もふもふの国の聖女様

護茶丸夫

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聖女選定 14

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「ヤバい! マジ可愛い!」

 しんぼうたまらんっ! もうダメ!

「え?」
「そと、外逝きましょう、マーガレット様!」
「えっえっえっ?」

 グイグイと引っ張り、外への扉へGO!
 素早くベランダへの扉を開けてくれたソフィア。ありがとぅー。
 ベランダのウッドデッキも、室内用の柔らかい布靴で草の上も、ここはガンガン進むしかない!

「あ、あ、ベロニカさまっ、まってっ、おねがいっ。」
「え? 早すぎましたね、ごめんなさい。」

 慌てて足を止めたけど。
 息を切らせている妖精ちゃんに、ちょっと反省。
 そんなに早く走ってない、いや、歩いてはいたけどもっ。

「ふぅふぅ、はしって、いるのか、と、おもう、はやさ、でした。」
「早くポンちゃんに触りたくて、気が急いてしまいました……。」

 マーガレットが落ち着くまで、ちょっと待とう。
 息が切れた妖精ちゃんも色っぽくて可愛い。

 大丈夫、ポンちゃん様は逃げない。逃げないよね?
 ああ、うん。こっち見ながら、ヘソ天で尻尾振ってますわ。
 わぁああああ、ぱっちり開いた目がキラキラしてるぅうう。
 口呼吸してチラチラ見える舌が、きゃわわわ!

ハッハッハッ。キューン。

 自分から近づこうとしたら、新入りから近づいてきたのが嬉しかったのか、ポンちゃんよ。
 期待値の上がりが高過ぎなのか呼吸は早く、尻尾の振りが一層激しくなってきた。
 期待に満ちた瞳で、寝転がり体をくねくねさせながら待機している。
 しかも、待ちきれないとばかりに切ない声まで出し始めた。

「もっ、だめっ! マーガレット様、わたくし、我慢が、出来ないっ。」

 たまらんのです! 叫ぶように断りを入れた。
 息を切らし困惑してるマーガレットのの手を離し、『ポンちゃん』様の元へ全力疾走っ。

 ごめんなさいっ! 期待には応えたいのっ!
 強く抱きしめてやるぜベイベー!

「ポンちゃん、ポンちゃーん!」

 ぼふりっ

「よーしよしよし。いい子ですねぇー。」

 全身で心で全力で、モフるりゅぅぅぅぅ。

「べ、ベロニカさ、ま。」
「マーガレット様、アレはもう……。」

 止められませんわ。追いついた侍女達が、静かに告げる。
 全員が生暖かい目で、奇声をあげもしゃもしゃと自身の倍もある大きさの聖獣を、一心に全身でモフるベロニカを見守る。
 大きな体を嬉しそうに体をくねらせ、ボボボボと尻尾を振りまくり、わふんわふん小さく吠えるポンちゃん。
 顔は怖いけど、嬉しそうなのは分かる不思議。

「ふふっ。聖獣様も楽しそうですね。」

 ポンちゃんの姿を見た瞬間に、小さな悲鳴をあげ固まってしまったマーガレット。
 落ち着いたのか、楽しそうな声をあげる彼女に侍女達も同意する。

「ええ、とても堪能していらっしゃいますね。どちらも。」
「特にベロニカ様が、はしゃいでます。」

 冷静なソフィアとジェニファー。
 その分析は、少し不憫な気がする。

「もう少し落ち着いたら、マーガレット様も聖獣様にお声をかけて下さい。とても喜ばれますよ。」
「顔は怖い。でも、『ポンちゃん』様はとても優しい。大丈夫。」

 励ましの言葉をかける、マーガレット付きの侍女二人

「はい! 見た目で怖がっちゃ、駄目ですね。聖獣様に謝らなくては。」

 ふんすとばかりに意気込む姿に、ほっとする侍女四人。
 自分より大きな聖獣に暴走する聖女候補は初めて見たが、あれはあれで緊張がとけるので良いかとも思い始める。

「ポンちゃん可愛いねー! ポンちゃんいい子だねー! フワフワだねー。あん? ココか? ここがイイんか?」

 エロ親父的発言をし出したベロニカ。

 うん。良くない。
 そろそろ止めよう。

 決断した侍女達は動き出す。

「ベロニカ様、マーガレット様がご挨拶の為に待ってらっしゃいますよ。」

 ソフィアがエロ親父モドキの肩を叩き、正気に戻す。
 その間にマーガレットを近寄らせておく。

「はぅ! そ、そうでしたわねっ。こっこのまま、お撫でになっても宜しいのでは?」
「……。」

 しゃがみ込み、もさもさと動かしていた手を止めることなく返事が返って来た。
 ……離れたくないんですね。
 これは手を離す気が無いやつですね、五人は悟る。
 でも、かえって心強いなと思い直す前向きなマーガレットは、聖獣ポンちゃんへ更に近づく。

「初めまして、ポンちゃん様。マーガレットと申します。お腹ナデナデさせて頂きたいのですが、宜しいでしょうか?」
わひゅーん。

 まったく威厳の無いだらりとした姿で、気の抜けた返事を返す聖獣。
 加護が無くても「いいよ」どころではなく、「どうぞー」もしくは「はやくぅー」だとわかる。
 張り切ったベロニカが、ポンちゃんの後ろ脚の付け根あたりをゴイゴイと撫でる。

「ほらほらっマーガレット様、ここ! ここがお勧めですわ!」
「ふわぁー柔らかくてフワフワー。少し体温高めですね。」

 勧められるままそっと撫でる、素直なマーガレット。
 きゅふんきゅふんと鳴き、いやいやと頭を振るポンちゃん。
 もっと強くですね、分かります。

「ポンちゃんは強めに撫でるほうが嬉しいようですの。ささ、もっと力を入れて。」
「えっ。は、はい!」

 すっかりベロニカのペースに巻き込まれ、ポンちゃんの体のあちこちを撫でさせられている。
 ポンちゃんは満足そうに、わふんわふん悶えている。

 どう止めれば、いやどうやって終わらせるか。
 侍女達の声に出さない相談が始まった。
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