21 / 33
20 見た目が俺と近い
しおりを挟む
村の広場で、それぞれの家からありったけの椅子や木箱を出して椅子にしている。
子供達は地べたや草地に座り、大人達の話を大人しく聞いていた。
「村長さんよ、もしかしたら行方の分からない連中は、王都で生きてるのかもしれないんだよな。」
隣村の最年長の狩人が、うつむいていた顔を上げ、腕を組んだまま問う。
答えあぐねるアルバート。
それでも、目はそらさない。
続いて俺と同い年の狩人が、こっちを見て聞いてくる。
「町に残ってる連中も、まだどっかに隠れてるかもしれないんだろう?」
「ああ、町は見て回ってないから、どっかにいると思う。」
俺は頷いて見せて、あちこちに転がっていた人の顔の中に、隣村の人間はいなかった事を思い出す。
町で冬を越せたのなら、裏道辺りか林の近くで身をひそめているかもしれない。
「役人は見なかったのか? 貴族や傭兵は?」
「見てないぜ。馬車も通ってない。町の門番の詰め所にも、兵隊はいなかった。」
「貴族の屋敷辺りは?」
「あー近寄ってもないんだ、すまない。」
「そうか、いや、娘さんと一緒だったよな。仕方ないさ。」
見習いの時に何回か一緒に組んだことがある。
こいつも見た目が俺と近いから、親近感があったんだよな。
しばらくはみんな思い思いに話をしてすごす。
情報の交換も一通り終わった所で、草茶のお代わりが回ってきた。
今日の草茶は誰のかなぁ。
「なぁ村長さん、俺らは町に寄って、王都まで行ってくる。」
最年長の狩人が、困った顔のアルバートに凄みの感じられる笑顔で言い切った。
「戻ってくるまで、ウチの村の連中を頼めるかい? っても、散々世話になりっぱなしだが。」
「かまいません。出来る事はやるまでです。みんなで協力しないと、きっと生き残れません。」
「ははっ。坊主は良い村長に成れるぞ。いや、もう良い村長だな。」
隣村の狩人達を中心に、村からも数人が一緒に向かう事になった。
町の残る村人はウチの村の連中が村に連れて帰り、残りは王都に向かう。
「警戒するのは革命の時期です。その場に居れば、間違いなく巻き込まれます。」
「兵隊となまくら剣の素人じゃぁ、勝負にならないがなぁ。」
「ああ、それなりに兵隊達もいくさをしてきてるからな。」
「俺らもな。兵隊側に馬と槍が無けりゃ、人数で押し切れるが。その後はどうするんだよ。」
「革命ねぇ。想像がつかないな。」
「王都の貴族がいなくなっても、別のとこから貴族が来るだけだろ。」
「王様が変わるとか、別に俺らには関係ないしなぁ。」
「ふん。そこらへんも聞いてくるか。傭兵も多いだろうし、知り合いがいれば話も聞ける。」
「爺さんの知ってる傭兵、生きてんのかよ。」
「さぁな。若いのならまだ運がいいのが、たぶんいるだろう。」
いくさや革命の話で、ワイワイ話が盛り上がる。
若い連中は興味深げに聞いているが、女達の目が怖い。
出かける連中へ、村長からは革命実行の気配がしたら、この村に逃げてくるようにと言い含めた。
あとは、親切に紹介状を寄越した商人が困っていたら、助けてやって欲しいとお願いも。
「あの商人、見かけは胡散臭いんだが、良い人過ぎてなぁ。」
俺がしみじみと話すと、狩人連中は呆れたように肩を叩いてきた。
隣村の連中も鼻で笑っている。
む。いや、バカにされた感じはしないけど。納得いかない。
「いや、お前のお人良しさにあてられたんだろ。」
「見た目がこれなのに、喋ると、なぁ。」
「こっちの連中は毒気が無い。悪い事じゃないさ。」
「見た目詐欺だよな、お前。」
「トムはなぁ。」
よってたかって、なんだって言うんだ。
そんな目で見たって、なにもないぞ!
くそっ!こっち見んな!
誰か、助けは。
ま、マリーさん? 頑張ってって合図されても……。
ギルまで、マリーのマネしやがって!
「草茶、おかわり!」
「ハーブティーって言ってるでしょう。」
リリー姉さんの冷たい突っ込みが聞こえる。
知らんぷりして、お茶を入れアルバートの隣に逃げる。
よしっ! これからの事を決めていくぞ!
よく分からない空気のまま、隣村の連中は日が暮れる前に一度戻ると言い帰っていった。
明日から隠れ里に移動するのと、こっちでの移動の打ち合わせだ。
村に残る組は、隠れ里に納税用の麦以外を育てる事に。
高齢の者以外は、村を捨てて隣国へ逃げる事が決まった。
隣村の建物は少しずつ取り壊し、薪にするって。
……これが地味に辛い。
だって、好きで離れたわけじゃない、思い出の詰まった家だよ。
そのままでも良いじゃないかと思うのに。
なんで壊さないといけないのか。
ブーブー言ってたらアンリに怒られた。
くそう、悔しいからめっちゃ見つかりにくい見張り台作ってやる。
あちこちに作っビックリさせてやるからな!
狩りの順番忘れて見張り台に集中してたら、探しに来た親父にめっちゃ怒られた。
うん、確かに俺が悪い。
狩りは隣村の連中と合同で、一気に狩場が広がる。
お互い連絡事項が多い。
狩りもしつつ隠れ里の整備と、隣国に移動する準備も急がないといけない。
貧しいなりに、のんびり暮らしてた数年前が懐かしい。
子供達は地べたや草地に座り、大人達の話を大人しく聞いていた。
「村長さんよ、もしかしたら行方の分からない連中は、王都で生きてるのかもしれないんだよな。」
隣村の最年長の狩人が、うつむいていた顔を上げ、腕を組んだまま問う。
答えあぐねるアルバート。
それでも、目はそらさない。
続いて俺と同い年の狩人が、こっちを見て聞いてくる。
「町に残ってる連中も、まだどっかに隠れてるかもしれないんだろう?」
「ああ、町は見て回ってないから、どっかにいると思う。」
俺は頷いて見せて、あちこちに転がっていた人の顔の中に、隣村の人間はいなかった事を思い出す。
町で冬を越せたのなら、裏道辺りか林の近くで身をひそめているかもしれない。
「役人は見なかったのか? 貴族や傭兵は?」
「見てないぜ。馬車も通ってない。町の門番の詰め所にも、兵隊はいなかった。」
「貴族の屋敷辺りは?」
「あー近寄ってもないんだ、すまない。」
「そうか、いや、娘さんと一緒だったよな。仕方ないさ。」
見習いの時に何回か一緒に組んだことがある。
こいつも見た目が俺と近いから、親近感があったんだよな。
しばらくはみんな思い思いに話をしてすごす。
情報の交換も一通り終わった所で、草茶のお代わりが回ってきた。
今日の草茶は誰のかなぁ。
「なぁ村長さん、俺らは町に寄って、王都まで行ってくる。」
最年長の狩人が、困った顔のアルバートに凄みの感じられる笑顔で言い切った。
「戻ってくるまで、ウチの村の連中を頼めるかい? っても、散々世話になりっぱなしだが。」
「かまいません。出来る事はやるまでです。みんなで協力しないと、きっと生き残れません。」
「ははっ。坊主は良い村長に成れるぞ。いや、もう良い村長だな。」
隣村の狩人達を中心に、村からも数人が一緒に向かう事になった。
町の残る村人はウチの村の連中が村に連れて帰り、残りは王都に向かう。
「警戒するのは革命の時期です。その場に居れば、間違いなく巻き込まれます。」
「兵隊となまくら剣の素人じゃぁ、勝負にならないがなぁ。」
「ああ、それなりに兵隊達もいくさをしてきてるからな。」
「俺らもな。兵隊側に馬と槍が無けりゃ、人数で押し切れるが。その後はどうするんだよ。」
「革命ねぇ。想像がつかないな。」
「王都の貴族がいなくなっても、別のとこから貴族が来るだけだろ。」
「王様が変わるとか、別に俺らには関係ないしなぁ。」
「ふん。そこらへんも聞いてくるか。傭兵も多いだろうし、知り合いがいれば話も聞ける。」
「爺さんの知ってる傭兵、生きてんのかよ。」
「さぁな。若いのならまだ運がいいのが、たぶんいるだろう。」
いくさや革命の話で、ワイワイ話が盛り上がる。
若い連中は興味深げに聞いているが、女達の目が怖い。
出かける連中へ、村長からは革命実行の気配がしたら、この村に逃げてくるようにと言い含めた。
あとは、親切に紹介状を寄越した商人が困っていたら、助けてやって欲しいとお願いも。
「あの商人、見かけは胡散臭いんだが、良い人過ぎてなぁ。」
俺がしみじみと話すと、狩人連中は呆れたように肩を叩いてきた。
隣村の連中も鼻で笑っている。
む。いや、バカにされた感じはしないけど。納得いかない。
「いや、お前のお人良しさにあてられたんだろ。」
「見た目がこれなのに、喋ると、なぁ。」
「こっちの連中は毒気が無い。悪い事じゃないさ。」
「見た目詐欺だよな、お前。」
「トムはなぁ。」
よってたかって、なんだって言うんだ。
そんな目で見たって、なにもないぞ!
くそっ!こっち見んな!
誰か、助けは。
ま、マリーさん? 頑張ってって合図されても……。
ギルまで、マリーのマネしやがって!
「草茶、おかわり!」
「ハーブティーって言ってるでしょう。」
リリー姉さんの冷たい突っ込みが聞こえる。
知らんぷりして、お茶を入れアルバートの隣に逃げる。
よしっ! これからの事を決めていくぞ!
よく分からない空気のまま、隣村の連中は日が暮れる前に一度戻ると言い帰っていった。
明日から隠れ里に移動するのと、こっちでの移動の打ち合わせだ。
村に残る組は、隠れ里に納税用の麦以外を育てる事に。
高齢の者以外は、村を捨てて隣国へ逃げる事が決まった。
隣村の建物は少しずつ取り壊し、薪にするって。
……これが地味に辛い。
だって、好きで離れたわけじゃない、思い出の詰まった家だよ。
そのままでも良いじゃないかと思うのに。
なんで壊さないといけないのか。
ブーブー言ってたらアンリに怒られた。
くそう、悔しいからめっちゃ見つかりにくい見張り台作ってやる。
あちこちに作っビックリさせてやるからな!
狩りの順番忘れて見張り台に集中してたら、探しに来た親父にめっちゃ怒られた。
うん、確かに俺が悪い。
狩りは隣村の連中と合同で、一気に狩場が広がる。
お互い連絡事項が多い。
狩りもしつつ隠れ里の整備と、隣国に移動する準備も急がないといけない。
貧しいなりに、のんびり暮らしてた数年前が懐かしい。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる