10 / 44
聖女選定 9
しおりを挟む
「明日の聖獣様との話し合いの後、他の聖女様達と合流して頂きますが、仮聖女様達は、まぁ、追々ですね。」
内心ぐぬぬと唸っているベロニカを、何も気が付いてないようにスルーするペルーシャ。
ここで突っ込んだら、また黒歴史の波動に囚われてしまう。
なぜなら彼もまた黒歴史の持ち主だから、知っているのです。
誰もが通る道なので、一々突っ込みはしない。
「純粋に怖がっている仮聖女様に対しては、聖獣様方も気を使って少しづつ、距離を縮めていらっしゃるのですよ。」
「問題がそれ以外の方々に対してでして。」
美人が憂いを帯びた顔で、ふうっと溜息をつく。
でも、手元がダイナミックに羊を撫でまくっているのであまり色っぽくない。
「対応が聖獣様ごとにバラバラなので、その都度説明するしかないので、追々とさせて頂きますね。」
「はぁ。」
「は、はい!」
自分も撫でたいと考えながら、なんとなく返事を返す者。
やはり聖獣様は優しい方々なんだなぁと、気合を入れつつ返事をする者
温度差が激しい二人。
「何か気になる事はありますか? なければこの後は、部屋に案内いたしますが。」
「は、はい、あります。引退聖女様についてです。結婚後と仰いましたが、あ、あの清くなくなっても、聖女として働けるのですか?」
真っ赤になりながらも、勇気を出したマーガレット。
「あ、そうだね」と言わんばかりの顔になったベロニカ。
加護が無くても、この二人は分かりやすいと思ったペルーシャ。
うっとりし続けている白モコメリノ。
「ええ、もちろんですよ。」
真面目な顔になり、二人が恥ずかしがらない様にきちんと答える事を、意識して話始めた。
「知性ある生き物の営みとして、聖獣様は幸せな結婚を推奨されていらっしゃいます。」
二人の顔を交互に見ながら、言葉選びが間違っていないか用心しながら続ける神官。
「聖女様が選んだ方が、相性の良い相手だと聖獣様が判断した場合、喜んでお付き合いを勧められます。」
「なにより結婚後の、お子様の出産を楽しみにしている聖獣様も多いんです。その生まれた子供が気に入れば、その場で加護をお渡しになる聖獣様もいらっしゃいます。」
真面目だが、その行動は真面目なのかどうなのかわからなくなる。
うっとりしすぎの白モコメリノは、もはや聞いていない。
「神殿長が生まれてすぐに加護を貰った、子供の一人ですよ。」
「まあ! すごい!」
「本当! 素敵ですね!」
キャッキャと無邪気に喜ぶ二人。
もう少しだけ丁寧に補足を入れておく用心深い神官。
あけすけだと断定されたのは、もしかして悔しかったのかもしれない。
「神殿長のお母様に当たる引退聖女様は近くにお住まいです。父親に当たる方は神殿騎士ですよ。この方は現役ですので、そのうちお会いになると思います。」
ニコニコと頷く二人に、やりきった気持ちの一人。
うっとりが過ぎて眠りそうなのが一頭。
「他にございますか? 今でなくても今後、側にいる者に聞いて頂いても大丈夫ですよ。」
「聖女様には二人づつ侍女がつきます。交代で当たりますが、気の合うものがいれば話し合って専属にする事も可能です。」
「あと、外から呼ぶこともできますが、少々審査が必要になります。すぐにご希望に沿う事は難しいので、そこはご了承ください。」
外から侍女は呼ぶつもりはないと、二人は神官に告げた。
質問も今は特に無いとなり、それでは部屋へと移動することになった。
ペルーシャは腰に吊り下げていた袋から、ふたたびベルを取り出した。
先ほどとは違い、今度はゆっくりとした音色を響かせる。
りーん、りーん、りーん。
軽やかな鈴の音が広がる。
ドアノックが聞こえ、すぐさまキリっと上体を起こした白モコメリノが「めぇー」と返事をする。
先ほどとは違う侍女達が入室し、まずは聖獣へと挨拶をし、聖女、神官へと続けて挨拶を行う。
三人と一頭は立ち上がり、ベロニカとマーガレットは侍女の先導について部屋の外に出る。
部屋に残る神官と聖獣に、ドアの前でまた明日と挨拶を交わす。
「めぇー。」
「ではまた明日。『至高なる羊毛の穏やかな気品に溢れる美しき我が愛しのメリノ』も『明日を楽しみにしている』と仰っていますよ。」
くいっと頭を差し出した聖獣に、二人は笑顔でぽふりっと手を乗せそっと撫でる。
「はい! 今日はありがとうございました。大好きです。」
「はい。素敵な時間をありがとうございました。頑張ります。」
幸せの時間だ。
うっとりと撫でられる聖獣とうっとりねっとりと撫でるベロニカ。
ゆっくりと壊れ物に触れる様に、優しく撫でるマーガレット。
その二人と一頭を、微笑ましく見つめる神官と侍女達。
短い別れの挨拶ナデナデが終わる。
名残惜しそうに振り返り手を振る二人と、無事に顔合わせが終わりほっとした神官と聖獣。
元の部屋に戻り、夕食までの甘い全力のマッサージの時間が始まる。
外へのガラス戸は目いっぱい開いているので、二人っきりではない。と言う事にしておこう。
しばらく長い廊下を歩いた後、ベロニカとマーガレットはドアの位置が近い隣同士の部屋に案内された。
夕食は一緒に食べようと約束し別れる。
まずは暖かいお茶で一息入れて、モコモコを思い出してこっそりニヤニヤしよう。
顔に出さない様に用心しているベロニカさん、侍女さん達は加護持ちですよ?
内心ぐぬぬと唸っているベロニカを、何も気が付いてないようにスルーするペルーシャ。
ここで突っ込んだら、また黒歴史の波動に囚われてしまう。
なぜなら彼もまた黒歴史の持ち主だから、知っているのです。
誰もが通る道なので、一々突っ込みはしない。
「純粋に怖がっている仮聖女様に対しては、聖獣様方も気を使って少しづつ、距離を縮めていらっしゃるのですよ。」
「問題がそれ以外の方々に対してでして。」
美人が憂いを帯びた顔で、ふうっと溜息をつく。
でも、手元がダイナミックに羊を撫でまくっているのであまり色っぽくない。
「対応が聖獣様ごとにバラバラなので、その都度説明するしかないので、追々とさせて頂きますね。」
「はぁ。」
「は、はい!」
自分も撫でたいと考えながら、なんとなく返事を返す者。
やはり聖獣様は優しい方々なんだなぁと、気合を入れつつ返事をする者
温度差が激しい二人。
「何か気になる事はありますか? なければこの後は、部屋に案内いたしますが。」
「は、はい、あります。引退聖女様についてです。結婚後と仰いましたが、あ、あの清くなくなっても、聖女として働けるのですか?」
真っ赤になりながらも、勇気を出したマーガレット。
「あ、そうだね」と言わんばかりの顔になったベロニカ。
加護が無くても、この二人は分かりやすいと思ったペルーシャ。
うっとりし続けている白モコメリノ。
「ええ、もちろんですよ。」
真面目な顔になり、二人が恥ずかしがらない様にきちんと答える事を、意識して話始めた。
「知性ある生き物の営みとして、聖獣様は幸せな結婚を推奨されていらっしゃいます。」
二人の顔を交互に見ながら、言葉選びが間違っていないか用心しながら続ける神官。
「聖女様が選んだ方が、相性の良い相手だと聖獣様が判断した場合、喜んでお付き合いを勧められます。」
「なにより結婚後の、お子様の出産を楽しみにしている聖獣様も多いんです。その生まれた子供が気に入れば、その場で加護をお渡しになる聖獣様もいらっしゃいます。」
真面目だが、その行動は真面目なのかどうなのかわからなくなる。
うっとりしすぎの白モコメリノは、もはや聞いていない。
「神殿長が生まれてすぐに加護を貰った、子供の一人ですよ。」
「まあ! すごい!」
「本当! 素敵ですね!」
キャッキャと無邪気に喜ぶ二人。
もう少しだけ丁寧に補足を入れておく用心深い神官。
あけすけだと断定されたのは、もしかして悔しかったのかもしれない。
「神殿長のお母様に当たる引退聖女様は近くにお住まいです。父親に当たる方は神殿騎士ですよ。この方は現役ですので、そのうちお会いになると思います。」
ニコニコと頷く二人に、やりきった気持ちの一人。
うっとりが過ぎて眠りそうなのが一頭。
「他にございますか? 今でなくても今後、側にいる者に聞いて頂いても大丈夫ですよ。」
「聖女様には二人づつ侍女がつきます。交代で当たりますが、気の合うものがいれば話し合って専属にする事も可能です。」
「あと、外から呼ぶこともできますが、少々審査が必要になります。すぐにご希望に沿う事は難しいので、そこはご了承ください。」
外から侍女は呼ぶつもりはないと、二人は神官に告げた。
質問も今は特に無いとなり、それでは部屋へと移動することになった。
ペルーシャは腰に吊り下げていた袋から、ふたたびベルを取り出した。
先ほどとは違い、今度はゆっくりとした音色を響かせる。
りーん、りーん、りーん。
軽やかな鈴の音が広がる。
ドアノックが聞こえ、すぐさまキリっと上体を起こした白モコメリノが「めぇー」と返事をする。
先ほどとは違う侍女達が入室し、まずは聖獣へと挨拶をし、聖女、神官へと続けて挨拶を行う。
三人と一頭は立ち上がり、ベロニカとマーガレットは侍女の先導について部屋の外に出る。
部屋に残る神官と聖獣に、ドアの前でまた明日と挨拶を交わす。
「めぇー。」
「ではまた明日。『至高なる羊毛の穏やかな気品に溢れる美しき我が愛しのメリノ』も『明日を楽しみにしている』と仰っていますよ。」
くいっと頭を差し出した聖獣に、二人は笑顔でぽふりっと手を乗せそっと撫でる。
「はい! 今日はありがとうございました。大好きです。」
「はい。素敵な時間をありがとうございました。頑張ります。」
幸せの時間だ。
うっとりと撫でられる聖獣とうっとりねっとりと撫でるベロニカ。
ゆっくりと壊れ物に触れる様に、優しく撫でるマーガレット。
その二人と一頭を、微笑ましく見つめる神官と侍女達。
短い別れの挨拶ナデナデが終わる。
名残惜しそうに振り返り手を振る二人と、無事に顔合わせが終わりほっとした神官と聖獣。
元の部屋に戻り、夕食までの甘い全力のマッサージの時間が始まる。
外へのガラス戸は目いっぱい開いているので、二人っきりではない。と言う事にしておこう。
しばらく長い廊下を歩いた後、ベロニカとマーガレットはドアの位置が近い隣同士の部屋に案内された。
夕食は一緒に食べようと約束し別れる。
まずは暖かいお茶で一息入れて、モコモコを思い出してこっそりニヤニヤしよう。
顔に出さない様に用心しているベロニカさん、侍女さん達は加護持ちですよ?
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる