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懐かしい味にスパイスを

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「せーの!」

「「「「いただきます」」」」

 僕たちは今、学食でお昼ご飯を食べていた。
 央光《おうこう》医療大学を見学しに来て早々色々あったけど、これからが楽しみな所だよね!

 奏汰はロースカツカレー、静華さんはチキンカレー、るなちゃんは麻婆豆腐、神崎さんはパスタを頼んでいた。


「懐かしい味がするね雪希子《ゆきこ》さん!」

「懐かしすぎだよ! 私のエビとブロッコリーのタラコクリームパスタはいつも頼んでたから余計懐かしさを感じるよー! 校内もだけど味も変わってないもんだねー」

 隣同士に座っていた2人は料理を食べると同時に話が膨れ上がっていた。


「どう奏汰くん、美味しい?」
「美味しいです!」
「どう? るなちゃんは」
「......おいし」
「ほんとー!? それ、激辛だよ?」

 僕と静華さんは料理を食べる手を止め驚いた。

「えっ大丈夫それ!?」
「うん......奏汰......だい......じょぶ......食べて......みる......?」
「いやー......大丈夫かな」
「......残念」

 激辛の麻婆豆腐を勧めてくる小悪魔ちゃんに少し恐怖を覚えていると、静華さんがるなちゃんに話しかけた。

「ちょっとその麻婆豆腐一口もらってもいい?」
「......うん」

 そう言って了承を得ると静華さんは新しいスプーンを取り出し、麻婆豆腐をすくって口に運んだ。

「えっ大丈夫!?」
「大丈夫ですか!?」

 麻婆豆腐を飲み込むと静華さんは口を開いた。

「......やっぱ辛い」

 そう言った後、口を少し開け下唇の半分が隠れるぐらい舌を出して少し笑顔を見せた。

「はい......お水......」
「ありがとーるなちゃん」

 そう言ってコップに入った水を二口飲むと静華さんは言葉を発した。

「うん、私にはまだ早かったみたい! それにしてもよく平気で食べれるね!」
「辛いの......好き......だか......ら......よく......食べてた......し......」

 普通に凄い、見るからに激辛! って色してるし静華さんも辛そうにしてたから本当に辛いんだ。
 食べなくて良かったぁ。

「病院食では基本特別辛いものは出ないからるなちゃんの意外な一面が見れたね」

 そう神崎さんが言ったあと、少し疑問に思った静華さんは神崎さんに問いかけた。

「雪希子《ゆきこ》さんはなんでるなちゃんが辛いもの好きなの知ってたの?」
「まーずっと見てたからね!」
「病院食に辛い食べ物は基本的に出ないんだから見てても分からないでしょ?」

「本当はね、るなちゃんから直接聞いたんだよ」
「......うん......そう......だった......」

 るなちゃんは麻婆豆腐を頬張りながら思い出すように言った。

「私と最初に話せた時に教えてくれたんだよ、あとたまにるなちゃんのおばあちゃんが辛いカップラーメンとか色々持って来てくれるんだ」

「神崎......さん......は......しつこ......かった......」
「るなちゃんの担当が決まってなかった時に毎日話しかけに行ってたからねー」

「それはさすがにやり過ぎよ」
「度胸が凄いですね」
「まあね!」
「......ふふっ」

 そんなたわいも無い話を長々とお昼ご飯を食べながらしていたら、時刻は13時になろうとしていた。

「えーっと、もうこんな時間!?」
「えっ......もう13時!?」
「ごめーん! 話しすぎちゃった!」

「だい......じょう......ぶ......楽し......かっ......た」
「僕も楽しかったですよ」

「ごめんね」
「私も全く気づかなかった、ごめん」

 色んな話を聞いたけど1番驚いたのはやっぱりるなちゃんが辛いの好きだったって事だなぁ、辛いの好きって事は甘いのは苦手なのかな?

「気を取り直して図書館に行きましょうか」
「......うん......行こ......!」

 るなちゃんは目を光らせ、ウキウキと食器の乗ったトレイを持ってみんなと一緒に歩き出した。

 僕たち4人は下膳口《さげぜんぐち》に食器を置いて学食を出、外に来ていた。右側にはさっき僕たちが注目の的になっていた校舎、左側にも2つの校舎があった。

「左側の校舎って2つに分かれてるんですね」
「そうだね! 何しろ人数が多いからねー」
「学部とか部活とかも多いしね」

 学食から外に出た時チラッと見えちゃったけど、広いグラウンドがあったりしてここ本当に医療の大学なのか?

「はい着いたよ! ここがるなちゃんお待ちかねの図書館だよ!」

 そう静華さんが言って奏汰は目の前にある建物を見た。

 校舎ほど大きくはないけどこの建物丸々図書館とは凄すぎる。これは今からワクワクが止まんない!
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