様は、その事もあり、王都に来られて、アルノルト様とお話をされるのです」
「・・・おかしいです。私達は、後継ぎの事はお聞きしています。ライムバッハ家に残って後押しをすると聞いています」
「だから、旦那様は不審に思っていらっしゃるのです。あなたやカウラからも話を聞きたいとおっしゃっています」
「わかりました」
ベルリッツの街まで、あと一日となった。
アル様からこんなに離れたのは初めてで心細い。
でも、心細いと思ってしまうのは、私が弱いからだ。アル様と一緒に歩くのなら、少しでもアル様の役に立たなければならない。
私は、本来なら必要ないのかもしれない。
お一人でなんでも出来る。魔法制御で私などが太刀打ちできない状態だ。唯一あるとしたら、アル様が詠唱している最中の盾の役割だが、カウラだけで十分だ。
カウラは本当に強い。模擬戦で魔法有りでも負けてしまう。肉弾戦なら勝てる要素がない。
アル様・・・私はどうしたら良いのでしょうか?
★☆★☆ Side カウラ
アル兄ィから離れて居ると寂しい。ラウラ姉も元気がない。
きっとアル兄ィが居ないからだ。
昨日の休憩所では、ロミルダと何か難しい話をしていた。
でも、ラウラ姉がアル兄ィの事を好きなのは皆が知っている事。
エヴァ姉なんて、一番のライバルは、ラウラ姉だと言っている。
僕がなんでそんな事を知っているのか?
簡単な事。僕がアル兄ィの従者で常に一緒に居るからだとおもう。
クリス姉とも一杯話をした。難しい話はわからないけど、エヴァ姉とイレーネ姉がアル兄ィの事が好きだって事は解った。
誰が一番になるのかを狙っているようだ。別に一番でなくてもいいと思うと言ったら、すごく怒られた。
でも、クリス姉は、アル兄ィが一人の女に独占される事は無いだろうと言っている。僕もそう思う。アル兄ィくらい魔法が強くて、剣技も強くて、頭もいい。そんなオスが一匹のメスに専有されて、いいはずがない。だから、皆でアル兄ィを好きでいいと思うのだけれど、エヴァ姉もイレーネ姉もそうそう、エルフのザシャやディアナもアル兄ィの事が好きみたいだ。
エヴァ姉は、助けられた事やお母さんと一緒に暮らせる様になったのは、アル兄ィのおかげだと言っている。
イレーネ姉も、幼年学校の試験の時に、アル兄ィに助けられたのを王子様みたいだったと言っている。
ザシャは二年の実地訓練の時に、ワーベアに襲われた所を、アル兄ィに救われてから意識しているようだ。
ディアナは、少し違って、アル兄ィの持っている刀や知識がすごいと言っている。一度、鍛冶仕事の時に、アル兄ィが言った”火入れ”をすると剣が固く強くなる事から一目置くようになった。あと、アル兄ィが見つけた鉄鉱石の見つけ方のおかげでディアナは鉄鉱石を沢山使えるようになったと喜んでいた。
皆、アル兄ィがどこからそんな知識を得ているのか不思議がっていた。
ギルもアル兄ィから聞いた”ゲーム”を大量に売り出している。僕だけが知っている事だけど、ギルはアル兄ィラウラ姉。僕の次に魔法力がある。本人は、商人に魔法力は関係ないと言っているが、本気を出せば、もしかしたら、ラウラ姉と同じ位魔法が使えるのかも知れない。少なくても、クリス姉やユリウス様以上だと思う。アル兄ィもその事は気がついていて、なにか二人で話をしているのを聞いた事がある。
僕は、アル兄ィに救われた。
この生命も全部アル兄ィの物。だから、学校で告白されても全部断った。アル兄ィ以外はいらない。
今回もアル兄ィに頼まれたから来た。ラウラ姉を守って欲しいと、ユリアンネ様を守って欲しいと、エルマール様とアトリア様を守って欲しいと言われたのだ。僕は、それに従う。僕が従うのは、ただ一人、アルノルト・フォン・ライムバッハだけだ。
★☆★☆ Side ユリアンネ
「お父様。もう少しで、ベルリッツなのですわね」
「そうだな。ユリアンネ。もう少し大人しく出来ないか?」
「無理ですわ。お父様。お兄様にお会い出来るのですよ。ユリアンネは早くお会いしたく思います」
「本当に、アルが好きなのだな」
「当然ですわ。お母様。中等部の入試試験から、ご卒業まで全部の試験で満点の成績で、実地訓練でも、今までの記憶を塗り替えていらっしゃるのですよ。誇らしく思って当然ではないでしょうか?」
「そうだな。陛下から言われたが、アルは幼年学校ではユリウス殿下に花を持たせていたらしいからな」
「そうなのですか?」
「陛下やユリウス殿下から直接言われたので間違いは無いだろう」
「そうなのですがやはり、わたくしのお兄様は、何をしても一番なのですね」
「そうだな。それはいいとして、ユリアンネ。あのぬいぐるみは全部持ってきたのか?」
「お父様。当然ですわ。お兄様から頂いた物をわたくしが屋敷においておくはずがございません」
「あっそう・・・。荷物じゃないのか?」
「大丈夫です。その為に、いらない服は置いてきました!」
「なっそれでは、俺やアトリアが買った服もか?」
「えぇ勿論ですわ。お父様。お兄様がわたくしに買ってくれた物以上に価値がある物はありません」
「はぁ・・・」
あと少しでお兄様に会える。
愛しいお兄様。なんで、わたくしとお兄様は血がつながっているのでしょう。つながっていなければ、結婚も出来ますし、お兄様のお子を宿す事も・・・。
このタマゴ。お兄様は喜んでいただけるかしら?
クラーラさんが持ってきた物で、何か強い力を感じるとおっしゃっていた。
3つのタマゴにそれぞれ違った力を感じます。持っているだけで、お兄様のお近くに居るような心地よい感じがするのです。クラーラさんは、お兄様とラウラとカウラへの卒業祝いだと言っていた。我儘を言って、わたくしが、お兄様にお渡ししたいとお願いしたら、笑いながら、”いいよ”と言ってくれた。
時折タマゴの中で力の波動を感じます。きっと、お兄様なら何お分かりになるのでしょう。
早くお会いしたい。
「ユリアンネ。アルに会えるのは、王都ですよ」
「解っております。お母様。ラウラとカウラが迎えに来るのですよね?」
「えぇそうよ。二人にも綺麗な服を買わないとですからね」
「そうですわ。二人もお兄様の従者ですから、しっかりとした服装で出てもらわないとダメですわ」
「そうね。ユリアンネ。貴女もですわよ」
「はい。お母様。お兄様にお会いするのに、綺麗な格好で可愛くなってからお会いいたしますわ」
そうです。
わたくしは、しっかり着飾って、綺麗に可愛くならないとダメなのです。
そうして、お兄様にお会いして、”やっぱり、ユリアンネが一番可愛い”と、気がついていただかないとならないのですわ。
お兄様の周りには、綺麗な方が多かった。
ラウラもカウラも十分綺麗なのですが、従者として一歩引いている。問題は、あの聖女と言われる女と男爵家の女。後、後からやってき、エルフの女とドワーフの女だ。皆、お兄様の魅力に気がついてしまった。私だけが知っていた、お兄様の魅力に、沢山の方が、知ってしまったのだ。
負けられない女の戦いが、始まるのです。
「ロミルダさんまで一緒に来られて大丈夫だったのでしょうか?」
「アルノルト様の事?」
「えぇ私だけでも残っていれば・・・」
「そうね。でも、今回は伯爵様からのご命令だし、ラウラとカウラにしっかりした物を着せて、卒業式に出させたいというお考えですからね」
「ロミルダさんまで・・」
「私は、カウラの母親役ですからね。ラウラは、ルグリタが母役なのでしょ」
「あっはい。そうです。でも・・・私達は、アル様の従者です。アル様のお側にこそ居るべきでは無いでしょうか」
「う~ん。実はね。この話をいいだしたのは、ユリウス様なのですよ。そして、アルノルト様もご承諾されています」
「え?」「うそにゃ?」
「どうして・・・。アル兄ィは私達がいらなくなったにょか?」
「カウラ。違うのです。ユリウス様から依頼されたのは、『二人をしっかり着飾って、卒業式に出して欲しい』ですよ」
「なんでにゃ?」「そうですよ。私達は、十分良くしてもらっています」
「そういうだろうと思って、アルノルト様は話さなかったのですが・・・。二人の事を、奴隷上がりの従者だって馬鹿にする奴らが居るのは・・」
「はい。知っています。事実ですから」「うん。知っているにゃ」
「アルノルト様も気にされていないのですが、ユリウス様やクリスティーネ様が、二人には卒業式で堂々とアルノルト様の後ろを歩いて欲しいと・・・」
「え?」「なんでにゃ?」
ロミルダは、二人に言い聞かせるように話をした。
最初は、ライムバッハ家に居るルグリタからの手紙だったのだが、卒業式には、ルグリタも出ると言う事だ。
そうなると、ラウラとカウラが出ないのは問題になってしまう。ルグリタも最初は王都まで来るつもりはなかったらしいが、クラーラが”せっかく養子に迎えたのだから、行くべきだ”と、助言してくれたと言う事だ。
ルグリタは、ロミルダに手紙を送って、その旨を問い合わせた。
その時には、二人は”卒業式”には出ないと決めていた様だ。元奴隷の従者が、辺境伯の息子の後を歩くのは問題があると思っていた。
従者だから、歩く事は問題ではないが、二人は卒業考査でアルノルトに次の結果を出してしまったのだ。アルノルトが主席なのは、いいとしても、元奴隷の従者が次席と3位を取得してしまったのだ。二人は、自分からクヌート先生に言って卒業式の辞退を申し出た。
その話を聞いた、ユリウスがアルノルトに猛然と突っかかった。
”二人が辞退したのを知っているのか”と、アルノルトは知らない事なので、正直に知らなかったと答えたのが、ユリウスの怒りに火を付けた。ユリウスは、アルノルトとラウラとカウラが、自分とクリスティーネに遠慮して、辞退したのだと考えていたのだ。ラウラとカウラがそう考えたのはあたっていたが、アルノルトは絡んでいなかった。
クリスティーネが、二人を式に出させましょうという事になって、事情を考えれば、ルグリタやロミルダを巻き込むのがいいと判断した。
そんな時に、丁度ルグリタがこちらに向かっていると聞いて、二人にロミルダを護衛させながら、"ベルリッツ"で式典用の服を新調させようという事になった。
「そんな・・・。アル様」「アル兄ィ」
「解ってもらえたかしら?」
「はい」「はいにゃ」
「うん。しっかり着飾って、アルノルト様をびっくりさせましょう」
「はい」「はいにゃ!」
(それでもなんで、私とカウラだけでロミルダさんまで来る必要があったのでしょうか?)
「ラウラ」
「はい」
「あなた、アルノルト様の事をどう思っているの?」
「アル様ですか?大切なご主人様です」
ロミルダさんはにこやかに笑いながら
「違う。違う。女としてどう思っているのかって事?好きなのでしょう。アルノルト様の事が?」
「え?なにを・・・私などが、好きなど、あってはならない事です。身分も違います。それに、それに・・・」
これ以上言い訳が出てこない。
中等部にあがってはっきり認識した。エヴァ様やクリス様。イレーネ様。それに、ザシャ様やディアナ様。みんな私と違って、しっかりした身分の人で綺麗な女性だ。特に、エヴァ様とイレーネ様・・・もしかしたら、ザシャ様も、アル様に好意を寄せている。私がアル様を意識しだしてから、アル様を目で追っていると、エヴァ様かイレーネ様と目が合う。お二人も、アル様を目で追っているのだ。
そう私は、アルノルト・フォン・ライムバッハを男性として意識して・・・好きなのだ。
ロミルダさんは、私の頭を優しく撫でてから
「ラウラ。アルノルト様が、後継ぎの返上を申し出た事は知っていますよね?」
「はい。受理されたと聞いています」
「そうです。ラウラ。貴方との身分差も少なくなるのです」
「・・・・」
「その上で、アルノルト様は、ライフバッハ家の名前も返上されようとしていました」
「え?なぜですか?」
「・・・わかりません。旦那様は、その事もあり、王都に来られて、アルノルト様とお話をされるのです」
「・・・おかしいです。私達は、後継ぎの事はお聞きしています。ライムバッハ家に残って後押しをすると聞いています」
「だから、旦那様は不審に思っていらっしゃるのです。あなたやカウラからも話を聞きたいとおっしゃっています」
「わかりました」
ベルリッツの街まで、あと一日となった。
アル様からこんなに離れたのは初めてで心細い。
でも、心細いと思ってしまうのは、私が弱いからだ。アル様と一緒に歩くのなら、少しでもアル様の役に立たなければならない。
私は、本来なら必要ないのかもしれない。
お一人でなんでも出来る。魔法制御で私などが太刀打ちできない状態だ。唯一あるとしたら、アル様が詠唱している最中の盾の役割だが、カウラだけで十分だ。
カウラは本当に強い。模擬戦で魔法有りでも負けてしまう。肉弾戦なら勝てる要素がない。
アル様・・・私はどうしたら良いのでしょうか?
★☆★☆ Side カウラ
アル兄ィから離れて居ると寂しい。ラウラ姉も元気がない。
きっとアル兄ィが居ないからだ。
昨日の休憩所では、ロミルダと何か難しい話をしていた。
でも、ラウラ姉がアル兄ィの事を好きなのは皆が知っている事。
エヴァ姉なんて、一番のライバルは、ラウラ姉だと言っている。
僕がなんでそんな事を知っているのか?
簡単な事。僕がアル兄ィの従者で常に一緒に居るからだとおもう。
クリス姉とも一杯話をした。難しい話はわからないけど、エヴァ姉とイレーネ姉がアル兄ィの事が好きだって事は解った。
誰が一番になるのかを狙っているようだ。別に一番でなくてもいいと思うと言ったら、すごく怒られた。
でも、クリス姉は、アル兄ィが一人の女に独占される事は無いだろうと言っている。僕もそう思う。アル兄ィくらい魔法が強くて、剣技も強くて、頭もいい。そんなオスが一匹のメスに専有されて、いいはずがない。だから、皆でアル兄ィを好きでいいと思うのだけれど、エヴァ姉もイレーネ姉もそうそう、エルフのザシャやディアナもアル兄ィの事が好きみたいだ。
エヴァ姉は、助けられた事やお母さんと一緒に暮らせる様になったのは、アル兄ィのおかげだと言っている。
イレーネ姉も、幼年学校の試験の時に、アル兄ィに助けられたのを王子様みたいだったと言っている。
ザシャは二年の実地訓練の時に、ワーベアに襲われた所を、アル兄ィに救われてから意識しているようだ。
ディアナは、少し違って、アル兄ィの持っている刀や知識がすごいと言っている。一度、鍛冶仕事の時に、アル兄ィが言った”火入れ”をすると剣が固く強くなる事から一目置くようになった。あと、アル兄ィが見つけた鉄鉱石の見つけ方のおかげでディアナは鉄鉱石を沢山使えるようになったと喜んでいた。
皆、アル兄ィがどこからそんな知識を得ているのか不思議がっていた。
