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第七章 日常
第一話 告白
しおりを挟む「晴海さん?」
「あっごめん。僕の奥さんがあまりにも可愛かったから見惚れていたよ」
晴海は本当に夕花の浴衣姿に見惚れていた。
「もぉ・・・。でも、嬉しいです」
晴海は、一つの出来事を忘れていた。頭の片隅には有ったのだが、能見との連絡ですっかり忘れてしまったのだ。晴海は、浴衣姿の夕花を隣に座らせた。
夕花は、言われたとおりに、浴衣姿のまま、風呂から出た状態で、晴海の横に座る。座るまでは良かったのだが、座った後で顔をあげられなくなってしまった。
風呂には、浴衣だけは一式用意されていた。
情報端末だけではなく、着替えも全部部屋に置いてきてしまった夕花は、脱衣所でどうしようか考えた。予約するときに、部屋の稼働率を見たときに、平日だけあって20%ほどで、結果大浴場は一人で堪能出来た。そして、脱衣所には着替えを入れて持ち帰る袋は用意されていた。
身に付けていた下着は、汗で汚れていた。それ以外の理由もあって、せっかく温泉で綺麗になったのに、汗で汚れた下着や服を身に着けたくなかった。晴海に、可愛いや綺麗と思われたいのだ。エステで全身の毛を剃られて綺麗になった身体を、大きな鏡で見る。
(本当に、綺麗になっている。広げて・・・。辞めておこう。でも、これなら・・・)
夕花は、覚悟を決めて、全裸の状態で浴衣を羽織る。
夕花の身体には大きい浴衣を羽織って、帯をしっかりと結ぶ。胸元が見えないか心配だったが、大丈夫だと判断した・・・。自分で確認して少しだけ残念な気持ちになった。
大浴場から、部屋にたどり着くまで内股になってしまったのはしょうがないだろう。そして、せっかく用意されていた着替えを持ち帰るための袋に洗濯しなければならない物を入れるのをわすれた。そのまま丸めて持ってきてしまっている。
この状況は、夕花が望んだ状態ではないが、晴海もまさか夕花が下着を身に着けていないとは、考えてはいない。着替えを見られないように隠したのがトリガーになってしまった。
「夕花?どうした?」
「はひ!」
「夕花?」
「なんでもありません!本当に、何でも、大丈夫です」
晴海は、夕花が着ていた服を隠したのを見ていた。
イタズラ心が芽生えてしまったのだ。
「夕花。お茶の準備をしてくれるか?僕は、ポットに水を入れてくるよ」
「はい」
晴海が立ち上がったのを見て、夕花は立ち上がった。お湯を入れるのに、部屋から出なければならない。ポットを持って部屋から出る晴海を見送った。今がチャンスと思って、下着を含めた着替えを持って、着替えを詰めているバックの所に移動しようとした。
「夕花!」
突然、部屋を出ていったはずの晴海が部屋に戻ってきて、夕花に声をかけた。
「!!」
夕花は、持っていた着替えを床に落としてしまった。
それだけではなく、新しく履こうと思った下着を手に持った状態だったのだ。
「ポットにおゆ・・・。え?」
はらりと、浴衣の帯が落ちる。
床には、汗で汚れた下着が落ちてしまっている。
「・・。っ!」
夕花は、晴海の方を振り向いてしまっている。帯が解かれた状態だ。肌着も身に付けていない。本当に浴衣だけの状態だったのだ。
形のいい胸や異性に触られたことがない先端部分。エステで綺麗にされたからといって、見られて恥ずかしくないわけではない。しっかりと全身を、晴海に見られてしまったのだ。
お互いにどうしていいのか解らなくて固まってしまった。
夕花は、下着をはくべきか?履くなら、隠れたほうがいいのか?いっそのこと晴海に全部を見てもらおうかと考えた。
晴海は、なんで今の状態になっているのか解らなかった。解るのは目の前に、夕花がほぼ全裸の状態で立っている状況だということだけだ。夕花の裸を見るのは初めてではない。寝ているときに、見てしまったこともあるが、窓から差し込む陽の光が、夕花を照らしている。形のいい胸が・・・。足が・・・。全部、自分の目の前にあるのだ。手を伸ばせば届きそうだ。
「夕花・・・。すごく綺麗だよ」
場違いだとは思っていても、他に言葉が出てこなかった。手に持っていたポットをテーブルの上に置いて、固まっている夕花を見続けている。
見られている状況が恥ずかしいが、自分を綺麗と言ってくれた晴海から夕花も視線を動かせないでいた。
