チェスター君の王都巡り

護茶丸夫

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おっさん二人とチェスター君 2

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 忙しく歩き回る使用人さん達の邪魔にならないよう、端っこをそっと歩くチェスター。
 領地の屋敷にも蔵書室はあるが、チェスターには難しい本ばかりだった。
 今自分の中で流行りは、以前エネロ男爵家のランディーが見せてくれた、家にある本よりは厚くも無い読みやすい言葉が多かった「生まれ変わり・転生者の記録」だった。
 前世は騎士だったり、王族だったり発明者だったり。子供の夢がいっぱいに詰まった、ちょっと特別な自分に目覚めてしまうお話集だ。

 もしかしたら、自分もそのうち思い出すかも!と、ドキドキしている。物語のように戦ったり、悲劇的な最期を迎えたり、見たこともない場所の記憶が蘇っちゃったり!
 もっと知りたい!そして自分が転生者だったらどうしよう!うわー大変だー!
 中二病を発症する一歩手前の状態で、フワフワしているが、ありがちだと言えばありがちだ。どうか痛い子にならないで欲しいと書き手は思っていますよ!

 うふふと想像しながら、図書室に到着。ドアを開けると、少しカビ臭い古い皮と布とインクの匂いが流れ出てくる。薄暗いその部屋の中に、目的の本を探すため入っていく。ドアは換気と、カギを締められない様に開けっ放しに。

「おおおお!いっぱいある!やっぱりすごいや」

 きょろきょろとしながら、なんとなく一周する。天井までぎっしり詰まった本棚が壁になっていて、背中合わせの四段もある本棚が二つ。これも本でいっぱいだ。
 探し方なんて分からないから、入り口の近くの棚から見る事に。難しい言葉の書いてある本は飛ばして、下二段だけ上下交互に見ていく。読んだことのある絵本も、家にある難しい(絵が入っていたので覚えてる)本も、タイトルはついてないけど色的に見てはいけない気がする本も。
 なかなか目的の「転生」本は見つからない。ぐるぐると棚を周り、五週した所で飽きてしまった。これは誰かに探してもらうしか、見つけきれない。そう判断したチェスターは、誰に探してもらうか考えた。
 顔見知りの人達は、忙しいのは知っている。と、なると。食堂でダラダラしているであろうおっさん二人に頼むしかない。その二人が疲れたと言っていたのは、さっぱりと忘れて本探しを頼む為に食堂へ。ドアは開けっ放し。キニシナイ!

 ぶーぶーと文句を言いながらも、おっさんたちも暇だったらしく付き合てくれることに付き合ってくれる事になった。図書室で本の種類を伝え「ここからここはみたよ!」と下二段を探索済みだと得意げにしているチェスター。さすがに「絶対見落としあるだろ」とは思ったおっさん達だが、それは口にしない分別ある大人だった。まだひげもじゃだけど。

 空気が悪いからドアの外で待ってなさいと、追い出されしゃがみ込んでぼんやりしていると、数冊ずつ本を手にした二人が出てきた。
 
 「いっぱいあったんだね!すごい!」

 喜んだチェスターだが、ただ単におっさんたちも読みたい本を選んだだけで「転生」に関する本は二冊だけだった。

 「こっちは坊ちゃんには難しいと思うぞ?学園でちゃんと習ってから読んだ方がいい」

 とりあえず見せる為に持ってきたと、親切な気遣い。だが、家では可愛い弟がいるお兄ちゃんなチェスターには面白くない。

「だいじょうぶ、よめるよ!おにいちゃんだもん!」 

「おーそうかーじゃあ、読んで聞かせなくても大丈夫だなー」
「お?反抗期か?あとからお願いしたらちょっと恥ずかしいぞ」

 おっさんズはニヤニヤとしながら二冊の本をチェスターに渡し、開けっ放しだったドアを閉めた。食堂に持っていて読む事にした三人は、やっぱり邪魔にならない様に、チェスターの先導によりはじっこをゆっくりと移動。
 何にせよ目当ての本が見つかったので、チェスターの機嫌はすぐに戻った。





手直し修正は上げてからが本番です。
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