ギルもアル兄ィから聞いた”ゲーム”を大量に売り出している。僕だけが知っている事だけど、ギルはアル兄ィラウラ姉。僕の次に魔法力がある。本人は、商人に魔法力は関係ないと言っているが、本気を出せば、もしかしたら、ラウラ姉と同じ位魔法が使えるのかも知れない。少なくても、クリス姉やユリウス様以上だと思う。アル兄ィもその事は気がついていて、なにか二人で話をしているのを聞いた事がある。
僕は、アル兄ィに救われた。
この生命も全部アル兄ィの物。だから、学校で告白されても全部断った。アル兄ィ以外はいらない。
今回もアル兄ィに頼まれたから来た。ラウラ姉を守って欲しいと、ユリアンネ様を守って欲しいと、エルマール様とアトリア様を守って欲しいと言われたのだ。僕は、それに従う。僕が従うのは、ただ一人、アルノルト・フォン・ライムバッハだけだ。
★☆★☆ Side ユリアンネ
「お父様。もう少しで、ベルリッツなのですわね」
「そうだな。ユリアンネ。もう少し大人しく出来ないか?」
「無理ですわ。お父様。お兄様にお会い出来るのですよ。ユリアンネは早くお会いしたく思います」
「本当に、アルが好きなのだな」
「当然ですわ。お母様。中等部の入試試験から、ご卒業まで全部の試験で満点の成績で、実地訓練でも、今までの記憶を塗り替えていらっしゃるのですよ。誇らしく思って当然ではないでしょうか?」
「そうだな。陛下から言われたが、アルは幼年学校ではユリウス殿下に花を持たせていたらしいからな」
「そうなのですか?」
「陛下やユリウス殿下から直接言われたので間違いは無いだろう」
「そうなのですがやはり、わたくしのお兄様は、何をしても一番なのですね」
「そうだな。それはいいとして、ユリアンネ。あのぬいぐるみは全部持ってきたのか?」
「お父様。当然ですわ。お兄様から頂いた物をわたくしが屋敷においておくはずがございません」
「あっそう・・・。荷物じゃないのか?」
「大丈夫です。その為に、いらない服は置いてきました!」
「なっそれでは、俺やアトリアが買った服もか?」
「えぇ勿論ですわ。お父様。お兄様がわたくしに買ってくれた物以上に価値がある物はありません」
「はぁ・・・」
あと少しでお兄様に会える。
愛しいお兄様。なんで、わたくしとお兄様は血がつながっているのでしょう。つながっていなければ、結婚も出来ますし、お兄様のお子を宿す事も・・・。
このタマゴ。お兄様は喜んでいただけるかしら?
クラーラさんが持ってきた物で、何か強い力を感じるとおっしゃっていた。
3つのタマゴにそれぞれ違った力を感じます。持っているだけで、お兄様のお近くに居るような心地よい感じがするのです。クラーラさんは、お兄様とラウラとカウラへの卒業祝いだと言っていた。我儘を言って、わたくしが、お兄様にお渡ししたいとお願いしたら、笑いながら、”いいよ”と言ってくれた。
時折タマゴの中で力の波動を感じます。きっと、お兄様なら何お分かりになるのでしょう。
早くお会いしたい。
「ユリアンネ。アルに会えるのは、王都ですよ」
「解っております。お母様。ラウラとカウラが迎えに来るのですよね?」
「えぇそうよ。二人にも綺麗な服を買わないとですからね」
「そうですわ。二人もお兄様の従者ですから、しっかりとした服装で出てもらわないとダメですわ」
「そうね。ユリアンネ。貴女もですわよ」
「はい。お母様。お兄様にお会いするのに、綺麗な格好で可愛くなってからお会いいたしますわ」
そうです。
わたくしは、しっかり着飾って、綺麗に可愛くならないとダメなのです。
そうして、お兄様にお会いして、”やっぱり、ユリアンネが一番可愛い”と、気がついていただかないとならないのですわ。
お兄様の周りには、綺麗な方が多かった。
ラウラもカウラも十分綺麗なのですが、従者として一歩引いている。問題は、あの聖女と言われる女と男爵家の女。後、後からやってき、エルフの女とドワーフの女だ。皆、お兄様の魅力に気がついてしまった。私だけが知っていた、お兄様の魅力に、沢山の方が、知ってしまったのだ。
負けられない女の戦いが、始まるのです。
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