「は」「夕花。そのまま、こっちにおいで」
「はい」
夕花は持っていた下着を床に落として、帯もその場に全部残して、浴衣を肩にかけた状態のまま晴海に近づく。晴海までの数歩がすごく遠くてもどかしく感じていた。
夕花が2歩近づいた所で、晴海が夕花に駆け寄った。浴衣の上から抱きしめた。
「あっ」
「夕花。伊豆に着いたら・・・。いいね」
「はい!私のすべては、晴海様の物です。お好きにしてください。命までも晴海様の物です」
「うん。夕花の心も欲しい。僕は、夕花のすべてが欲しい。夕花。好きだよ。愛している」
「(クスクス))」
夕花は、晴海に抱かれながら笑ってしまった。晴海が、自分と同じだったと知って嬉しかったのだ。
「ん?」
「晴海さん」
夕花は、晴海の腕の中で肩からおちてしまった浴衣から腕を抜いて、晴海に全裸の状態で抱きつく。
「え?」
そして、晴海が抱きしめてくれている肩から手を外して、腰に手を移動させる。
「晴海さん。私の心も晴海さんの物です。私も、晴海さんが居れば・・・。晴海さんだけが欲しいのです」
夕花は、晴海から身体をお互いの顔が見えるくらいの距離だけ離した。そして、晴海の片方の手を自分の胸に持っていく。
「晴海さん。晴海さんが約束してくれました。私を殺してくれると」
「あぁ。僕の目的が達成されたら、夕花を殺してあげるよ」
「晴海さんの目的が果たされたときに、私が死ぬことを望んだら・・・です、よね?」
「そうだ」
夕花は、胸に置いた晴海の手を両手で握って胸に押し付けるように強く抱きしめた。
「まだわかりません。死にたいのか?生きたいのか?でも・・・。晴海さん。私が、晴海さんと一緒に生きていきたいと言ったらどうしますか?」
「決まっている。僕が死ぬまで殺さない。僕よりも、一日でも長く生きろと命令する」
「ありがとうございます。晴海さん」
「夕花?」
夕花は、晴海の手を離して、首筋に腕を伸ばす。
そして、晴海の顔を近づけた。
「晴海さん。好きです。私の主が、晴海様でよかった。晴海様。大好きです。いつからかわかりません。でも、この気持ちに偽りはありません。大好きです。私のご主人さま」
自分の気持ちをストレートにぶつけた夕花は、そのまま晴海の唇に自分の唇を合わせる。
晴海は全裸の夕花を抱きしめるようになる。
耳どころか、肩まで赤くなっている夕花を確かめてから、夕花のおしりに手を伸ばしてしっかりと立たせる。身体をさらに密着して、夕花の耳元で呟くように返事をする。
「夕花。好きだよ。抱くのは簡単だった。でも、出来なかった。いつの頃からか、夕花のすべてが欲しくなった。夕花の心が欲しかった。僕だけを見てほしかった。夕花。愛している」
晴海は、夕花の首筋に自分の印を付けるようにキスをする。
その後で、夕花がしたような唇を重ねるキスではなく、舌を絡めるようなキスをする。夕花も、晴海に応える。
どの位二人は唇をあわせていたのだろう?
晴海も夕花も、相手が求める限りは応えるつもりでいたのだ。
夕花の情報端末にコールが入って、初めて二人は身体を離した。
気恥ずかしさはあるが、何かわからない充実した気持ちになっていた。
「晴海さん。夕食の準備が出来たそうです。部屋で食べるか、食堂で食べるか、聞かれました」
「部屋に持ってきてもらおう」
「わかりました」
夕花は、落ちた浴衣を羽織ってから返事を伝えた。部屋で食べると伝えたのだ。飲み物は、果実水を頼んだ。アルコールを飲んでも良かったが、移動が必要になる可能性を考慮したのだ。伊豆に着いてからゆっくり飲めばいいと晴海が言った。
夕花は、洗濯しなければならない物をしまった。下着は身に着けない状態で浴衣だけになって横に座った。肩を抱かれたので、晴海の肩に寄り掛かるようにして、食事の準備が整うのを待った。食事の用意は、すぐに整った。
二人は、夕飯を食べてから、晴海が大浴場に行くのは面倒だと言い出して、部屋風呂に二人で入った。夕花はワガママを言って、晴海の全身を洗わせてもらった。それから、お互いの身体を拭いて部屋に戻って全裸の状態で寝た。
晴海は約束通りに夕花に触らないで寝ようとした。夕花は、約束していないので、晴海に抱きついて寝ることになった。
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